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2015/8/31 11:00

【西田宗千佳連載】日本の見逃し配信は「アニメ」が開拓した

「週刊GetNavi」Vol.34-2

 

 

テレビ番組をネットでも無料で配信する試みは、もはや珍しいものではない。少なくともアニメにおいては、2012年ごろから定着し始め、いまや行っていないもののほうが少ない状況だ。特に活発に使われているのはニコニコ動画。ニコニコ動画というプラットフォームの利用者層は、特にアニメとの親和性が高いから、ということであるらしい。一般に見逃し配信は、テレビ放送後に配信を開始し、次の回の放送が行われるまでは無料で見られる「一週間限定」である。だが、アニメの場合には、放送とネット配信を同時にスタートさせたり、最終回前や新シリーズ放送前に、過去の放送分をまとめて配信したりと、かなり柔軟な対応が行われている。

 

従来、テレビ局はこうした配信に懐疑的だった。「放送は生で見るものであり、ネットで視聴できてしまえば、放送を見てもらえなくなるのでは」という意見があったからだ。しかし、結論から言えばそんなことは全くなかった。

 

冷静に考えればわかる話なのだが、そもそも番組を見ようと思う人は「番組のことを知っている人」だ。テレビで放送されたとしても、番組のことを知らなければ、見てもらえるはずはない。テレビが娯楽の王様だった時代とは異なり、いまは色々な娯楽がある。テレビだけにこだわる理由はないし、放送の時間にテレビの前にいられるとも限らない。

 

だが、ネットで見逃し配信を行っていると、話は変わってくる。口コミやソーシャルメディアで「あの番組がおもしろそうだ」「あれは面白かった」という形で、テレビ番組の話が出てくることは多い。だが、録画でもしていないと見るのは難しいし、次の放送の時は忘れている。「ネットで見られる」ことがわかっていると、そこで「見る」という行為につながる。面白いと思えば、そこから次回、生視聴する人も出てくる。次回もネットで見る、という人もいるだろうが、ファンになって毎回見るようになると、最終回あたりになると「いち早く見たいので生で」という感じになったりするものなのである。結局は、作品に力があれば、放送に戻ってくる効果が大きい。

 

アニメの場合には権利処理が容易であり、最終的にはディスクメディアやグッズを買ってくれればビジネスとしてはプラスである、という判断もあって、ドラマやバラエティよりも先行した、という事情がある。そこで得られた知見は、公式な配信を行うと、違法なアップロードによる視聴に向かう人が減る、ということだった。違法アップロードは、著作権者が流通をコントロールできない。裏でコソコソ見せる形になるので、視聴者を増やすためのキャンペーンも打てない。「管理できる形で見せる」なら、その種の問題はない。しかも、広告動画を入れれば、そこからの収入も期待できる。

 

というわけで、日本のテレビ局も遅ればせながら、「見逃し配信」の効果を把握し、環境整備を始めている。その状況はどうなっているかは、次回Vol.34-3にて。

 

  • 「Vol.34-3」は9/7(月)ごろ更新予定です。

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