エンタメ
音楽
2017/9/1 22:00

そんなヒロシに騙されて……夏の終わりに聴きたい「歌謡プレイリスト」

みなさんこんばんは、ギャランティーク和恵です。毎月その季節に合わせた歌謡曲を10曲選び抜き、みなさんにご紹介する「マンスリー歌謡プレイリスト」。第2回は、去ってゆく夏にどこか切なさを感じる9月。毎年夏が終わるたびに、限りある人生のなかの大事な時間がまたひとつ通り過ぎてゆくような気分になるのはワタシだけでしょうか?

 

だからこそ完全燃焼したい! 悔いのない夏にしたい! そう思って誰もが海に行ったり花火を見たりフェスに行ったりして、意地でも夏を満喫するのよね。おウチにこもって日が落ちるのを待ってから外出するワタシでさえも、夏が終わりを迎えようとするたびに妙な焦りを感じてしまうのですから不思議です。今年の夏は一度だけ。残り少ない夏の日を最後まであきらめないで!

↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)
↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

【9月のプレイリスト】

01. Mr.サマータイム/サーカス
(作詞:Pierre Delanoe 作曲:Michel Fugain 日本語詞:竜真知子)

まずは夏の終わり感ハンパないこの曲から。1978年3月にリリースされたサーカスの2枚目のシングル。原曲はフランスのシンガーソングライター、ミシェル・フュガンが1972年に発表した『愛の歴史』という歌。それを訳詞の竜真知子さんによるマジックで、日本人が大好きな背徳的で罪深い不倫の歌に生まれ変わっております。夏の暑さに冷静さを失い、ついあやまちを犯しがち……。そんなあやまちを、短調のA-Bメロディをひたすら繰り返し少しずつ転調していきながらひたすら懺悔、そして最後の最後で長調になってついに雲の切れ間から光が差し込み、神様からの許しが! あぁ、Mr.サマータイム様! お許しありがとうございます!……という悪行浄化ソングです(個人的見解)。

 

02. 誰もいない海/トワ・エ・モア
(作詞:山口洋子 作曲:内藤法美)

2曲目は、1970年11月にリリースされたトワ・エ・モアの6枚目のシングル曲。作曲の内藤法美さんは、シャンソン歌手の越路吹雪さんの夫でもあり、越路吹雪さんも競作で同曲をリリースしています。そちらも素晴らしいのですが今回はトワ・エ・モアバージョンで。「今は〜もう秋〜」と歌っているので、あまり夏の終わり感がないかもですが、まだ少し夏の気配が残ってる9月終わりくらいに聞きたい曲。賑わっていたビーチもいつか閑散として、過ぎてゆく夏を惜しむ淋しさがギターの音色とともに伝わってきます。3コーラスすべて、終わりに「死にはしない」と頑なに決意するところが、むしろ抜け殻のように海を眺めて入水自殺する一歩手前のような怖さもあります。

 

03. 渚のうわさ/弘田三枝子
(作詞:橋本淳 作曲:筒美京平)

3曲目、こちらも誰もいない海シリーズ。1967年7月にリリースされた弘田三枝子さんの16枚目のシングル。コロムビアレコードがポップス部門として始めた「P盤」と呼ばれるシリーズ最初の作品で、作曲家・筒美京平センセーの初ヒット曲として有名なこの曲は、日本のポップ・ミュージックの夜明けといっても過言ではない大名曲。作詞は橋本淳センセー。この後、いしだあゆみさんの「ブルー・ライト・ヨコハマ」などのヒットを連発していく名コンビとなります。まだ華麗なる変身を遂げる前のパンチのミコちゃん独特のうなる歌唱と、少し大人びた柔らかい歌唱が織り混ざった、表現豊かな歌声に聴き惚れます。

 

04. 夏風通信/太田裕美
(作詞:松本隆 作曲:筒美京平)

4曲目は、1977年7月にリリースされた太田裕美さんのLP「こけてぃっしゅ」の中の1曲目の曲。これは歌詞の内容や聴く人の受け取り方によっては8月ではないかとお叱りを受けそうですが、ワタシはこの曲はどうしても夏の終わりに聴きたい! と思うのです。もう少しだけ夏は続くと思っていた8月もとうとう終わり、9月に入ってしまった瞬間に夏が思い出と変わってしまうような淋しさ、そういったムードがこの曲にあって大好きなのです。前曲のような、戻ってこない彼への悲痛の叫びとは違い、どこかこそばゆく彼の帰りを待つアンニュイな女心が、太田裕美さんの呟くような歌声に感じられます。景色の色合いも白い砂と白い雲、そして青い海の爽やかさが目に浮かんでくる、松本隆センセーが描く「夏」は絵葉書のように美しいのです。

 

05. さらば愛の季節/ヒデとロザンナ
(作詞:橋本淳 作曲:東海林修)

5曲目は、1977年4月にリリースされたヒデとロザンナの20枚目のシングル。実はこの曲、夏の終わりになると良く歌わせていただいております。江ノ島を舞台に恋人との別れを描いた曲で、江ノ電に乗って終点の鎌倉までの間、窓から見える景色に彼との思い出を重ね合わせるという歌です。しかし、こういう類の別れの歌は、立ち去るのは男のほうで、それを追いかけたり見送るのは女という構図が多いなか、この曲は立ち去るのは女のほうで、男に嫌われて捨てられた上に住み慣れた街まで追い出されるし、しかも男は駅のホームに見送りにさえ来てくれない。結構悲惨。そんな悲痛な叫びが最後の「ヒロシーーー!!」に込められているようです。……それはそうと、ヒロシって誰よ!?

 

06. そんなヒロシに騙されて/高田みづえ
(作詞・作曲:桑田佳祐)

というわけで、ヒロシ繋がりとしての6曲目は、1983年8月にリリースされた高田みづえさんの21枚目のシングル。「さらば愛の季節」〜「そんなヒロシに騙されて」繋ぎはワタシのライブでもお決まりなのです。上手く繋がってると思いませんか? きっと、江ノ島のヒロシに捨てられた主人公が江ノ電で鎌倉に到着した後、そこから横須賀線に乗って横須賀に行ったんじゃないかしら。……と勝手な妄想を楽しんでおります。ギターのテケテケ奏法を始めとしたベンチャーズ歌謡を下敷きに上手く作られた、桑田さんの歌謡曲愛と遊び心とセンスが光る名曲。

 

07. 夏をあきらめて/研ナオコ
(作詞・作曲:桑田佳祐)

続けて桑田さん作詞作曲繋がりでこちら。7曲目は1982年7月にリリースされた研ナオコさんの29枚目のシングル。8月のプレイリストにも書きましたが、この力の抜けた乾いたヴォーカルが何ともおしゃれで都会的です。2番の「水着も見れない〜」の「い〜」あたりなんて、これで大丈夫!? というくらいガッサガサの声なのに、それが全然アリになってしまうところが、ナオコさんしか表現できない歌の魅力なのだと思います。高い音域で声張ってピッチもズレずに歌えることが歌唱力だと思っている現代の歌手たちに、ナオコさんのこの歌声を煎じて飲ませてやりたいわ!……かく言うワタシも、煎じて飲ませていただきます。

 

08. 合鍵/ちあきなおみ
(作詞:松本隆 作曲:筒美京平)

8曲目は、1990年11月にリリースされた、ちあきなおみさんのLP「かげろふ〜色は匂へど〜」の中の1曲から。ワタシも去年の夏にリリースしたCD「ANTHOLOGY#2」でもカヴァーさせていただいた大好きな曲です。このLP「かげろふ」は11月にリリースされた割には全編を通して夏のイメージが強く、あまりちあきなおみさんへ曲を書くことが少なかった筒美京平さんがこのアルバムでは半分以上関わっており、実質“筒美京平プロデュース”といっても過言ではない、ちあきなおみさんの数多あるアルバムの中でも特に力が抜けた歌唱が素晴らしい、爽やかな印象でポップス色が強い名盤です。……と、ちあきなおみさんとなると突然口数が多くなるワタシ……。この曲はダイアナ・ロス「If We Hold On Together」のようなバラード曲で、ちあきさんもまるでダイアナ・ロスのような壮大な毛量で優しく歌い上げています。未だ引きずっている昔の恋の思い出を忘れるために海辺に来ては、捨てられずにいた昔の男の部屋の合鍵を捨てに来る歌。人は自分の過去に決着をつけながら生きてゆく……そんな、大人になってからこそ染みる歌です。

 

09. 美しい夏/岩崎宏美
(作詞:松本隆 作曲:筒美京平)

9曲目は、1976年7月にリリースされた岩崎宏美さんの3枚目のオリジナルアルバム「飛行船」からの1曲。今回のプレイリストのハイライトです。「美しい夏」というタイトルの曲は、桜田淳子さんのシングル曲のほうが印象が強いかもしれませんが、岩崎宏美さんの「美しい夏」こそみなさんにぜひ知っていただきたい! 夏という季節は、人生でいうところの青春時代。そんな、人生のなかで一番熱く心を燃やし動かした瞬間を、夏という季節が呼び戻してくれるのかもしれません。しかし、ワタシにはこの歌に描かれるような甘酸っぱい恋の想い出あるわけでもなく、むしろ海なんて嫌いなほうなんですが、松本隆さんの描く夏は、まるでそういった体験をしてきたかのような錯覚になるから不思議です。それこそ「美しい夏」というのは、誰しもの心の中にあるものなのかもしれません。

 

10. 夏の終りのハーモニー/井上陽水・安全地帯
(作詞:井上陽水 作曲:玉置浩二)

最後は、1986年9月にリリースされた井上陽水・安全地帯名義のシングル曲でお別れです。玉置浩二さんのロマンティックなメロディが泣かせる大名曲。そして井上陽水さんにしては珍しくシンプルな詞ですが、「何もかもが違ってても、それがふたりだけのハーモニーになる」というメッセージが、まさに個性的な歌唱のふたりのハーモニーによって証明されています。Aメロのやさしくささやくようなそれぞれの歌声が、夏の終わりの淋しさを漂わせ、そしてサビで二人のハーモニーが溶け合いながら広がってゆく景色は夜空。少しだけ肌寒くなってくる9月の夏の夜に、遠ざかってゆく季節を肌で感じながら、次にやってくる夏の日に想いを馳せて……。

 

20170901-i02(2)

以上、和恵が選ぶ「9月のマンスリー歌謡プレイリスト」でした。やだ……なんだか全体的にセンチメンタルな文章になっちゃってるわ……。これも夏の終わりのせいってことでどうかお許しくださいませ。今回選んだ曲たちが、みなさんにとって今年の夏の想い出を美しく彩るBGMとなりますよう。それではまた来月をお楽しみに!

 

【インフォメーション】

ギャランティークさんがママを務める新宿・ゴールデン街のスナック「夜間飛行」がオープン10周年を迎えることと、ご自身の歌手活動が15周年を迎えることを記念したパーティーやライブショーが9月に開催されます。ライブショーの予約はPassMarket イベントページにて好評受付中。詳しくはギャランティーク和恵さんの公式サイトをチェックして下さい!

公式サイト http://gallantica.com/

20170901-i02(3)

●プレパーティ

2017年9月23日(土)@Snack夜間飛行(新宿ゴールデン街)
開店_19:00 閉店_29:00
チャージ800円、ドリンク700円

(※夜間飛行への祝花につきましては、店内が狭いためお断りさせていただいております。どうぞご了承ください。)

●ライブショー

2017年9月30日(土)@Restaurant Bar CAY(表参道)
開場_18:00 開演_19:00 終演_21:00 閉場_22:00
チケット S:テーブル席/8600円(1ドリンク&記念品付き) A:スタンディング/4600円(1ドリンク付き)

出演:ギャランティーク和恵
ゲスト:畑中葉子/ソワレ/町あかり/林 健一(KEN-KEN)
DJ:永田一直(和ラダイスガラージ)

 

2017年8月23日に、ギャランティーク和恵さんの久々となるオリジナル曲がリリースされました。タイトルは「夜に起きるパトロン」! 作詞・作曲に町あかりさん、サウンドプロデュースにKASHIFさん、リミックスではCHERRYBOY FUNCTIONさんをお迎えして、アダルトなニューウェイブ歌謡に仕上がっています。

20170809-i04 (26)

「夜に起きるパトロン」/日本コロムビアから配信リリース(iTunes Storeほか)

01. 夜に起きるパトロン(作詞・作曲/町あかり サウンドプロデュース/KASHIF)
02. 夜に起きるパトロン ~ CHERRYBOY FUNCTION REMIX ~

 

ギャランティーク和恵さんも出演する純国産ダンスミュージックNO.1パーティー「和ラダイスガラージ」が、恒例の夏の終りの江ノ島OPPA-LAでの特別興行を今年も開催します! 夏の終わりを、太平洋〜江ノ島〜富士山を一望できる大パノラマ絶景スポットOPPA-LA で楽しみましょう!

20170809-i04 (31)

「和ラダイスガラージ〜さよなら夏の日〜」

日時:9月17日(日)15〜22時
場所:@oppala(神奈川県藤沢市片瀬海岸1-12-17 江ノ島ビュータワー4F)
DJ:永田一直/中村保夫/珍盤亭娯楽師匠/カズ/CHERRYBOY
LIVE:ギャランティーク和恵/町あかり
GUITAR DJ:KASHIF
http://waradisegarage.blogspot.jp/2017/08/blog-post_3.html‬