生活者の意識変化から伸長する“テックウェア”の市場に注目したデサントジャパンは、ハイスペックプレミアムカテゴリー「DESCENTE ALLTERRAIN(デサント オルテライン)」(以下、オルテライン)の拡充を発表しました。
“どのようなシーンでも着られる機能とデザインの服”の需要を捉えた新たなコレクション、「DESCENTE ALLTERRAIN 81(デサント オルテライン エイティワン)」(以下、オルテライン 81)と「DESCENTE ALLTERRAIN I/O(デサント オルテライン アイオー)」(以下、オルテライン I/O)を導入し、“360度シーンレステックウェア”として、テックウェア市場でのさらなるシェア拡大を図ります。
なぜ「オルテライン」を拡充させるのか
新コレクションの発表を行ったのは、同社の商品を販売している「デサント ブラン 代官山店」。あえてイベント会場などを選ばなかったのは、コレクションの雰囲気をより感じてもらうのが狙いで、店内には多くのメディア関係者が集まり、今回の発表会の関心度の高さが伺えます。
「『DESCENTE ALLTERRAIN』新コレクション戦略プレビュー会」について説明を行ったのは代表取締役社長の小川典利大氏。3本の矢が示すブランドロゴの起源から、現在までの展開を話す中で、「みなさんに覚えていただきたいのは、我々の商品は基本すべてパフォーマンス、選手、見ている方々、運動する方々、スポーツをする方々のパフォーマンスを生かす。それに基づいた一般のライフスタイルのウェアまでを展開しています」とパフォーマンスが基軸であることを強調しました。その中で2012年にスタートしたのがオルテラインです。
「スポーツ基軸のウェアはそれまでもありましたが、我々はフィールドスポーツだけでなく普段の生活の着用シーンにも着目した次世代のスポーツウェアとしてオルテラインをスタートさせました」(小川氏)
オルテラインが誕生して10年がたったいま、ユーザーの衣服の選び方は大きく変化しています。経済産業省が発表した「これからのファッションを考える研究会」の報告書によると、ユーザーの意識は、コロナ禍環境の前後では他者からどう見られるではなく、自分の価値観に着目するようになっています。
「機能性、耐久性など、自分の価値観で商品を選ぶようになってきたのがキーワード。オルテラインはミニマルなデザインで、機能性、耐久性の高い商材を展開していますが、10年経った今、もう一段回拡充していく。我々はパフォーマンスを由来とするウェアを展開することでマーケットを席巻していきたい」というのが今回の経緯となっています。
オルテラインはこの1年間に関しても好調な売り上げを展開している中、矢野経済研究所が発表した数字では、スポーツウェア市場は約5800億円市場で、その中でも伸長度が激しいのが、アウトドア、そして一般ライフスタイル。そこでデサントは、テックウェア市場の伸長に着目しました。
既存の「オルテライン」も進化を留めない
続いてマーケティング部門 部門長代行の大辻俊作氏が、オルテラインの拡張を紹介しました。
「デサントが雪山で培った機能、またはニーズを生かし、アウトドアシーンである非日常と日常の生活機能を向上させるユーティリティウェアとして立ち上げたのが『オルテライン 81』。そしてオンとオフ、日々の生活のシーンを横断で365日、様々なシーンで使っていただけるユニフォームのようなウェアを目指すのが『オルテライン I/O』です」(大辻氏)。
オルテラインを代表するハードシェルジャケット「クレアス」は売り上げも好調で、2022年の1年間で150%以上伸長していますが、2023年SSモデルはさらに進化しています。そのポイントをグローバルマーケティング課 課長の山内洋佑氏が紹介してくれました。
素材の耐水圧、透湿性は1万ミリ以上の高スペックに加え、防風性も備えることでどのシーンにおいても着用できるアイテム。デュアルベンチレーションシステムやフード部分のパラジップ、袖周りのブロックアジャスターなど様々な機能やこだわりが詰まったアイテムですが、2023SSではサイズ感もアジャストさせます。
「自然なゆとりが出るように、肩幅、身幅はゆったり、着丈に関しても2cmほど伸ばしています。一番懸念点であった袖丈は、スキーシーンの背景から袖丈を長くしていましたが、普段の生活のなかでは袖丈が長すぎたため裄丈、袖丈に関しても少し調整しました」(山内氏)
「81」のネーミングの由来は将棋盤と日本の国番号
今回新たに導入されたオルテライン 81は、オルテラインのコンセプトである全地形対応を本格的に体現するウェア。その名前の由来は、将棋盤の9×9の81のマス目、そして日本の国番号とのこと。
「将棋盤には81マスありますが、オルテラインの全地形、いろんな方向に対して攻めていける、また着用できるという部分を想定。また国番号の『81』からは、日本から新しいウェアを発信していくという思いを込めています。大きくこだわっているのがパターン。スキーウェア開発で培ってきたパターンメイキングを生かしつつ、さらにアウトドアシーンで必要な要素を取り入れて新たなパターンを作成。また立ち居振る舞いでも綺麗に見えるかどうかも意識しています」(大辻氏)
アウトドアでは避けては通れない高機能素材「GORE-TEX」や「PERTEX」はもちろん、こだわりの機能もふんだんに取り入れていますが、それらを意識させない“構造美”でスッキリ見せているとのこと。
代表的なアイテムの一つが「ゴアテックスジャケットNP」。これは、バックパックを持たずに収納力を高めた仕様のアイテムで、フロントにはワイヤレスイヤホンや携帯が収納できる多機能なポケットを搭載。背中にも大きなポケットを搭載し、タオルや着替えなどが入れられる仕様になっています。
さらに「ゴアテックスジャケットMS」はメッセンジャーバッグを肩から掛けたときにフロントファスナーが干渉しないよう前立てにディティールを施すこだわりの仕様に。
インプットとアウトプット、日常を支え365日着回しできるアイテム
ON/OFF横断し、ミニマルにインプットとアウトプットを支え、365日あらゆる日常シーンで着回しができるミニマルなデザインをコンセプトにしているのがオルテライン I/Oです。
「ユーザーが商品を選ぶポイントで、着回しができる。そういったところにデサントらしく応えるべく、ベーシックな日常に着回しできる商品となっています」(大辻氏)
こだわりのパターンメイキングはここでも採用。スポーツに特化したパターンをそのまま使うのではなく、培った技術を日常で使うために一から見直し、日常生活の動作にフィットするパターンを作成。歩いているときに綺麗に見えるということも意識したパターンメイキングを採用しています。
例えば、ジャケットは3種のデザイン(テックテイラードジャケット、テックコーチジャケット、テックMA-1ジャケット)、パンツは3種のシルエット(テックスリムパンツ、テックレギュラーパンツ、テックワイドパンツ)を用意。着回しができるセットアップを中心とし、上下1セットどれか持っていれば大丈夫というベーシックなアイテムたちが揃います。
「単純にライフスタイルウェアをするのではなく、スポーツブランドとして高機能素材に応えるべく、スポーツウェア同等以上の高い機能性を持った素材を使用したデイリーアイテムになっています」(大辻氏)
スポーツウェアで特に求められるイージーケア。手入れが非常に簡単であるというところも仕様においては重要なポイントとなっています。
「代表的なアイテムは私が着ているテイラードジャケットになります。素材は1枚の素材を切り合わせた二重織の素材。やはり毎日着たい、365日というところではタッチ感が非常に重要なので、薄すぎず厚すぎず、非常に手触りの良い素材を使っているところもポイント」(山内氏)
また、ストレッチといった機能性はもちろんですが、吸汗性、UV、遮蔽性、さらには接触冷感という、触るとヒンヤリする素材を採用しているので、夏場でも快適に着用できます。
それぞれの価格レンジに関して、オルテラインは高価格帯。オルテライン 81はゴアテックスのシェルジャケットが3万円台から、トップモデルは6万円台。そしてオルテライン I/Oは、セットアップで5万円を切る価格帯に設定されています。
「我々はスポーツ企業であり、パフォーマンスドリブンは絶対です。根底にあるのは、アスリートファーストの考え方。そのパフォーマンスドリブンを運動しない方々にも知っていただくために今回のテックウェアをしっかりと展開していきたい」(小川氏)
妥協のないスポーツの世界で培われた、たしかな技術。同社はウェアをギアとして、記録を少しでも縮めるたまにどうするかを追求しています。私たちも日常の生活において、どれだけ快適に過ごせるか。ウェアをギアとして捉え、これからは機能も選択肢に入れるべきかもしれません。
撮影/我妻慶一、オフィシャル
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