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2018/7/27 21:00

【ギャラン堂】少女から大人へ……「70年代の岩崎宏美」の軌跡を知る10枚をギャランティーク和恵が聴く

みなさんこんにちは! いかがお過ごしでしょうか? ギャランティーク和恵です。「レコードショップ ギャラン堂」3か月ぶりのオープンです! ……って、3か月もお店休むなんて随分な殿様営業だこと! まぁ、「ギャラン堂」は“架空”のレコードショップですし、商店街のなかでひっそり気ままにやっているようなそんなお店ですから、そのくらいのユルいペースでどうか宜しくお願いいたします。でも、そんな寂れた商店街の活気を取り戻すため、2軒先のナショナルの電気屋さんとお向かいの金物屋さんと協力して町おこしカラオケ大会を開き、商店街のアイドルとして自慢の美声を響かせちゃったりする今日この頃です!(妄想開始)

↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

この「レコードショップ・ギャラン堂」では、各レコード会社からリリースされる歌謡曲のコンピレーションCDや復刻アルバムCDなどから、和恵イチ推しの1枚をピックアップしてみなさんにご紹介しています。レビューを読んで気になったらぜひお買い求めくださいね! 「ギャラン堂」に買いに来てくれると嬉しいのですが、何度も申し上げますが「ギャラン堂」は架空のレコードショップですので、間違ってもネットで探したりしないでくださいね……。

 

【今月の推薦盤】

「岩崎宏美 紙ジャケ復刻シリーズ(10タイトル)」 各2300円(税別)

今月ご紹介するのは、紙ジャケにて復刻した岩崎宏美さんが70年代にリリースしたオリジナル・アルバム10タイトルです。2007年よりビクターにて発売されて以降、入手困難となっていたこのシリーズを、2018年6月27日にタワーレコードが限定復刻してリリース。ビジュアルの再現性の高さをそのままに、価値あるボーナス・トラックの追加収録などでさらにヴァージョンアップした完全生産限定盤・紙ジャケCDとなっています。

 

この10枚のアルバムでは、1975年にデビューした16歳から二十歳を越えるまでの思春期から大人へと変貌してゆく過程があり、デビューした時点で既に抜群の歌唱力を持っていた彼女ではありますが、まだ少女の面影を残した初々しいその声が、1年1年を重ねるごとにつれ、憂いと色気を帯びて深化してゆく彼女の成長を垣間見ることができます。歌うことで初恋や失恋や様々な感情を経験していく歌手としての青春時代は、その楽曲の数だけ濃密な経験を重ねた分、普通の女の子とは違う速度で大人になっていくのです。

 

今回、岩崎宏美さんの70年代の初期のアルバムを取り上げるにあたって、ワタシが注目していきたいのは「母音」の声色の変化です。デビュー当初のまだ初恋しか知らないような初々しい声が、失恋の歌を歌い重ねてゆくことでゆっくりと悲しみの色に染まっていく過程を、彼女の伸ばす母音の音色に見ることができます。それこそが、岩崎宏美さんという歌手の本質的な魅力であり、彼女が女として成長してゆく過程とともに、その時々の同世代として生きるの女の子、もしくは女たちの抱く「悲しみ」を代わりに背負って歌い続けた慈悲深き行いが、いずれ「聖母たちのララバイ(マドンナたちのララバイ」)という歌と出会いで、彼女をマリア様の域へと到達させるわけです。

 

ひとりの少女が「歌」によって悲しみの色に気づき、その色を愛し、そして深く染まってゆく……、そんな女としての業さえ感じる彼女の憂いある声の魅力を、この10枚でぜひ感じ取ってもらえたらと思います。

(撮影:下村しのぶ)

 

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