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2022/3/5 19:00

森崎博之インタビュー「『LOOSER』はTEAM NACSとしてのもう1つスタートだと言える作品」

結成25周年を迎える演劇ユニットTEAM NACS。昨年の本公演『マスターピース』から始まったアニバーサリーイヤーの数々の企画も、3月6日(日)から配信される『LOOSER 2022』でいよいよファイナルを迎える。彼らにとっても、そしてファンにとっても思い入れの強い2004年の公演『LOOSER』を映像で甦らせる今作。そこで、気になるその内容をリーダー・森崎博之さんに直撃。また、ロングインタビューの前半では一年かけてファンに届けてきたこれまでの企画への思い出を、さらに後半では最近購入したという食にまつわる、あるアイテムについてもたっぷりと伺いました。

 

森崎博之●もりさき・ひろゆき…1971年11月14日、北海道生まれ。1996年にTEAM NACSを結成。リーダーを務め、多くの公演で脚本・演出を担当。2008年からスタートした『森崎博之のあぐり王国北海道』(現・『あぐり王国北海道NEXT』/HBC)をきっかけに農業タレントとしても活躍中。現在、『ハナタレナックス』(HTB)に出演中。

 

【森崎博之さんの撮りおろし写真】

 

5人だけで無茶をやっていた、僕らの原点のような姿を楽しんでください

 

──TEAM NACS25周年イヤーのラストを飾る配信『LOOSER 2022』が間もなくスタートします! まずはこの企画の概要を教えていただけますでしょうか。

 

森崎 その前に『LOOSER』について説明をさせていただきますと、これは2004年にTEAM NACSとして初めて東京で公演をした作品でした。それまで私たちは演劇文化が常に身近にあるわけではない札幌で活動をしていましたので、演劇に慣れ親しんだ東京に進出することがものすごいプレッシャーだったわけです。でも、同時に仲間の広がりが出来た作品でもありまして。この公演からオフィスキューやアミューズと一緒に舞台を作るようになり、また、今の僕らの公演を支えてくださる舞台のプロフェッショナルの方々や新たなファンとの出会いもあり、いわゆる“TEAM NACSチーム”が誕生した舞台でした。

 

──TEAM NACSとしてさまざまな思いが詰まった作品なんですね。

 

森崎 ええ。僕ら5人の中にも「ここからがTEAM NACSのもう1つのスタートだ」といった認識がありますし。その作品をこの25周年のタイミングで、しかも今度は映像としてリメイクしようというのが今回の試みです。ちなみに、僕は昨年上演した本公演(『マスターピース』)のカーテンコールで必ずお客さんに向けて、「なかなか全員で集まれない5人ですが、25周年の企画としてさらに面白いことをしていくので楽しみにしていてください」とお伝えしてきました。それがこれです! 今、やっと約束が果たせます(笑)。

 

──映像作品としてのリメイクというと、どのような感じになるのでしょう。

 

森崎 イメージとしては映画の『ドッグヴィル』を想像していただくのが近いと思います。舞台のようなセットで撮影をし、それを映像監督に撮っていただくという形になります。僕の中では映像版『LOOSER』と位置づけていまして、アップやカット割りなども多用されるでしょうし、舞台版とはまた違った雰囲気になると思います。また、監督にも“舞台のような雰囲気で見せていきたい”という意図があるようなので、どんな感じになるのか、僕もすごく楽しみですね。

 

──ファンの間でも人気の高い演目だけに期待されている方も多いと思います。

 

森崎 そうですね。DVDになっているものの中で一番古い作品ですし、ファンの皆さんにとっても馴染みがあると思います。それに、僕に限っていえば、2011年におこなった「TEAM NACS 15th project」で、*pnish*のみんなと一緒に『LOOSER 6』という形で上演しているんです。また、今なお2.5次元の方たちをはじめ、いろんなところで上演していただいている作品でもあるんですよね。物語自体も、新選組を題材に新たな解釈を加えつつ、“日本をよくしよう!”と奔走した男たちの姿を真っすぐな思いで描いたものですので、初めてご覧になる方にもおすすめです。唯一、不安要素があるとすれば、今回演じる我々がおじさんになりすぎてしまったこと(笑)。当時、主演を務めていたシゲ(戸次重幸)が30歳くらいでしたが、いまや僕らも平均年齢48歳! 5人の年齢を足すと240歳ですからね(笑)。若くて熱血な隊士たちを演じるのにもそろそろムリが出てきますが、なんとか無茶して頑張っていこうと思っています(笑)。

 

──2004年の初演では、たった5人で複数の登場人物を演じ分けていたのが印象的でした。

 

森崎 1人6役ぐらい演じてましたよね(笑)。でも、そこも今回は変えない予定です。というのも、僕らは結成以来、ほとんどの作品で客演を呼ばず、5人だけでなんとかダイナミックな舞台を届けたり、逆に5人しかいないことを逆手に取って、それを笑いに変えたりしていました。最近の公演ではアンサンブルを呼ぶことも増えましたが、昨年の『マスターピース』では久々に1人2役に挑戦し、全員が女装をしてみたりして(笑)。今回の映像配信では、そうした僕らの原点的な姿をご覧いただければと思っています。

 

『がんばれ!TEAM NACS』は解散のリハーサルのようなドラマでしたね(笑)

 

──では改めて、昨年からスタートした25周年イヤーについても振り返っていただきたいのですが、第一弾が何度も話題に出ている本公演の『マスターピース』でした。

 

森崎 本公演は、最後まで無事に開催できたことが何よりも幸せでした。もちろん、完走することを目標にしていましたけど、“もしかしたら、半分もできないかもしれない……”とどこか覚悟もしていて。でも、神が示した道なのか、それとも素晴らしいスタッフたちの力のなせるわざだったのかは分かりませんが、見事に全公演、上演できました。僕たちメンバーが誰一人欠けることなく最後までたどりつけたのも、なんだか25年続けてきたことにご褒美をいただけたような気がして、うれしかったですね。

 

──そのあとには、フェイクドキュメンタリーのドラマ『がんばれ!TEAM NACS』も放送されました。

 

森崎 気づいたら映画にまでなっていて驚きました(笑)。『がんばれ!TEAM NACS』は前半でバカバカしいいつもの僕らをお届けしつつ、後半には解散危機に陥るという展開だったんですよね。そのため、僕たちをよく知る関係者であればあるほど、見ていて辛かったという感想をお聞きしました(苦笑)。皆さん、「えっ、今のは台本? それとも本音!?」ってハラハラしていたようで。ちなみに、最終回に5人だけで腹を割って話す温泉でのシーンは、マネージャー陣も「今日が本当のXデーになったらどうしょう(笑)」と思いながら、撮影を見守っていたそうです(笑)。

 

──あの温泉での5人のシーンは、ほぼ台本なしで2時間ほどカメラを回しっぱなしだったと聞きました。

 

森崎 そうだったかもしれないです。本当に緊迫した空気が流れていましたから。ただ、我々としては、ああやってフェイクドキュメンタリーで解散危機を演じさせてもらえたことが、すごくプラスの方向に作用した気がしています。みんなの中に、「解散のリハーサルができてよかったかも」という思いが生まれましたし。きっと実際に解散危機が訪れたら、ドラマと同じような空気が流れて、似た会話が起きると思うんです。だから、「これでいつでも本番ができるね」って(笑)。それは冗談ですが、ドラマとはいえ、こうやって一度経験しておけば、逆に余計なことを考えなくてすみますしね。…そうは言いながら、ラストのシーンを見たあとは僕自身も号泣しちゃいましたけどね……(苦笑)。

 

──そして、7月からはメンバーそれぞれがプロデュースする配信企画『NACStreaming』も展開されました。

 

森崎 ソロの配信企画というのも初めてでしたが、それとは別に、普段とは違うスタッフと一緒に作っていけたことも新鮮でした。というのも、いつものイベントだと、僕らは事務所のマネージメント部と一緒に作業をしていくんです。でも、この配信はオフィスキューのコンテンツ部のみんなと作り上げたもので。普段はグッズや紹介 VTRを作っている子たちとの仕事だったので、手作り感満載な感じがして、それが楽しくって。ただ、毎月のように配信があったので、みんなは本当に大変だったと思います(笑)。

 

──ほかのメンバーの配信はご覧になりましたか?

 

森崎 もちろんです。いかにも“らしい”といいますか、“そうだよね。そうくるよね”という内容ばかりで(笑)。でも、安心しました。それぞれが決して奇をてらわず、自分たちの持ち味を生かしていて。“安心・安定のTEAM NACS”という感じがしましたね。そうそう、この配信企画のラストが(大泉)洋ちゃんで、番組の最後に初めて『LOOSER 2022』のタイトルだけ発表されたんですよね。

 

──SNSでホットワードになっていました。

 

森崎 でも、話題になったのは一瞬だけでしたよ。TEAM NACSのファンって冷静な方が多いんです。翌週に僕のラジオ番組があったのですが、「あれはどういうものなんですか?」という質問も一切なくて。“きっとそのうち詳細を知らせてくれるだろうから、それまで待っていよう”と楽しみにしてくださる。皆さん、すごく大人なんです(笑)。

 

──冷静さを保ちながらも、胸の内では期待に満ち溢れているんですね。

 

森崎 だとしたらうれしいですね。僕らとしても、本公演の『マスターピース』で始まった25周年イヤーが、こうして舞台に絡めた作品で最後を飾れるというのが本当にうれしいです。自分たちの本業でもありますし。撮影もどんな感じになるのか、楽しみです。ただ、ほかのメンバーにとっては、なんといっても18年ぶりの『LOOSER』ですからね。きっと、「この時の衣装ってなんだっけ?」とか、「今、俺は何の役だ!?」って言いながら、大変だった18年前を思い出しつつ、おじさんたち5人が手を組んで撮影するんだろうなって思います。あの頃と同じように、「面倒くせぇな〜」なんてニヤニヤしてボヤきながらね(笑)。

 

──そうした絆は25年間、変わらない部分なんですね。最後に、改めてこうして25年も5人で続けてこられた要因はなんだと思いますか?

 

森崎 やはり、先ほどもお話ししたように『LOOSER』の公演を機に、“TEAM NSCSチーム”という広がりができたことに尽きます。もし、それ以前のように、舞台監督やプロデューサー的な方たちの力を借りることなく5人だけでやっていたら、ここまで続いていないと思います。15周年すらなかったかもしれない。でも、ファンを含めた“TEAM NACSチーム”の関係性があるからこそ、こうして25周年を迎えられ、まだまだこの先も目指せるんだと思います。その意味でも、この『LOOSER 2022』が単純な“ありがとう”という言葉だけじゃなく、しっかりと25年分のお礼を伝えられ、そして“これからもよろしくね”という思いを届けられる作品にしていきたいですね。

 

 

TEAM NACS『LOOSER2022』
2022年3月6日(日)19時より配信スタート

(SATFF&CAST)
脚本:⽥中眞⼀ 監督:木村ひさし
出演:TEAM NACS(森崎博之、安田 顕、戸次重幸、大泉 洋、音尾琢真)

チケット料金:5000円(税込)
配信:LIVE SHIP、GLOBE CODING(ローソン・ぴあ・イープラスにて販売)
詳しくはこちらから https://www.teamnacs.com/stage.php

(STORY)
平凡な日々を送るシゲは、自分にできることを模索していたある日、謎の男から渡された薬で過去へとタイムスリップしてしまう。行き着いたその先は、なんと新選組がその名を轟かせ始めた幕末。最初は厳しい隊律に翻弄されていたシゲだったが、やがて時代を切り拓くために命がけで戦う志士たちの姿に、自身の中で熱い思いが芽生え始めていく。

 

撮影/映美 取材・文/倉田モトキ ヘアメイク/白石義人(ima.) スタイリスト/小林洋治郎(Yolken) 衣装協力/BARENA、08circus