「週刊GetNavi」Vol.46-4
全天球カメラの製品ラッシュは、バーチャルリアリティ向けのコンテンツ作成ニーズもあり、当面終わらないだろう。そこでどんなものが求められているのか? 考え方は2つある。
まずひとつ目は画質、特に画素数だ。デジカメの高画素化競争はひとまず落ち着いた感じがあるが、全天球カメラについてはまだまだ足りない。現在主力の製品は、横解像度が3000から4000ドットのもので「4K撮影が可能」という売り文句のものが多い。一見これで十分そうだが、全天球カメラとしてはまだまだ足りない。確かに、あるアングルだけをカバーするなら、4Kもあれば大丈夫だろう、という印象がある。しかし、全天球写真の解像度は、見えている目の前の部分だけでなく、全天球写真全体でのものだ。だから、写真全体となると、横が8000ドット(すなわち8K)を超えるようなものが求められる。これは、一般的なカメラやスマートフォンとは違うニーズだ。コストの問題もあり短期的には、そこまで高解像度のものは難しいだろう。だが、消費電力の低下や小型化の頃合いを見て、より高解像度なものが出てくるのは間違いない。そして、同様に、その写真を「見る」「処理する」側にも高性能が求められるようになる。PCもスマートフォンも、いまや数枚の写真を処理するのにまごつくようなことはないが、8Kを超える、もしくは3K・4Kの写真を複数つないで大きな全天球写真として使うことが増えると、性能は不足気味だ。“VRで高性能、”というと“3DCGの能力”と思われがちだが、それ以外でも高性能は必要となりそうだ。
もうひとつが「自由度」だ。全天球映像は、まだどう使えばいいかが定まっていない。写真をソーシャルメディアにシェアする、というシンプルな使い方もあれば、データをPCに取り込んで処理して動画として使ったり、データをそのまま使わず、素材として使ったりすることもある。全天球動画をストリーミング配信する場合もあるだろう。
その時、特定の画像形式になっていたり、画像のスティッチの仕方が決まっていたりすると、意外と使いづらい。スマホでのシェアなど、シンプルな使い方は簡単にできるよう配慮しつつ、より高度な使い方を求める人には「処理前のデータを簡単に取り出す」方法を提供すべきだ。そういうニーズを持つ人はごく少数なのだが、そこまでする人が、VRや全天球写真の活用をリードする。そういう「影響力の強い人々」のニーズを逃さない作りにしておくことも、まだここ数年は重要なことだろう、と予想している。
●Vol.47-1は9月24日(土)発売のゲットナビ11月号に掲載予定です。
週刊GetNavi、バックナンバーはこちら!