日々新しいトレンドが生まれては更新されていく、現在のファッションシーン。なかでもスニーカーのトレンドは、恐ろしいほどに目まぐるしく流動的で、追いかけるのもひと苦労。しかもその都度新しいモデルを買い足していけるほど、財布にもクローゼットにも余裕はない。じゃあ一体、ファッションスニーカーは何を買えば良いのか!?
そんな大いなるテーマに答える絶対の真理が、ひとつだけ存在する。それは「定番モデル」。というわけで、人気ブランドが誇る定番中の定番モデルを紹介する企画を数回にわたりお届けしよう。第一回はドイツが生んだ世界的メガスポーツカンパニー、アディダスから。
世界のスポーツシーンを牽引するメガカンパニー、アディダス。さまざまなカテゴリーにおける専門スニーカーを世に送り出し続ける中で、ヒップホップなどのサブカルチャーとも深く結びつき、スニーカーというカルチャーをストリートに根付かせた偉大なるブランドだ。その長い歴史の中には当然、幾つもの歴史的マスターピースが存在し、そしてその多くが現在のストリートシーンにおいても脈々と愛され続けているという、まさにスニーカー界の巨人。そんなスポーツとストリートを股にかけるアディダスから、トレンド不問の定番5モデルをピックアップ。スニーカー事情に造詣深い編集ライター・ヤマモトサトシ氏のコメントの下、その魅力とヒストリーを改めて紐解いていく。
【解説】
ヤマモトサトシさん
ファッションやアウトドア、ライフスタイル雑誌などで、スポーツ及びアウトドア関連のプロダクトを中心に執筆。シューズ選びで重視するのは“機能美”。どんなに優れた機能があろうとも、見た目が良くないと食指は動かず、その逆もまた然り。
[01]
コートとストリートを繋いだ歴史的マスターピース
adidas Originals
SS 80s
実売価格1万5120円
「1970年代、プロのコートから路地裏の3on3まで、プロアマ問わず広くバスケットボール業界を席巻した大名作『スーパースター』。その人気ぶりはスポーツの枠を飛び越え、ストリートにまで飛び火し、かのRUN DMCが着用したことでも大いに脚光を浴びました。するとアディダスはなんと、ラップアーティストであるRUN DMCとスポンサー契約を締結。当時としては異例中の異例とも言える、スポーツ選手以外の広告塔を起用したのです。そして『スーパースター』は、ストリートキックスの不動のアイコンに。トレードマークのシェルトゥとタンに配されたゴールドのトレフォイルは、ストリートのステイタスへと成長したのです。特にこのホワイト×ブラックモデルは永久不変のクラシックモデルとして、今も変わらぬ特別な1足であり続けています」
[02]
コート生まれストリート育ちの不動の名品
adidas Originals
CAMPUS
実売価格1万789円
「クラシックバスケットボールシューズ『トーナメント』の後継モデルとして、1983年に産声を上げた『キャンパス』。前述の『スーパースター』がN.Y.のヒップホップアイコンからアウトプットされたのに対し、こちらはL.A.のラップスターBEASTIE BOYSを介してストリートへと還元されたモデルです。ワークウェアとストリートウェアをミックスした彼らの足下を飾る『キャンパス』は衝撃的であり、その存在はBボーイはもちろん、スケーターたちにも波及。以来コアなストリートアイコンとして愛され続けつつ、その洗練されたデザインで老若男女のファッショニスタの足下で躍動し続けている名作です。最大の魅力は、どんなスタイルにもマッチする普遍的な佇まい。カルチャーに則した人々からも『わかってるじゃん』的な目線を向けられる1足です」
[03]
ファッション識者からの支持も厚い究極のミニマルモデル
adidas Originals
STAN SMITH
実売価格8540円
「国際テニス殿堂にも名を連ねる往年のアメリカ人テニスプレイヤー、スタンレー・ロジャー・スミス。『スタンスミス』はそのシグネチャーモデルとして1971年に登場し、キャンバスアッパーが主流だった当時のテニスシューズ界に旋風を巻き起こした、オールレザーのクラシックテニスシューズです。その証として、シュータンにはスタンレー・ロジャー・スミス氏の肖像をフィーチャー。さらにアディダスシューズのアッパーサイドにお約束的に配されるスリーストライプスは、ベンチレーションホールへと変更されています。このミニマルなデザインが功を奏し、さまざまなスタイルにマッチする究極のオールマイティスニーカーとしての立ち位置を獲得。世界的ファッションデザイナーなど、多くのファッション識者からも愛され続ける不動の定番モデルです」。
[04]
洗練されたナローシルエットがUKスタイルにフィット
adidas Originals
GAZELLE
実売価格7560円
「英語では『ガゼル』、ドイツ語では『ガッツレー』。どちらの響きがしっくり来るかは世代にもよりますが、アラフォーな私は完全に後者の世代。ちなみに現在アディダスのHPでは『ガゼル』の名で掲載されています。デビューは1968年。当時のアディダスにしては珍しく、特定競技の専用モデルではなく、広くトレーニングシューズとしてリリース。80年代にはフーリガンたちの間で人気が爆発し、フレディ・マーキュリーやJAMIROQUAI、OASISなど、多くのUKロックスターたちからの寵愛を受けたモデルでもあります。その特徴はなんと言ってもシャープなシルエット。この美しいナローフォルムが、米国よりも欧州でウケた所以ではないでしょうか。もちろんその洗練性は、モダンファッションアイテムとしても大活躍すること請け合いです」
[05]
コアな人気を誇る不朽のカルチャーモデル
adidas Originals
SAMBA OG
実売価格8640円
「『サンバ』は恐らく、今回紹介する5足の中では最もマニアックなモデルではないでしょうか。ですが同時に、最も歴史が古いモデルでもあります。デビューは1950年代で、当初はサッカー用スパイクとしてリリース。当時としては画期的であったテクノロジーで、1954年のW杯で同モデルを着用した西ドイツ代表を優勝へと導き、さらに1962年のW杯でも、同作着用のブラジル代表に優勝トロフィーをもたらします。またカジュアルズやスキンズなど、UKサブカルチャーのアイコンシューズとしても受け入れられ、ガムソールとスエードトゥキャップの組み合わせは、多くのスケーターたちにも歓迎されることに。現在でもカルチャーアイコンとしての存在意義を知る人々から熱烈に愛され続ける、時代を超えたストリートキックスの定番モデルなんです」
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