「鬼談百景」は、前回紹介した映画「残穢 -住んではいけない部屋-」の主人公で、実話怪談作家の”私”(竹内結子)に”読者から届いた手紙”という設定の、6人の監督による短編映画10本をまとめたアンソロジー。小野不由美の原作では百物語形式になっていて、「残穢」が100話目にあたる構成になっているのだとか。
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独りで見ても大丈夫! 「残穢-住んではいけない部屋ー」はジワジワくる怖さが新鮮
怪奇表現がバラエティに富んでいるのはもちろん、短尺ゆえ即効性のある怖さが詰まったお得な(?)1本です。映画好きには「ホラー映画界の次世代を担う精鋭監督カタログ」として使えるのも嬉しいところ。
筆者もホラーが好きで、書籍を読んだり怪談会に出かけたりしているのですが、実話怪談には「先祖が恨みを買って」「昔ここは戦場だった」などというわかりやすい(新倉イワオ的な)”オチ”は少ないような気がします。そこにあるのは”現象”で、話によっては不思議なだけで怖くもなかったり……。「女優霊」(中田秀夫監督 1996年)から始まったJホラーブーム以来、観客の怪談リテラシー(?)は右肩上がりなので、映像化する方は大変だと思います。動画サイトには素人が作った恐怖映像が溢れてる時代ですしね。
なので、この6監督にはがんばって欲しいのです。絶妙のカット割りを見せてくれる「続きをしよう」と、怪奇現象より人間が怖い「どろぼう」「密閉」の嫌〜な感じに、日本ホラー映画の未来が見えるような気がするのはワタクシだけでしょうか!?
【作品紹介】
「追い越し」中村義洋監督(「残穢 -住んではいけない部屋-」など)
心霊スポットへの深夜ドライブを趣味にしている2組のカップル。”出る”という噂のトンネルでは何もなかったものの、その先の、誰もいない山道で午前3時に出会ってしまった女とは。
「影男」安里麻里監督(『劇場版 零 』など)
孫と昼寝していたところ、「窓を叩く黒い影に襲われる夢」を見てうなされてしまったKさんの母親(根岸季衣)。夜になってKさんが帰宅し、昼間に見たのはやはり夢だとほっとしていたところに誰かが激しく窓を叩く音が!
「尾けてくる」安里麻里監督
部活で遅くなった高校生のSさん(久保田紗友)は、帰宅途中、林の中で身動きもせず立っているだけの薄気味悪い男と目が合ってしまう。しかし、その男はそこで首を吊っていたのだった……。
「一緒に見ていた」大畑 創監督(『へんげ』『ABC・オブ・デス2「OCHLOCRACY」』など)
高校教師(淵上泰史)は、教室で首を吊った女性事務員の遺体を発見してしまう。教師がヤリ捨てした女があてつけに自殺したらしい。そして、彼女は校内のあちこちに姿を現わし、とうとう真後ろに。
「赤い女」大畑 創監督
「赤い女の話をすると、彼女が怒って現れる」という。楽しいパーティーの最中に、同級生たちにその話をしてしまった転校生S(高田里穂)。瞬く間に赤い女の噂は新しい学校に広まってしまう。
「空きチャンネル」岩澤宏樹監督(『心霊玉手匣』シリーズなど)
深夜、ラジオの局ではないチャンネルから流れてくる女の声。露骨な自分語りが面白くてつい毎晩聞いてしまう高校生Y(高尾勇次)は、どんどんその声に取り込まれていく。
「どこの子」岩澤宏樹監督(『心霊玉手匣』シリーズなど)
夜遅くまで残業していた教師(小野孝弘)は、誰もいないはずの校内で赤いスカートの女の子を見かけてつい追いかけてしまう。「1人で残らない方がいいよ。いろいろあるから」と同僚には言われていたのだが……。
「続きをしよう」内藤瑛亮監督(『先生を流産させる会』『ライチ☆光クラブ』など)
「祟られる〜!」と盛り上がりながら墓地で鬼ごっこに興じる8人の子供たち。1人ずつケガをして抜けるのに、誰も「もうやめてみんな帰ろう」と言わない。なぜなら、そのたびに「続きをしよう」と”誰か”が言うから。
「どろぼう」内藤瑛亮監督(『先生を流産させる会』『ライチ☆光クラブ』など)
女子高生Tさん(萩原みのり)の近所の子だくさん一家の奥さんは異様にお腹が膨れているが「卵巣の病気」と言い張る。実は彼女には嬰児殺しの噂が…。後日見かけるとお腹はきれいにへこんでいたが、家の前で小さな男の子が「ぼく、溝に流されて死んじゃったの」と悲しそうに言うのだった。
「密閉」白石晃士監督(『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』など)
彼氏が出ていってから、自分の部屋のクローゼットを不気味に感じ始めたKさん。どんなにキチンと扉を閉じても勝手に開いてしまうからだ。どうやらそのなかの、元彼が拾ってきた大きなスーツケースに問題があるらしいが……。
夏休みも終盤にさしかかってきましたが、背筋も凍るホラー映画で涼しんでみてはいかがですか。