アップルが第3世代のiPhone SEを発売しました。上位のiPhone 13シリーズと同じ、高性能なA15 Bionicチップを搭載したほか、5Gの高速通信にも対応。また、初代のiPhoneから受け継ぐホームボタンによる、シンプルな操作性などの特徴を備えています。
この新しいiPhone SEを、発売から1週間ほど使ってみました。
慣れ親しんだデザインを第2世代機から踏襲
第3世代のiPhone SEはスリムかつコンパクトで、価格も手頃なことから、iPhone入門機として注目されています。外観は2016年に発売されたiPhone 7からほぼ変わらず。4.7インチのRetinaディスプレイの下に、Touch ID指紋認証センサーを内蔵するホームボタンを搭載しています。
アップルストアでの販売価格は内蔵ストレージ64GBのモデルが5万7800円(税込)から。5G対応のiPhoneが5万円台で買えることから、2020年に発売された第2世代のiPhone SEをはじめとする、4G LTE対応のiPhoneを使っているユーザーからの“買い換え”も進みそうです。
カラバリはブラック系のミッドナイト、ホワイト系のスターライト、PRODUCT(RED)=レッドの3色。正直、第2世代のiPhone SEとまったく違うカラバリモデルも欲しかったところですが、厳密に言えばミッドナイトとスターライトは「新色」です。
筆者が使用しているミッドナイトのiPhone SEは、背面やアルミニウムのサイドフレームに光をあてると、やや青みがかったブラックにも見えます。日本の伝統色「藍色」にも近いと感じました。
iPhone 13と同じ最新世代のチップで操作性とカメラ性能が向上
冒頭でもお伝えしましたが、第3世代のiPhone SEは上位モデルであるiPhone 13 Proシリーズ、iPhone 13シリーズと同じ、A15 Bionicチップを搭載しました。その効果が4つのポイントに表れていると感じます。
ひとつはアプリの起動や動作がより俊敏に感じられることです。SafariのWeb検索とマップの地図検索は、結果が表示されるまでの動作がとてもスムーズです。また、ミュージックアプリは楽曲再生、カメラアプリは写真・動画の撮影がスタンバイ状態になるまでの間が“もたつかない”ので、とても心地よい操作感が得られます。筆者は普段iPhone 13 Proを使っていますが、第3世代のiPhone SEの操作感は遜色ないと言えます。
ふたつめのポイントは、カメラの性能が第2世代のiPhone SEよりも安定したことです。A15 Bionicチップには高性能なISP(画像処理プロセッサー)が統合されています。これが機械学習処理に特化した16コアのNeural Engineと連動して、1度のシャッター操作で複数の静止画像を記録。瞬時に画像を合成して1枚の高精細な写真を残す、コンピュテーショナルフォトグラフィの性能が飛躍を遂げています。これにより、明るい場所では色合いやコントラスト感が正確に反映された写真を撮れます。
ただ、第3世代のiPhone SEを使って室内で撮影した料理の写真は、ホンモノよりも少し色合いが大人しい感じもします。そんなときには撮影前に写真の色合い、暖かみを調整できる新機能「フォトグラフスタイル」を併用すると、より美味しそうな料理の写真を撮れるでしょう。
【カメラ性能周りのフォトギャラリー】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは閲覧できません。
ちなみに、iPhone 13シリーズにはあって、第3世代のiPhone SEにはない機能が「ナイトモード」。こちらは暗い場所でカメラのシャッターを切ったときに、驚くほど色鮮やかで明るい写真を撮れる撮影補助的な機能です。
ただ、ダジャレではありませんが、「ナイトモードがないと心許ない」と思いつつ、暗めな室内でiPhone SEのカメラのシャッターを切ってみたところ、思いのほか色合いを残した写真を撮れました。「写真」アプリの画像補正を使えば、さらに満足できる明るさと色合いに仕上げられます。ここは「iPhone SE、やるじゃん!」と素直に思えました。
AI機能も快適動作。バッテリーも長持ち
3番目めのポイントがAI関連の機能がサクサクと動くことです。iOS 15以降から「写真」アプリに保存した静止画からテキストをコピーして検索・翻訳したり、電話をかけたり、住所をタップしてマップアプリで検索したりできる「テキスト認識表示」機能が使えるようになりました。
肝となるのがAIによる自動文字認識で、第3世代のiPhone SEはテキストを認識して、検索などの機能に連携する操作が驚くほどスムーズにできます。テキスト認識表示はまだ日本語に対応していませんが、英語からの日本語翻訳は可能。これからまた海外に足を運ぶ機会が訪れたときに、とても役立ちそうな気がします。
最後の4番目のポイントは、「バッテリー持ち」が改善されたことです。A15 Bionicは処理能力が高いだけでなく、省電力性能にも優れているシステムオンチップです。さまざまな処理をこなしながらバッテリーの無駄な消費を抑えることによって、第2世代のiPhone SEと比べてビデオ再生は最大2時間、オーディオ再生は最大10時間も連続使用できる時間が延びました。
その程度かと思うかもしれませんが、第3世代のiPhone SEが通信時にモデムチップなどにより多くの負荷がかかる5G対応であることを思い出すと、A15 Bionicチップがよく頑張っていることがわかります。
5Gの便利さも実感が出てきた
現在筆者が暮らしている東京都内には5G通信のカバーエリアが少しずつ拡大しています。実際に5Gの高速・大容量通信の利用がマストなコンテンツはまだほとんどありませんが、第3世代のiPhone SEで楽しめる動画・音楽コンテンツのストリーミング再生などはとても安定していると思います。
5Gに接続できる地元の駅前などで計測した限り、場所によってはダウンロード側だけでなくアップロード側も高速接続ができるので、リモートワークのビデオミーティングにも5G対応の効果が実感できそうです。
なお、第3世代のiPhone SEが対応する周波数帯は、4G LTEと互換性の高い6GHz帯以下の「Sub-6」に限られます。5Gのメリットと言われる高速・大容量・低遅延を特徴とする「ミリ波」の5Gには対応していませんが、今後国内にミリ波の提供エリアが本格的に拡大するまでの間は、第3世代のiPhone SEで十分に心地よい使い勝手が得られるでしょう。
iPhoneにホームボタンは必要?
第3世代のiPhone SEには、Touch IDによる指紋認証センサーを内蔵するホームボタンが受け継がれました。一方で、Face IDは非搭載です。
コロナ禍でマスク装着の機会が増えたことに伴い、生体認証はTouch IDの方が有利な部分がありました。ですが、OSがiOS 15.4にアップデートされ、iPhone 12シリーズ以降に発売されたFace ID搭載のiPhoneであれば、顔にマスクを着けたまま画面ロック解除やApple Payによる支払いができるようになりました。これにより、生体認証システムの違いが使い勝手に影響を与えることはほぼなくなったといえます。
では、ホームボタンは不要かというと、特にシニアの方々が初めてのスマホにiPhoneを選ぶ場合、ホームボタンのクリック感が得られるiPhone SEのほうが、手応えと一緒に操作を覚えやすいという声もよく聞きます。
筆者はiPhone X以降からオールスクリーンデザインのiPhoneを使い慣れてしまったので、ホームボタンのスペースにも画面を広げて、ゲームの画面や電子書籍が見やすくなる方がありがたく思えてしまいます。ですので、これからiPhone SEの購入を検討する人は、画面や本体のサイズが近いiPhone 13 miniと、ホームボタンの有無によるディスプレイの見え方、操作感の違いを丁寧に比べてみることをおすすめします。
長く使えて元が取れるスマホ
第3世代のiPhone SEは、iPhone 13シリーズが本体の背面パネルに採用するタフなガラスパネルを、本体の前面と背面の両方に採用しました。iPhoneにカバーを装着したり、ディスプレイに保護フィルムを貼って使ったりする人も大勢いると思いますが、それでも本体の耐久性能が上がったことは、すべてのユーザーが頼もしく感じられるメリットです。
A15 Bionicチップによる性能向上やロングバッテリーに加え、高い耐久性と、新しいiPhone SEは長くしっかりと使って元が取れるスマホだと思います。また、5万円台から買える5G対応iPhoneの入門機としてもおすすめです。
【フォトギャラリー】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは閲覧できません。