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2021/5/2 19:00

Juice=Juice金澤朋子が敬愛する作家・江國香織のお気に入り5作品を語り尽くす!

個性派アイドル集団「ハロー!プロジェクト」のメンバーが、趣味や大好きなものを徹底的に語り尽くす特別企画。第4弾は4月28日に14thシングル『DOWN TOWN/がんばれないよ』をリリースするJuice=Juiceから、大の読書好きで、SNSを通して好きな本を発信している金澤朋子が登場。もっとも敬愛する作家・江國香織の魅力、お気に入りの江國作品5選、江國作品から受けた影響などを縦横無尽に語ってもらった。

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:猪口貴裕)

 

Juice=Juiceオフィシャルサイト

 

ネガティブ思考をポジティブに捉えるきっかけになった一冊

――金澤さんの読書好きはファンの間でも有名で、ブログなどでも度々おススメの本を紹介していますが、今回は中でも大好きな作家・江國香織さんについて語ってもらいたいと思います。まずは読書が好きになったきっかけから教えてください。

 

金澤 中学生ぐらいから読書に目覚めたんですけど、父の影響が大きくて。よく父が小説を読んでいたので、その中から借りて読むうちに、自分でも本を買うようになりました。最初は小説しか読まなかったんですけど、徐々にノンフィクションやエッセイも読むようになって、どんどん幅は広がっています。

 

――今まで金澤さんがおススメした本を見ると、かなり雑食な印象です。

 

金澤 ジャンルを問わず読むように意識していますが、ミステリーや恋愛ものを好む傾向にあります。

 

――月の平均読書数はどれぐらいですか?

 

金澤 仕事の状況などによってバラバラですが、少なくとも5冊、平均して10冊以上の本を読みます。わりと読むのは早いほうなので、1日で2〜3冊読むときもありますね。

 

――読む本はどうやって選ぶことが多いんですか?

 

金澤 書店にもよく行きますし、ブックオフなどの中古ショップにも行くんですが、自分だけで選んでしまうと、どうしても好きな系統や作者さんに偏ってしまうじゃないですか。そうならないように表紙だけで決めたり、面白そうだなと思ったタイトルは事前情報がなくても買ってみたり、そういう風に選んでいるので雑食になっています。

 

――最近、表紙で選んで当たりだった本はありますか?

 

金澤 表紙で惹かれるのは自己啓発本が多いんですけど、最近だと『ネガティブ思考を美味しくいただくために』(KADOKAWA刊)という本を表紙買いしました。メイクアップアーティストのVanessaさんという方が書かれた本で、正直この本を手に取るまで存じ上げませんでした。私はネガティブ思考で、ありとあらゆる出来事を、まずは最悪なケースを考えてから動くんです。自分にあるネガティブと付き合っていく中で、たくさん悩みがあったので、どうしたらポジティブになれるんだろうと昔から思っていました。でも、この本を読んで、無理にポジティブになろうとすること自体がストレスになるんだと気付かされて。ネガティブである自分を受け入れることが新しい一歩になるんだ、ネガティブだからこそいい面もあるんだと、少し考え方がポジティブになりました。

 

同じ女性として尊敬できる部分がたくさんある

――江國作品を手に取ったきっかけは覚えていますか。

 

金澤 最初に読んだ作品は覚えてないんですけど、江國さんは映像化された作品が多いじゃないですか。なので話題になった作品から読み始めて、すぐにハマって、過去の作品から最新作まで読むようになりました。江國さんのインタビューも見つけたら絶対に読ませていただくんですが、作品だけではなく人としても大好きです。

 

――他の作家と比べて、江國作品が特別なのはどういうところでしょうか。

 

金澤 他の作家さんでも、読んでいるうちに心を震わされる瞬間は多々あるんですけど、江國さんの作品は美しい表現がとにかく多くて、同じ女性として尊敬できる部分がたくさんあります。また江國さんが作り出す登場人物ひとり一人が個性的で、現実にいそうでいないような面白さがあって、それぞれ愛すべき存在です。

 

――事前にお気に入りの江國作品を5作挙げていただいていますが、3作が長編、2作が短編で、長編のラインナップは『神様のボート』(新潮社)、『ウエハースの椅子』(新潮社)、『落下する夕方』(KADOKAWA)です。『神様のボート』は消えた夫を待ちながら引っ越しを繰り返す母・葉子と、娘・草子の物語で、母と娘の視点で交互に描かれていきます。

 

金澤 どんどんお母さんが心を病んでダメになっていくんですが、それを支える娘がけなげで、いろいろ考えさせられます。普通に考えたら幸せな生活ではあるんですけど、いつまでも探し人が見つからない旅に出ているような感覚で、お母さんが常に寂しい感情を抱いているのが、読み手にもひしひしと伝わってきて切ないです。これは現実なのか、夢なのかと、どちらの視点でも考えられるラストで、果たして報われたのだろうかと余韻が残ります。心に残る言葉がたくさんあるんですが、中でも「骨ごと溶けるような恋をして」という美しい表現が印象的ですね。

 

――『ウエハースの椅子』は、古いマンションに一人で住む38歳の画家の女性が、恋人と満ち足りた日々を送りながらも、その恋人がいないときは過去を思い返しながら深い孤独に囚われていくストーリーです。

 

金澤 作品の冒頭、主人公は満ち足りた生活を送っているように感じるのですが、読み進めるうちに何か足りない部分があるんだなと気付かされて。人間の貪欲さというか、満たされているはずなのに、もっと何かが欲しいみたいな感情が伝わってくるんです。読む前に『ウエハースの椅子』というタイトルから抱いたイメージは、「もろくて、すぐに壊れちゃいそう」だったんですけど、読んでみるとストーリーに合っている素敵なタイトルだなと思いました。『神様のボート』と同じく、この作品も胸に刺さる言葉が多いんですが、表現が繊細で女性らしさを感じますし、ちょっと霧がかかったような独特の世界観が好きです。

 

――『ウエハースの椅子』はやや難解なところもありますが、『落下する夕方』は初めて江國作品を読む読者にもとっつきやすいですよね。

 

金澤 『ウエハースの椅子』は感情移入するのが難しいですけど、『落下する夕方』は自分に当てはめて読むことができます。冒頭から「こんなことある?」という流れで、はちゃめちゃな設定ではありますが……(笑)。主人公の梨果が、長年同棲していた彼氏の健吾に「新しく好きな人ができた」と突然別れを告げられ、健吾が好きな人・華子と梨果が、まさかの同棲生活を始めるという意味が分からない展開。華子がすごく独特な人なんですよね。男女問わず、周りにいる人たちをとりこにしていくんですけど、それを意識的にやっている訳ではないので、嫌味な感じは全くないんです。なので読者の私も、どんどん華子の魅力に気付かされます。

 

――華子のどういうところに魅力を感じたんですか?

 

金澤 枠にハマらない自由奔放なところです。どちらかというと私は枠内に収まることしかしないタイプなので、華子の生き方を見ていると私も挑戦しなきゃなと思います。さすがに華子は破天荒すぎるんですけど、参考にできる部分もあります。たとえばライブのパフォーマンスでも、私は「フリーで踊っていいよ」「好きなように歌っていいよ」と言われても、自分の中で2、3種類パターンを決めて、そのどれかをやるぐらいの変化しか付けられないんです。もっとライブ感を出すためには、本当にその場で思いついたことや、その瞬間にやりたいと思ったことをやることも時には必要なのかなと華子から学びました。

 

――ラストのほうで華子は予想外の行動を起こしますが理解はできましたか?

 

金澤 何度も『落下する夕方』を読み返して、登場人物それぞれの心境を考えてみたんです。みんな華子に翻弄されていく訳ですけど、じゃあ華子は何を思って、そういう行動に走っていたのか考えてみると、常に孤独を感じていたのかなと。これは『神様のボート』と『ウエハースの椅子』も含めて、江國さんの作品に共通しているんですけど、何をしても満たされない人間の気持ちが繰り返し描かれているんですよね。なので何度も読むうちに、華子が選んだ行動も結果的にベストだったのかなと思わされるような不思議な感覚があって。読んだ後に、「あれでよかったのだろうか」とか「みんなは幸せになれたのだろうか」とか、いろいろ考えさせられる作品ですね。

 

――ぶっとんだキャラクターも多いですけど、それぞれ好感が持てますよね。

 

金澤 そうなんです! 健吾もありえないことをしているのに、「確かに華子が身近にいたらそうだよね」と理解できるんですよね。

 

江國作品がパフォーマンスの引き出しを増やしてくれた

――短編で選ばれたのは『号泣する準備はできていた』(新潮社)と『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』(集英社)です。

 

金澤 どちらの短編集も、自分だったら経験できないような悲しい恋愛や、女性特有の気持ちが描かれているんですけど、どの作品もはっきりした起承転結はないんです。

 

――スケッチっぽいというか。

 

金澤 そうですね。淡々と進んでいくような感じで、ここで話が終わるんだ、みたいな結末もあって。空気のような感じですーっと入ってくるような作品がたくさん収録されています。

 

――江國作品において、長編と短編の違いはどこに感じますか。

 

金澤 長編は事細かく設定が書かれていたり、そのときの主人公の気持ちが描写されていたりで、理解しやすいんです。一方で短編は自分で考えなきゃいけない部分が多いというか。その前に何があったんだとか、この後に何が起きたんだろうとか、描かれていない部分は読み手によって変わってくると思うんですよね。より想像力が必要なのは短編ですし、それが魅力でもあります。私自身、江國さんの短編を読むことで、想像力を養えたと思います。一つの作品でも、結末を何パターンも考えられるんです。私もパフォーマンスをする上で、歌詞に出てくる登場人物の気持ちになりきって考えることがあるんですけど、そういう引き出しを増やしてくれたのは江國さんの作品が大きかったです。

 

――改めて江國作品の魅力はどこにあると考えますか。

 

金澤 よく江國さんはインタビューなどで、「現実よりも言葉を信じる」と仰っているんですが、言葉を使って生きてらっしゃる江國さんらしい目線だなと思います。先ほど言ったように、何かと枠に収まってしまう私からしたら、「逆じゃないの?」と思ってしまいます。SNSで発信するにしても、「告知事項をまとめて」みたいな感じになりがちですからね。そういうルールが江國さんにはないんですよね。それが江國作品の美しさであり、魅力かなと思います。

 

――自分で物語を作ってみたいなという欲求はないんですか?

 

金澤 いろいろな小説を読んでいく中で、お話の途中で「自分だったら、こういうストーリーにするのにな」と思うこともありますし、たとえばハッピーエンドの作品でも、そうじゃない結末を読んでみたいなと感じることもあります。なので遠い未来ではありますけど、執筆活動みたいなことが自分でもできたら楽しそうだなと思います。ふんわりとした夢ですけどね(笑)。

 

――江國作品に限らず、小説を読むことでお仕事にプラスになっていることはありますか。

 

金澤 ミステリー作品も好きなんですけど、東野圭吾さんや伊坂幸太郎さんの作品を読むたびに、すべてをストレートに表現することだけが正解じゃないなと思っていて。たとえば楽曲を表現するときに、昔だったら、「この主人公は強気でセクシーだから、その路線で行こう」と単純に考えていたんです。でも今は、その主人公が内面に持っている弱さなどをチラチラ見せることも必要だなと考えますし、最初は強気に歌っていたのに、Bメロでは寂しそうに歌うとか、ミステリアスな部分があったほうが、よりぐっと惹かれるものがあるのかなと思います。観ている人に、「どうして、かなともはあそこで、あんな表情をしているんだろう」と思わせるきっかけに自分がなれたら面白いなと考えられるようになったのは、小説を読んでいるおかげです。

 

――歌詞を理解する上でも、読書は役立ちますよね。

 

金澤 自分たちは役者さんではないですけど、曲によっては演じている部分もあって。女性目線の曲は、自分にはない部分を表現することも多いので、そこは小説に学んだことが活かされています。小説を深く読むようになってからは、ライブを観るときの楽しみ方も変わってきて、より全体の構成が気になるようになりました。

 

――女性目線というお話が出ましたが、つんく♂さんの書く歌詞は女性から見ても共感できるというお話をよく聞きます。金澤さんはどう思いますか?

 

金澤 同意見ですね。つんく♂さんは、どこで女性の気持ちを学んでいるんだろう、どこから吸収して、それを放出しているんだろうって、ずっと気になっています。小説のように、主人公の気持ちを追いやすいんですよね。強気な女の子とか、背伸びしている女の子の設定が多いですけど、そんな中で何か満たされない部分もあって。Juice=Juice初期の曲で言うと、「私が言う前に抱きしめなきゃね」や「イジワルしないで 抱きしめてよ」なんかは強い口調ですけど、直接描かれていない部分に弱さや寂しさを感じるんです。行間から「私を分かってよ!」という気持ちや可愛らしさがにじみ出ているんですよね。リリース当時は、単純に強気な表情で背伸びして歌おうとしか考えていなかったんですけど、今の私だと表現方法も変わりましたし、そこがつんく♂さんの楽曲の面白さです。

 

――最後に最新シングル『DOWN TOWN/がんばれないよ』の聴きどころを教えてください。

 

金澤 「DOWN TOWN」はシュガーベイブさんのカバーで、メンバーはあまり元曲を知らなかったので、最初はそういう曲を歌うんだぐらいの気持ちでした。でも父に話したら大興奮していましたし、お仕事で会うスタッフさんたちからもいいねと言われて、プレッシャーも感じるようになりました。元曲のバージョンとはアレンジも違うので、要所要所でJuice= Juiceらしさも感じてもらえるかなと思いますし、間奏部分の井上玲音ちゃんのボイパも今のメンバーだからこそできることです。こういう時期で、なかなか気軽にお出かけできないですが、この曲を聴いてウキウキした気分になっていただけたら何よりです。

 

――「がんばれないよ」は一転してバラード曲です。

 

金澤 タイトルだけ聞くと、それこそネガティブですが、誰もが経験しているであろう弱気な感情に、そっと寄り添うような曲です。「がんばれないよ」って、がんばりたい気持ちがあるからこその発言なので、1曲を通して主人公の心が変化していくところを追っていくと面白いですし、それに合わせて曲調も厚みが増していくドラマティックな楽曲なので、ぜひ聴いてほしいです。

 

 

金澤朋子(カナザワ トモコ)

1995年7月2日埼玉県出身。特技はアーチェリー(中学時代全国大会出場経験有り)。趣味はスクーバダイビング、読書、映画観賞、ラジオを聴くこと、メイドカフェへ行くこと。

 

【INFORMATION】

Juice=Juiceニューシングル
『DOWN TOWN/がんばれないよ』
4月28日発売

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