エンタメ
2017/4/22 16:00

原作ファンを裏切らない実写化とは? 少女マンガ界の金字塔「王家の紋章」のミュージカルに学べ!

ミュージカル『王家の紋章』を観に行きました。男性には馴染みがないかもしれませんが、『王家の紋章』は1976年から連載が続く大人気少女マンガです。

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主人公キャロルはエジプト考古学が大好きなアメリカ娘。彼女の父が経営するリード・コンツェルンが未盗掘のメンフィス王の墓を発掘しました。世紀の発見でしたが、そのためにキャロルはメンフィスの姉・アイシスの呪いにかかって古代エジプトへ連れ去られてしまいます。そこでキャロルは偶然にもメンフィスに出会い、彼女が金髪娘だったことから珍しがられて王宮にとりたてられることに。この辺からが主人公びいきの展開ですね。

 

暴君だったメンフィスは、キャロルの胡散臭い偽善者発言に次第に心を動かされるようになっていきます。そしてキャロルは20世紀の知恵をあれやこれやと王宮で披露して、あっという間に「ナイルの娘」とかいってあがめられます。そのうえ、近隣諸国の権力者たちから次々と求愛されるようになり、さらわれちゃーエジプトに戻ってきて、またさらわれちゃー戻ってきてを繰り返して既刊60数巻。どこを読んでもたいていキャロルは誰かにさらわれてます。

 

キャロルもメンフィスも少々間が抜けているようで、何度離ればなれになっても凝りもせず「私、その国を見てみたいわ!」とか言いだしてエジプトを出たら戻れなくなった、みたいなことを繰り返してます。そのたびにメンフィスは大騒ぎをして、病気やら怪我やらでか弱々しくなって「わたし……エジプトへ帰りたいわ……」とか言ってるキャロルを助けに行きます。

 

キャロルを追いかけ回すストーカー筆頭は、ヒッタイト王国のイズミル王子です。たいてい、キャロルのいるところにヌルッと現れては鼻息荒くしただけで思いを遂げられずに去って行きます。

 

しかし、これが女の願望をビシャリと押さえまくってる不朽の名作なのです。大した努力もしないで賢いとか美しいとか言われて権力者たちから追い求められたい。メンフィスのような熱い血潮のたぎる青年(金持ち)から熱烈に求愛されたい。怠惰な少女たちの妄想をこれでもかこれも美味いだろと幕の内弁当みたいに詰め込んでいるんです。メンフィスの口癖と言えば「キャロルーっ!」「馬ひけーっ!」(どちらも手書きの文字)です。

 

70年代にはまだDVなどという言葉はなかったので、キャロルは男どもから息をするかのごとく暴力を受けています。無理矢理キスするくらいは日常茶飯事で、メンフィスには腕を折られたりナイル川に沈められたり、イズミル王子には柱に縛り付けられ鞭で打たれたり、短刀を投げつけられて大けが負わされたりします。しかし彼らの蛮行も、キャロルを熱く思うがゆえ。これらのシーンを胸ときめかせて読んでいた少女たちは、長じてすっかりドMになってしまいました。『王家の紋章』の累計発行部数は4000万部を超すというから、恐ろしい数のドM少女たちを輩出したことになります。

 

そして今回のミュージカルです。

 

『ミュージカル テニスの王子様』以降、出演者にぞろぞろイケメンが登場するミュージカルジャンルができましたが、『王家の紋章』もそのひとつ。浦井健治、宮野真守、平方元基、伊礼彼方(敬称略)などの人気俳優さんたちがぞろぞろ出演していることでも話題です。

 

舞台はというと、めっちゃくちゃ興奮しました。まず全体として、原作リスペクトがハンパないです。キャロルが古代エジプトへタイムスリップした際に着ていたフワフワスカート、アイシスの鳥形の王冠、メンフィスの翼型の胸当て、イズミル王子のカーテンみたいなブカブカ衣装、なにもかもが原作通りです。

 

ほかのキャラたちもみな原作通りの格好をしているので、登場した瞬間に、ウナスだ! ルカだ! イムホテップだ!!! と心のなかで絶叫。あと、ライアン兄さんのそばをウロチョロしているブラウン博士のインパクトがすごかった。小さなところにも手を抜かないこだわりを感じました。

 

ストーリーも原作をうまーく縮めていて展開はほぼ同じ。「どういう話なんだろう」というよりは「どうアレンジしているんだろう」が気になり、かつ楽しめました。

 

衣装も舞台装置もキラキラ黄金に輝いていて、ものすごくゴージャスです。これぞ少女マンガ! これぞミュージカル! って感じです。

 

脇役に支えられている舞台でもあります。バックダンサーの方たちの踊りがハンパなくキレッキレで、ため息が出ました。メンフィスを恋い慕うアイシスは、両手を挙げた例のポーズで登場してきて、これまた興奮です。歌も演技もものすごく上手で、登場キャラ中、群を抜いて魅力的でした。

 

ロンドンで『マンマ・ミーア!』を観たときの、あの「知ってるものがアレンジされた」ワクワク感と、ロスで『オペラ座の怪人』を観たときの「ひたすらゴージャスなセット」に魅了された贅沢感がミックスされた作品でした。

 

欲を言えば、もうすこしメンフィスとキャロル、イズミル王子とキャロルのイチャイチャシーンが観たかった。でも、カーテンコールでキャロルを取り合うメンフィスとイズミル王子の「おふざけ」は可愛かったです。

 

原作を知らない人がこの舞台を観たら……根底に流れているのが乙女の妄想なので、うーん、どうでしょう? ひとつ言えるのは、4000万人いる(?)原作ファンは必見だということです。チケットはほぼ完売しちゃってるようですが、再演を期待して。次は逃しちゃいけませんぜ。

 

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