デジタル
2022/6/22 19:45

動画ストリーミングサービスのブームは終了? インフレ加速で“切り詰め”の対象に

ここ数年、動画ストリーミングサービスはめざましい成長を続けてきました。が、トップを独走していたNetflixも4月には収益が伸び悩んでいること、約10年ぶりに加入者数が減ったことを発表して おり、ブームは終わりに差し掛かっていると見られています。

 

その理由は、新型コロナ禍が収束して世界が正常に近づいたことだけではないとの分析が発表されています。

 

新型コロナ禍の最初の2年間は巣ごもり需要もあり、家庭内でのエンタメ需要も急増していました。特に感染拡大の数か月前にApple TV+をサービス開始したアップルにとっては良いタイミングだったようです。

 

しかしワクチン接種率が高まり、自然感染により免疫を獲得した人口も増えて、すでに世界はコロナ禍前に近い状況に戻りつつあります。その直撃を受けているのが家庭内エンタメ市場であり、音楽ストリーミングサービスのApple Musicも前四半期に英国で合計100万人の加入者を失ったと伝えられていました

 

さて新たな分析は、米Variety誌が経営コンサルタント大手PwCの最新データと予測に基づいて報じているものです。

 

ざっくり言えば、2022年の米国企業のSVOD(動画ストリーミング)サービス売上は、昨年から13%増加を予想されるものの、2021年の19.5%、2020年の27%という驚異的な伸びからは下がっているとのこと。これは新型コロナ禍による「プルフォワード」(大規模だが長続きしない成長)効果のためだと指摘されています。

 

さらに2022年は米国市場はマイナス成長の1年となり、8%減の61億3000万ドルになる見込みとのことです。

 

なぜ、これほど急激に落ち込むのか。その原因が新型コロナ禍の反動であるのは間違いないにせよ、そればかりではないと分析されています。1つには、アプリや音楽ストリーミング音楽、動画ストリーミングなど月額費用がかかる「サブスクリプション疲労」が積み重なってきたことです。

 

米国のインフレ率は予想外に加速しており、5月には市場予測の8.3%に対し8.6%まで上がっています。エネルギー価格もガソリン(48.7%)、重油(106.7%、過去最大の上昇率)、電気(12%、12カ月で2006年8月以来の上昇率)、天然ガス(30.2%、2008年7月以来の上昇率)など34.6%もの上昇。そして食料費も10.1%急増しているとのことです。

 

このため、ほとんどの人の自由裁量所得(可処分所得のうち、食費や住居費など必ず必要な支出を差し引いた額)は大きく落ち込み、動画ストリーミングのような贅沢品が大きな打撃を受けるのは当然というわけです。

 

たしかにネット番組や音楽ストリーミングなどは別になくても生きていられるし、真っ先に家計からリストラされやすそうです。こうした市場の縮小は、ゲームなど他のエンタメ産業にも及ぶのかもしれません。

 

Source:Variety
via:9to5Mac