文房具レビューを連載している筆者だが、実は文房具好きであると同時にカバン好きでもある。とくにリュック系。ライターという仕事柄、取材であちこちへ移動が多いため、快適に荷物を持ち運びたいから……というのが理由だ。
そのため、クラウドファンディングのサイトで面白そうな機能がついたリュックを見つけると、ついつい購入してしまう。ちなみにここ最近気になっているのは、ハンモックを内蔵したトラベルリュックだ(いま購入を迷っているところ)。
そんなこんなで、自宅にはリュックだけでも20個近くあって、収納スペースを圧迫している。「モノを入れるモノを入れておく場所がない」というのは、冷静に考えるとなかなか無駄の多い話ではある。
そんなリュック好きかつ文房具好きにとって、ちょっと聞き逃せない話を耳にした。なんと、お馴染みの文房具メーカー、コクヨが「リュックを作る」というのである。
コクヨは、これまでにもポーチやフリーアドレス用バッグをオフィス向けに発売してきたが、リュックというのはさすがに初耳。さらに、リュック以外の製品ラインアップも加えて、2021年3月から「THIRD FIELD」という新ブランドとして全国展開するとのこと(一部店舗では2月10日より先行販売中)。うーむ、どんなものか、気になるに決まっている。
今回はありがたいことに、件のリュックを発売前から1か月以上に渡って試用する機会を得たので、同じく「コクヨのリュック気になる!」という方に向けてレポートしてみたい。
コクヨのリュック、大地に立つ!!!
あらためて、新ブランドのTHIRD FIELDについて。これはいわゆるサードプレイス(自宅でも職場でもない、第三の居場所)に近い意味合いで、新たに仕事をする空間を快適にしつらえるツールとして展開していくらしい。
その中でも注目したいのが、“コクヨのリュック”こと「STAND BACKPACK」である。
コクヨ
THIRD FIELD(サードフィールド)
STAND BACKPACK
13.3インチモデル 1万6500円/15.6インチモデル 1万9000円(ともに税別)
※写真は13.3インチモデル
ビジネスリュックとしては定番のややスリムなフォルムで、サイズは13.3インチと15.6インチの2展開。つまり「それぞれノートPCのサイズに合わせた荷室がありますよ」ということで、よくあるリットル容量表記よりも分かりやすく、現実的だ。
スリムな分だけ容量は少ないが、都市部での電車移動を考えると、むしろこれぐらいスリムじゃないと困る、というケースも充分に考えられる。13.3インチモデルで厚みの実測が100mmほどだったので、これなら電車内でも周囲への影響は最低限に抑えられそうだ。
上下分割コンパートメントがメインの収納
荷室は、まずサイズ表記の元ともなっているノートPCの収納がひとつ。それに加え、PC収納と同じトップファスナーからアクセスできる上部荷室と、両サイドのファスナーからアクセスする下部荷室の、上下分割コンパートメントがメインの収納となっている。
さらにトップポケット、背面パッド脇のサイドポケット、フロントポケットと計3か所のポケットを備えており、小物は適宜振り分けて入れておくという感じだ。
スリムなボディに自立機能を搭載
そして最大の特徴が、自立機能。なにしろ“自立型ペンケース”を生んだコクヨだけに、スリムなリュックだって立たせてしまうのだ。
立たせ方は簡単で、バッグ前面の下をつまんで引っ張るだけ。マグネットで固定されていたカバーがパクッと開いて支えになることで、しっかり立つという仕組みである。戻すときは、リュックを持ち上げるだけで、勝手にマグネットがくっついて元通り。
リュックが自立してなにかイイかというと……例えばカフェのベンチ席に立てて置けば上部荷室とPC収納からの出し入れがラクだ。
他にも、出先の会議室で荷物を置く場所がないときにも、立たせてしまえば邪魔になりにくい。カウンターだけのラーメン屋で荷物は床に置くしかないという状況でも、立たせておけば汚れる心配は最小限で済むだろう。
何も考えずにサッと置けるというだけで、かなりストレスフリーなのである。
これまでは壁や椅子の脚に立てかけるなど、状況に合わせてなんとなく乗り切ってきたわけだが、今後はもうその場しのぎでリュックの場所を考える必要がなくなるのだ。自立しなくてもリュックとしては成立するけど、それでもあった方がなにかと嬉しいタイプの機能だろう。
実際に、これを1か月ほどメインバッグとして使ってみた体感としても、リュックを立たせておきたいというシーンは日常的に意外とあったんだなあ、という印象だ。
物申したいところも……
ただし、収納については、個人的には下部荷室へのアクセスがもうちょっと使いやすいとありがたかった。
サイドファスナーはそれなりに大きく開く構造になってはいるものの、全体を通して最も大きい荷室へのアクセスとしては不十分。手を突っ込んでの出し入れが面倒なので、あまり使う気持ちになれないのである。そこはちょっと惜しいし、容量的にももったいない気がする。
対して上部荷室は、ファスナーでフルオープンになるので、アクセス良好。ノートPCと一緒に使うACアダプタやモバイルバッテリーなど、頻繁に使うものは全部こちらに放り込んでおきたい。
……などと文句はあるものの、メーカーとして初のリュックと考えれば、この完成度の高さはたいしたものだと思う。
特に「ノートPCとケーブル類、あとは飲み物と文房具一式あればどこでも仕事OK!」というタイプの人……つまり、すでにノマド的な働き方ができている人なら、このリュックはかなり使えるはず。なにより、どこでもワークなスタイルと、自立して「邪魔になりにくい・置き場所で悩まず済む」機能との相性が良すぎだ。
価格的にはけっしてお安い方ではないが、他にないタイプのリュックである。気になるのであれば、機会をみてぜひ試してみて欲しい。
ドキュメントバッグも「こいつ……立つぞ!」
THIRD FIELDブランドには、他にツールポーチやPCバッグなどがラインアップされている。その中でも使ってみて面白かったのが、書類ホルダーの「STAND DOCUMENT BAG」だ。
コクヨ
THIRD FIELD
STAND DOCUMENT BAG
3000円(税別)
サイズ的にはA4+、具体的には角2封筒がすっぽり収まってまだ余裕があるくらい。硬い表紙と裏表紙の内側には、インデックス付きの仕切りが2枚と透明ポケットが付いており、書類の分類収納ができるように作られている。この仕切りとポケットはタテヨコ両対応なので、どちらの向きに書類を入れても抜け落ちない。
ちなみに、閉じた状態ではマグネット内蔵フラップで挟んで固定できるので、カバンの中で勝手に開いて書類がバラ落ち、なんてトラブルもなさそうだ。
リュックが立つし、名前にも「STAND」が入っているし、当然のように書類ホルダーだって自立するんだろ? と思ったら、案の定だ。
立たせ方は、表紙を開いて中央の折り線から折り曲げて戻すだけ。これで自立して置いておける書類スタンドのできあがり! マグネットフラップは、180度折り返して表紙に貼り付けると邪魔にならない。
書類ホルダーが自立すると、書類をそのまま机に広げるのに対して半分ぐらいの面積で済むので、かなり省スペース。狭い机で仕事をする場合は、これは作業効率に効いてくる部分なのだ。
なにより「STAND DOCUMENT BAG」はサイズが大きめなので、13インチのノートPCを開いた後ろに置いても、インデックスがしっかり見えて、書類を出し入れできる。特に横幅の狭いカフェ机では、この前後配置によって、思った以上にスマートな作業環境ができあがるのだ。
コップの結露で平置きした書類を濡らすこともないし、なかなかに快適!
「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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