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2018/6/15 17:30

いままで見えなかったものが見える! 4K画質になった「攻殻機動隊」のUHDBDを先行視聴した

先日、6月22日に発売される「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊(以下、攻殻機動隊)」の4K試写会に参加してきました。今回はその模様を、押井 守監督のコメントも交えつつお届けしたいと思います。

 

35mmフィルムの映像を4Kリマスター

「攻殻機動隊」は士郎正宗原作、押井 守監督による劇場アニメ作品。アメリカのビルボード誌のビデオ週間売り上げ1位を記録した名実ともに名作と名高い作品です。「マトリックス」のウォシャウスキー姉妹など、多くのクリエイターに影響を与えた作品でもあります。筆者も何度か見ているのですが、何せ23年も前の作品なので、結構内容を忘れてしまっており、今回の試写会は楽しみでした。

『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』 (c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 

作品の上映が始まった瞬間は、「ん? これって4K?」という印象でした。「攻殻機動隊」は35mmフィルムを使っており、4Kに耐えうる情報量を持っているとはいえ、続編である「イノセンス」ほどの緻密さは持ち合わせていないからでした。4Kというと、どうしても解像度の高さを注目しがちですが、しばらく見ていくうちに階調表現の豊かさに気がつきました。暗い場所と明るい場所がそれぞれしっかりと描かれており、これまで見えなかった部分も見えてくる感じです。しかも、それがやり過ぎてはおらず、違和感を覚えることはありませんでした。

『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』 (c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 

「攻殻機動隊」を見終わった後、同時発売される「イノセンス」も少しだけ見させていただきましたが、こちらはまさに「THE・4K」といった印象。緻密な映像がそのままくっきりと映し出される様は4Kでの映像表現にぴったりでした。そういった意味では、「攻殻機動隊」は地味な4Kリマスターと言えそうです。逆に、まったく自然な感じの4K作品に仕上がっているとも言えるでしょう。

 

4K化されてわかる35mmフィルムの情報量のすごさ

どういった点が4Kリマスターによって変わったのか、試写会の後に、押井 守監督とリマスターを担当したキュー・テックの今塚 誠さんにお話が聞けました。技術的な面や従来のパッケージソフトとの違いを語って頂いたので、今回の4Kリマスターの意義が分かると思います。

↑試写会の後に、押井監督と今塚さんによるインタビューが行われました

 

押井監督「イノセンスの4K化はずっと待っており、どう考えても4Kで見て欲しいと思っていました。アイマックスシアターの上映で、いままで見えなかったものもメディアやモニターの進化によって見えてくることが分かりました。当時はモニターの性能が追いついていませんでしたが、いま、4Kテレビなどの環境が整ったことでより理想に近い映像が見られるようになりました。

攻殻機動隊はそういった意味では4Kに耐えられるのか心配でした。10か月で作り、予算もなく、レイアウトに3か月、作画に3か月くらいで、とにかく時間が足りなかった作品です。公開時にはリテイクがかなり残っていました。攻殻機動隊はデジタルアニメーションの先駆けとして取り上げられていますが、実際にはCGカットは40カットくらい。あとはエフェクトで処理しており、ほとんど手作業です。つまりデジタルイメージしたアナログ作品なんですね。なので4Kになったとき、粗が出たらどうしようかと思っていました。

実際、4Kになった作品を見たとき、意外と良かったというのが感想でした。もちろん、当時の作品とは違うものとしてですが、いまの技術でスキャンされた映像を見ることで、改めて35mmフィルムの情報量のすごさがわかりました。この違いがわかったのは良い経験かと」

↑押井 守監督

 

今塚さん「4Kリマスターの作業は基本的にHDリマスターの時と基本的には変わりません。階調表現を豊かにするため16bitでスキャンをしております。今回のリマスターでは、HDR化しているので、SDRとHDRの見え方の違いに特に気をつけました。技師と一緒に何度も試して粒子軽減や画像修復をしました」

↑キュー・テック 今塚 誠さん

 

押井監督「素子の肌の色はカット毎に違うんです。背景毎に合わせるようにして、標準の色がない。HDR化することで色を壊してしまわないように設計されていました。HDR化で今まで見えなかった暗部が見えるようにできるんですが、見えてはいけない部分もあるわけです。今回は暗部が十分に沈んでいて、見せすぎていない」

『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』 (c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

 

今塚さん「終盤の多脚戦車との戦闘シーンは光を表現しやすいところだったので、輝度を上げて明るめにしています。ただ、単純に画面全体を明るくしてしまうと白茶けてしまうので、銃口など光を発する部分のみ輝度を上げています。このあたりが今回の4Kリマスターの見どころのひとつだと思います。」

 

押井監督「透過光とかホログラフ的なところは従来のパッケージソフトでは再現しきれなかった。光モノは4Kリマスターの肝ですね。あとは素子の肌に注目して頂いてもおもしろいと思います」

 

多くのSF映画やSFアニメの礎となり、大きな影響を与えてきた「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」。まだ未視聴の人はもちろん、当時劇場で見た人も、新たに生まれ変わった作品として見るべき作品です。4Kリマスターの「イノセンス」と同梱セットもあるので、そちらを購入して見比べてみるのもオススメですよ。あ、UHDBDを再生するには、4KとHDRに対応したテレビとULTRA HD Blu-rayに対応したプレーヤーが必要なのもお忘れ無く。この機に買ってしまうのもアリですよ。

↑「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」&「イノセンス」4K ULTRA HD Blu-rayセット 価格:1万2800円(税別)/収録分数:184分 『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』 (c)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT  『イノセンス』 (c)2004 士郎正宗/講談社・IG, ITNDDTD