「週刊GetNavi」Vol.50-2
Vol.50-1で述べたように、ネット連携して一括コントロールできる家電は、意外なほど便利だ。だが、世の中にはまだ連携できる家電は少ない。
理由は、連携するための規格が広がっていないからだ。もう何度も、家電業界では「家電連携プロトコル」の策定が検討されてきた。だが、それはうまく使われていない。
結局いまに至るも、「家電を連携させるとなにが便利なのか」に対する回答は出ていない。ネット連携機能をつけると、その開発費とパーツの分だけ、市販価格にして数万円の差が発生してしまうが、それを消費者に納得させるだけの理由が生まれていないのだ。
唯一、説得力があってブレイクする可能性があったのは「省エネ」だった。2000年代に入って以降、日本の電力事情は常に逼迫している。2011年の東日本大地震による原発事故と、それに伴う電力不足が印象に残るが、いまに至るも日本の発電能力は十分な余力を持つに至っていない。夏場・冬場の電力消費が多くなるタイミングでは、発電能力ギリギリまで消費が増えることも珍しくない。
家電の消費電力に目を向けると、特に2005年以降、大きく下がっている。さらにその効率を高め、家庭全体で無駄な電力を把握し、場合によっては電力会社とも連携する要素が、2011年後半から注目された。これを「HEMS(Home Electronics Management Service)」という。特に新築住宅で、家庭内に太陽電池パネルや家庭用発電装置などを備える場合には必須といえる機能である。住宅向け配電盤で大きなシェアを持つパナソニックは、HEMSを備えた配電盤を製品化し、「家電機器がネット連携していなくても、電力把握とコントロールができる」ようにしている。2012年の家電見本市「CEATEC JAPAN 2012」では、こうした要素を持つ製品が多く発表された。
だが、業界の期待とは裏腹に、こうした要素はほとんど注目されていない。ゆっくりとしか売れていないのだ。
理由は単純。省エネは大切だが、それだけでは家電を買い換える要素になりにくいのだ。ある意味で残念なことだが、人の心は「節約」では沸き立たない。もっと便利になったり、もっと面白いことができるようになったりするとき、人はお金を払う。そして、そのときには「より省エネになっていればなお良い」状態。省エネ機能は最後に背中を押す要素であっても、主たる購入要因にはなりづらいのである。
ではなにがトリガーになるのか? その辺の考察は、次回のVol.50-3にて。
●Vol.50-3は1月13日(金)公開予定です。
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