かつてのヒット商品が、現代に再生され、リバイバルヒットに至るケースは後を経ちませんが、BANDAI SPIRITSの新プロジェクト「BEST HIT CHRONICLE(ベスト ヒット クロニクル)」では、なんとかつて一世を風靡したゲーム機、「PlayStation™」「セガサターン」をプラモデルにして発売。
数多くあるリバイバル商戦の中でも「ゲーム機を自分で組み立てる」という、例を見ない試みの裏側にはどんな思いが隠されているのか。BANDAI SPIRITS ホビー事業部の寺島 塁さんに話を聞きました。
●BANDAI SPIRITS ホビー事業部の寺島 塁さん。バンダイと言えば、“ガンプラ”を筆頭に数々のロボットのプラモデルが有名ですが、寺島さんはそれ以外の、全く新しい分野の版権プラモデルの企画開発を行われています。
キャラクタープラモとは違う新たな試み!
ーーリバイバル商戦が盛んですが、かつてのヒットゲーム機がプラモデルとして発表されたことにまず驚きました。開発までにどういった経緯があったのですか?
寺島塁さん(以下、寺島) 弊社商品の中で一番知っていただいているプラモデルは、まず「ガンプラ」かと思いますが。近年はその他に、ロボット系のもの、それから人間キャラクターものも増えてきており、ありがたいことにたくさんの模型ファンの方がご購入くださっています。
ただ、今後はプラモデルの分野を、さらに広げていきたいと思い、今回の企画に辿りつきました。「どんなモノをフックにしたら、今までプラモデルに触ってきてなかったような方にも触っていただけるだろうか」と考えたときに、「人生の中で夢中になった商品」に注目するようになりました。昭和・平成・令和と時代が移り変わる中で多くの人々に愛された商品をプラモデル化することで、プラモデルに触れるキッカケになってほしいという想いから、このBEST HIT CHRONICLEを立ち上げたんです。その第一弾として、「PlayStation™」、「セガサターン」をチョイスさせていただきました。
まずは「懐かしい。これ夢中でやったな」って思っていただけるでしょうし、それが実はプラモデルとして商品化されたといえば、「そういえばプラモデル、最近はやってないな。もう一度やってみようかな」と、思っていただけると嬉しいです。
ーーしかし、かつてヒットしたとはいえ、プラモデル化としては前例のないものですよね。ご苦労なさったのではないでしょうか?
寺島 BEST HIT CHRONICLE自体が、基本的に他企業様のご協力なくして実現できない企画です。しかし、今回のPlayStation™、セガサターンのプラモデル化は、それぞれソニー・インタラクティブエンターテインメントさま、セガさまの多大なご協力のもとで実現させることができました。
幸いなことに両社さまともにまず「面白い」というご反応をいただき、開発に際しても、かなり細かく実機と見比べながらの監修のご協力をいただけました。
このプロジェクトで大切にしていることは、ただかつてのヒット商品を、再生することではなく、プラモデルを組み立てながら、その商品、プロダクトをより詳しく知ってもらうことでもありました。ですので、両社さまの細やかな監修がなければ、まず実現には至らなかった商品でもあります。
「5分の2」という微妙なスケールモデルに至った理由!?
ーーまずプラモデルとして「細部の再現がすごいな」と思いました。ここまで細やかにプラスチックで表現できるものなのですね。
寺島 そうですね。そこは弊社のキャラクタープラモデルによって培った技術によるものです。
ただ、今回のPlayStation™、セガサターンは本当に細部にこだりましたので、例えば実機の傾斜に対し、「コンマ何度ズレている」といったところも、両社さまにご指摘いただきながら、ひとつひとつクリアしていきました。本当に目に見えない単位まで調整を加えていったので、実機のスケールモデルとしては自信を持っています。
ーー5分の2という微妙なサイズ感になったのはなぜですか?
寺島 スケールモデルって、分子が「1」であることが美しいはずなのですが、そもそもの実機が手で持てるサイズだったため、それに縮尺をかけて見ると、分子を「1」にするときに、どうしても差が出てしまった。つまり、「2分の1」「3分の1」ではかなり大きさが異なってしまうんですね。
プラモデルらしく手のひらに収まるように、そして作り上げた後も、デスクの片隅に置いておきたくなるといったことを想定し、「このサイズ感が適切だろう」と考え、この5分の2に至りました。
プラモデルの劇的な進化
ーーこれだけの細かさとサイズ感で、実際に組み立てるのは、ユーザーにもそれなりに技術が必要なんじゃないですか?
寺島 普通のキャラクターのプラモデルでも、今は関節が可動するようになっていますが、「上腕と二の腕と肘を3パーツで組み合わせるのか?」というと、そんなに単純ではないです。「関節から数パーツ重ねて最終的に形になっていく」のが今のプラモデルですけど、今回のPlayStation™、セガサターンはパーツひとつひとつがある程度、形取られているので、パーツの数もさほど多くはなく、初めての方や久しぶりにプラモデルを組むという方でも、組み立てるのは比較的大変ではないと思います。むしろ「重ねていく」という感覚が近いプラモデルかもしれないですね。
例えばガンプラが最初にヒットしたときの、言わば「ファースト世代」の方にとってみれば、プラモデルは劇的な進化を遂げています。当たり前だった接着剤が今は不要になっていたり、単色だったパーツが今はカラフルな、成形色で表現されていたりします。
こういった進化は、継続的にプラモデルに触れていた人でないとなかなか実感できないし、知らないことだと思います。こういったことも、今回の2/5PlayStation™、2/5セガサターンで感じていただければと思っています。
ーーつまり、BEST HIT CHRONICLEはかつてのヒット商品の再生だけでなく、プラモデル自体の楽しさをあらためて世に広める意味もあるということでしょうか?
寺島 そうですね。BEST HIT CHRONICLEの第2弾としては、日清食品さまとお取り組みが決まっています。今後も、かつてのヒットプロダクトはもちろん、世にある万物を対象にプラモデル化できたら良いなと思っています。是非これまではプラモデルにさほど興味がなかった方にも注目していただけたらなと思っています。
ヒットの再生だけでなく、新しい取り組みもふんだんに取り入れたBEST HIT CHRONICLE。3月発売の2/5PlayStation™、2/5セガサターンはもちろん、今後の動向にも期待大ですね!
撮影/我妻慶一
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