デジタル
2016/11/14 7:00

【西田宗千佳連載】国による「家電」への期待の違いが、ホームアシスタント戦略にも影響

「週刊GetNavi」Vol.48-4

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↑シャープ「ホームアシスタント」

 

家庭内に置いて家電連携を目指すホームアシスタント的な機器は、日本でも海外でも「次の大きな市場を作るもの」として注目されている。ただ、家電連携を考えるうえで、日本と海外ではかなりの違いがある。

 

シャープが日本で出す予定のものは、本体内に「赤外線リモコン機能」を組み込んでいる。理由は、すでに家庭にある家電機器を制御するためだ。要は、リモコンでボタンを押す代わりにホームアシスタントがリモコンコードを発することで、家電を制御する。

 

シャープ関係者は「すべてをネット家電向けに、一斉に買い換えてもらうのは無理がある。だから、すでにある家電をコントロールするために必要な機能。リモコンと同じことができるだけでも、進んだことはかなりできる」と話す。例えば、音声で対話しながらエアコンを操作したり、外部から家電を制御したりできる。ただ、そうした制御ができる機器はすでにあり、シャープの発明ではない。シャープとしては、音声コマンドや、その人の生活スタイルに合わせた「機能の提案」などで差別化していくつもりだ。

 

一方でGoogleやAmazonが手掛けるホームアシスタント的な機器は、赤外線連携はない。一応他の家電連携は目指しているもののそこに注力するのではなく、オーディオなどを重視する。あくまで「情報」が中心だ。理由は、彼らの強みがサービス連携にあり、家電連携はあまり得意ではない。例外はApple。Appleはネット連携機能のある家電を制御する「HomeKit」を使い、Apple TVやiPadから、対応家電をワンタッチで操作できる。だが、シャープが狙うような「インテリジェントな制御」はしていない。

 

このような違いは、「家電連携」について、家電メーカーであるシャープと、それ以外の企業の立ち位置の違いによる。

 

シャープはインテリジェント家電の進化を付加価値にしようとしている。話す人や生活スタイルを覚え、そこにあわせて、温度調整や料理のレシピの提示を行うといったことも想定されているわけだ。それは、シャープ製のエアコンや電子レンジなどからスタートしているのだが、その「脳」にあたる部分はクラウド化されている。そのクラウドだけを切り出して提供するのがホームアシスタント、ということになる。

 

一方で他のメーカーは「リビングに情報を持ち込む」ことを軸にしている。現状、「インテリジェントに連携する家電」という部分で、多くの人を説得できるような価値を、家電メーカー側が打ち出せていない。シャープの提案もできることがちょっと「ふんわり」しており、強い説得力を出せる段階にない。ネット連携も「スマホや音声を賢いリモコンがわりに使う」くらいならすでにできる。特にアメリカでは、省エネを含めた細かな家電制御は求められず、照明や鍵、ガレージの扉といったシンプルなオンオフ作業の方が需要が高い。

 

要は、日本と海外での「家電に期待されるもの」の違いがホームアシスタントにも影響してくる、ということなのだ。

 

●Vol.49-1は「GetNavi」1月号(11月24日発売)に掲載予定です。