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2023/10/12 20:00

ナイツ塙の「劇団スティック」の魅力とは? ~オーディションに落選したライターがその魅力に迫る~

漫才協会会長でもあるナイツの塙 宣之さんが「棒読み」演技の役者を集めた「劇団スティック」を立ち上げたのが2021年。「棒読み」とはとにかく規格外なコンセプトで、その「棒読み」が笑いを誘うという想定外の芝居が見られる劇団なのです。実はオーディションにも応募した筆者が、このたび劇団スティックの面々にインタビューできることになりました!

 

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:金田一ワザ彦)

塙 宣之●はなわ・のぶゆき…1978年3月27日生まれ。千葉県我孫子市出身。漫才コンビ・ナイツのボケ担当。相方は土屋伸之。一般社団法人漫才協会会長。マセキ芸能社所属。兄はお笑いタレントのはなわ。著書に「言い訳 -関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-」「極私的プロ野球偏愛論 -野球と漫才のしあわせな関係-」「ぼやいて、聞いて。」「静夫さんと僕」がある。24年公開の漫才協会のドキュメント映画の監督としてデビュー予定。X(旧Twitter)

 

劇団スティック●げきだんすてぃっく…「棒読み」「棒演技」がコンセプト。劇団員はおもにネットでのオーディションで選ばれた。YouTubeチャンネル「ナイツ塙会長の自由時間」内でミニドラマやトークの配信、舞台公演などの活動を行う。今回インタビューに参加したメンバーは以下の通り(敬称略)。上段左から、高橋テルノブ、鈴木三点倒立、コマネチ、スガモ智之、越川みつお、堀江俊介。下段左から未確定空白、暇田桂子、座長・塙宣之、岩井洞子、イザベラ今回欠席はちはね、おきちえり、東堂祐太郎、田荒井優佑。

【劇団スティックさん撮り下ろし写真】

ラジオで困ったら劇団スティックの話をすればいい

 劇団スティックの取材なんて、どうかしてますよ。ドッキリみたい(笑)。

 

──最初に塙座長から、劇団スティックを作ろうと思った経緯を教えてください。

 

 オーディションをスタートしたのはコロナ渦になって1年ぐらい経った2021年春ごろです。連続ドラマに出ていた時、自分の演技を「棒読み」ってすごくイジられていたんで、それならいっそ棒読みの劇団を作ろうということで、劇団スティックという名前で2021年9月6日に立ち上げました。

 

──そもそもドラマに出たきっかけは?

 

 出たいという気持ちはまったくなかったんです。『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系)は2018年(シーズン3)からなんですけど、話がきた時は、断るのもなあ、やればネタになるな、ぐらいの気持ちでした。

 

──次のシーズンのオファーが来たときはどう思いました?

 

 テレビ朝日の人はすごく変わってるんでしょう(笑)。

 

──ドラマの仕上がりも変わってますね。

 

 でも僕が入った時は、まだそんなに変なドラマではなかったです。だんだん収拾つかないぐらいもうわけわかんなくなって。まあ皆さんに助けられたって感じです、内藤剛志さんや本田博太郎さんに。

 

──周りはすごい方々ですよね。で、そうこうしているうちに、ラジオで高田文夫先生から……。

 

 そう、「流れるような棒読み」っていうね。キャッチコピーをつけていただいたので、それは今でもネタに使わせていただいてます。

 

──そこから劇団立ち上げという発想は急展開な気がするんですが。

 

 コロナ禍だったから暇だったんでしょうね。それでもラジオがあるから。基本的に月~木が『ラジオショー』(ニッポン放送)で、土曜日『ちゃきちゃき大放送』(TBSラジオ)。週4日30分のオープニングをやって土曜日もあるので、とにかくラジオのネタが欲しいわけです。伊集院 光さんもそうみたいですけど、自分でネタを作るしかないんですよ。YouTubeで「地下芸人ラジオ」もやって「なんであんなことまでやるんだ」って言われますけど、これもラジオでしゃべるネタのためにラジオをやってるわけです(笑)。だから劇団をやることによって、もうとにかくネタに尽きない。困ったら劇団スティックの話をすればいいじゃないですか。

 

一同 (笑)。

 

──オーディションはどのように進めたんですか。

 

 応募がけっこう来たんです。200人とか300人ぐらいかな。

 

──240人から44人に絞ったとYouTubeでおっしゃってました。

 

 忘れてました(笑)。書類審査、あと写真を見て、「棒」みたいな人を選んでいったんです。応募者は全国にいらっしゃって、全部リモート面接でオーディションは進めました。ただ棒読みかどうかっていう判断は自分ではできなかった(笑)。なので、セリフを読んでもらうよりも会話をする中で、人柄とか、そういうもので選んでいきました。

 

──今日はいらっしゃらないですけど、ちはねちゃんは神戸からの応募でしたね。

 

 いずれ上京するということを聞いたのと、あとハイスクール漫才(吉本興業主催の高校生の漫才日本一を決めるコンテスト)で優勝したっていう、とんでもない実績があったので、面白いかなと思って。

 

芝居公演をやったほうがいいかなって、落ち着きました

 ネタ作りの一環、そういう自己満足で始めちゃったところはあるんですけど、YouTubeでドラマ作ったりしていた時より、3月に旗揚げ公演をやった時は、やっぱり生の舞台はいいな、劇団やってよかったと思いましたね。大学の時も落研で部長やってコントとか作っていたので、そういうみんなに何かを作っていくのが久々にできた感じがして、すごく楽しかったです。大学の時の一個上の先輩が旗揚げ公演の脚本を書いてくれた小川さん(放送作家・小川康弘)なので、久々に一緒にやったのがまた楽しかったですね。

 

──キングオブコントにも劇団スティックとして2年連続出場して、昨年は1回戦敗退でしたけど、今回は準々決勝までいきました。本気のメンバーがいたとか。

 

 恥ずかしくなっちゃいました(笑)。控室で劇団のみんなが「決勝行ったら次の日あの番組に出るのか」とか言ってる時点でもうちょっとダメだなと思いました。

 

一同 (大笑い)。

 

 行くわけねえだろと思いながら、一人だけやっぱり冷静で。去年は1回戦突破が目標でした。今年は2回戦まででよかったと思ってるんですよ。多分、劇団のメンバーたちはわかんないかもだけど、俺はわかったんです。準々決勝での本気の芸人たちのまなざし。「荒らしに来んなよ」っていうのが。自分はM-1グランプリも予選から参加したから、これ、ちょっとよくないなと思って。来年以降は参加するなら劇団スティックのメンバーの方たちだけでいいかなと思いましたね。

 

──演出に専念しますか。

 

 演出……まあ演出というか、何もしないです。

 

一同 (笑)。

 

 演出すると口出したくなっちゃうんで。

 

──ネタ作りでも、頭に浮かぶのは時事ネタばかりで、コントが作れないと?

 

 それはもう申し訳なかったですね。やっぱり限界ありますよね、時事ネタだけだと。実は時事ネタを思いっきりやったんです、準決勝で。だけど、そういうことじゃなかったんだなって思いました。小屋によるところがあるでしょう、お笑いって。今回やったネタはちっちゃいとこだとウケる笑い。完全に2回戦の小屋の大きさのものを準々決勝の大きな舞台でやってしまったので、もう余白がすごかったです、サイドの余白が(笑)。全然使いこなせない。

 

──去年チャレンジした様子はYouTubeに公開されていますが、今年のはまだですね。

 

 今年のネタはもう撮らないです。アナザーストーリーみたいなのをYouTubeにもうすぐあげるんですけど、多分一番面白いのがウチで合格発表の時に「おっしゃ!」ってなってたところ。

 

一同 あはははっ。

 

 あれ以上のものはもうできないです。ネタはYouTubeであげられない映像です、そもそも(笑)。

 

──以前作られていたミニドラマ、刑事ものの『泥棒めし』はわかるんですが、医療ものの『ジーニアスドクター』にもチャレンジされてて、お金もかかるのにすごいなと思いました。

 

 大変でしたね。お金もそうですが編集も大変、時間もかかる。僕のYouTubeっていろいろな制作会社が入ってるんですけど、制作の人から「これ誰がお金払うんですか?」みたいな話になって、全部持ち出しでやってました。なかなかドラマって簡単に撮れない。

 

──それでもクローズアップとかを多用してちゃんと医療ドラマになってるなと思って見ていたんですけど、手術のシーンでカメラが引いちゃって「あきらかに手術台が単なるテーブルだ」って思ってドキドキしちゃって。

 

 よく見てますね。そんなのあなただけでしょう?

 

一同 (大笑い)。

 

 見なくていいでしょう、あんなの(笑)。今振り返るとあのころはなんだったんだっていう時期ですね。何をやってたんだ俺たちはっていう。

 

──『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のパロディみたいなのもありましたよね、自撮りカメラで揺れる映像の。

 

 あった! あれなんだっけ?

 

岩井洞子 ホラードラマを撮りたくて。見ていただいたんですね、ありがとうございます。

 

──いやいや、見てて楽しいんですけど、再生回数が気になったので、見たら488回でした。

 

一同 がははははぁ。

 

──そういう時期を経て、舞台公演になっていったんですね。

 

 そうですね。もともとYouTuberじゃないので、ちゃんとした芝居公演をやった方がいいかなっていうふうに落ち着きましたね。まあ、1年に1回でも2年に1回でもやろうということで。

 

──で、春先に旗揚げ公演(2023年3月24日・豊島区南大塚ホールで開催『君があの子で私も誰かで』)があって、夏にはキングオブコントへのチャレンジがあって、今どういう時期ですか?

 

 今は何もないですよ。ナイツの独演会がもう来月から始まりますから。今日だっていち早く帰ってネタ作りたいんですから。

 

旗揚げ一発目にしては難しいやつやっちゃったっていう感じでした

──旗揚げ公演の内容なのですが、「棒演技」の方々にはまったく向いてないような、難しいストーリー(※1)に敢えてしているように思えました。

※1…『君があの子で私も誰かで』は、2人の妊婦が神社の石段からいっしょに落ちて、心と体が入れ替るという話。武器としての「棒」使った殺陣のシーンなどでも、さまざまな人物がぶつかるたびに心と体がどんどん入れ替わる。

 

 一発目にしては、ちょっと難しいやつやっちゃったっていう感じでした。

 

──妊婦の心と体が入れ替わるなんて、すごいアイディアですよね。

 

 そうそう。お腹の子どもまで入れ替わってるかもみたいな。

 

──見てるほうも、なんと言ったらいいか……知らない人と知らない人が入れ替わっても、どう見たらいいかわからなくて。

 

一同 うなずく。

 

 さすがです。そうです、そうです。だからもうなんか最後みんな麻痺してて、戸田恵子さん(※2)に対してやりすぎなんじゃないか、もうちょっと抑えてもいいぞって、俺は思ったんですけど。

※2…ゲストとして芝居の終盤に戸田恵子さんが登場。見事な入れ替わりの演技を見せた。

 

──すごいハイテンションでしたね。

 

 逆に戸田恵子さんが浮いてる感じ。

 

一同 わはははははぁ。

 

──ところがそのハイテンションが入れ替わったら効いてくるという。

 

 そういうことです。戸田さんがすぐ察してそういうふうにしたほうがいいんじゃないかと。要するに入れ替わりを見せなきゃいけませんからね。ただ、もう殺陣シーンの練習のときから、誰が誰に入れ替わってるのか、みんなわかってなかった。

 

──妊婦役のお2人、暇田桂子さんとおきちえりさんはかなり出番が多かったですね。

 

 暇田(桂子)さんとおき(ちえり)ちゃんはほぼ主役、出ずっぱりでした。『マツコ会議』(2023年9月23日に最終回を迎えた日本テレビの番組)でも取り上げられて。そうそう、『マツコ会議』を見てた亀梨(和也)君が、今度やるときは見に来るって言うんですから。亀梨君は『マツコ会議』二度見たって。

 

一同 拍手。

 

──今YouTubeで公開されている旗揚げ公演の模様はゲネプロの映像ですが、本番との違いはありますか?

 

 本番のほうがウケてましたね。本番で高橋(テルノブ)さん、セリフを噛みまくって面白かったです。そうそう、ゲネプロを撮影してた佐藤さんがいびきかいたのも面白かった。思いっきり寝てたみたいです。びっくりしますよね、ほんとに。

 

圧倒的エースです、「棒」という意味で。本当にできないやつだから

──ではメンバーの方からコメントいただきます。鈴木さんから順番に。

 

鈴木三点倒立 ドラマとか映画のオーディションになかなか受からず、やめようかなと思った時期に、母親がラジオリスナーで劇団スティックのことを知りました。今のところ手応えはないです。いまだにオーディションは落ちてます。

 

 スティックの中では実力派なのにね。

 

──実力というのは「棒」ってことですか?

 

 「棒」じゃないです、一番上手いぐらいです。

 

──スガモさんはバスケット選手の衣装ですね。

 

スガモ智之 バスケットの富永選手のモノマネで冨短(とみじか)選手をやってます。僕は本当に入れてもらって感謝しかないです。

 

 20年来の付き合いですが、この場所を押さえてくれるっていうだけでいる、正式メンバーではなく研修生です(笑)。

 

スガモ 僕はネタとかも、もう棒読みっていうか、抑揚がなくて。一人コントもできなくて。

 

 圧倒的エースです、「棒」という意味で。本当にできないやつだから腹立ってくる(笑)。

 

──コマネチさんはビートたけしさんのファンですか?

 

コマネチ そうです。自分は社会人劇団とかあったら入ろうって思ってたんです。トイレの個室で合格通知のメール開いて「ああ!」って叫んじゃいました。入ってみたら刺激が強くて、知らないことばかりで幸せです。

 

 小道具とか作るのが上手いんですよね、実家が看板屋さんで。殺陣の木刀を作ってくれました。

 

──またこちらも変わった名前ですね、未確定空白さん。

 

未確定空白 音楽大学の作曲科を出て、譜面作ったり、伴奏の仕事をしていたんですが、コロナで全部失いました。それで舞台に上がりたい気持ちもあったところで募集を知って、就職活動のエントリーシートを出す感覚でした。テレビの取材とか、思った以上にいろいろなことを経験させていただいています。「スティック飯」を作ったのも光栄でした(※3)。

※3…棒状の料理で競う企画「【劇団スティック】第一回スティック飯選手権」は2022年10月10日公開。

 

 暇田桂子さんは本名わかんないですから。

 

暇田桂子 「暇」っていう漢字が好きなんです。

 

──舞台を見て「棒読み」の見本みたいな方だと思ったんですが、小さいころからなんですよね……。

 

暇田 はい、よくからかわれていたので、それを活かせることができるのかなと思って。

 

──あの量のセリフを全部覚えて。

 

暇田 絶対間違えないぞって思いで頑張りました。周りもみんな感動してくれました。ふだんはふつうの会社員で、会社のみんなも応援してくれて。

 

 暇田さんが考えた「イチジク」っていう作品も、いつかちゃんと作って公開したいね。公園で土の中から出てくるホラー。一応撮ったんですけどね。こだわりが強くて、なかなかまだ編集できてなくて。

 

──続いては岩井洞子さん。

 

 ズーム面接していて洞子さんが一番最初に合格って感じでした。喋り方とか発声もしっかりしてるわけじゃないから、面白いなと思って。でも舞台はもう全然違って上手でした。

 

岩井洞子 舞台は……大変でした。高橋(テルノブ)さんが……とにかく噛みまくってて、それに釣られないようにするのが……。

 

一同 (笑)。

 

 もともとお笑いファンですよね。THE Wも一人で出て去年は2回戦まで。

 

岩井 もともとナイツファンなんです。THE W、今年は一回戦で落ちて。あとM-1も出たんです。

 

 M-1も出たの! 誰と?

 

岩井 ちょっと内緒で。

 

 なんでだよ(笑)。

 

岩井 空白さんと(笑)。ダメだったんですけど。

 

 どんどんやってください。そういうの面白いですよ。

 

──どういうネタなんですか。

 

 気になりますよね。

 

空白 「コミュ障のコミヤで~す」っていうのを、洞子さんが言うネタです(笑)。

 

──THE Wでのピンネタはどんな感じで?

 

岩井 不動産屋のお客さんが上の階の人に通報されちゃったっていうから、草でも育ててらっしゃるんですか、っていうような……。

 

 面白いね。洞子さんは頭の中が面白いから。

 

岩井 自分としては地道に思い出作りをしていきたいなと思ってます。

 

──高橋さんはルシファー吉岡さんと似てるってネットに書かれてますね。

 

高橋テルノブ よく言われます。僕は10年以上演劇をやってきて、この中の誰よりもうまいと思っていたんですが、今回舞台をやってみたら誰よりも下手だった。見に来た家族にもお前よりうまいやつたくさんいたって。

 

 でも、舞台のバミリ(立ち位置などの印)付けるのうまいですから。

 

高橋 それ、裏方(笑)。バイトで病院の事務をやってて、コロナもあって舞台もやめようと思ってたんですよ。ひょんなことからYouTubeの募集にたどり着いて。旗揚げ公演では、俺が一人で頑張らなきゃみたいに思ってたんです。

 

一同 (爆笑)。

 

高橋 でもそうじゃなかった。

 

 すぐわかりましたよ(笑)。

 

高橋 経験者として引っ張っていくぞと思ったら、引っ張られてた(笑)。

 

──イザベラさんは衣装を担当されているんですね。

 

イザベラ 本業はスタイリストなんですけど、今は舞台進行の仕事をしてます。今も本番中で、今日お昼公演を東京芸術劇場のプレイハウスでやってきて。アーサー・ミラー原作の『橋からの眺め』です。

 

 本当にいつも関わっていただいてますけど、大丈夫なんですか?

 

イザベラ こちらが第一優先です。

 

一同 (笑)。

 

イザベラ 旗揚げ公演の本番前が激務だったので、なかなか稽古に出られず、それが本当に心残りでございます。戸田恵子さんと絡むとても大きな役をいただいていたのですが、戸田さんとは当日だけお会いして、立ち位置だけ決めるみたいな時に、いろいろ話をさせていただいて。

 

──あそこのシーンはちゃんと心と体が入れ替わってるように見えました。

 

イザベラ あれはもう本当にゲネプロの時も本番の時もどういう風にするかを戸田さんと話をして。戸田さんのアクションをとにかく見て、変わった瞬間にあれになるっていうのをもうそこだけはちゃんとやりたかったので。戸田さんの胸を借りる、もうそれだけだったので、お客様に伝わっていたのなら、本当にありがたいことでございます。

 

──越川みつおさんは、男性アイドルグループBOYS AND MEN出身ですが、すごい人がまた入りましたね。

 

 越川くんはオーディション組じゃなくて、木根尚登さんから託されたんです、越川を頼むねって。そう言われてもどうしたらいいだろうか、じゃあ劇団スティックに役者として入ってもらえば、頻繁に会えるかなと。入ってもらってよかったですよ。いいフックになってますよね。実際に舞台の経験もあるので。木根さん、旗揚げ公演の当日、車ぶつけてしまって来れなかったんですが。

 

一同 (笑)。

 

 落ち込んでそのまま家に帰ったらしいです。来てほしかったですよね。

 

──越川さんから見て、塙座長はどんな方ですか。

 

越川 本当にお笑いの第一線でやられている方が、芸人さんもいらっしゃいますけども、素人を集めてなんかよくわからないことをやってるわけじゃないですか。で、誰よりもゲラゲラ笑ってらっしゃるので、その姿を見ると、懐は広いし、いい意味で変態なんだなと思いましたね。

──旗上げ公演はいかがでしたか?

 

越川 僕も今までいっぱい舞台立ってきましたけど、これまでで一番怖かったですね。

 

 「入れ替わりが来たぞう」って言ってよ、バカでかい声で(笑)。大好きなんですよ、あのセリフ。一人だけめちゃくちゃ声通るから。

 

越川 (笑)。でも、もう怖くて、稽古やってても小屋に入っても、最後まで手応えがなくて。でもお客さんの反応を見て、あ、こういった価値観もあるんだなってことを初めて知れてよかったなと思ったんですけど……。

 

 お笑いと芝居、どっちでもないから難しいよね。このスティックの舞台は。面白くしても、真面目にやりすぎても。

 

越川 いっそ僕も棒読みでやったほうがとも思ったんですけど、普通にやってくれればいいっていうふうに言われて、気が楽になったんです。普通にやることで、周りが際立っていくことが今は喜びなので、自分が目立とうとは一切思ってなくて、本当にフューチャーされる人がたくさんいてよかったです。今までとは全然異次元の舞台でしたね。新たな扉が開きました。

 

──最後はお弟子さんですね。

 

堀江俊介 漫才56号・堀江です。最初劇団をやるって聞いたときは、僕らはスタッフというか、裏方に回るのかなと思ったら、一応研修生という扱いで、出させていただけるっていうので、それこそオーディション組もいる中で、参加していいんですかみたいな気持ちがありました。師匠が与えてくれた経験なので、これきっかけで何かに活かせたらいいかなと。演技も初めてしますし。本当に勉強になります。

 

 ほかの弟子とは温度差があって。

 

堀江 僕は皆勤です。

 

──動画見ててもいつもいらっしゃる。

 

 それがいいところです。

 

堀江 師匠のためですから、何でもやります。

 

 動きも早いし。だから今日のこの集会所も堀江が押さえられるので、スガモはもういらない。

 

スガモ いやいやいや。押さえますよ!

 

──今日参加されていないメンバーについても塙さんのコメントをください。ちはねさんは入団の経緯をさきほどお聞きしましたが……。

 

 彼女は芸人として売れてくれればいいなと思っています。おきちえりさんは、色々な音楽を作ってくれているので助かっています。劇団のムードメーカーで副座長的な存在です。

 

──吉本所属のなんとかずの東堂さんと田荒井さんは?

 

 2人は漫才をやりたくて入っているので、芝居よりもバイトを優先してしまうこともあるのですが、ギャグとしてありかなと。今回お芝居をしたい後輩、漫才をしたい後輩がわかったというのがやってみてわかりましたね。

 

それぞれ輝いてほしい、ハッピーになってもらえばいいです

──劇団スティックの活動の方向性ってあるんですか。

 

 方向性はまだわからないですが、1年に1回、春に公演をやって、それと自分が漫才しか書けないもんで、そこは無理しないで、小川さんに座付き作家になって書いてもらおうかなと。

 

──最終目標はありますか。

 

 最終目標って(笑)。テロ組織みたいな、やめてください(笑)。最終目標はやっぱりまあ、僕は自分の仕事があるんですけど、皆さんがどういうことを目的にしているかわからないので……だから芸人やってるメンバーもいれば、演劇やられてる人もいて、みんながそれぞれ輝いてほしい、ハッピーになってもらえばいいです。だからあんまり劇団スティックがあることによって大変だな、みたいになっちゃうと申し訳ないので、趣味のサークル的なものがいいかなと思ってます。

 

──ミュージカルに挑戦するともおっしゃってましたが、来年の春はその方向ですか?

 

 一応小川さんにはミュージカル作ってくれって。場所は南大塚ホールという我々のホームで。

 

一同 (ざわめき)。

 

 来年は2日押さえようかなって。やってくれるイベンターさんがいればね。

 

──ところで、じつは私も劇団に応募してたんです。塙さんは書類審査の時からご自身で審査されていたのですか。

 

 書類審査から自分でしていたのですが……金田一さんがいたのは記憶にないです。

 

──なんか変な空気にしてすみません(応募写真、ふざけすぎていたか……)。