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2022/4/6 11:30

『有吉の壁』の裏側に迫る。芸人が抱く有吉への熱い思いとは?“テレビの壁”も越えた新たな計画も!? 横澤Pインタビュー

深夜の不定期特番としてスタートし、今ではゴールデンの大人気番組にまで成長した『有吉の壁』(日本テレビ系)。MCの有吉弘行と佐藤栞里のほか、毎回数多くの芸人が登場し、お祭り騒ぎを繰り広げている。しかし、あれだけ多くの芸人が一堂に会する撮影現場とは、一体どのような様子なのだろうか? 今回は、同番組のプロデューサーである横澤俊之氏に、壁芸人たちの裏話や有吉への思い、そして今後の新たな展開について、まるっと聞いてみた!

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:kitsune)

 

年に数回の“深夜のお祭り”がまさかのゴールデン進出!

――2015年4月に深夜特番としてスタートして、現在ではゴールデンタイムの大人気番組にまで成長した『有吉の壁』ですが、深夜時代から番組への反響や手応えはありましたか?

 

横澤 僕がプロデューサーとして加わったのは、2019年9月の若手予選会&ゴールデンSPからです。それ以前からおかげさまで反響は大きかったようで、年に数回特番を重ねていました。当時、担当の『有吉ゼミ』の収録でも、『壁』に出演される芸人さんたちに会うと、うれしそうな反面、「またやるのか~!」という怖さもあり……といった様子が印象的でした。年に何度か開催される“お祭り”のような雰囲気がありましたね。

 

――有吉さんご本人も“お祭り”を楽しんでいた感じなんでしょうか。

 

横澤 「『壁』はまたできますか?」と気にかけてくださっていたと、前プロデューサーから聞いています。そもそも、この番組は『有吉の壁』の総合演出である橋本和明と有吉さんが、『有吉ゼミ』からずっと一緒に番組作りをしてきた中で、「やってみましょうか」という流れで深夜帯に立ち上がりました。

 

——そこから、まさかの平日19時台ゴールデンタイムでレギュラー化ということで、ファンの方も驚いたと思います。どういった経緯があったのでしょうか?

 

横澤 当時の流れを包み隠さずいうと、僕と橋本が編成部から呼ばれ「実はレギュラー化を考えている」と言われ「どこの深夜ですか?」と聞いたら「水曜19時」と……。正直「え? バカなの?」と思いました(笑)。 一回も放送したことない、しかもこんな早い時間でレギュラーだなんて。

有吉さんにも「早い時間になりますが、番組の内容は変えないのでどうですか?」と相談させて頂いたところ、レギュラー化の話を受けて頂きました。

会社に「中身変えないですからね。ゴールデンだからといって、美味しいグルメも食べないし、絶景にも行かない。このままで良いのであればやらせてください!」と言った上でゴールデン進出が決定しました。

 

「一般人の壁」は芸人に全部お任せ。撮り直しなし、1時間の一発勝負!?

――番組内容も一切変えず、ゴールデンタイムでの放送がスタートしたわけですが、メインコーナーの「一般人の壁を越えろ!おもしろ〇〇の人選手権」は、芸人さんが多数出演する上に、ロケ地の準備などもあり、大掛かりですよね。毎週大変ではないですか?

 

横澤 特番時代~レギュラー当初はロケ場所決定までに苦労しました。施設にオファーしても、何言ってるんだ…? みたいな反応になることが多々あって(笑)。最近は、おかげさまで認知して頂いていることも多く、協力して頂けて大変ありがたいです。ちなみに、ロケ当日は、いざ撮り始めてしまったら1時間ちょっとで終わるので思いのほか早いんです。撮り直しもしない、全部一発勝負なので。

 

――1時間ですか! 早いですね。しかも一発勝負とは緊張感があります。

 

横澤 深夜時代から、やり方や流れは全く変わっていません。オープニングを撮った後は、施設内に芸人さんたちがバーッと散らばって、実際に有吉さんが歩いてくる。僕らスタッフのスタンスとしても「次のネタ、やります!」と仕切るような誘導はなく、リアルに有吉さんと芸人さんたちが遭遇してネタに入る形で、お任せしています。

 

――それぞれの即興ネタも全部芸人さんにお任せですか?

 

横澤 僕らから「こうしてください」と頼むことや作家さんが入ってネタを考えることは一切ないです。ただ、例えば、パンサーの尾形(貴弘)さんから「ここの噴水に飛び込みたいんですけど大丈夫ですか?」などの希望をもらったら、僕らが施設の方と調整するということはもちろんあります (笑)。それ以外は、基本的に施設の方に了承を得て頂いて、芸人さんたちが100パーセントの力を出せるように、僕らは裏方としてサポートをするだけです。

 

――なるほど。あれだけ出演者の方がいて、どのように進行しているのか気になっていました。皆さんほぼ自前でやっているんですね。

 

横澤 はい。オープニングをご覧になってわかる通り、芸人さんはみんな私服で現場に来ていて、本当に着の身着のままでやってもらっています。その上で、もう中(もう中学生)さんはダンボールを大量に持ってきたりとか、きつねさんがシンセサイザーなどの機材を持参したりとか、ご自身で準備が必要なネタの方はそれぞれ大荷物で現場入りすることもあります。

 

芸人自ら「出たい!」とアピール。今後は新たな“壁芸人”も増えていく?

――毎回どのくらいの人数の芸人さんが参加されているのでしょうか?

 

横澤 放送回にもよりますが、レギュラー組に加えて、常連組の皆さんを呼んで20組程度になっています。逆に全員お声がけしたくても、何組かお休みしてもらわないと、みんなを呼び切れない状態で……。それでも、芸人さんたちから「出たい!」と言ってもらえるのは、本当にうれしいです。

よく他の番組から「『有吉の壁』で芸人さんのスケジュールがみんな押さえられてるんだけど、どうなってるの?」と問い合わせがくるのですが、芸人さん側がスケジュールを「『壁』待ち」で空けてくれているっていうことが、結構ありまして……本当にありがたい限りです。

 

――賞レースで受賞された芸人さんなど、話題のコンビが出演されていることも多いように思います。

 

横澤 それについても、M-1優勝直後の錦鯉さんやキングオブコント優勝後の空気階段さんなど「なんでこのタイミングで『有吉の壁』には出てるの?」と言われるのですが、本当にもともと優勝は関係なく、先に『有吉の壁』のスケジュールを頂いていただけなんです。たまたまなんです (笑)。

 

――ただ実際に、実力のある芸人さんたちが積極的にキャスティングされている印象もあります。チョコレートプラネットさん、パンサーさん、ジャングルポケットさんなど、いわゆる第6.5世代と言われている方々が中心になっているというか…。

 

横澤 僕らが意図的にこの世代を、と意識しているわけではないです。ですが、やはり現場で有吉さんの反応が良かったり、スタッフも面白いなと思った方にはまたお声がけさせて頂いています。

例えば、インポッシブルさんは、賞レース組ではないですが、レギュラー1年目の夏からよく出てくださっています。もともと初登場回の担当ディレクターがインポッシブルさんのファンで、来てもらったら現場でネタがハマッた形でした。

今でも印象的なのが、出演2回目のスーパー銭湯での「一般人の壁」でやったネタが現場で爆発的にウケていたこと。ラストに近かったので、他の芸人さんが見ている中でやって、みんなが大笑いしていました。笑いを取った芸人さんは、今でもよく来て頂いているという感じです。

 

――逆に今後、新しい芸人さんや若手の方を起用しようという動きはありますか?

 

横澤 もちろんあります! コロナ禍の関係もあるので一気には難しいですが、本当はもう少し人数を増やして積極的に新しい人も呼んでいきたいと思っています。そこで先日、深夜枠で2年半ぶりに『若手予選会』を開催しました。結果として、うるとらブギーズさん、上木恋愛研究所さん、カゲヤマさん、大自然さん、ダニエルズさん、野田ちゃんさん、ヨネダ2000さんなど、7組が4月6日放送の2時間SPに来て頂くことになりました。

実は、前回の予選会で勝ち上がったのは、空気階段さん、きつねさん、四千頭身さんなど現在活躍中のメンバー。今回の予選会からも、合格不合格にかかわらず、これから活躍してくれる芸人さんが出てきてくれるとうれしいです。新しい風がどんどん吹いてくれたら。

 

“有吉さんにウケたい!”ベテラン芸人でも全力で挑む『大人の青春』

――また『有吉の壁』といえば「ブレイク芸人選手権」や「ブレイクアーティスト選手権」から生まれた名キャラクターも多いですよね。こちらも芸人さんが自ら考えているんでしょうか。

 

横澤 はい。何がハマるか分からないので、皆さんには新ネタを下ろしまくって頂いている感じです。その分、雑になってくる部分もあるんですけど(笑)。

その中で、番組でヒットしたネタがあったら、普通は何回そのネタを引っ張るかを考えると思います。例えば、特番時代の「TT兄弟」やレギュラー初期の「Mr.パーカーJr.」など、通常は引っ張って「またやってください!」と言いがちなネタですが、続けるかどうかの判断は芸人さんにお任せです。視聴者の皆さんが面白いと思っていても、有吉さんからは笑いが取れないと芸人さんたちが思ったら、無理強いは絶対にしません。

 

 

――やはりその点も“対有吉さん”のウェイトが大きいわけですね。

 

横澤 もちろんです。芸人さんは、有吉さんにウケるネタを作ろう、見せようという気持ちが強いので。それは制作サイドも同じで、これは面白そうだなということを有吉さんにぶつけて、じゃあやってみましょうという流れが基本です。僕らにとってもある意味、有吉さんは“壁”なので。企画を試してみてトライ&エラーで進めています。

 

――芸人さんもスタッフさんも試行錯誤して、人気キャラや定番コーナーが生まれているんですね。

 

横澤 はい。芸人さんには、たくさんネタを作ってもらっています。よくマネージャーさんや芸人さんたちから「このネタは『有吉の壁』で生まれているから『壁』以外に出しちゃダメですよね」と聞かれるのですが、そこは「他でも披露してもらって全然大丈夫です」と言っています。

他局や舞台で出してもらったほうが芸人さんも得だと思うので。(とにかく明るい)安村さんとかは、信じられない量の新キャラを出してくれますけど、自分がルミネに立つときに使うから、先に『壁』でそのネタを作っているだけです、と仰ってます(笑)。

 

――安村さんは『壁』でネタを披露し続けたことで‶“ブレイク”したと話題になりましたよね。

 

横澤 安村さんや、もう中さんなどは、現場で見ていても、芸人さんから愛されて慕われている方という印象で、周りの芸人さんの思いもあって、新たな人気に繋がっている感じがあります。

ですが、ある時安村さんと話をしていた際に、安村さんは「10年後には僕はここにいない、いちゃいけない」と仰っていました。「自分が現役として舞台に出ないタイミングになって、ここに出てくるのは違うから。今は俺ら世代の芸人が上を目指して頑張ろうぜって言っている『大人の青春』なんだ」と……。10年後もきっと体を張ってくださっていると僕は思っていますが(笑)。

 

――そうなんですね。そこも「有吉さんに向かっていくぞ!」という気持ちがあってのことなんでしょうか。

 

横澤 そうですね。ベテランの皆さんも、有吉さんという“壁”にお笑いで向かっていくからこそ『大人の青春』なんだと思います。本当に“部活”のような感覚があるかもしれません。有吉さんが監督だとして、(佐藤)栞里さんがマネージャーで。

 

――佐藤さんも深夜時代から長らく出演されていますよね。

 

横澤 栞里さんは、芸人さんに対して本当に優しくて、どのネタにもよく笑ってくれています。自分がどう見えるかより芸人さんのネタを邪魔しちゃいけない、ということを本当に大事にしていらっしゃるので『芸人さんが主役の番組』という部分にマッチしているのだと思います。

「壁クリアです」の時は本当にうれしそうですし、「残念クリアならずです」の時にはちょっと寂しそうだったり。みんなが頑張っているところに、一喜一憂寄り添ってくれているので、芸人さんたちは栞里さんの存在に心から救われていると常々話しています。

 

――MCのお二人、メンバー、スタッフの皆さん、全員で作りあげている『大人の青春』なんですね。

 

 

円盤発売から武道館イベントまで…テレビの壁を越えろ! 次の展開はまさかの…!?

――『有吉の壁』は地上波での放送はもちろんですが、YouTubeやHuluとの連携、グッズの販売など、番組以外の部分にも力を入れている印象があります。

 

横澤 はい。そこは常に意識しています。もともとゴールデンに行く時から番組内容を変えるつもりは全然なかったのですが、その枠で「視聴率が取れる!」という確証もなかったので、あらゆる手を使って、番組を盛り上げて存続させていこうと当初から思っています。スタッフも若いチームなので、立ち上がりの時点からYouTubeやSNS、イベントなどテレビ以外の見せ方についても、いろいろ試していこうというスタンスでやっています。

 

――先日は「美炎-BIEN-」がCDを出して、ミニライブをやっていましたね。昨年も「KOUGU維新」などブレイクアーティストたちが武道館イベントを成功させて、盛り上がっていました。

 

横澤 さすがにここまでは全く想定していませんでしたが(笑)。武道館LIVEは、テレビ以外の部分で発展して辿りついたイベントでした。「KOUGU維新」というよく分からないキャラクターが生まれ、そこからYouTubeチャンネルでも展開して、謎のミュージカルまでやって。そこから「ブレイクアーティスト選手権」が始まり、事業の先輩にLIVEの企画書を提案してみました。すると「壁の収録日に<武道館>が空いているのでどうですか?」と冗談半分で話が戻ってきたのを聞いて、「やってみよう!」となったのが、昨年のLIVEの始まりでした。

 

――芸人さんたちも驚いたんじゃないでしょうか?

 

横澤 「こんなこと武道館でやっていいんですか!?」と驚いていましたが、喜んでもくれました。僕たちはとにかく、芸人さんたちが暴れられる場所を作りあげることが仕事なので。いかに新しい舞台、笑いを作り出せるか、作家さんと共にスタッフは常に考えています。

 

――今後、計画中の〝新しい舞台〟はありますか?

 

横澤横澤 まだ言えないのですが、4月6日放送の2時間SPの中で大きなサプライズがあります。計画している僕らもどうなるか全く読めないのですが、本当に未知の領域です…ぜひ壁ファンの皆様には温かい目で楽しみにして頂きつつ、リアルタイムで発表を見て頂きたいです。今後も皆さんの壁を越えるべく、番組の枠を越えて、いろいろ仕掛けていきたいと思います。

 

――これからも楽しみにしています!ありがとうございました。

 

「有吉の壁」(日本テレビ系)

毎週水曜よる7時放送
公式サイトはこちら