「オイル」と聞くと、脂っこくてからだに悪そう、というイメージが強かったのはひと昔前のこと。最近では、ココナッツオイルや亜麻仁油、MCTオイルなどの健康や美容への効果が注目され、「1日小さじ1杯のオイル」がじわじわと定着してきました。
特に、毎日使われているにもかかわらず体内では生成できない必須脂肪酸「α-リノレン酸」は、欠乏すると皮膚炎や生活習慣病などを引き起こすと言われています。油は脂肪酸の種類によって役割が異なり、なかでも必須脂肪酸であり細胞膜の原料で、毎日生体機能を動かすのに必須なα-リノレン酸を含む“オメガ3系”が注目されています(オメガ3系にはEPA、DHAも含まれます)。
オメガ3系をしっかり摂ることで、ほかの栄養素の吸収や老廃物の排出をスムーズに促し、からだの調子を整えやすくなります。反対に、同じ必須脂肪酸でも、現代の食生活では摂りすぎてしまう人が多い“オメガ6系”と呼ばれる「リノール酸」は、お菓子やパン、加工食品、ファストフードなどに多く含まれています。過剰摂取を抑えることを意識してみましょう。
ここでは、α-リノレン酸などの必須脂肪酸を豊富に含むオメガ3系のオイルに焦点をあて、明治時代から続く金田油店の店長・青木絵麻さんにお話を聞きました。
α-リノレン酸を含むオイルとは?
「α-リノレン酸が50%以上含まれているオイルを『オメガ3系のオイル』と呼んでいます。主に、えごま油、亜麻仁油、チアシード油、サチャインチ油などですね。これらのオイルは、α-リノレン酸のほかにも、コレステロール値や血圧を下げるリノール酸やオレイン酸なども含みます。サチャインチ油には、抗酸化作用のあるビタミンEもたっぷり入っています。オメガ3は毎日摂っても毎日使われていきますし、体内で生成できないので、どんな世代の人にも必要な栄養素と言っていいと思います」
1日小さじ1杯のオイルを長く摂り続けること
「1日小さじ1杯くらいのオメガ3系オイルを、毎日続けて摂ることがおすすめです。小さじにたった1杯で1日分のα-リノレン酸が摂れるので、できるだけ非加熱の状態で、サラダにかけたりパンにつけたり、スムージーなどに混ぜていただくのもいいでしょう。オイルは原料が同じでも、焙煎の仕方や絞り方、精製の仕方などで、香りや色もかなり違ってきます。オメガ3系は特に酸化しやすいオイルですので、遮光されていたり販売管理がなされているなど、フレッシュな状態で摂ることのできるものを選んでください」
青木さんおすすめの「オメガ3系のオイル」
純えごま油 187g/1501円
初めてのオメガ3は、癖がなくて食べやすい純えごま油をチョイスしてみてください。香りがないので、どんな料理にも使いやすいオイルです。
http://www.abura-ya.jp/SHOP/KB_c001.html
玉締め一番搾り国産えごま油(焙煎)140g/2376円
手間がかかり生産量の少ない、“玉締め”という絞り方を使った貴重なえごま油です。ほんのり香ばしくサラリとしているので、鍋のタレやエスニック料理などにおすすめです。
http://www.abura-ya.jp/SHOP/LM_n001.html
北海道産 えごまの雫 100g/2160円
40℃の低温で丁寧に薪火焙煎した、無農薬の北海道産えごま種子から濾過したオイル。石臼の重みだけ搾り、ふわりとした香ばしさが人気です。
https://www.amritara.com/fs/amritara/oil01/f638
日清アマニ油/950円
注いだ分だけ内袋が小さくなる二重構造で、特に酸化しやすい亜麻仁油の鮮度をしっかり守ります。一番搾りで香りや味にクセがなく、何にでもよく合います。
http://www.nisshin-oillio.com/amani/
続いて、体調に合わせたヘルシーオイルの選び方を教えていただきましょう。
タイプ別! 体調に合ったヘルシーオイルの選び方
現在の体の調子やライフスタイルから、自分に合ったオイルを選んでみてください。基本的な考え方は、まずはオメガ3系のオイルをしっかり摂り、加えて体調別にさまざまなオイルで調整することです。
・外食が多い人
リノール酸過多にならないよう食事で調整しつつ、積極的なオメガ3摂取を
「トランス脂肪酸や、消費しなければ中性脂肪として溜まってしまう飽和脂肪酸(パーム油やショートニング)、摂りすぎるとオメガ3の効果を殺してしまうリノール酸などを摂りすぎている可能性があります。溜まってしまった油の酸化を防ぐために、ビタミンEが多い油を摂るのもおすすめですが、全体の油摂取量が多くないか、まず気をつけてください」
左:シャナンティーナ有機サチャインチオイル23og/2376円
http://www.abura-ya.jp/SHOP/LN_d001.html
右:グリーンナッツオイル(インカインチ油)使い切りタイプ4g×20個パック/1188円
http://www.abura-ya.jp/SHOP/LM_r002.html
・肥満ぎみの人・便秘の人
消費しないと中性脂肪となって溜まる飽和脂肪酸とオレイン酸過剰にならないよう気をつけて
「摂るべきオイルと、摂りすぎたくないオイルのバランスがとれていないことで、肥満になってしまっている可能性も。体内で脂肪が分解されやすい、中鎖脂肪酸を多く含むオイルに切り替えてみてください。また便秘気味の方は、イタリアでは便秘薬と言われるオリーブオイルを朝小さじ1杯摂るのを試してみても。もちろんオメガ3は必須です」
左:有機EXVココナッツオイルBS1st 425g/1922円
http://www.abura-ya.jp/SHOP/LM_v005.html
右:ココウェル リキッドココナッツオイル280g/2592円
http://www.abura-ya.jp/SHOP/LN_f001.html
・肌荒れが気になる人
ビタミンE、カロチン、コエンザイムQ10を含むオイルを
「細胞の再生を促すオメガ3と、抗酸化力のあるビタミンEの組み合わせがおすすめです。ビタミンEはサチャインチ油でも摂れますが、パームフルーツというあぶらやしの果肉からとれるレッドパーム油にも、スプーン1杯で一日の摂取必要量のカロチンとビタミンEが含まれています。また、調理用のオイルをこめ油に切り替えてもいいでしょう」
左:レッドパーム油 カロチーノプレミア500g/972円
http://www.abura-ya.jp/SHOP/LM_b004.html
中央:香るマカダミアナッツオイル135g/1188円
http://www.abura-ya.jp/SHOP/LM_x001.html
右:アサイーフリーズドライパウダー30g/1350円
https://www.frutafruta.com/products/powder/
・ストレス過多の人
ミネラルや栄養をしっかり摂取して心の安定を図って
「オメガ3脂肪酸やミネラルの長期間にわたる欠乏、栄養不足が原因で、不眠やストレス、鬱やパニック障害などを引き起こすという研究発表も上がっています。オイルで摂るほかに、原料自体(種子)を摂取する方法もあります」
左:ニップン ローストアマニ粉末35g/388円
http://www.abura-ya.jp/SHOP/LN_c002.html
右:熊本県菊池産 えごまの実100g/810円
http://www.abura-ya.jp/SHOP/LN_g003.html
ほかにも、ドレッシングやジュース、サプリメントなど、オメガ3を含む商品はたくさん出ています。生活スタイルに合ったものを、選んでみてください。
【プロフィール】
金田油店 店長 / 青木絵麻
東京・浅草橋で明治3年より続く金田油店の店長。レシピ数1000を超える油を使った料理ブログ「油屋ごはん」は2009年に書籍化され現在も更新中。油のコンシェルジュとして店舗での接客や油の知識セミナー、テイスティング会などを通じ日々油の使い方、選び方のアドバイスを行う。2016年2月に講談社より《からだを活性化させる 魔法の油! 「オメガ3」レシピ》を出版。日本オリーブオイルテイスター協会認定JOOTAオリーブオイルテイスター。一般社団法人日本食文化会議運営委員。
取材・文/吉川愛歩 撮影/山本雅世
何気ない日常を、大切な毎日に変えるウェブメディア「@Living(アットリビング)」