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2024/6/28 6:30

Lucky Fes’24開催! 誕生から3年、目指すはアジア最大のテーマパーク型フェス! プロデューサー・DJ DRAGONインタビュー

茨城の夏をアツく彩る音楽フェスティバルが今年もやって来る! 7月13日~15日に「アジア最大のテーマパーク型フェスを目指して!」をテーマにした「Lucky Fes’24」が開催される。日本国内はもとよりアジア5か国の豪華アーティストが茨城県「国営ひたち海浜公園」に大集合。その企画統括からブッキングプロデュースまでを担うのがDJ DRAGONだ。地元FM局のラジオDJとしても活躍するフェス・プロデューサーに、“オラが町”の大規模イベントの見どころや誕生秘話を聞いた。

 

DJ DRAGON●でぃーじぇい・どらごん…1968年3月13日生まれ。茨城県出身。日本のクラブDJ、ラジオDJ、デザイナー、クリエイティブ・ディレクター、LuckyFES 企画プロデューサー。現在はBLACK JAXX(武田真治、ドラゴン)でDJ&MCを担当。XInstagram

【DJ DRAGONさん撮り下ろし写真】

 

ベトナムのアーティストと日本の人気俳優が初のステージ共演!

──いよいよフェスの開催まで1か月を切りました。

 

DJ DRAGON 当日が近づくにつれて時間の進むスピードが加速しているのを実感しています。どれだけ片付けてもやることが残っていて。毎年、最後の最後までバタついています。実はまだブッキングなどの調整を続けている状況でして……(苦笑)。

 

──え!? すでに100組以上のアーティストの参加が発表されていますが?

 

DJ DRAGON まだプログラムに空きのある部分があるんですよ。こればかりは例年通り、「7月13日空いていませんか?」みたいなやりとりを直前まで続けることになると思います。今のタイミングで売れっ子にオファーをかけてもほぼ無理なのは承知の上なんですけど。

 

──今年のテーマは「アジア最大のテーマパーク型フェスを目指して!」。これまでのフェスとはひと味違うプログラムが組まれているのでしょうか?

 

DJ DRAGON まさに日本を飛び越えちゃっています! タイ、ベトナム、モンゴル、台湾、韓国の5か国のアーティストに来ていただける予定です。例えば、今年初参加の「Chillies(チリーズ)」というベトナムのバンドをご存じですか?

 

──すみません!勉強不足で存じておりませんでした‥‥。

 

DJ DRAGON いえいえ、それが当然の反応です。多分日本で生活していると知る由もないと思います。ただ、ベトナムではサブスクで最も聴かれているバンドで、日本でいうところの「ミスターチルドレン」みたいな扱い。その生演奏をわざわざベトナムに行かずとも茨城で見られるのはかなり胸アツなこと! しかも、今回は俳優の森崎ウィンさんとセッションするステージも披露する予定です。今年1月にコラボレーションした楽曲をリリースしたばかりで、それを日本で生披露するのは初めて。実は、森崎さん本人から「『Chillies』が出るなら出たいです!」と逆オファーをいただいて実現しました。

 

──「知らない」を理由にスルーするのはもったいないですね。

 

DJ DRAGON 絶対に見ていただきたいステージの1つです。ちなみに、Chilliesに限った話ではありませんが、ちゃんと出演アーティストの楽曲を予習してから当日を迎えるのをオススメします。やっぱり、知っている楽曲が流れてきたらうれしいもんです。ぜひ、毎日のように出演アーティストの楽曲を空気を吸うように聴いていただきたい。これまで触れてこなかった新ジャンルの扉が開かれると思います。あと新ジャンルといえば、今年は「エクディズ」こと韓国の人気バンド「Xdinary Heroes(エクスディナリー・ヒーローズ)」も来日します。いわゆる“K-ROCK”になります。

 

──K-POPはかなり浸透していますが、“K-ROCK”は初耳です。

 

DJ DRAGON 「韓国文化放送」(MBC)とコラボレーションするステージで登場する予定です。MBCさんから提案をいただいたことで今回実現したんですが、まだ韓国のロックバンドは日本にほとんど進出できていません。というのも、“ロック大国”と呼ばれる日本にはあまり需要がない。たくさんの人気ロックバンドがあって、曲や歌詞に込められたメッセージ性を楽しむ文化も根付いていますからね。一方で、若者を中心に日本人のファンを獲得できたK-POPは完成度の高いダンスを視覚的に楽しむ側面が大きいと思います。例えば、「New Jeans」にしても英語の歌詞の意味を理解できなくても若年層を惹きつける魅力がありますよね。日本国内では馴染がないかもしれませんが、エクディズをはじめとしたK-ROCKは海外ではヒットしています。そんなグローバルに活躍しているアーティストの存在を知れるのもLucky Fes’24ならではかもしれません。

 

──どうして、日本を飛び越えてアジア圏のアーティストを呼ぶことにしたんですか?

 

DJ DRAGON 昨年の「Lucky Fes’23」が終わって、堀義人総合プロデューサーと今年の話をした時に「次はアジアをやろうか」みたいな話になりました。最初は12か国を集める計画だったんですよね(笑)。ぶっちゃけた話をすると、アジアの有名アーティストを呼んでも動員には大きな影響はないんです。さっき紹介したChilliesも日本国内にファンはいますが、どちらかといえばニッチな存在には違いありません。ですが、堀さんとのコミュニケーションの中では「トライあるのみだよね」というふうにまとまりました。実際に、コロナ禍が明けてからの日本には都心や観光地を中心に訪日外国人が爆発的に増えていますが、そういったインバウンドに向けてのアピールを無視するわけにはいきませんからね。

 

──アジア圏を超えて世界に広げていく計画はあるんですか?

 

DJ DRAGON もちろん!しかしながら、まず世界の前に「フジロックフェスティバル」、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」、「SUMMER SONIC」のような誰もが知っているフェスにするのが目標です。そして、ゆくゆくは日本人のみならず訪日外国人にとって、旅の目的がLucky Fesになるのが最終ゴールです。現実問題、インバウンドの波はフェスにまで届いていません。そのほとんどがDJのいるような渋谷のナイトクラブには足を運んでいるんですが、アイドルやアーティストのライブにはほとんど来てくれません。ファンクラブで先行販売されるなどチケットの購入方法を含めていささか敷居が高くなっているのも否定はできません。その辺の問題を解決してフェスのために来日する外国人を呼び込んで茨城ひいては日本を活性化させたい!

 

わずか半年で準備した初開催で見いだした活路はあの人気アーティストだった

──そんなLucky Fesも今年で3年目を迎えます。22年の初開催は、一部のファンから「伝説のフェス」として語り継がれています。

 

DJ DRAGON わずか半年で準備しましたからね(苦笑)。「やるぞ!」という堀さんが号令を出したのは1月でした。3年間フェスの運営に携わってなおさら思うんですけど、半年でこれだけ大規模なフェスを作るのはあり得ないことなんですよ。堀さんも相談した人全員に「無理だからやめた方がいいですよ」と諭されたと聞いています。

 

──「茨城のフェス文化の灯を消すな!」が合言葉でしたよね。

 

DJ DRAGON 22年にロッキンが千葉に移転して茨城県民はかなりショックを受けていました。ひたち海浜公園を有名にしてくれたイベントで、僕ら県民一同にとって誇らしい存在でしたからね。僕の実家は土浦なんですけど、家族で集まった時にも「千葉に行っちゃうね……」と話題はロッキンがいなくなることばかり。普段、音楽にほとんど触れない体育教師の兄でさえもブルーな気持ちになっていたのには衝撃を受けましたよね。ロッキンはおろかフェスに行ったことない人がそこまで悲しむものなのかと。

 

──どのような流れで企画統括とブッキングを担当することになったのですか?

 

DJ DRAGON 個人的に「SANCTUARY」というお台場のダンスミュージックイベントを17年と18年に主催していて、堀さんがフェスをやると聞いて「なにかお手伝いできることがありましたら……」とSANCTUARYの資料を渡していたんです。そうしたら、「1回ミーティングしようよ!」と誘っていてだいて、運営プロデューサーの矢澤英樹君と堀さんの元に訪ねるや「よし、じゃあ、この3人でフェスやるから!」と伝えられて……。

 

──かなり軽い誘い方ですね!

 

DJ DRAGON そうなんです(笑)。でも、「どんな形になってもやり抜く」という堀さんの熱意はメチャクチャ伝わりました。その場でOKしたはいいですが、フェス当日まで苦しい階段を上がることになるんですよね。家族や友人からは「よくやった!」、「偉業だよ」と称えてくれましたがとにかく大変で、大変で……。この時点で2月だったんですけど、8月開催予定だったのが7月に早まってしまいましたし。

 

──想像もつかない地獄の日々が待っていたんですね。

 

DJ DRAGON プロジェクトをスタートしてみると苦労の連続でした。やはり、時間のなさと新規のフェスに対する不安感が影響してブッキングしたアーティストに断られてしまうんです。新参者のフェスがちゃんと集客できるかどうかも怪しいじゃないですか。アーティスト側としてもスカスカの会場で演奏するのは避けたいという意見がほとんどでした。“後釜フェス”なんて揶揄されることも珍しくありませんでしたよ。

──そんなアゲインストの風が吹き荒れる中でどのように活路を見いだしたのでしょうか?

 

DJ DRAGON 突破口になったのは「MAN WITH A MISSION」のブッキングでしょうね。今年も出演していただけるんですけど、もともと個人的に良いお付き合いをしていたのもあって、Lucky Fesを前向きなものとして捉えてくださっていたんですよね。あとは、茨城県出身のボーカルTOSHI-LOWのいる「BRAHMAN」が手を挙げてくれたのも大きかった。「え!? マンウィズ出んの?」、「BRAHMANが出るなら‥‥」みたいな感じでLucky Fesに対する信用が形成されていきました。そこから、「マカロニえんぴつ」や「Novelbright」が参加を決めてくれて一気に加速したイメージです。あと、ありがたいことに他局を含めて約30年間ラジオの世界に身を置かせていただいているおかげで形成された横のつながりにも助けられました。中でも「J-WAVE」さんには陰ながら多大なる協力をしていただいております。ライバル局のイベントなのに協力してもらえて本当に涙が出ました。

 

──豪華出演アーティストの中でも「水曜日のカンパネラ」はブレイクとドンピシャのタイミングでした。

 

DJ DRAGON ちょうど声をかけさせていただいたのがコムアイさんから詩羽さんにボーカルチェンジした時でした。そして、フェスの1か月前ぐらいに「エジソン」でスターダムを駆け上がった。用意していたのが一番小さいステージだったので当日はフレンズ(Lucky Fesの観客の愛称)でパンパン! 入場規制が必要なぐらい大盛況でした。やっぱり、自分らがオファーしたアーティストが世間に認められるのが感激の一言です。例えば、昨年「オトナブルー」でブレイクした「新しい学校のリーダーズ」もオファーをかけた23年初頭の段階では世間に見つかっていませんでした。そこから、ブレイクして、フェスに出て、そのまま「NHK紅白歌合戦」にまで出場しちゃうんですから。今年もブレイク前夜のアーティストを拝めるかもしれませんよ!

 

──初開催の2日目は「ヒップホップ」を中心にしたプログラムが組まれました。

 

DJ DRAGON 主催するLuckyFMで放送するヒップホップの番組と親和性を持たせるのが目的でした。ただ、前年にコロナ禍の中に愛知県で開催されたヒップホップイベントが矢面に立たされたのもあって、「海浜公園にならず者たちが集まってくるんじゃ……」と心配する声もチラホラ。「そんなわけないじゃん!」と一蹴したいところですが、ヒップホップ文化を知らない人たちにそう思われるのも致し方ない部分があるのは理解できます。それでも、Awichiさんをはじめとする名だたるメンバーが参加してくれたステージは最高でした。とはいえ、中高年がメインとなるラジオのリスナーにあまり刺さらなかったのは反省点です。やはり、原体験として若い頃に触れていたもんでないとエモーショナルな感情も抱きづらいですよね。

 

──どちらかというと中高年世代だと、昭和のビッグネームの方が馴染み深いですよね?

 

DJ DRAGON 杏里さん、石井竜也さん、相川七瀬さんをはじめとする昭和から平成にかけて活躍したアーティストの方が人気でした。リスナー層は1日目、若い世代が2日目に集中した印象です。そのバランスをうまくMIXさせるためにプログラムを作成する時には頭を悩ませています。さすがにKREVAさんぐらいメジャーな方であればジャンルを超えて知名度がありますが、いわゆるクラブやライブハウスが主戦場になるヒップホップは中高年のリスナーが出会うキッカケがありません。それでも、「Creepy Nuts」のように令和の時代にもヒップホップの垣根を超えるアーティストは存在します。世代を問わずに複数のジャンルの音楽を引き合わせたい。ちなみに、ウチの小学生の娘なんか「マキさんが一番よかった!」と大黒摩季さんのパフォーマンスが一番の思い出になっているみたいです(笑)。

 

来場者数は右肩上がりで収益も赤字から黒字へ

──まさに固定概念やジャンルに縛られるのは損なのがわかりました。

 

DJ DRAGON 実にもったいないですよ。アイドルの楽曲を全く聴いてこなかった人も世の中には一定数いると思いますが、例えば女性アイドルグループ「AMEFURASSHI」はビックリするぐらいかっこいいですよ! 楽曲がスタイリッシュなのはもとよりK-POPに負けないぐらいパフォーマンスもキレッキレ。昨年、彼女たちの初フェスがLucky Fesでした。今年もパワーアップした彼女たちのパフォーマンスが楽しみです。

 

──人気男性アイドルグループ「NEWS」も出演するんですね。

 

DJ DRAGON 多分、ライブでは茨城初上陸じゃないですか? 普段はドームツアーのような大きい箱でのライブ活動が主だけにかなりレアです。もちろん、NEWS目当てに来てくれるフレンズもたくさんいると思います。ぜひとも、普段聴くことのないアーティストと出会うキッカケになってくれたらうれしいです。フェスで人生観が変わるとまでは言えませんが、確実に人生が豊かになる体験の1つ。ラジオのリスナーさんでLucky Fesに足を運んでくれた60代の方が何人もいましたが、一様にして「(フェスの見方が)変わった」とおっしゃってくれました。音楽好きのマニアックな人たちだけが楽しめるイベントではないことはお約束できます。

 

──かつては個人協賛者席の存在が賛否を呼んだこともありました。

 

DJ DRAGON ネガティブな声もありましたが、社会的に立場のある人たちを招待するためには必要な措置だったと考えています。それでも、最初から最後まで個人協賛者席に滞在する人はほとんどいませんでしたよ。気がついたら、前の方に移動して他のフレンズたちと混ざっていました(笑)。堀さんに誘われて来たある経営者の方も「息子とのコミュニケーションの話題です」と報告してくれました。Lucky Fesが家族の共通言語になるのは理想中の理想ですよね。

 

──来場者数は初開催で約2万人、昨年の2回目が約4万人でした。そこから今年の目標12万人はかなり大きく出た印象です。

 

DJ DRAGON 「目標は大きく」という堀さんのスタイルです。ただ、現実としては10万人台という数字はかなり高いハードル。かなり厳しい目標だとは思いますが、現時点でチケットが昨年の倍のスピードで売れているんです。やはり、フェスの知名度が広がったことが影響しているのでしょう。6~8万人は目指せる固い数字だと思います。

 

──メディアでは厳しい収支の部分も報道されていました。

 

DJ DRAGON 全部、正直に公開しちゃっていますからね(苦笑)。数字が表すようにとんでもなく火の車ですよ。そもそも、あの規模のフェスをイチから立ち上げて数年で採算ベースに載せること自体が厳しいチャレンジ。それを堀さんが私財をはたいて開催しているわけです。その背景を知るだけに僕らスタッフは必死にやるしかないと思います。なんとか今年は黒字に持っていきたい。現時点では非現実的ではないと考えています。

 

──会場のひたち海浜公園は都心からのアクセスの悪さを危惧する声も絶えません。

 

DJ DRAGON まず、都心の人たちが思っている以上に近いという事実をお伝えしたい(笑)。JR品川駅から会場最寄りのJR勝田駅までは特急1本で約1時間30分。そこからシャトルバスで15分~20分程度ですからね。そりゃ、遠方と言われれば遠方なんですが、都内まで勝田から通われている人はたくさんいると思います。実はブッキングする上でも会場は利点になっているのが事実。アーティスト側からしたら遠くない認識みたいです。

 

──では、気をつけるべきは暑さ対策でしょうか?

 

DJ DRAGON ちゃんと帽子を被って、日焼け止めを塗って、こまめに水分補給をしてなどの熱中症対策さえしていれば想像しているよりも暑くないと思います。昨年はメインだったウォーターステージの照り返しがとんでもなく暑かったんですが、今年は大草原に移ったので幾分かラクになると思います。木陰もありますし涼しい風も吹くんですよ。入口からは少し歩きますが、2つのメインステージが隣接しているだけにトータルの歩行距離は短くなっています。繰り返しになりますが、熱中症対策と雨天時の雨合羽類をお忘れなく!

 

──改めて、堀総合プロデューサーとはどんなキッカケで知り合ったんですか?

 

DJ DRAGON 約8年前からLucky FMで毎週金曜日に番組をやらせていただいているんですが、当初から「今日飲みに行こうよ!」というノリで収録後に飲みに連れ出していただく仲だったんですよ。

 

──いささかフランク過ぎる気がしますが。

 

DJ DRAGON そうなんです(笑)。有名企業の社長さんからフェスに来るフレンズまで誰とでも気さくに話している印象です。X(旧Twitter)もマメにチェックしているみたいで、Lucky Fesについての投稿を見つけると自ら「いいね」したりしますからね。しかも、「フェス会場のトイレの数は大丈夫かな?」という投稿に対して「ちゃんと〇箇所あるから安心してください」というリプライまで自分で返してしまう。

 

──さながら広報担当の立ち回りですね。

 

DJ DRAGON 「フレンズたちの満足度が高いフェスにしなくてはダメだ!」という思いを常に考えている人なんです。時には悪態をつくような投稿もあるんですが、そういうのにもちゃんと返信しちゃいます。あまりの距離の近さにアンチから一転してファンになってしまう人も少なくないんですよね。ぜひ、会場で見かけたら声をかけてみてください。

 

Lucky Fes’24公式サイト https://luckyfes.com/

 

 

構成・撮影/丸山剛史 執筆/多嶋正大