エンタメ
2016/9/10 18:00

The Strokesの背中を追ってーーバツイチ・アラサー女子の20代が終わりに差し掛かるお話

ちょうど1年前の今ごろ、写真展のモデルをする機会があった。そのときにいただいた感想で一番多かったのが「表情がいいね」。

 

これは、嬉しい。だって顔の造作を褒められたのならば、そういうふうに産んでくれた父母に感謝あるのみ! だが、表情や所作は自分が日々を過ごすなかで培うものだ。離婚をはじめ色々な経験を積み、「いい顔」をするようになったということだろう。

 

器量の良し悪しの問題ではない。「○○歳過ぎたら顔に責任をもて」「政治家の良し悪しは顔でわかる」などと言われるように、心は外見に出る。歳を重ねるにつれ、それは顕著になっていく。

 

「バンドが本物かどうかは、立ち姿で決まる」と断言した音楽評論家がいたが、つまり立ち姿がキマるバンドは、何かしら心に秘めたものがあるのだ。大物ミュージシャンは登場する瞬間、全能感すら漂わせている。

 

仕事で年間180本ほどライヴを観ていた時期に、その言葉を理解した瞬間があった。そのアーティストこそ「The Strokes(ストロークス)」だ。見惚れてしまったあまり、ライヴ中に財布をスられたほど。しかも終演後、「あんな財布くれてやる」って思うくらい余韻に浸った。

 

ストロークスのメンバーは、NYアッパーウエストサイドにある富裕層学校で出会った。TRAVIS、COLDPLAY、RADIOHEADが台頭し、ミクスチャーが流行っていた時期に裕福なシティ・ボーイたちは、意外にも60年代の古き良きガレージロックをスタイリッシュに昇華させた音を鳴らした。

 

「シンプルな音を究極にシンクロさせるのが格好いい」とは、初期のインタビューより。「ロックンロール・リバイバルの申し子」とプレッシャーをかけられ、「金持ちのただの遊び」と揶揄されながらも、彼らは自身のスタイルを貫いた。その信念の強さは、あの文句なしに格好いい立ち姿ににじみ出ている。

 

6月にリリースされた3年ぶりの新譜「Future Present Past EP(フューチャー プレゼント パスト EP)」は、新曲3曲に加えて1曲のリミックス、計4曲入り。新曲はそれぞれEPタイトルのごとく、過去、現在、未来を示唆するようなサウンドだ。

 

3曲目“Threat of Joy”は、彼らが得意としたソリッドなギターロック=過去

 

2曲目“Oblivius”は、前2作の作風を踏襲したようなグルーヴィーなサウンド=現在

 

1曲目“Drag Queen”はヴォーカルのジュリアンが、ソロ名義で体得したサイバーパンクが色濃く表現されている=未来。

 

ブレることなく、自分の意志と足でバンドの歩むべき道を探してきたからこそ、こうして軌跡を3曲で語れる。一時はファンの間で解散が危ぶまれたストロークスが、今後リリースされるであろうフルアルバムの嬉しい予告を引っさげて戻ってきた。音を聴く限り、いま彼らが颯爽と登場するステージを観たら、また射抜かれるに違いない。

 

ところで私は、来月29歳になる。我ながらいい年になったなぁと思うが、不思議と焦りはない。30、40と歳を重ねたとき、豊かな表情で笑えるように……、一つ一つの行動と思考を自分のものにし、日常を少しでも輝かせていきたい。ストロークスの背中が、そのお手本だ。

 

【商品情報】

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Future Present Past EP/フューチャー プレゼント パスト EP<初回生産限定盤>

価格:2581円

規格番号:CLT024