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2017/3/24 17:09

【全曲レビュー付き】昭和歌謡の巨星・筒美京平の作品をノンストップで楽しめる「TSU-TSU MIX」

昭和歌謡を語る上で欠かすことのできない稀代の作曲家・筒美京平の作曲家活動50周年を記念して、ソニー・ミュージックダイレクトからノンストップのコンピレーションCD2種が3月22日に発売されました。ラインナップは、同社の女性歌手の名曲をつないだ「TSU-TSU MIX 歌姫」と、70年代にヒットを飛ばした元祖アイドル・南 沙織の曲をミックスした「TSU-TSU MIX 南 沙織」で、価格は各2700円。

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↑TSU-TSU MIX 歌姫」と「TSU-TSU MIX 南 沙織」のジャケット

 

「TSU-TSU MIX」は、ヒット曲から埋もれている名曲まで、発売日順でもヒットチャート順でもなく、テンポ(BPM)とキーを合わせてつないだ筒美京平作品のノンストップミックス。「歌姫」には全38曲、「南沙織」には全36曲のおいしいところを各1~2分ほど収録。リアルタイムで楽曲に親しんできた人には新たな発見がある「聞き直し」として、昭和歌謡初心者には「入門盤」として最適な内容になっています。

 

今回は、GetNavi webで歌謡コラム「Tokyo夜ふかし気分」を連載している歌手のギャランティーク和恵さんに、「TSU-TSU MIX 歌姫」の全曲レビューをして頂きました。ギャランティークさんは、歌謡曲の作曲家を特集したライブ「ギャランティーク和恵の世界」シリーズのなかで筒美京平さんも取り上げており、同氏の作品に対する愛にあふれたコメントも寄せて頂いています。

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↑筒美作品を取り上げたギャランティーク和恵さんのライブポスター

 

今こそ「すべての音源はターンテーブル上で平等に再生表現される権利を持つ」(©︎幻の名盤解放同盟)の精神に則って

歌謡曲再評価ムーブメントというのは、早くは1978年あたりからすでに近田春夫さんのLP「電撃的東京」で始まっており、それから高 護さん、「幻の名盤解放同盟」の湯浅 学さんと船橋英雄さんと根本 敬さん、それからコモエスタ八重樫さん、小西康陽さん、岸野雄一さん、常盤 響さん、黒沢 進さん、「土龍団」の濱田高志さんとゲイリー芦屋さんと吉田昭裕さん、そして現在の和モノクラブシーンの代表格「和ラダイスガラージ」主宰の永田一直さんへとそのムーブメントは続いており、その影響下にワタシという歌手は作られています。

 

彼らは「歌謡曲」という深く険しいジャングルの中に、「ヒット」という基準だけではない、高い音楽性と審美眼による新しい価値を切り拓いてくれました。そんなみなさんに共通するのが、レコードコレクターでもあるということ。しかしワタシはレコードに対して実はそこまで興味がなく、音源として手に入ればそれで満足というところがありました。しかし1990年代までは、街のCDショップで売られていた歌謡曲CDといえばヒット歌手のベストアルバム程度。深く掘り下げようともなかなか多くの歌謡曲を知ることはできませんでした。

 

そんなワタシがさらに深く歌謡曲を知る手助けになったのが、彼らのセンスによって纏め上げられたコンピレーションCDの数々で、そのおかげでワタシは、よりマニアックに歌謡曲と出会うことができました。それだけでなく、歌謡曲がいかに「カッコイイ音楽」かをもあらためて教えてくれたのです。

 

そしてもうひとつ、忘れてはならないのが、各レコード会社に所蔵されているアーカイブスを管理している、歌謡曲愛に溢れたディレクターの方々です。皆様の愛による復刻CDやコンピレーションCDのおかげで、今まで聴けなかったアルバム曲や、レコードでも手に入らなかった歌手の音源などが聴けるようになりました。2000年あたりから復刻ブームは続き、たくさんの歌謡曲歌手のスーパーベストや復刻アルバムがリリースされ、「誰この人?」みたいな歌手のスーパーベストまでリリースされるほど、たくさんのアーカイブが今日まで放たれてきました。歌謡曲ファンにとっては幸せなことではあります。

 

しかし、そんな復刻リリースやコンピレーションもマンネリ化を迎え、アーカイブ商法にも限界が見えてきたような気配のあったそんななか、ソニーの歌謡曲アーカイブを取り締まる名ディレクター、加納 糾さん企画による筒美京平オンリーのノンストップ・ミックスCDがリリースされることを聞き、とうとうレコード会社も、ヒット曲や有名歌手などの過去の価値基準を取り払った、歌謡曲アーカイブの新しいリリーススタイルに取り組まれているようで、とても嬉しく思っております。

 

今こそ「すべての音源はターンテーブル上で平等に再生表現される権利を持つ」(©︎幻の名盤解放同盟)の精神に則って、深く眠り続けている歌謡曲というジャングルの秘境へと旅する時代が来たのではないでしょうか。今回、その筒美京平センセー作曲家活動50周年記念企画のミックスCD「TSU-TSU MIX 〜歌姫〜」の全曲レビューをさせていただける話をいただき、喜んでお受けいたしました。大好きな筒美京平センセーの曲、しかし実は聞いたこともなかった曲も入っており、また新たな出会いもありました。そんな感動も含めて、ワタシもこのCDを聴きながらノンストップ・レビューをしたいと思います。余計なウンチクなし! 楽曲のノリ重視! 個人的な思い入れも挟み込みつつ、京平愛を語ります。どうぞお付き合いのほど、宜しくお願いいたします。

 

「TSU-TSU MIX 歌姫」全38曲レビュー

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1. 魅せられて/ジュディ・オング
1曲目は京平センセーのアレンジ仕事(編曲)において、ご本人曰く「最高峰」と言わしめた大名曲! ストリングスの掛け合いが豪華なイントロと、チェンバロの響きが異国情緒を誘います。「女は恋〜」で着地しない感じの終わり方が素敵。

 

2. 真夏の出来事/平山三紀
このイントロのフレーズこそがこの曲の全て! 歌詞通り、ドライブしながら聴きたくなります。ミキティのヴォーカルはどうしてこんなにファンキーでいま聴いても古くなくカッコいいんでしょう。

 

3. 夏の初めのイメージ/笠井紀美子
正直この歌は知りませんでした! めっちゃオシャレやわ〜。Bメロのコード進行、どこに進んでいくんだろう……という先読みできないスリル感が、初めて聴く人の心を奪います。ソフトロック好きの人にはたまらない曲ではないでしょうか。

 

4. 処女航海/優雅
前曲からの流れでこのイントロに繋げるなんて! グっときました。このイントロが大好きすぎます。ワタシも一度歌ったことあるのです。まったく処女性のないこのワタシが! ベタっとしてるのにハネている、どこか原始的なディスコグルーヴがあり、台湾出身の彼女の個性も含めてまさに大陸横断的。

 

5. もう海へなんか行かない/MIE
この曲はワタシの最近リリースしたCD「ANTHOLOGY#2」でカヴァーさせていただいております!(宣伝)イントロやサビのトリッキーな譜割りとコード使いでクセになる隠れた名曲です。元は豊島たづみさんの曲をあのMIE(ピンク・レディー)さんが! また違った味わいで聞き惚れます。

 

6. さよならなんて云わないで/水沢アキ
ワタシも大好きなあの岡崎友紀さんの名曲を今度は水沢アキさんが! イントロがオリジナルとちょっとだけ違うのですが、そのちょっとした違いにマニアは喜びを感じます。純情さが溢れるメロディと、それを歌うまだ10代だというのに大人びた裏声に涙が出そうです。

 

7. JOY/石井明美
73年のサウンドからいきなり87年のサウンドへ。それでも歌謡曲という音楽は等しく並べられプレイされるのだ! 「JOY」とは、フラれた女性が男性に投げかける言葉で、80年代らしい女性の強さと優しさを感じる曲。別れ際の泣き顔を笑顔に変える、超・名曲。

 

8. にがい涙/スリー・ディグリーズ
そして時代は70年代アフロ・ディスコへ! スリー・ディグリーズはアメリカで活躍した女性コーラスグループですが、外国人ならではのたどたどしい日本語がタマランです。初めて聴いた時、本人たちのオリジナル曲を日本語訳にして歌ってるのかな? と思っていたら、京平センセーが作ったと知ったときの驚き。洋楽を日本のPOPSへと昇華させるだけでなく、逆輸入的に外国人歌手へ楽曲を提供出来る京平センセーの腕の凄さは見事です。

 

9. メイク23秒/桃井かおり
これも正直、初めて聴きました……。資生堂81年のCMで使われていたというのに! 歌謡曲を掘り下げていく中でも「おこぼれ」というのがあり、この曲がワタシにとっての「おこぼれ」だったわけです。このCDのおかげで知ることができました。ありがとう。

 

10. セクシー・バス・ストップ/浅野ゆう子
前曲からの繋がりキレイ! ギターのメロとコードの流れもバッチリ! スバラシイ〜! 浅野ゆう子さんのイラストジャケシリーズ3部作でおなじみのディスコ歌謡。ご存知かもしれませんが、この曲含め3部作では京平さんは名前を「Jack Diamond」という名義で作曲しています。尺八なども取り入れて日本独自のディスコサウンドを作り出そうと力を入れていたご様子です。

 

11. 九月の雨/太田裕美
大名曲来ました。マイナー調で適度な疾走感もあり情感たっぷりなメロディの歌を、日本人が嫌いなわけがありません。チェンバロの粒だった音が、ガラス窓に打ち付ける雨粒のようで、流れるようなストリングスが、タクシーの窓から見える雨に滲んだ景色のようでとても美しい。

 

12. Step By Step/石井明美
この歌も初めて聴きました……。何てイイ曲なんでしょう!! イントロからしてすでにイイ曲の匂いがプンプンです。そして、何といってもサビ前のオクターブ上がるメロディからのサビ入りのキメですよね。タマランです。ポジティブで、健康的で、ハッピーで、なのになぜか胸が苦しくなり、涙を誘います。

 

13. マスカレード/庄野真代
庄野真代さんへの楽曲提供に共通するのが、イスタンブールやモンテカルロ、そしてこの「マスカレード」ではエルパソという、どこかの遠い国をテーマにしているところ。当時の日本人にとってはどこやねん! という、まだ知らない街だからこそ作り上げられるミステリアスな異国のイメージをメロディに。サビでメジャー調に変わるところで一気にエルパソへ瞬間移動!(どこやねん)でも素晴らしき京平メロディはBメロ部分です。

 

14. 東京ららばい/中原理恵
ワタシもよく歌わせていただいてます、大好きな曲。フラメンコ歌謡。とにかくいろんな国、いろんな音楽を貪欲に飲み込んでゆく京平センセーの怪物的クリエーション。港が見えるバー、山手通り、そして東京タワーも見えるのに、なぜかフラメンコ・サウンド。その組み合わせが歌謡曲が作り出せるイマジネーション。

 

15. ジャングル・コング
とうとう庄野真代さんはジャングルへ行かれました。オレ!オレ!オレ!……でも待って、オレ!って、フラメンコじゃないの? そういう意味では前曲からの繋がりとしてはOKだけど、スペインでしょ? なんでジャングルなのかしら……。スペインの男の胸毛がジャングルってこと? もうついていけないわ、マヨさん……。

 

16. 惑いの午後/ジュディ・オング
実はこの曲、このレビューのお話をいただく前から、個人的にここ数か月の間で1番聴いてた曲でした。「魅せられて」のヒットのあとにリリースされた曲で、ワタシの中での‘ジュディ×京平3部作’「魅せられて」「惑いの午後」「麗華の夢」の中の1曲。アレンジがいちいち素晴らしいのです。ド頭のやたら分厚いスネアの音とギター、AメロとBメロをつなぐ部分の歌とドラムのユニゾンとか、100回くらいその場所をリピートしても飽きないくらい好きです。

 

17. 麗華の夢/ジュディ・オング
そして‘ジュディ×京平3部作’のもうひとつ「麗華の夢」。またこれもアレンジがいちいち素晴らしいのです。特にホーンセクションとティンパニーが重厚でエレガント。3部作のうちこの曲だけは編曲が萩田光雄センセーとなっており、やはり萩田光雄センセーの素晴らしさを実感しますが、どこまでが京平センセーの作り込まれた部分なのか、作曲家と編曲家の仕事の線引きというのはどこになるのかが知りたいところです。

 

18. 飛んでイスタンブール/庄野真代
マヨさん、今度はイスタンブールへ。

 

19. 美しきチャレンジャー/新藤恵美
特筆すべきはとにかくベースが動く動く。2番ともなると、コードさえも無視して暴れまくります。でもこれがこの曲の良いところ。京平センセーの70年代初期によくある、「サザエさん」でも聴くことのできる、イントロや間奏、アウトロなどに使われるお馴染みのフレーズがあり、それらを称してワタシは勝手に「サザエさんアレンジ」と呼んでおります。

 

20. ムーンライト・タクシー/浅野ゆう子
イントロからもう超絶ファンキー! こんなファンキーな楽曲を歌えた浅野ゆう子さんに嫉妬。泣きメロのような、いわゆる歌謡曲的フックは特になく、自然と腰が揺れるようなディスコサウンドに徹底している感じが、これまたJack Diamondとしての京平センセーのディスコへの本腰を伺えます。

 

21. さよならこんにちわ/天地真理
そして続くは真理ちゃん! まさか「ムーンライト・タクシー」からこの曲が繋がるとは! でもとても綺麗です。真理ちゃんの楽曲はあまりノリノリな曲はないと思っていたけれど、こうやって前曲から繋がりで聴くと、ギターの音が結構際立ってるんだなぁ、なんて新発見も。真理ちゃんの声は優しさに溢れていて大好きです。

 

22. ディスコ・レディー/中原理恵
ネコも杓子もディスコだったこの頃、ディスコ・レディーとタイトルを掲げてどんなディスコサウンドが待ち受けてるかと思ったら、「東京ららばい」よろしく、理恵お得意のフラメンコ・サウンドでした。でも1978年あたりの歌謡曲には、なぜかフラメンコアレンジがたくさんあったのです。謎。

 

23. AMAZONIA/中原理恵
初めて聴きました! オシャレー! 歌詞カードを見る限り、最初の部分がカットされているのですが、怪しげな歌詞でその部分がどんな感じなのかが気になる……。これも庄野真代さんと同じく「異国歌謡」。アマゾニアって何? 葉っぱで作ったドレスに裸足でウホウホいってるイメージですけど絶対理恵さんはそんことしないでリーゼントでアーバンに歌ってるんだろうな……。

 

24. 17才/南 沙織
そしていきなりの南 沙織! 17才! 改めて聴くといい曲ですねぇ。こちらは1971年の曲。前曲からは8年くらいしか変わらないのに、こんなにサウンドが違うものなんですね。チェンバロ、フルート、タンバリンなどが入った、この生バンドならではのスリリングな間合いが、10代のあどけなさや甘酸っぱさなんかを醸し出しているように思えます。

 

25. 銀河急行に乗って/太田裕美
何だこの曲! 知らなかった! 悔しい! めっちゃイイ曲!! どこまで歌謡曲のジャングルというのは奥深いのでしょう。コーラスの「Go to the milkyway」(歌詞カードにはないがおそらく)がキメのフレーズとして効果的に使われ、サビの最後でこのフレーズを使いつつメジャー調になるところのメロディ構築の巧みさには感動すら覚えます。

 

26. 響きはtutu/石井明美
この曲も知りませんでした……。石井明美さんノーマーク。ダメね。こんなに京平さんの楽曲をいっぱい歌ってらっしゃる方だとは知りませんでした。楽曲重視であまり歌詞については言及しないようにと思ってたんですが、この阿木燿子センセーの歌詞がもう……笑えるくらい素敵。でもこれって曲先なんでしょうか? だからこそこのBメロの奇妙な歌詞が生まれたのかもしれません。もし詞先だったら、阿木燿子センセー、あなたってホントクレイジーだわ……。

 

27. 淋しい兎を追いかけないで/梓みちよ
これはワタシも良く歌わせていただいております。どうやらとある洋楽の下敷きがあるようですが、その曲よりも全然カッコ良く、しかもかなり攻撃的。軋むようなギターの音が狂気を孕んでいて、睨みをきかせて歌うアズアズにピッタリです。Cメロがここには入ってないのですが、このCメロがまたトリッキーで素晴らしいのです。なんであんなメロディ書けるんだろう。

 

28. 木綿のハンカチーフ/太田裕美
そして続くは、今の若い子たちもよく知っている日本歌謡史に燦然と輝く名曲です。でも待って! 梓みちよから太田裕美に繋げるなんて……化学繊維から木綿に変えるようでちょっと強引だわ……! まさに自然素材のような耳触りの優しい声で歌う太田裕美さん。もしかして繋げる意味はそこにあったのかしら?というくらい、いつもより爽やかに聴こえてきます。

 

29. 傷つく世代/南 沙織
前曲とこの曲がリズム的にもキー的にもキレイに繋がるなんて意外でした。素敵! この曲はまず、何と言ってもイントロのフレーズです。このフレーズを、ギター、ピアノ、ストリングスが、掛け合い、織り交ぜあいながらこの曲を盛り上げます。そしてサビ前の「だめね…だめね…だめね…私、かわいそうに!」とドラムと共に爆発する感じがタマリマセン!

 

30. 夏の感情/南 沙織
続いてもシンシア。シンシアには名曲がたくさんあります。TSU-TSU MIXのもう1枚「南 沙織」編も合わせて聴いてみたいところです。イントロのバストロンボーンの厚みあるフレーズが、なんだか大きなバストが揺れるような性の奔放さを感じさせます。Aメロの8ビートから突然4ビートへ変わるところのフックがポイントですね。

 

31. どうして?!/佐東由梨
この曲、そしてこの佐東由梨さんもワタクシ存じ上げませんでした……。このぶっきらぼうな歌い方、クセになるわ……。Bメロの半分以上をコーラスに歌わせて、ほとんど「どうして」しか歌わないところとか、斬新。サビラストの三連で盛り上がるところがザ・歌謡曲って感じですね。

 

32. お別れしましょう/朝丘雪路
何この繋がり(笑)。いきなり琴の音色で和風に。朝丘雪路さんのセクシーだけれど可愛げのある歌声が大好きです。朝丘雪路さんと京平さんのコンビだと「雨がやんだら」「いつもなら」と名曲揃いですが、この曲は知りませんでした。これも良曲! 「何よ、何よ、何よ」と連呼してるところが、「質問系歌謡」として前曲との繋がりとしてはOKかもですね。

 

33. よろしかったら/梓みちよ
キラーチューン! これも前曲からの繋がりが自然で綺麗です。Bメロでメロウになり気だるく歌うアズアズ。そしてCメロで覚醒するようにリズムが戻り、サビへ突入するところでストリングスの駆け上がりとともに盛り上がっていくところとかもうタマリマセン!

 

34. マンダリン・パレス/平山みき
平仮名時代のみきてぃ。エレクトロなアレンジは京平センセーの右腕でもある船山基紀さんの素晴らしいお仕事。メチャメチャカッコいいです!! そしてやっぱりみきてぃの声はどんなアレンジになっても変わらずミキティなのです。平山みきさんは京平さんの秘蔵っ子と言われてただけあって、楽曲の力の入れようも特別な気がします。名曲多し。

 

35. 恋のダウン・タウン/平山三紀
漢字時代のミキティ。このイントロで早速ヤられます。歌謡曲はイントロだといっても過言ではないほど、その曲を決定づける大事な部分。それをどれだけキャッチーでインパクトのあるものに出来るかで随分と変わると思います。おそらく京平さんも、イントロのメロディまでしっかりと作り込まれてたのではないでしょうか?

 

36. 熱い出来事/水沢アキ
これ、歌謡曲ファンはヨダレを垂らすほどに喜ぶところ満載で、ワタシも大好きな一曲。Aメロは割とよくありがちな歌謡曲かなと思いきや、B メロでおや?これはなんか一癖ありそうだぞ?とワクワク……、でもすぐAメロに戻っちゃったなぁ〜なんて思ってると! 「体にショックを感じたー!」と爆発。あぁ……タマラナイ! 京平さんったらイジワル!

 

37. 夜が明けて/坂本スミ子
おスミさんの代表曲。フォルクローレ歌謡。フォルクローレ歌謡って他にあるのでしょうか? ワタシの知ってる限りではこの曲くらいかな?フラメンコ歌謡ならたくさんあるんですけどね。このフォルクローレのアレンジが、森の中のどこかのお屋敷の部屋の窓から、朝靄が立ち籠める中に日が昇ってゆく景色が見えるようで、とても美しいです。

 

38. 私は忘れない/優雅
とうとう最後の曲がやってきました。これを最後に持ってくるなんてニクい! ワタシも大好きでよく歌っています。この曲は岡崎友紀さんがオリジナルですが、この優雅バージョンは初めて聴きます。16ビートの少し跳ねたアレンジで、歌メロも跳ねた感じの譜割りでノリがよく、こちらもとても素敵です。欧陽菲菲やテレサ・テンと同じく、台湾出身の彼女の独特なアクセントの日本語がまた良い。でもやっぱりどんなアレンジになっても、このメロディの持つ優しさは変わらず、涙を誘います。

 

いかがだったでしょうか? すべての曲にコメントをさせていただきました。多少雑な部分もあったかもしれませんが、「すべてをつくした愛をこめて」(「私は忘れない/岡崎友紀」)、レビューを書かせていただきました。現代はYouTubeでDigする時代。しかし、信頼出来るDJやディレクターの目利き(耳利き?)によるミックスCDやコンピレーションCDで知ることの出来る新たな歌謡曲の出会いというのもイイものです。何度も言いますが、歌謡曲とは深く険しいジャングルのようなもの。たくさんの道しるべを集めて、色んなルートから歌謡曲の密林を旅しましょう。そしてワタシも彼らの恩恵を受けながら、ワタシ自身もそんな道しるべを作れる歌謡曲歌手になれるよう、これからも歌謡曲道に精進いたします。

 

ギャランティーク和恵

 

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