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2018/7/27 21:00

【ギャラン堂】少女から大人へ……「70年代の岩崎宏美」の軌跡を知る10枚をギャランティーク和恵が聴く

みなさんこんにちは! いかがお過ごしでしょうか? ギャランティーク和恵です。「レコードショップ ギャラン堂」3か月ぶりのオープンです! ……って、3か月もお店休むなんて随分な殿様営業だこと! まぁ、「ギャラン堂」は“架空”のレコードショップですし、商店街のなかでひっそり気ままにやっているようなそんなお店ですから、そのくらいのユルいペースでどうか宜しくお願いいたします。でも、そんな寂れた商店街の活気を取り戻すため、2軒先のナショナルの電気屋さんとお向かいの金物屋さんと協力して町おこしカラオケ大会を開き、商店街のアイドルとして自慢の美声を響かせちゃったりする今日この頃です!(妄想開始)

↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

この「レコードショップ・ギャラン堂」では、各レコード会社からリリースされる歌謡曲のコンピレーションCDや復刻アルバムCDなどから、和恵イチ推しの1枚をピックアップしてみなさんにご紹介しています。レビューを読んで気になったらぜひお買い求めくださいね! 「ギャラン堂」に買いに来てくれると嬉しいのですが、何度も申し上げますが「ギャラン堂」は架空のレコードショップですので、間違ってもネットで探したりしないでくださいね……。

 

【今月の推薦盤】

「岩崎宏美 紙ジャケ復刻シリーズ(10タイトル)」 各2300円(税別)

今月ご紹介するのは、紙ジャケにて復刻した岩崎宏美さんが70年代にリリースしたオリジナル・アルバム10タイトルです。2007年よりビクターにて発売されて以降、入手困難となっていたこのシリーズを、2018年6月27日にタワーレコードが限定復刻してリリース。ビジュアルの再現性の高さをそのままに、価値あるボーナス・トラックの追加収録などでさらにヴァージョンアップした完全生産限定盤・紙ジャケCDとなっています。

 

この10枚のアルバムでは、1975年にデビューした16歳から二十歳を越えるまでの思春期から大人へと変貌してゆく過程があり、デビューした時点で既に抜群の歌唱力を持っていた彼女ではありますが、まだ少女の面影を残した初々しいその声が、1年1年を重ねるごとにつれ、憂いと色気を帯びて深化してゆく彼女の成長を垣間見ることができます。歌うことで初恋や失恋や様々な感情を経験していく歌手としての青春時代は、その楽曲の数だけ濃密な経験を重ねた分、普通の女の子とは違う速度で大人になっていくのです。

 

今回、岩崎宏美さんの70年代の初期のアルバムを取り上げるにあたって、ワタシが注目していきたいのは「母音」の声色の変化です。デビュー当初のまだ初恋しか知らないような初々しい声が、失恋の歌を歌い重ねてゆくことでゆっくりと悲しみの色に染まっていく過程を、彼女の伸ばす母音の音色に見ることができます。それこそが、岩崎宏美さんという歌手の本質的な魅力であり、彼女が女として成長してゆく過程とともに、その時々の同世代として生きるの女の子、もしくは女たちの抱く「悲しみ」を代わりに背負って歌い続けた慈悲深き行いが、いずれ「聖母たちのララバイ(マドンナたちのララバイ」)という歌と出会いで、彼女をマリア様の域へと到達させるわけです。

 

ひとりの少女が「歌」によって悲しみの色に気づき、その色を愛し、そして深く染まってゆく……、そんな女としての業さえ感じる彼女の憂いある声の魅力を、この10枚でぜひ感じ取ってもらえたらと思います。

(撮影:下村しのぶ)

 

「あおぞら +1」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1975年9月5日

1. ロマンス(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
2. はだしの散歩(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 穂口雄右)
3. ささやき(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 穂口雄右)
4. 私たち(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
5. 二重唱(デュエット) (作詞: 阿久 悠、作・編曲: 萩田光雄)
6. 空を駈ける恋(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 馬飼野康二)
7. 愛をこめて(作詞: 千家和也、作・編曲: 穂口雄右)
8. 涙のペア・ルック(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
9. 月見草(作詞: 阿久 悠、作曲: 筒美京平、編曲: 萩田光雄)
10. 美しいあなた(作詞: 千家和也、作・編曲: 穂口雄右)
11. この広い空の下(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 馬飼野康二)
12. そうなのよ <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
ファーストアルバムは、特大平仮名で「あ」「お」「ぞ」「ら」と書かれた、当時のビクターによくあるタイポセンス皆無のジャケットデザイン。麻丘めぐみさんとか仲 雅美さんのレコードにもよく見かけます。ま……それは置いておいて、阿久 悠/筒美京平コンビによる5曲目の「二重唱(デュエット)」でデビューを果たした彼女の声は朗らかに初々しくも、しっかりと情感を表現できる歌唱力はすでに身につけていて、16才にしてすでに貫禄があります。このデビュー曲以降、阿久 悠センセーは彼女の成長を側で見守るかのように、その年頃の恋の喜びや悲しみなどを歌で経験させながら、思春期の多感な時期をしっかりとサポートしていくのです。おすすめは8曲目「涙のペア・ルック」(作曲/筒美京平)、そしてボーナス・トラック「そうなのよ」(作曲/筒美京平)。

 

「ファンタジー +10」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1976年2月10日

1. パピヨン(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
2. キャンパス・ガール(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
3. ファンタジー(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
4. 愛よ、おやすみ(作詞: ちあき哲也、作・編曲: 筒美京平)
5. 感傷的(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
6. おしゃれな感情(作詞: ちあき哲也、作・編曲: 筒美京平)
7. ひとりぼっちの部屋(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 穂口雄右)
8. グッド・ナイト(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 穂口雄右)
9. 月のしずくで(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
10. センチメンタル(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
11. パピヨン(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>
12. キャンパス・ガール(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>
13. ファンタジー(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>
14. 愛よ、おやすみ <ボーナス・トラック>
15. 感傷的 <ボーナス・トラック>
16. おしゃれな感情(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>
17. ひとりぼっちの部屋(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>
18. グッド・ナイト <ボーナス・トラック>
19. 月のしずくで(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>
20. センチメンタル(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
当時人気DJだった「糸井五郎」さんがノン・ストップで楽曲を繋げていくという、セカンド・アルバムにして企画性がかなり高い珍盤にして名盤。数曲を除いてほとんど作曲は筒美京平センセーによるもの。当時ディスコ・サウンドに傾倒していた京平センセーが、岩崎宏美というDIVAを手に入れて量産されていく上質なディスコ歌謡を堪能できます。おすすめは4枚目のシングルでもある「ファンタジー」。やはり名曲。そして4曲目の「愛よ、おやすみ」もおすすめ。後に香坂みゆきさんもカバーされています。

 

「飛行船 +2」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1976年7月25日

1. 未来(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
2. 地平線の彼方(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
3. サマー・グラフィティ(作詞: ちあき哲也、作曲・編曲: 穂口雄右)
4. ワンウェイ・ラブ(作詞: 松本隆、作・編曲: 萩田光雄)
5. 夏からのメッセージ(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
6. ケン待っててあげる(作詞: ちあき哲也、作曲・編曲: 穂口雄右)
7. 霧の日の出来事(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 穂口雄右)
8. さよならがビショビショ(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 穂口雄右)
9. 美しい夏(作詞: 松本 隆、作・編曲: 萩田光雄)
10. 愛の飛行船(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
11. 霧のめぐり逢い <ボーナス・トラック>
12. 感傷時代 <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
1曲目いきなり「未来」で急上昇! 飛行船はこの曲で夏の大空へと飛び立ちます。この「未来」はもちろん、収録された曲はどれも名曲で、筒美京平さんは然り、萩田光雄さん、穂口雄右さんと、編曲家としても才能高き彼らによるソングライティングもあり、そこがいい意味で一癖ある通好みなアルバムとして仕上がっています。その中でも一押しは「ワンウェイ・ラブ」「美しい夏」。萩田光雄さんのソングライティングとアレンジの美しさを堪能されたい。アーリー岩崎宏美アルバムのなかでワタシ的ベスト3。

 

「ウィズ・ベスト・フレンズ +2」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1977年5月25日

1. 悲恋白書(作詞: 阿久 悠、作曲: 大野克夫、編曲: 萩田光雄)
2. 砂の慕情(作詞: ちあき哲也、作曲・編曲: 穂口雄右)
3. メランコリー日記(作詞: 阿久 悠、作曲: 大野克夫、編曲: 青木望)
4. わたしの1095日(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
5. 平行線(作詞: ちあき哲也、作曲・編曲: 穂口雄右)
6. 学生街の四季(作詞: 阿久 悠、作曲: 川口真、編曲: 萩田光雄)
7. パパにそむいて(作詞: 阿久 悠、作曲: 三木たかし、編曲: 田辺信一)
8. コンサート(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
9. 花のことづけ(作詞: 櫛田露孤、作曲: 中山大三郎、編曲: 田辺信一)
10. 想い出の樹の下で(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
11. 愛をどうぞ(作詞: 阿久 悠、作曲: 大野克夫、編曲: 萩田光雄)
12. さよならそして自由へ(作詞: 中山大三郎、作曲: うすいよしのり、編曲: 田辺信一)
13. ドリーム <ボーナス・トラック>
14. スイート・スポット <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
このアルバムで一気に岩崎宏美さんのヴォーカルが大人びてきます。この頃にもしや失恋なんかをしたのでしょうか……? 全編彼女の歌声にどこか憂いが漂っています。作曲陣も、筒美京平さん以外に川口真さん、三木たかしさん、そして中山大三郎さんまで参加しており、京平センセーによるリズミカルでポップな楽曲から、しっとりと歌い上げるような楽曲へとシフトしています。恐らく彼女も大人になるにつれ、そういう楽曲と出会いたいという気持ちがあったのではないでしょうか。とはいってもやはり8枚目のシングルでもある京平センセー作「想い出の樹の下で」は最高なわけです。この一聴明るく突き抜けるような歌も、ちゃんと恋を知ってそれを失った悲しみを知った上での声になってます。だからこそ切ない。ボーナス・トラックで加えられた7枚目のシングル「ドリーム」と聴き比べればよく分かります。7枚目と8枚目の間に一体何があったというのでしょう?

 

「思秋期から…男と女 +1」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1977年10月5日

1. 思秋期(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:三木たかし)
2. ランボルギーニが消えて(作詞: 阿久 悠、作曲・編曲:三木たかし)
3. 男と女(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:三木たかし)
4. 恋夏期(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:三木たかし)
5. 個人指導(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:川口真)
6. 煙草の匂いがする(作詞:阿久 悠、作曲:川口真、編曲:船山基紀)
7. メランコリー・ジュース(作詞:阿久 悠、作曲:川口真、編曲:船山基紀)
8. 幸福号出帆(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:川口真)
9. チェイス(作詞:阿久 悠、作曲:大野克夫、編曲:船山基紀)
10. ピアノ弾きが泣かせた(作詞:阿久 悠、作曲:大野克夫、編曲:萩田光雄)
11. ウエルカム・ホテル(作詞:阿久 悠、作曲:大野克夫、編曲:萩田光雄)
12. BOO BOO(作詞:阿久 悠、作曲:大野克夫、編曲:船山基紀)
13. 折れた口紅 <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
このアルバムにして、ついに彼女の楽曲は筒美京平センセーの手から離れます。しかし作詞は変わらず全曲阿久 悠センセーによるもの。彼女のヴォーカルを最大限に活かしたスローでメランコリックな曲調を中心としたアルバムになっています。大人へと脱皮していく彼女のためにじっくりと作り込まれたような、作り手の愛情さえも感じる名盤です。このアルバムが出来上がった時、京平センセーはどう思ったでしょうか。ディスコ・サウンドよりも叙情的な楽曲のほうが、本来の彼女の素質に合っているのかもしれない……と感じたかもしれません。そのくらい、彼女の魅力が存分に引き出されています。(しかし京平センセーはその後「シンデレラ・ハネムーン」という最強ディスコ歌謡で彼女を次のステージへ誘うのですが……)。アルバムタイトル曲「思秋期」は間違いなく名曲ですが、それ以外もどれもクオリティー高く名曲でおすすめするのが難しいほど。アーリー岩崎宏美アルバムのワタシ的ベスト1。

 

「二十歳前… +4」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1978年4月5日

1. 二十才前(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:穂口雄右)
2. クエッション・マーク(作詞:阿久 悠、作曲:三木たかし、編曲:船山基紀)
3. 熱帯魚(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:川口 真)
4. 夏のたまり場(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:川口 真)
5. ニッカ・ポッカ(作詞:阿久 悠、作曲:三木たかし、編曲:船山基紀)
6. ザ・マン(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:穂口雄右)
7. 何かが起こりそうな朝(作詞:東海林良、作曲:大野克夫、編曲:船山基紀)
8. 季節のかほり(作詞・作曲:丸山圭子、編曲:佐藤 準)
9. つめたい抱擁(作詞:東海林良、作曲:大野克夫、編曲:船山基紀)
10. ヴェニスの花嫁(作詞:中里 綴、作曲・編曲:萩田光雄)
11. 暁(作詞:中里綴、作曲・編曲:萩田光雄)
12. 今様つづり(作詞・作曲:丸山圭子、編曲:佐藤 準)
13. あざやかな場面 (ボーナス・トラック)
14. いちご讃歌 (ボーナス・トラック)
15. ひとりぼっちの部屋 (イントロ・ロング・バージョン) (ボーナス・トラック)
16. 二十才前 (イニシャル・バージョン) (特別収録音源)

 

<和恵のチェック・ポイント>
前回のアルバム「思秋期」で19歳を迎えた後、残り最後の10代を歌った次のアルバム「二十歳前…」ではどんな二十歳前が描かれているのか……と思いきや、憂いに満ちた前作とは打って変わって割と歌謡色が強めで元気な歌が多く、歌唱も力強い。B面(7曲目以降)からは東海林 良や中里 綴や丸山圭子などの新しいクレジットも見られ、新しい作家陣で彼女の次なる歌手としての方向性を探っているような、少し迷いのあるようなアルバム。11枚目のシングル「思秋期」よりも先にリリースしていた10枚目のシングル「熱帯魚」を、12枚目のシングル「二十歳前」と合わせてアルバムとして収録するためのアルバムだったのか。その「熱帯魚」のB面だった「夏のたまり場」という曲が良曲。同じく「二十歳前」のB面で、穂口雄右さんらしいドラマティックなアレンジが素晴らしい「ザ・マン」も良き。「ニッカ・ポッカ」という謎なタイトルは内容もどこかやけっぱち感があって謎。

 

「パンドラの小箱 +4」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1978年8月25日

1. 媚薬(作詞: 阿木燿子、作曲・編曲:筒美京平)
2. パンドラの小箱(作詞: 阿木燿子、作曲・編曲:筒美京平)
3. コントラスト(作詞: 島 武実、作曲: 筒美京平、編曲: 船山基紀)
4. パンドラの小箱(バリエーション)(作曲・編曲: Dr.ドラゴン&サウンド・オブ・アラブ)
5. ピラミッド(作詞: 橋本 淳、作曲・編曲:筒美京平)
6. カンバセーション(作詞: 橋本 淳、作曲・編曲:筒美京平)
7. シンデレラ・ハネムーン(作詞: 阿久 悠、作曲・編曲:筒美京平)
8. 想い出は9月ゆき(作詞: 島 武実、作曲・編曲:筒美京平)
9. ミスター・パズル(作詞: 島 武実、作曲・編曲:筒美京平)
10. L(作詞: 阿久 悠、作曲・編曲:筒美京平)
11. 南南西の風の中で(作詞: 阿久 悠、作曲・編曲:筒美京平)
12. パンドラの小箱(リプライズ) (作曲・編曲: Dr.ドラゴン&サウンド・オブ・アラブ)
13. さよならの挽歌 <ボーナス・トラック>
14. 夕暮れメヌエット <ボーナス・トラック>
15. 春おぼろ <ボーナス・トラック>
16. 吐息ばかり <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
「想い出の樹の下で」以降、筒美京平センセーの楽曲から離れて、二十歳前の多感な少女から大人の女へと変わるための“脱皮”期間を見事消化した後、手を広げて待ち受けていたかのように、とびきりの楽曲(しかもやっぱりディスコ)で大人の世界へと誘った京平センセー全編作曲によるアルバム「パンドラの小箱」。その楽曲の難解さとサウンドの重厚さに、京平センセーの彼女への思い入れと力の入り用が伺えます。ファンキーなベーズに腰に響く重めなドラムの音でスタートする1曲目「媚薬」からすでに攻めまくり、その後も次々と難解かつダンサブルでエキゾチックな曲たちを歌いまくる彼女には、1年前のアンニュイな時代にケリをつけたような潔ささえ感じます。しかし14枚目のシングルでヒット曲でもある「シンデレラ・ハネムーン」では、早くも不倫の恋をスタートさせており、思春期の憂いのベクトルは傷ついた後の強さを身につけて、大人の女の憂いへとさらに深化を続けるのです。そこが彼女の宿命なのでしょうか。アーリー岩崎宏美アルバムのワタシ的ベスト2。

 

「ALBUM +10」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1978年10月25日

1. この道
2. 赤とんぼ|七つの子
3. 宵待草
4. 浜千鳥
5. 花嫁人形|叱られて
6. 花
7. 雪の降る町を
8. ペチカ
9. 椰子の実
10. 青い目の人形|赤い靴
11. ちいさい秋みつけた
12. 冬の夜|母さんの歌
13. 青い目の人形 (NHK「みんなの童謡」より) <ボーナス・トラック>
14. ぼくのプルー (NHK「みんなのうた」) (モノラル録音) <ボーナス・トラック>
15. 走馬燈 (NHK「みんなのうた」) (モノラル録音) <ボーナス・トラック>
16. 春おぼろ <オリジナル・カラオケ集VI>
17. 夏に抱かれて <オリジナル・カラオケ集VI>
18. スローな愛がいいわ <オリジナル・カラオケ集VI>
19. 女優 <オリジナル・カラオケ集VI>
20. 銀河伝説 <オリジナル・カラオケ集VI>
21. 愛の生命 <オリジナル・カラオケ集VI>
22. 摩天楼 <オリジナル・カラオケ集VI>

 

<和恵のチェック・ポイント>
ここで突然、童謡のカバーアルバムをリリース。おかっぱヘア(自前)にかすりの着物を来た童(わらべ)スタイルのジャケ写。それはそれはもう良くお似合い。美しいメロディと詞を持つ童謡にチャレンジしたいと思うのは、歌手としてさらなる成長を望む上でのことだと思いますが、伸びやかな彼女の歌唱と、トレードマークでもあるおかっぱヘアというポテンシャルを活かし、スムーズに童謡の世界へ誘ってくれます。

 

「恋人たち +7」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1979年3月9日

1. 恋人たち(作詞: 阿木燿子、作曲・編曲:筒美京平)
2. 白いバラ(作詞・作曲:Cat Stevens、訳詞:片桐和子)
3. シェルブールの雨傘(作詞: Jacques Demy、作曲:Michel Legrand、訳詞: 片桐和子)
4. ラ・ボエーム(作詞:Jacques Plante、作曲:Charles Aznavour、訳詞:菅美沙緒)
5. 黒いオルフェ(作詞・作曲:A.Maria-L.Bonfa、訳詞:片桐和子)
6. この想いをあなただけに(作詞: Luciano Beretta、作曲:Alberto Anelli、訳詞:なかにし礼)
7. 行かないで(作詞・作曲:Jacques Brel、訳詞:菅美沙緒)
8. 禁じられた遊び(Traditional 作詞:片桐和子)
9. マイ・ラブ(作詞・作曲:Paul & Linda McCartney、訳詞:櫛田露孤)
10. 白い恋人たち(作詞: Pierre Barouh、作曲:Francis Lai、訳詞:永田文夫)
11. 思い出さないで(作詞・作曲:中山大三郎、編曲:青木 望)
12. 甘い生活 <ボーナス・トラック>
13. 再会 <ボーナス・トラック>
14. ジョニイへの伝言 <ボーナス・トラック>
15. 五番街のマリーへ <ボーナス・トラック>
16. ブーツをぬいで朝食を <ボーナス・トラック>
17. 憎みきれないろくでなし <ボーナス・トラック>
18. 立ちどまるなふりむくな <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
前回の童謡カバーに続き、お次は洋楽・映画音楽をカバーしたアルバム「恋人たち」をリリース。そのタイトル曲「恋人たち」のみ阿木燿子センセーと筒美京平センセーによるオリジナル曲、そして11曲目に何故か「思い出さないで」という島崎恵子という歌手がリリースした曲のカバーが唐突に収録されています(のちにシングルカット)。当時、伊東ゆかりさんが司会を勤めていたTBSの日曜日夜11時に放送していた「SOUND INN ‘S’」という映画音楽や洋楽を主に歌う番組があり、そこに出演できるのは、そういった楽曲をレパートリーとして歌える実力のある大人の歌手たちで、彼女もそのランクの歌手へレベルアップするための挑戦だったのだろうと想像出来ます。

 

「10カラット・ダイヤモンド +7」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1979年10月5日

1. スリー・カラット・ダイヤモンド(作詞:阿木燿子、作曲・編曲:川口 真)
2. マチネへの招待(作詞:阿木燿子、作曲・編曲:穂口雄右)
3. 東京-パリ(作詞:三浦徳子、作曲・編曲:穂口雄右)
4. 麗しのカトリーヌ(作詞:三浦徳子、作曲・編曲:佐藤 準)
5. めぐり逢い伝説(作詞:阿木燿子、作曲:筒美京平、編曲:後藤次利・船山基紀)
6. 小夜曲(セレナーデ)(作詞:阿木燿子、作曲:筒美京平、編曲:後藤次利・船山基紀)
7. 水曜の朝、海辺で…(作詞:三浦徳子、作曲・編曲:船山基紀)
8. 哀しみは火のように(作詞:三浦徳子、作曲・編曲:佐藤 準)
9. テーブルの下(作詞:三浦徳子、作曲・編曲:船山基紀)
10. 微笑の翳り(作詞:阿木燿子、作曲・編曲:川口 真)
11. 夏に抱かれて <ボーナス・トラック>
12. ラブ・アラベスク <ボーナス・トラック>
13. 万華鏡 <ボーナス・トラック>
14. 泣きながら目覚めて <ボーナス・トラック>
15. 砂の伝説 <ボーナス・トラック>
16. 時の女神 <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
カバーアルバムを2枚挟み、前作「パンドラの小箱」以来のオリジナル・アルバムは、シングルカットなしのアルバムのみでしか聴けない楽曲ばかりで構成されていて、筒美京平センセー、川口 真センセー、穂口雄右センセー、船山基紀センセー、佐藤 準センセーの5人が2曲ずつ書き下ろした豪華な内容です。そして、作詞が阿木燿子女史と三浦徳子女史という気鋭の女性作詞家であることもポイント。梓みちよ「淋しい兎を追いかけないで」の岩崎宏美版といった感じの1曲目「スリー・カラット・ダイヤモンド」を皮切りに、気品あるエレガントな大人の女性が次々と描かれます。ビッグネームに並んであまり馴染みのない佐藤 準さんですが、しかし彼の楽曲がこのなかで際立ってとても良いです。個人的に歌謡曲のなかでも1番好きなサウンドと世界観で、個人的にはアーリー岩崎宏美アルバムベスト3に入れたい気持ち満々ですが、通マニア好みなアルバムともいえるので残念ながら外します。でもおすすめ。

 

ということで、70年代にリリースされた、アーリー岩崎宏美アルバム10タイトルをレビューさせていただきました。歌手として大尊敬している岩崎宏美さんを、私自身も歌手でありながら客観的にレビューするなんておこがましく恐縮しまくりでしたが、歌手として、そして女として、歌を歌い重ねることで深みを増してゆくその変化をこれらのアルバムと共に堪能していただきたく、取り上げさせていただきました。出来れば1枚目から全部通して聴いてもらいたい!

 

どのアルバムも名曲揃いで捨て曲がないように思えるのは、もちろん彼女に楽曲を提供する作家の皆さんの力の入り用が格別というのもあるでしょうが、どんな楽曲でもその魅力を100パーセント引き出すことが出来る岩崎宏美さんの歌唱力があってこそだと思います。だからこそ私たちは安心して、彼女の歌う歌に心を預けることが出来るのではないでしょうか。どのアルバムを買っても損はありません! ぜひとも、今回のレビューを参考に1枚でもお手に取っていただけると幸いです。

 

レコードショップ「ギャラン堂」、次回も素敵なアルバムをご紹介出来たらと思います。どうぞお楽しみに!(また3か月後とかにならないようにしなきゃ…)

 

【インフォメーション】

ギャランティーク和恵さんがメンバーを務めるコーラスユニット・星屑スキャットが、9月29日、30日の2daysでライブ「惑星たちのダンステリア」を開催します。結成13年目にして初となるアルバム「化粧室」をリリースして勢いに乗る星屑スキャットの華麗なステージをお見逃しなく! チケットは公表発売中です!

【公演名】星屑スキャットLIVE 2018「惑星たちのダンステリア」
【開催日】2018年9月29日(土)1公演/30日(日)2公演

 

◆9月29日(土)
開場:17:30/開演:18:15
◆9月30日(日)
第1公演 開場:13:30/開演:14:15
第2公演 開場:17:15/開演:18:00

 

【会場】クラブeX(品川プリンスホテル内)
〒108-8611 東京都港区高輪4-10-30
TEL:03-3440-1111
http://www2.princehotels.co.jp/shinagawa/clubex/access.html

 

【料金】全席指定 ¥7000 (税込・入場時別途ドリンク代)
※未就学児童入場不可
※お一人様各公演4枚まで

 

【チケット発売中】
イープラス
ローソンチケット Lコード:72108
チケットぴあ Pコード:120-511

詳細はH.I.P.まで
公式HP→https://www.hipjpn.co.jp/archives/49753

 

撮影協力:天盛堂(亀戸)