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2018/6/7 22:30

全部知ってればTKマニア! 知られざる小室哲哉の名曲20選【後編】

80年代後半から90年代にかけてヒット曲を連発し、一躍時代の寵児となった小室哲哉の手がけた膨大な曲のなかから、選りすぐりの楽曲をセレクトしたCD「TETSUYA KOMURO ARCHIVES “T”」および「TETSUYA KOMURO ARCHIVES “K”」が6月27日に発売されます。いずれも4枚組で50曲ずつ収録。また、両作品にボーナスCD1枚を加えたBOXセット「TETSUYA KOMURO ARCHIVES BOX」もソニー・ミュージックの通販ショップ限定で用意されます。

↑左からTETSUYA KOMURO ARCHIVES “T”盤(4枚組)、”K”盤(4枚組)、9枚組Box(販路限定)のジャケット

 

知られざる小室哲哉の名曲20選と称し、小室氏が手がけた曲のなかから一般的にはあまり知られていない曲を紹介する本コラムの前編では、98年までにリリースされた曲のなかからピックアップしてきましたが、今回は98年以降の曲をセレクト。前回の文末で解説したように、小室氏に大きな衝撃を与えたのが98年にデビューした宇多田ヒカルの存在でした。以降、小室氏はR&Bやトランスなど様々なジャンルの音楽を取り入れるようになっていきます。そのあたりの状況も踏まえて、変化していく小室氏の音楽性にも注目してみて下さい。

 

前編はコチラ

 

【小室哲哉の知られざる名曲20選/後編】

 

11.Empty Lies/MUSEUM

98年にリリースされた「TK 1998」というCD+VHSのBOX作品に収録された曲。このMUSEUM(ミュージアム)というユニットは、海外進出を狙うべくD&Dのオリビアをボーカルに迎えて結成されたもの。オリビアは純然たる米国人であり英語がネイティブなため、TKプロデュースにおいては海外進出の一端を担う役目を期待されていた。曲調は、前編で紹介したGrace Ipの「給我空間」にも似たしっとりした大人のバラード。オリビアの持ち味であるハイトーンボイスは抑えめに、ささやくような歌唱でしっとりした情感のある歌声を聴かせてくれる。MUSEUMプロジェクトは途中で立ち消えになってしまったが、小室氏の楽曲とオリビアの歌声の相性はよかったので、ぜひソロでもプロデュースして欲しかった。

 

12.Tonight I need your kiss/甲斐よしひろ

甲斐よしひろは、「安奈」などのヒット曲で知られる甲斐バンドの中心人物であり、小室版「We are the World」ともいわれるTK presents こねっと「YOU ARE THE ONE」に参加後、小室プロデュースのもとで3枚のシングルを連続リリースしている。いずれも甲斐氏が作詞、小室氏が作曲・編曲を担当。どの曲も大人の渋みと切なさを感じさせるビターな味わいがあり、両者にとって新境地を切り開いたといえそうなほどの素晴らしい出来栄えだ。残念ながらどの曲もあまり売れず、3曲ともアルバム未収録のため、現在では入手が困難になってしまっている。このほかにも「against the wind」という未CD化曲なども存在しており、ぜひ1曲くらい甲斐氏の曲をアーカイブスに収録して欲しいと願っているが、果たして……(執筆時点ではTETSUYA KOMURO ARCHIVES収録曲は一部未定)。

 

13.Girls, be ambitious!/TRUE KiSS DESTiNATiON(TETSUYA KOMURO ARCHIVES “T” Disc 3収録予定)

98年ごろから日本の音楽シーンでは宇多田ヒカルやMISIAなどのR&B歌姫がブームとなっており、小室氏もその流れに乗る形でdosのダンサーだったasamiをボーカルに抜擢し、このTRUE KiSS DESTiNATiONを結成。メジャーデビュー前にクラブシーン向けにアナログ盤をリリースしたり、米国のインディーズ市場でCDをリリースしたりと、従来の大々的なCMタイアップのようなマス的戦略から、よりディープでアンダーグラウンドな方向への転換を模索していた。これまでのユーロビートを下敷きにした小室サウンドとは大きく異なるアプローチを採用し、とくに当時米国のシーンで流行っていた変則ビートが特徴の“チキチキ”サウンドを積極的に取り入れていた。この「Girls, be ambitious!」も、演奏とボーカルのリズムをあえてずらしたり、Aメロ→Bメロ→サビといういわゆるJ-POP的な枠を超えたどこがサビなのか分からないような構成を採用したりと、かなり凝った曲に仕上がっている。

 

14.Adore Me/Blaque Ivory

こちらもTKD同様、R&Bシーンへのアプローチを深めるなかで、本場のボーカルグループBlaque Ivoryを起用してリリースされた曲。曲調はDestiny’s Childへの提供曲などでヒットを飛ばしたShe’kspere(シェイクスピア)の楽曲をインスパイアしたような、ストリングスをアクセントにしたチキチキサウンドとなっている。同時期にリリースされた安室奈美恵への提供曲「LOVE2000」でもその影響を感じることができるので、ぜひ聴き比べてみてほしい。

 

15.NOW I’M HERE/BALANCe

BALANCeはEMA、KIYOKO、NAOの女性3人によるボーカルユニット。1stシングルの「MOVE YOUR BODY」を聴く限り、当初はR&Bシーンを意識して結成されたと思われるが、のちに小室氏が傾倒していくトランスミュージックの先鋒として「BALANCe OF TRANCE」名義のREMIX CDをリリースしたり、trfのメンバーも参加したトランスユニット「zento」に加わったりした。アーカイブスにはT盤のDisc 3に2ndシングル「GET INTO YOU SUDDENLY」が収録されるが、オススメしたいのは3rdシングルのこの曲。当時、本人たちが出演したパナソニックのMDコンポのCM曲として使われ、ユニット最大のヒットを記録。3枚目のシングルで勢いをつけ、そのままオリジナルアルバムを……と期待していたものの、結局アルバムを出すことなく解散してしまった。

 

16.IF ONLY WE COULD FLY/MIYUKI

MIYUKIは、鈴木あみのデビューのきっかけとなったTV番組「ASAYAN」のボーカリストオーディションにおいて、視聴者投票の結果、惜しくも鈴木あみに敗れ2位となってしまった人物。その後、小室プロデュースによって2000年に「Feel the Revolutions」でデビューを果たしている。この「IF ONLY WE COULD FLY」は彼女の2ndシングルで、トレモロ調の前奏がインパクトのある曲。そこそこ売れた1stシングルと比較して市場に出回っている枚数が少なく、現在は入手困難となっている(アルバム収録やデジタル配信もナシ)。こちらもアーカイブスに収録されることを願ってやまない佳曲だ。

 

17.Freeze/Female Non Fiction

Female Non Fictionは、ブルボンが2001年に発売したCD付きチョコレート菓子「MUSIC FACTORY」のタイアップでデビューした女性3人組のユニット。なお、チョコは2種類の味があり、ミルクチョコにはFemale Non FictionのCDが、ビターチョコのほうにはR9という、これまた小室プロデュースによる新人女性ボーカルのCDが同梱されていた。この曲はJ-POPとしてはかなり本格的なトランスサウンドを導入しており、お菓子のオマケとして聴くにはいささかハード過ぎた感も否めない。実際、ブルボンのMUSIC FACTORYも、Female Non FictionもR9もこの1曲のみで終了しており、それほど売れなかったと思われる。お菓子のオマケとは別にCDも発売されたが市場に数が出回っておらず、現在では入手困難な曲となっている。

 

18.世界の終りの夜に/globe

globeといえば小室ファミリーのなかでも数々の名曲を生み出してきたユニットだが、意外と忘れられてしまっているのが、2002年に発表されたX JAPANのYOSHIKIの加入である。このとき、シングル「seize the light」がリリースされ、その翌年には「LEVEL 4」という4人組になったことを意識したタイトルのアルバムが発売された。また、YOSHIKI加入に合わせ東京ドームでのライブが告知されるなど、かなり本気で活動しそうな感じであったが、結局YOSHIKIの名前がクレジットされた曲は1曲のみにとどまった。このときにYOSHIKIがglobeのために作ったとされる未発表曲が、この「世界の終りの夜に」という曲。ネット上にはKEIKOのボーカルによるデモ音源も上がっているが、これまでCD化どころか正式な音源としてリリースされたこともない幻の曲である。ちなみにこの曲は、のちに歌詞やアレンジを変え、宝塚へ提供された。こういうレアな楽曲が収録されればファンは喜んでBOXでもなんでも買うと思うのだが(筆者ならこの1曲のためだけにでも絶対買う)、ぜひこの機会にアーカイブスに収録してほしいものだ。

 

19.I am/TM NETWORK (TETSUYA KOMURO ARCHIVES “T” Disc 4収録予定)

TM NETWORKのデビュー30周年を記念したアルバム「QUIT30」にも収録された、2012年発売のシングル曲。個人的には2000年代中盤以降の小室楽曲は、特にアレンジ面で全盛期の輝きが感じられないと思っていたが、やはり本家TM NETWORKの再始動にあたり相当気合が入っていたのか、詞・メロディ・アレンジのいずれも素晴らしい出来栄えで、QUIT30はとても完成度の高い作品だった。さらに、アルバムリリースに合わせて開催されたライブツアー「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」は、TM NETWORKらしいストーリー性のあるステージとなっており、作品の世界観を拡大するファン必見のライブパフォーマンスが繰り広げられた。音源から受けるイマジネーションを補完するという意味では、globeが4thアルバム発売後の99年に開催した「globe tour 1999 Relation」も素晴らしかったが、QUIT30ツアーはよりメッセージ性の高い内容になっている。同ツアーも含むTM NETWORKの数々のライブの模様は動画配信サービス「dTV」で視聴できるので、ぜひチェックして頂きたい。

 

20.PUSH YOUR BACK/trf

小室ファミリーの基幹ユニットといっても差し支えないであろうtrfだが、96年に発売したシングル「LEGEND OF WIND」以来、数曲の楽曲提供はあったものの、基本的には小室プロデュースを離れて活動を続けていた。しかし、20周年プロジェクトの一環として2013年に発売されたミニアルバム「WATCH THE MUSIC」で、約16年ぶりに小室氏の全面プロデュースが復活。ファンにとっては長年の願いが実現した瞬間であった。その先行シングル「PUSH YOUR BACK」は、これまでのtrfらしさを残しつつ、新時代のダンスサウンドを感じさせるソリッドな楽曲に仕上がっており、同窓会的な懐古主義でお茶を濁さず、新しい音を求めて前に進もうとする小室氏やtrfのメンバーの姿に感動を覚えた。小室哲哉はまだまだやれる、という決意表明のような作品だっただけに、早すぎる引退表明が惜しまれる。

 

以上、有名ドコロをあえて外し、世間にあまり知られていない、もしくは忘れ去られている名曲を20曲紹介してきた。6月27日に発売される「「TETSUYA KOMURO ARCHIVES」の収録曲は執筆時点で80曲/100曲まで公開されており、あと20曲の枠にどの曲が収録されるのかは今後の発表を待つのみ。今回紹介した曲のなかから1曲でも選ばれてくれることを願いつつ、期待を胸に第三弾の情報公開を待ちましょう!

 

イラスト/マガポン

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