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2023/10/25 17:30

本格キーボードの到達点、操作性も追求した新「HHKB Studio」レビュー

PFUは10月25日、高級キーボード「HHKB Studio」を発表しました。キーボードとしての機能性はそのままに、マウスの機能などが追加された製品です。価格は4万4000円(税込み)。今回は事前にメーカーから機材を借り受けて、試用したレビューをお届けします。

↑PFUが10月25日に発表したHHKB Studio。レビュー機は英語配列

 

HHKB(Happy Hacking Keyboard)は、その名の通り、もともとコンピューターの操作に長けたハッカーのために生まれたキーボードです。本格キーボードをノートパソコンサイズに凝縮したような、密度の高い設計が特徴。キーを打つときの指の動きを最小限に抑えられるため、プログラマーや作家、ライターのようなテキスト入力のプロに愛用されてきました。

↑日本語配列でもキー数は少なめ。このキー数でも左シフトキーと右下のFnキーを駆使して、違和感なく入力できます

 

HHKB Studioはマウス&ジェスチャー対応!

新製品のHHKB Studioは「マウス」と「ジェスチャー」という2つの操作方法が使えるようになりました。

 

ハードウェアとしては、以下の要素が追加されています。

 

・「G」「H」「B」キーの中央部分にポインティングスティック

・スペースキーの下に、マウス操作できる左・中・右クリックの3ボタン

・手前・右側面・左側面の垂直部分計4か所にジェスチャーパッド

 

ポインティングスティックは、指先で力をかけるとマウスカーソルを動かせる入力デバイスです。ThinkPadの「トラックポイント」と同じような機能を備えています。

↑ポチッとした丸い点でカーソル操作できるポインティングスティックを搭載

 

HHKB Studioのポインティングスティックにはクリック機能はありませんが、本体下部の中クリックボタンと併用できます。中クリックボタンを押しながらスティックを動かして、画面を上下にスクロールといった操作が可能です。

 

このポインティングスティックの良さは、キーボードのホームポジションから一切手を動かさずに操作できること。文字入力中に必要になったちょっとした画面操作ができます。

 

キーボードを持ち歩いて使う人には特に、ポインティングスティックは重宝します。マウスも一緒に持ち運ばなくて良いからです。「せっかくキーボードを持ってきたのに、マウスを忘れたからパソコンの操作がしづらい」という失敗も、キーボードでマウス操作できるのなら発生することはありません。

↑中ボタンを押しながらスティック操作でスクロールもできます

 

↑HHKB StudioはBluetooth対応で、スマホとも好相性

 

↑iPadにつないでのカーソル操作も問題なくできました

 

さらに、HHKB Studioはスマホとの組み合わせでも使えます。スマホでメールやブログの記事を集中して書きたいときに、HHKB Studioが1台あると格段に効率が良くなります。有線接続(USB TypeーC)と、Bluetoothによる無線接続の両方を備えており、接続性も申し分ありません。

 

ブラウジングに便利なジェスチャー機能

ポインティングスティックがタイピング操作時に役立つのに対して、ジェスチャーパッドは閲覧時に重宝します。HHKB Studioの側面をなぞって、特定の操作ができる機能で、左右の側面および、前面の側面に左右2か所と、計4カ所で操作できます。

↑すすっとなぞって操作できるジェスチャー機能

 

ジェスチャーパッドは入力作業の手を休めて、画面の閲覧に集中したいときに便利です。たとえばWebサイトやPDF書類のスクロール操作などを閲覧する際、右側面をすすっとなぞってカーソルを操作できます。

 

前面のジェスチャー機能には、初期設定では左右矢印キーとウィンドウの切り替えが割り当てられていますが、筆者はアプリ切り替えや、ブラウザーのタブ切り替えに割り当てる使い方がしっくりきました。

 

難があるとすれば、ジェスチャー機能の認識精度はポインティングスティックほど高くないため、反応速度に若干の物足りなさを感じるところ。ですが、画面閲覧時に補助的に使うなら、十分に実用的な機能となっています。

 

カタカタカタカタ……打鍵音がとにかく心地良い

HHKB Studioの新機能を確認してきましたが、HHKBの“本質”も、これまで同様に兼ね備えていることを付け加えておきます。

 

HHKBシリーズを通しての最大の魅力は、打鍵感がとにかく心地良いこと。キーボードのスペック表記ではわかりづらい、感性に訴えかけるような心地良さがあるのです。キーを押したときに指先に跳ね返ってくる感触は、キーボードがほどよいフィードバックとなり、受け止めてくれるような感触を得られます。

↑デスクにHHKB Studioだけを置いたミニマルなデスクトップ

 

↑側面から見ると弓なりに配置されたキー構造。「シリンドリカルステップスカルプチャ構造」と呼ばれています

 

そして、カタカタカタカタ……と鳴り響くやわらかい打鍵音は、ホワイトノイズのように心を集中に誘います。ただ入力を楽にするだけでなく、文章作成を心地良い作業に変えてくれる。HHKBは感性に寄り添うキーボードです。

 

では、HHKB Studioはどうなのかというと、まずこれまでのHHKBとスペックが違います。キースイッチの構造に、多くの高級キーボードと同じメカニカル方式を採用しているのです。

 

従来のHHKBのキースイッチは静電容量無接点方式という方式を採用しており、なぞるようにタイプして入力することができました。これは日常的に長文を入力する人にはうれしい特徴ですが、慣れるまでに時間がかかる要素でもありました。

 

対してメカニカル方式のHHKB Studioでは、一般的なデスクトップパソコン用のキーボードと同じ感覚でキーを叩くことができます。それでいて、弓なりに配置されたキーが指にフィットして、吸い付くような感覚で入力できる点に変わりはありません。

 

キースイッチの構造による違いはもちろんあるのですが、従来の製品が持っている心地良い打鍵感という“本質”はHHKB Studioでも変わっていません。その感覚を維持しつつも、マウスカーソルの操作という追加しています。ある意味で、必然的な進化だったともいえます。

 

文章にせよコードにせよ、キーボードに触れる機会が多い人なら、HHKB Studioは非常に「買い」のツールです。5年、10年と寄り添えるようなパートナーになるでしょう。

↑重さは830g(英語配列)と、タブレット1台程度。この画像のようにノートパソコンのキーボードの上に置いて使うのもありな重さです

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)