朝早いオンライン会議に出席するのに、“整っていない顔”で出るのが恥ずかしい……といった思いを抱いたことはないでしょうか。そんなときに使えるアプリケーションが、富士通クライアントコンピューティング(以下FCCL)のPC「FMV」に搭載されている「Umore(ユーモア)」です。“オンライン会議で使える顔補正アプリ”として開発されたUmoreは、男性女性関わらず、ナチュラルな顔補正を実現してくれます。その実力と、開発の裏側を取材しました。
スマホ感覚で使える、“真面目系”顔補正アプリ
Umoreの特徴は、簡単な操作で自然なメイクを施すかのように顔を補正できることです。補正できる項目は、美肌・小顔・目の大きさ・リップ・アイブロウ・カラコン・チーク・背景ぼかしの8種類。それぞれ、パラメータを調整して補正の強弱を変えることができ、好みのバーチャルメイクに仕上げられます。
また「ナチュラルメイク」「しっかりメイク」の2種類の設定がプリセットされているため、時間がないときでもボタンひとつで顔補正が可能です。操作UIがシンプルなうえ、補正した映像はZoomやTeamsなどの外部アプリケーションにそのまま出力できるので、Umoreの導入によって手間が増えることもありません。顔の動きにあわせてメイクがしっかり追従するため、バーチャルメイクをしているのが気づかれにくいのも特徴です。
その開発の背景にはやはり、コロナ禍によるオンライン会議の増加があったといいます。Umoreの企画に携わったFCCL商品企画統括部の柴田 明奈さんによると、プロジェクトがスタートしたのは2020年の秋頃。そこから約2年の時を経て、同社製ノートPCの2022年秋冬モデルから、Umoreがプリインストールされるようになりました。
「たとえばLINEでできる映像加工のように、猫耳をつけるとか、おもしろ系の顔補正アプリはありましたが、オンライン会議向けに振り切ったものはありませんでした。スマホのカメラとは異なり、パソコンのカメラが使われるのは、オンライン会議や授業のような真面目なシーンが主になります。そこで、“真面目系”の顔補正アプリを作る企画がスタートしました」(柴田さん)
真面目ではあるものの、ビジネスマンに加えて大学生にとっても親しみやすいものとなるよう、UmoreはUIを工夫しています。柴田さんと同様に、Umoreの企画を担当した篠宮 百合香さんは以下のように語ります。
「Umoreの企画開発は、ターゲットと年齢層が近い若手社員が中心になって担当しました。若者が使いやすいアプリになるよう、Z世代がよく使っている画像加工アプリを研究して、操作性を近づけています。唇の色や眉毛の色を選べる機能があるのですが、その色も、そういったアプリで人気のものを優先的に採用しました」(篠宮さん)
すっぴんでもオンライン会議に出られるようになった
Umoreはリリースされて以降、FCCLの社員もいつものように使うアプリになりました。柴田さん、篠宮さんも「欠かせない」といいます。
「在宅勤務のとき、すっぴんのままでもオンライン会議に出られるようになりました。化粧をしていても夕方になってくるとメイクが落ちてきますが、そんなときにもUmoreがあれば安心です。自分で整えないといけないのは髪型くらいですね。すっぴんのときはしっかりメイク、ちょっと化粧をしているときにはナチュラルメイクで設定を使い分けています」(柴田さん)
「すっぴんでも大丈夫というのは、私も同じです。メイクをすると、時間だけでなく化粧品代もかかるし、肌への負担も気になるので、その必要がなくなったのは大きいですね。(今回のオンライン取材で)私が顔につけているのは、保湿のためのリップだけです」(篠宮さん)
Umoreの評価は、社内はもちろんユーザーからも好評で、同アプリを搭載した秋冬モデルの販売は順調に推移しているそうです。FCCLでは、家電量販店などでUmoreを体験できるデモ機を設置していますが、それを見たユーザーからの声として「就活のオンライン面接で使えそう」「パソコンでこんな加工ができるとは知らなかった」といったものが挙がっているといいます。
現在のところ、UmoreはFCCLが販売するPC限定で使用できるアプリです。柴田さんも「FCCLのパソコンに注目してもらうための、きっかけになっている」と、そのクオリティに自信を持っています。
美肌と小顔設定は男性も使いたくなる
ここまで見てきたように、Umoreは特に女性に喜ばれるアプリです。しかし開発を進めていくなかで、男性からも一定のニーズがあることがわかってきました。男性社員へヒアリングした結果、ひげの剃り残しを消したい、小顔に見せたい、眉毛を整えたいという注文が多かったといいます。
Umoreの美肌機能を使うと、肌にファンデーションを塗ったかのごとくなめらかにしてくれるので、青ひげが残っていても自然な肌色に補正できます。Umoreのプログラム開発を担当した古賀 樹文さんはこう語ります。
「自分ではこういうアプリは使わないだろうと思っていましたが、美肌と小顔の機能は男性でも使いたくなるものだと感じています。どんな人でも、自分をよく見せられたらうれしいですからね。結構しっかり補正をしてくれるので、素の自分の顔を見たときにショックを受けたという社内男性陣の声も聞いています(笑)」(古賀さん)
PCへの負荷を軽減し、ほぼすべてのモデルに搭載
簡単な操作で、自然に顔の印象を良くしてくれるUmore。筆者も使ってみましたが、しっかりメイクに設定しても補正はかなりナチュラルで、バーチャルメイクとはほとんどわかりません。また顔の動きに対する追従性も高いので、補正前の顔が露わになってしまうことも少ないように思えました。筆者も高機能だと感じるUmoreですが、それゆえに開発には苦労があったといいます。
「Umoreの弱点として、顔を認識できなくなるとメイクが外れてしまうことが挙げられます。特に眉毛は、メガネのフレームを間違えて認識してしまうなど、開発時点では誤認識が多く、調整に苦労した部分です。現在は認識を間違えることなく、追従性も高くなっているので、安心して使えるものになっています」(古賀さん)
また、PCへの負荷軽減も課題のひとつでした。開発当初、Umoreの動作は軽くなかったそうですが、現在ではしっかり改善されています。
「開発過程では、アプリの動作をなるべく軽くするよう試行錯誤を続けました。結果として、負荷をかなり軽くできたので、限られた開発期間のなかでやりきったという実感があります」(古賀さん)
「私の経験上、Umoreを使っていてPC内蔵のファンが急に回り出すということはありません。PCの負荷を気にせず使えるアプリに仕上がっていると思います」(柴田さん)
古賀さんの苦労の結果、UmoreはFCCL製のほとんどのノートPCに搭載できるようになりました。具体的には、下記の機種で対応しています。
・2021年10月発表のUHシリーズ(WEB MARTカスタムメイドモデルを除く)、CHシリーズ、MHシリーズ
・2022年3月発表のFMV LOOX
・2022年6月発売のUHシリーズ
オンライン会議のニューノーマルになるかも
先に書いたように、Umoreの開発のきっかけにはコロナ禍がありました。現在はそれも落ち着き、社会は平静を取り戻しつつありますが、オンライン会議・授業や在宅勤務は今後もある程度残っていくと思われます。そのなかで、Umoreへのニーズは、今後も確実に存在するでしょう。
それを証明するかのように、Umoreにはユーザーからアップデートの要望が届いているそう。特にまつ毛や鼻の補正をしたいという声があるといいます。FCCLでは、バーチャル背景を挿入する機能も含めて、今後のアップデート内容を検討しているところです。
Umoreは現在FCCLのPCでしか使えない限定アプリですが、もし他社製PCでも使えるようになれば、人気を呼ぶかもしれません。FCCLにもそれを望む声は寄せられているといい、今後の展開に注目です。
【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】