デジタル
2016/8/31 20:40

郵便局で展開する格安SIM「IIJ みおふぉん」端末セットの実力は想像以上!

IIJ(インターネットイニシアティブ)は、同社の「IIJmio高速モバイル/Dサービス「ミニマムスタートプラン」の音声機能付きSIM(みおふぉん)」に、富士通コネクテッドテクノロジーズ製SIMロックフリー端末「arrows M03」をセットにした商品を、郵便局に設置するカタログにより8月1日から販売を開始した。東海地方(岐阜県・愛知県・静岡県・三重県)の郵便局2050局にて取り扱いを開始し、順次全国の郵便局に展開するという。

↑富士通コネクテッドテクノロジーズ「arrows M03」
↑富士通コネクテッドテクノロジーズ「arrows M03」

 

↑本体カラーはピンク、ホワイト、ブラックの3色が用意される
↑本体カラーはピンク、ホワイト、ブラックの3色が用意される

 

本製品の初期費用は3000円。端末代金一括払いの場合、端末代金として3万2800円を支払い、月々の通信代金は1600円となる。また、端末代金を24回払いに設定することも可能で、その場合の月々の料金は2980円(端末代金1380円+通信代金1600円)となる。端末代金はともかくとして、月々の通信代金はドコモ、au、ソフトバンクなどの3大キャリアと比べて大幅に削減することが可能だ。

 

しかし実際の使い勝手はどうだろうか? 安かろう悪かろうでは、結局改めてスマホを買い直すことになりかねない。今回の記事では、「arrows M03」自体の使い勝手、そしてIIJの提供する通信回線の実効速度などについてレビューしよう。

 

ワンセグやおサイフケータイなどの日本仕様にも対応

「arrows M03」は、OSにAndroid 6.0を搭載するSIMロックフリー端末だ。LTEはBand1/3/8/19/26、3GはBand1/5/6/8/19、GSMは850MHz/900MHz/1800MHz/1900MHzに対応しており、ドコモ系、au系どちらのMVNO SIMカードでも利用可能だ。なお、ソフトバンクのLTE周波数にも対応しているので、仕様上はY!mobileのSIMカードでも利用できる。

 

CPUは1.2GHz、クアッドコアの「MSM8916」、メモリー(RAM)は2GB、ストレージ(ROM)は16GBを搭載。また、最大200GBのマイクロSDカードを利用できる。

 

本体サイズは約H144×W72×D7.8mm、重量は約141g。約5インチのHD(720×1280ドット)IPS液晶ディスプレーを搭載する。

↑「arrows M03」のディスプレーサイズは約5インチ。手の小さな人にも無理なく操作できるサイズだ
↑「arrows M03」のディスプレーサイズは約5インチ。手の小さな人にも無理なく操作できるサイズだ

 

リアカメラはF値2.0、焦点距離22ミリ、有効画素数約1310万画素、フロントカメラは焦点距離23ミリ、有効画素数約500万画素と、広角寄りの使い勝手のよいカメラユニットが採用されている。

↑F値2.0と明るいレンズが採用されているため、暗めの室内でも撮影が可能だ
↑F値2.0と明るいレンズが採用されているため、暗めの室内でも撮影が可能だ

 

いわゆる日本仕様も網羅しており、防水(IPX5/IPX8)・防塵(IP6X)、ワンセグ、おサイフケータイ機能を搭載している。

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防水(IPX5/IPX8)・防塵(IP6X)だが、キャップレスのマイクロUSB端子が採用されている。写真の右の穴はストラップホールだ。

 

約11.5センチのワンセグアンテナを内蔵。アンテナケーブル兼用のイヤフォンなどを使わずに、単体でワンセグを視聴できる。

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↑アンテナを伸ばしてワンセグ視聴も可能

 

以上が基本スペックとなる。さて実際の使用感だが価格以上のクオリティーを感じるというのが率直な印象だ。側面はアルマイト処理を施したアルミ素材、ディスプレーはコーニング社のゴリラガラス3、背面はハードコートパネルが用いられ、トップとボトムにはフッ素系ハードコーティングが採用されており、高級感も感じられる作りだ。電源やボリュームなどのボタンは節度ある感触で、端末を強く握ってもエントリースマホにありがちなたわみなどはまったく生じない。

 

カメラ性能はクラスを超えたクオリティー

カメラ画質もミドルクラス以上のクオリティー。今回サムスンのフラッグシップスマホ「Galaxy S7 edge」と撮り比べてみたが、当然、解像感には差があるものの、発色やボケ味は十分美しい。色のノリについては「arrows M03」のほうを好ましく感じる人もいるだろう。

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↑「Galaxy S7 edge」で撮影。高い解像感と背景のボケは「arrows M03」を上回っている

 

↑「arrows M03」で撮影。解像感は必要十分。黄色い花びらの発色が美しい
↑「arrows M03」で撮影。解像感は必要十分。黄色い花びらの発色が美しい

 

処理速度は価格並み

処理スピードについては、ある程度割り切って利用する必要がある。「Galaxy S7 edge」とベンチマークスコアを比較してみたが、CPUの処理速度を計測するアプリ「Geekbench 3」で約3.45倍、グラフィック性能を計測する「3DMark」で約6.6倍のスコア差となった。しかし、「Galaxy S7 edge」の一括支払い額はドコモ版で9万3960円と「arrows M03」の3倍近い。この価格差を割り引いて考える必要がある。

 

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↑「Geekbench 3」の計測結果は、「arrows M03」が1508、「Galaxy S7 edge」が5208となった

 

↑「3DMark」(Ice Storm Unlimited)の計測結果は、「arrows M03」が4371、「Galaxy S7 edge」が28870となった
↑「3DMark」(Ice Storm Unlimited)の計測結果は、「arrows M03」が4371、「Galaxy S7 edge」が28870となった

 

通信速度は混雑時に大きな差

さて最後に肝心の通信速度をチェックしてみよう。今回IIJのSIMカードを装着した「arrows M03」と、ドコモのSIMカードを装着した「Galaxy S7 edge」で、15時と18時に通信速度を計測してみた。15時は非混雑時、18時は混雑時を想定している。通信速度計測に使用したのは「Speedtest.net」。5回計測を実施し、その平均値を算出した。下記がその結果となる。

 

【下り通信速度の比較(5回計測した平均値)】

・arrows M03(IIJ SIM) 15時/13.81Mbps、18時/1.70Mbps
・Galaxy S7 edge(ドコモSIM) 15時/18.04Mbps、18時/17.39Mbps

 

結果はご覧のとおり、15時の非混雑時には両者に大きな違いは見られなかったが、混雑時の18時には約10倍もの大きな差が開いてしまった。IIJはドコモの通信回線を使用しているが、回線帯域と通信設備がドコモとは条件が異なるため、混雑時に明らかな通信速度低下が発生していることがわかる。

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↑左がIIJのSIMカードを装着した「arrows M03」、右がドコモのSIMカードを装着した「Galaxy S7 edge」。18時台に両者の通信速度を計測すると、下りの通信速度に大きな差が開いてしまった

 

この結果をどう捉えるかは使い方次第だ。実はたとえ1.7Mbpsの下り通信速度しか出ていなくても、Twitter、Facebook、LINEなどSNSの利用には大きな支障はない。動画も高画質設定でなければ、なんとかストリーミング再生は見ることができる。多少割り切りは必要だが、通信代金を1600円まで節約できるのは家計にとっては大きなメリットだ。

 

一方、動画を高画質設定で見ることが多く、また業務などで大容量データを頻繁にやり取りするのであればドコモ回線を選んだほうがいいだろう。たとえ通信代金が3~4倍かかったとしても、安定した高速回線には代えられない。

 

試しにYouTubeのGetNaviチャンネルに上がっている動画を19時台に再生してみた。「Speedtest.net」で通信速度は2Mbps台となっているが、特にコマ落ちすることなく動画を再生できた。

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IIJの「IIJmio高速モバイル/Dサービス「ミニマムスタートプラン」の音声機能付きSIM(みおふぉん)」と、富士通コネクテッドテクノロジーズ製SIMロックフリー端末「arrows M03」の組み合わせはコストパフォーマンスに優れていることは間違いない。安定して高速で通信できる回線を必要としているのでなければ、まずはこのセットを導入してみて、通信速度に不満を感じたときに異なるMVNO事業者やキャリアのSIMカードの利用を検討してはいかがだろうか? 少ない投資で手軽に試せる点がSIMロックフリー端末の最大のメリットなのだ。