【G-Shock episode.1】
世界一タフな腕時計を夢見た若き開発者たち
1981年当時、腕時計はまだ貴重品で、注意深く扱っていた時代。薄く軽い時計がトレンドで、最薄・最軽量を競い合っていました。だが、カシオの若きエンジニアたちはそんな常識に疑問を持ちました。
「違う。腕時計はもっと生活に根ざしたもの。使い込むほど味わいが出てくるジーンズのようなものが作れないだろうか」
2年の膨大な試行錯誤の末に完成したのが、DW-5000Cです。ウレタン樹脂で全面をカバーし、心臓部であるモジュールは点で支える中空構造を採用しました。初期角型モデルは、現在でこそG-SHOCKでは小振りな存在でしたが、当初は「大きすぎる」と、社内で否定的な意見が多かったといいます。また同時に、期待の声も一部にありました。だがさすがに、35年で出荷1億本の超ヒット作になるとは、誰も想像していなかったに違いありません。
【キーワード――耐衝撃構造】
<中空構造>
衝撃を受け止めずに受け流す逆転の発想
初代G-SHOCKで実現した耐衝撃構造は、モジュールをがっちり守るのではなく、ケースの中で浮遊させる考え方。いくつかの“点”でモジュールを支え、衝撃を分散させる逆転の発想。その外部をウレタンベゼルや緩衝材で取り巻くことで、10mの自由落下にも耐える構造を完成させました。現在は技術革新によりモジュール自体も耐衝撃性を備えるなど進化していますが、中空構造の考え方は継承されています。
<全方位カバリング>
ベゼルが受け身を取りバンドも耐衝撃形状に
G-SHOCKの形状はすべて、衝撃に耐えるためにあります。落下時に、ガラス面やモジュールと直結するボタンをガードするため、突き出たベゼル全体が受け身を取るよう設計。あえて凸凹とした独特のタフなフォルムにより、あらゆる方向からの衝撃を緩和しています。また、G-SHOCKのバンドは自然と腕に沿うように丸くなるタイプが主流。これはバンド自体がショックアブソーバーの役目を果しており、裏ブタへの直接的な衝撃を防いでいます。
【G-Shock episode.2】
誇大広告ではないかと疑われたテレビCM。GーSHOCKの凄さを最初に見抜いたのはアメリカ人だった
GーSHOCKの実用性を最初に認めたのは、実は日本人ではなくアメリカ人。タフさと手頃な価格が彼らの合理性にマッチしました。
決定的だったのは、米国で放映されたテレビCM。アイスホッケー選手がパックの代わりにDWー5200Cをシュートするという映像です。しかし、現地販売会社が製作したこのCMに、誇大広告ではないかと消費団体が噛みついた。その騒動を聞きつけた全米ネットのニュース番組が、CMの再現実験を生放送。結果、やはりGーSHOCKはCM通りに無事。この騒動が逆に知名度を高め、全米でブームが巻き起こりました。
走り込んできたプレーヤーが、強烈にシュートを放ったのは、パックではなくG-SHOCK。キーパーが見事にキャッチしたグローブの中で、DW-5200Cは何事もなかったかのように時を刻んでいる──というタフさをアピールする内容でした。