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2025/2/19 6:30

リリー・フランキー「僕らにとっての憩いの場所」ドラマ『ペンション・恋は桃色』season3

都会から離れた場所にあるペンションを舞台に織りなすゆるく温かな人間模様を描いた、FODオリジナルドラマ『ペンション・恋は桃色』のseason3が配信開始(フジテレビにて毎週水曜日深夜放送中)。オーナー役のリリー・フランキーさんに、斎藤工さん、伊藤沙莉さんに加え、豪華ゲストを迎えた最新作の撮影エピソードやモノに対するこだわりについて伺いました。

 

※こちらは「GetNavi」2025年2・3月合併号に掲載された記事を再編集したものです。

 

●1963年11月4日生まれ。福岡県出身。俳優・イラストレーター・声優・エッセイスト・絵本作家・小説家など多種多彩な顔を持つ。主な出演作に、映画『ぐるりのこと。『凶悪』『万引き家族』など。最近の出演作に、映画『1 ST KISS(ファーストキス)』、TBS系ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』などがある。

【リリー・フランキーさん撮り下ろし写真】

 

忘れがちなモノ作りの楽しさを思い出させてくれる現場

──今回のseason3制作はseason2の撮影中(23年夏)に、すでに決まっていたそうですね?

 

リリー 実はseason1(20年)からseason2までは、4年もかかっているんです。その間、ご時世が変わっていったというか、コロナ禍でサブスクが生活に定着したんですよ。あとは「もうちょっと、こういうドラマ作った方がいいよ」という考えの人が偉い人になったという会社の中から、このドラマが選ばれたんじゃないですかね。でも、山口智子さんがseason2からレギュラーになり、今回のゲストは稲垣吾郎さんに、MEGUMIさんに、鈴木慶一さんですよ! どうやら、上層部も無視できないコンテンツになってきました(笑)。

 

──season3を迎える人気シリーズですが、周囲の方の反響や反応はいかがですか?

 

リリー 昨年、街中でよく声をかけられたのが“『地面師たち』見ました!”でした。そんななかで、二度ぐらい“『ペンション・恋は桃色』好きです”って言われたんです。僕の中では“誰も見ていないドラマ”と勝手に思っていたんですが、そう声をかけてくれた方は、どこか品のいい顔立ちをされているんですよ(笑)。

 

──シリーズごとに、リリーさん演じるシロウが経営するペンションにマドンナが現れ、最終的にフラれてしまう展開は“リリー・フランキー版『男はつらいよ』”といえるかもしれません。

 

リリー 今回も少し恋はするんですけれど、どちらかというと、伊藤沙莉さんが演じる娘のハルの恋がメインです。寅さんなのは、斎藤工さんがやっている風来坊のヨシオの方だと思いますよ。5年に渡って同じ役をやっていると、娘に対する愛情が並々ならぬものになってきて、普通に沙莉さんを見ているだけで、泣けてくる。それに、どんどん家族のドラマになっている気がしますね。ロケ地になっている山中湖のペンションに来て、3人がそろって父親役だった細野晴臣さんの写真の前に集まるだけで、なんかホッとするんです。そういう意味で、僕らにとっての憩いの場所になっていると思うし、普段忘れがちなモノ作りする楽しさを思い出させてくれる現場かもしれませんね。

 

──それは具体的に、どういうことでしょうか?

 

リリー 「いいモノを作る」って、やっぱしんどいし、苦しいし、辛いじゃないですか。原稿を書いていても、「まぁ、いいや」と思ってから、どこまで精度を上げられるかという作業になるし。でも、このドラマに関しては、撮影しているときは少なくとも楽しい。それはモノ作りの方法論がアマチュアリズムの状態で止まっているから。次に撮るシーンをみんなで話し合って決めたり、あまり大人の方法論が入ってないというか。作り方やタイトなスケジュール以外にも、電話でオファーしちゃいけないようなすごい人たちが出ているんですよね(笑)。だから、「こういう感覚を忘れないでおきたいな」って思うし、どこかご褒美の場所をもらっている感じがします。

 

──ちなみに、season3のゲスト・稲垣吾郎さん、MEGUMIさん、鈴木慶一さんとの共演はいかがでしたか?

 

リリー 皆さん、すごいんですよ。season1の頃から6日間で5話分を撮影するというスケジュールなので、何回も切り返したり、撮り直したりする時間もなくて、基本一発撮り。メリハも、ほぼほぼない。基本的には台本通りなんですが、何かセッション的な要素が強い。そのリアルな緊張感やライブ感も面白いし、皆さんにも楽しんでもらっています。それにゲストの方にも、近くにある別のペンションに泊まっていただくことで、魔法にかかるんだと思いますね。都内のセットで撮ったら、あのテンションにはなれないでしょう。しかも、その撮影に対応できるスタッフって、そんなにいないと思うんですよ。みんな若いのに、優秀ですよ。

 

なんなら、実景だけでも先に撮影しておきたいですね(笑)

──先ほども触れましたが、今回はハルがネットで知り合った、稲垣さん演じるケイタとの恋を通して、シロウの父親としての顔が垣間見ることができます。

 

リリー これまで自分の恋愛を丸出ししてきたシロウですが、本当の娘ではないハルに生かされているお父さんなんですよ。それで監督と話したのは、よくドラマで見るお父さんみたいに「どこの馬の骨かも分からない奴に、娘はやれん!」みたいな感じにしたくないなって。だから「ハルがときめく相手なら……」という感じになっていて。反対にヨシオは「絶対ないでしょ」って、寅さんみたいなおせっかいキャラになっている感じ。というか、ハルは商店街みんなの娘みたいになっていて、そのおじさんたちのメンタリティが、いわゆる女性の感性に追いつけていない。そんな勝手な純粋培養を壊してほしくて、ケイタとはネットで知り合ったという設定になったんです。

 

──そのほかの見どころ、やっぱり期待してしまうseason4への意気込みを教えてください。

 

リリー このドラマは、前のシリーズで言ったセリフを膨らませて、脚本にしていくので、今回もseason2に出てきたミュージシャンのサエキだったり、「こびとづかん」のエピソードが出てきたり、話が続いているようになっているんです。だから、season1から見ている方は面白いと思うし、season3からでも十分と思います。ペンションを訪れてくるゲストの方が事件や問題を持ってきてくれて、シロウが誰かを好きになる。正直、このシステムだと、エピソードを延々作れるんですけれど、今のところ、season4を撮る話は聞いていませんね。できれば、3月末に撮影して、桜撮りたいじゃないですか! なんなら、実景だけでも先に撮影しておきたいですね(笑)。

 

 

ペンション・恋は桃色 season3

2025年1月10日(金)よりFODにて独占配信

2025年1月29日(水)よりフジテレビにて深夜0時25分から放送中

 

(CAST & STAFF)
監督・脚本:清水康彦
主題歌:細野晴臣
出演:リリー・フランキー/斎藤工/伊藤沙莉/山口智子/稲垣吾郎/MEGUMI/鈴木慶一/JOY/岩崎う大(かもめんたろう)/眉村ちあくい/大水洋介(ラバーガール)ほか」

(STORY)
ちょっと古いペンション「恋は桃色」。56歳の誕生日を前にしたシロウ(リリー)をはじめ、住み込みのヨシオ(斎藤)、シロウの娘・ハル(伊藤)はいつもと変わらない様子でのん気に過ごしていた。そんななか、ハルに会いにあるお客さんが「恋は桃色」を訪れる。

【ドラマ「ペンション・恋は桃色 season3」よりシーン写真】

 

撮影/映美 取材・文/くれい響