デジタル
スマートフォン
2022/12/19 5:45

驚きの「100万円スマホ」にも歴史あり。あなたの知らない「超高級スマホ」の世界

最近のスマートフォンは高価格化が進んでいます。「iPhone 14 Pro Max」の1TBモデルは23万9800円、またサムスンの折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold4」は24万9700円です。最新技術を搭載した製品とは言え、ある程度のスペックのノートパソコンより高い価格となるとなかなか手が出せそうにありません。

 

ところがもっと高価なスマートフォンはブランドコラボモデルですでに日本でも販売されたことがあります。サムスンの折りたたみスマートフォンの二世代前のモデル「Galaxy Z Fold2 5G」とニューヨーク発のファッションブランド「Thom Browne」のコラボモデル「Galaxy Z Fold2 Thom Browne Edition」はスマートウォッチなどがセットでしたが価格は41万4700円。中古の自動車も買えてしまいそうです。

↑Galaxy Z Fold2 Thom Browne Edition。日本では約40万円で販売された

 

20年の歴史を誇るVERTU

しかし海外を見ればさらに高いスマートフォンも出ています。本体に貴金属や本革を使用した本物志向の製品です。考えてみれば一流の洋服を着ているのに、プラスチックやステンレスなど一般的な素材でできているスマートフォンを持つというのもアンバランスかもしれません。超高級スマートフォンはそんな一流の素材の製品を好む層向けに販売されています。「こんな高いもの買えるわけがない」と思っても、50万円でも100万円でもいいから良い素材の製品が欲しい、そう思う人もいるのです。買える人は限られますが、今回はそんな様々な高級素材を贅沢にあしらった超高級スマートフォンを紹介します。

↑特定のユーザー層をターゲットにした超高級スマホ(8848)

 

超高級スマートフォンはいくつかのメーカーが手掛けていますが、古くから製品展開を行い、一時は日本にも店舗を構えていたVERTU(ヴァーチュ)が一番有名かもしれません。2002年に最初のラグジュアリーケータイを投入し、サファイアグラスの画面に金やプラチナを使った本体、さらにルビーやダイヤをちりばめたモデルもあるなど本物素材をふんだんに使った製品は1000万円というありえない価格の製品もあったほどです。世界で数台しかない限定モデルの中には日本の漆を使った2000万円の「シグネチャー 吉祥」も。4台だけが生産されました。

↑VERTU初のケータイ「シグネチャー」ゴールドモデル。発売時の価格は数百万円

 

しかしVERTUもスマートフォン化の波に乗れず2017年に倒産。その後資本を変えて再出発し、現在はAndroidスマートフォンを中心とした展開を行っています。VERTUの価格は本体の「素材」によって大きく異なります。一般的なスマートフォンは本体カラーが数色、メモリ構成も数パターンにすぎませんが、超高級スマートフォンは本体の素材だけでも複数のバリエーションを持ちます。たとえば質感にこだわった本革仕上げの「iVERTU」の一部モデルを見てみましょう。革の種類に加え本体の一部に金素材を使うかどうかによって、多数の製品が販売されています。

↑iVERTUのモデルバリエーション。写真以外にも複数ある

 

この中で最高価格のモデルは「iVERTU Himalaya Happy Diamond 18K Gold & Diamonds」です。白が美しく希少価値の高いワニ革「ヒマラヤクロコダイルレザー」を背面に貼り付け、さらに背面のV字のモールド(VERTUの「V」の字をイメージしたもの)は18金仕上げ、そしてその上にダイヤモンドをちりばめています。価格は3万4350ドル、約500万円という冗談のような価格です。しかし素材を考えると当然で、そもそも1年間に1台売れるかどうか、という製品なのです。もちろん店舗に在庫は無く受注生産品です。スペックは高級モデルにふさわしく6.67インチの画面にチップセットはSnapdragon 888、カメラは6400万画素+6400万画素超広角+500万画素マクロ+200万画素深度測定と4つ搭載しています。

↑500万円の「iVERTU Himalaya Happy Diamond 18K Gold & Diamonds」

 

もちろんすべてのモデルが超高級素材を使っているわけではありません。最新モデル「METAVERTU」のカーボンファイバーモデルなら3600ドル、約52万円です。これならだいぶ安いと感じてしまいますね。なおVERTUのWEBサイトを見ると、ほとんどが背面の写真ばかり。つまりスマートフォンとしての性能は一定水準あり、本体の質そのもので選ぶ製品ということなのです。とはいえこのMETAVERTUのスペックもなかなかのもので、チップセットはSnapdragon 8 Gen 1、メモリは18GB、ストレージは1TBもあります。画面サイズは6.67インチ、カメラは6400万画素+5000万画素の超広角+800万画素の望遠です。

↑「METAVERTU」のカーボンファイバーモデルは52万円とだいぶ安い

 

実はVERTUは折りたたみスマートフォンも出しています。中国のみで販売され価格は4万2800元、約86万円です。もはやスマートフォンの価格とは思えませんが、これが超高級スマートフォンの世界なのです。なおこの折りたたみスマートフォンは中国の折りたたみスマートフォンメーカー「Royole」がベースモデルを作っており、VERTUの高級仕上げとして「VERTU Fold 3」というモデルでリリースされました。画面サイズは7.2インチで画面を外側に折りたたむ形状、カメラは4800万画素に1600万画素の超広角の2つ、チップセットは非公開です。

↑VERTUの折りたたみスマートフォン「VERTU Fold 3」

 

8848は中国発の超高級スマホ

VERTUは今でも一定のユーザー層がおり、特に中国では富裕層が指名買いしているとも言われています。このVERTUの後を追いかけるように登場したのが8848ブランドのスマートフォン。北京エベレスト移動通信が手掛けるこの超高級スマートフォンは、VERTU同様に本体背面は本革仕上げ、ルビーなどをあしらったモデルも用意されています。8848のスマートフォンは中国発ということもあり、高級感に加えどことなくエレガントなテイストを加えたデザインが特徴。赤系統の色合いは中国らしくあざやかな仕上がりです。

↑8848のスマートフォン。中国メーカーらしく赤の発色がいい

 

8848のスペックはチップセットがSnapdragon 865とやや古いものを搭載。実は発売されたのが今から2年前なのです。このチップセットでも今でも十分問題なく利用できますが、実はここが超高級スマートフォンの弱点にもなります。つまりスマートフォンのチップセットはまだまだ技術進化が進んでおり、1年おきに新しいチップが出てきます。それに対応するように毎年新製品を投入するような大量生産方式は超高級スマートフォンのビジネスモデルには合いません。1つのプラットフォームで2年以上製品を出し続けなくてはならず、1つのバリエーション展開だけでは販売から1年もたつとスペック的に見劣りしてしまうのです。8848も他のシリーズ展開はまだ行われておらず、今後新製品が投入されるかどうかは不明です。

↑スポーツカーをイメージしたデザインのモデルもある

 

なお8848の背面に見える円形のものはサブディスプレイで、本体を裏返しておいても着信を表示したり、あるいはカメラのプレビューとしても使えます。このデザインは後に他のメーカーも真似をしましたが、スマートフォンの裏にスマートウォッチを張り付けたようなデュアルディスプレイは便利な使い方もできそうです。8848の各モデルの価格は2万元前後(約40万円)。VERTUと比べると比較的買いやすくなっています。

↑ドラゴンをあしらった中国らしいデザインのモデルもある

 

価格を抑えたラグジュアリーモデルを展開するKreta

さて現在、積極的に超高級スマートフォンを出しているメーカーとしては、同じく中国のKretaがあります。Kretaは複数のシリーズを展開しており、折りたたみモデルも出しています。Kretaのスマートフォンの宝飾は本物のダイヤではなくスワロフスキーを採用していることもあり価格はやや安めです。たとえばこちらのKreta Oneは52カラットのスワロフスキーダイヤを搭載、カーフレザー仕上げで価格は1万4900元(約30万円)から。ようやく一般人でも手の届きそうな価格です。

↑スワロフスキーダイヤをちりばめたKreta One

 

最新モデルのZeus 1シリーズはチップセットをメディアテック製とすることでさらに価格を引き下げ、9999元(約20万円)からとiPhoneよりも安く買うこともできます。このクラスの製品となるとそれこそ冒頭に書いたブランドコラボモデルと価格は変わりありません。しかし逆に言えば富裕層の方には「安すぎる、もっと高いモデルを!」という要求が出てきそうです。

↑iPhone最上位モデルよりも安いZeus 1

 

多くの国ではまだまだスマートフォンは、スペックやブランドで買うものです。今回紹介した超高級スマートフォンが上陸すれば「本体の素材で選ぶ」という新しい選択が生まれるかもしれませんが、販売台数が多く見込めないことから多国での展開は難しそうです。VERTUも現在の主な販売国は中国とベトナムなどに留まっています。とはいえドバイなど中東ではiPhoneのボディーに金メッキを施したカスタムモデルが人気になるなど、貴金属などを使った本物素材のスマートフォンを求めるユーザーは世界中に存在します。スマートフォンの日用品化、生活必需品化が進めば、いずれ超高級なモデルを手掛けるメーカーも増えていくでしょうね。

↑iPhone 14 Pro Maxの24金モデル。ドバイでの価格は1万2000ディルハム(約47万円)

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)