味噌、醤油、納豆などの発酵食品は、昔から日本人の健康を支えてきました。なかでも、米ぬかを発酵させたぬか床に食材を漬ける「ぬか漬け」は、乳酸菌の宝庫。漬けるだけで、食材の旨みと栄養価がアップするパワーフードです。
とはいえ、ぬか漬けとは、“ぬか床”のニオイが強く、毎日かき混ぜたり温度管理をしたりしなければ維持できないものでした。それが最近では、冷蔵庫で保管できる、手間のかからないぬか床が続々と開発され、手軽にぬか漬けを始められるように!
今回は自然発酵食品の研究開発をしているクリエイティブチーム「COBO ウエダ家」のみなさんに、簡単に使えるぬか床を使ったぬか漬けの作り方を教わりました。
まず何を用意すればいい?
1. 漬けたい食材
基本的な食材はやはり野菜。初心者はどんな野菜を選べばいいか、またちょっと変わり種の漬物を作りたいときはどんな食材がいいか、のちほど解説します。
2. ぬか床
今回は、ウエダ家の自然発酵乳酸菌で発酵済みのぬか床を使用します。
COBO ウエダ家「ウエダ家のにおわないnukadoko 1kg」
2160円(※11月末に再入荷予定)
毎日かき混ぜなくていい!
ウエダ家のぬか床の最大の特徴は、商品名にもなっている通り「におわない」ということ。一般的なぬか床は常温で発酵させるため、ぬか床に繁殖する菌の状態が不安定になりがちです。毎日かき混ぜてお手入れをしないと、雑菌が増えやすく酸味やツンと鼻を刺すような独特のニオイが出てしまうので、手間をかけなければなりませんでした。
それがウエダ家のぬか床は、独自に開発した自然発酵乳酸菌で発酵させたぬか床を、温度が安定している冷蔵庫で保管するので、雑菌の繁殖を抑えることができ、刺激臭が発生しないのです。
「古来から行われている“寒仕込み”の文化に着目しました。酵母は、気温が下がる季節のほうが発酵のスピードが緩やかで、雑菌が繁殖しにくくなりますから、低温で安定している冷蔵庫は発酵させるのに大変向いています。自然発酵乳酸菌は、山形県産農薬不使用のササニシキと自然栽培玄米麹、水を原料に低温で長期間自然発酵させたものです。このぬか床は、酵母の甘みとお味噌のような柔らかい香りなので、洗い流さず一緒においしく食べられるのが特徴です」(ウエダ家・植田 亜弥さん、以下同)
ぬか床の準備と注意点
それでは早速、ぬか床を作ってみましょう。ジッパー付きの冷蔵保存用バッグなどに入れても、ぬか漬けを作ることができますが、ジッパーがきちんと閉まらず空気に触れてしまうと、雑菌やカビの繁殖につながるので、脱気できるホーロー容器がおすすめ。ホーローは、酸や塩分に強い材質でニオイがつきにくく、ぬか漬けに向いています。
「容器は、あらかじめ熱湯をまわしかけて殺菌し、水分をしっかり拭いておきましょう。ぬか床を容器に入れたら、指でやさしく押しながら平らにならします。空気に触れているところにカビが生えやすいので、できるだけしっかり空気を抜きましょう」
「ぼろぼろと付着したぬかは、空気に触れる面が多くカビの繁殖につながるので、丁寧にぬぐっておきます。漬けた野菜を取り出したあとや、漬けるものがないときは、この平らにならした状態で冷蔵庫保管しておきましょう」また、周りに付着したぬかを、キッチンペーパーなどでしっかり取り除いておくこともお忘れなく。
何をどう漬けたらいい?
【初心者におすすめ】きゅうり・にんじん・かぶ
「きゅうりは皮が柔らかくて味が染み込みやすいので、漬け始めてから1〜2日で食べられます。にんじんやかぶのぬか漬けは、ごはんとの相性もよく、ぬか漬けをあまり食べ慣れていない人にもおすすめです。いずれも2〜3日置くといいでしょう」
「漬け終わったらぬかを洗い流さず、手でぬぐう程度にしておき、食べやすい大きさに切ってお皿に盛りつけます。一般的なぬか床が12〜13%の塩分濃度なのに対して、『におわないnukadoko』は8〜9%なので、塩分過多の食生活になりません」
・きゅうり
塩をまぶしてまな板の上でころころとやさしく転がし、板摺りをします。「板摺りをすると水分が出てくるので、キッチンペーパーでよく拭き取ります。また、苦味があるヘタは切っておくとよいでしょう。水分がぬか床に多くなると雑菌の繁殖につながるので、野菜の水分をしっかりと切って、ぬか床に水気を入れないようします」
・にんじん
硬くて中まで味が染み込みにくいので、薄く皮を剥いてから切ります。「皮を剥いたらヘタを切って横に半分切り、それを縦に切って漬かりやすくしましょう」
・かぶ
葉を取ったら、四等分に切ってキッチンペーパーで水分を拭いてから漬けましょう。「葉と実の間に土や汚れが付着しているので、爪楊枝やブラシなどできちんと取ります」
【すぐに浸かりやすい】ラディッシュ・茹でアスパラ
きゅうりと同様に水分量の多いラディッシュも、すぐに中まで味が染み込むので、1日程度で食べることができます。また、アスパラは茹でてから漬けると早く味が入ります。
「また、にんじんやオクラは、生のままでも茹でてもおいしく仕上がります。コリコリとした歯触りを楽しみたかったら生で、急いでいるときや柔らかい触感を楽しみたいときは茹でてみてください」
こんな食材も!? 食べられるぬか床だからこその変わり種ぬか漬け
野菜以外にもぬか漬けにできる食材はたくさんあります。肉や魚、ナッツなども漬けられるので、挑戦してみてください。「におわないnukadoko」のように、ぬかごと食べられるからこその楽しみです。
・肉や魚は漬けてから焼くとしっとり柔らかい
肉や魚は、ぬか漬けにすることでたんぱく質が収縮しにくくなり、焼いても柔らかさを保つことができます。また、アミノ酸やグルタミン酸が増加し、旨みいっぱいのおかずになります。「今回は鶏のささみ肉と鯖を漬けました。ぬか漬けにすることで味がしっかりつき、冷めても柔らかいのでお弁当に最適です」
肉や魚は、直接入れてしまうとぬか床が汚れるので、ぬかを取り出して肉や魚を包み込むようにしたあとラップで巻き、冷蔵庫で24時間ほど発酵させましょう。「発酵後はぬかをぬぐって落とし、フライパンで焼きます。漬けるものは豚肉やシャケなど、何でもおいしいのですが、青魚は生臭さがとれるので食べやすくなります」
・固ゆでにしたゆで卵は燻製のような味に
ゆで卵のぬか漬けは、固ゆでにしてから殻を剥いて漬けます。ほくほくの黄身まで味が染み込み、燻製のような香りと甘みのある味わいはやみつきになります。
・おつまみにもなるぬか漬けナッツはぬか床の救世主にも!?
くるみやアーモンドも、ぬか床に3日くらい漬けておきましょう。水分を吸ってしっとりと柔らかくなり、お酒にぴったりのおつまみに。また、ナッツがぬか床の水分を吸収してくれるので、ぬか床が水っぽくなってきたときの対処にもおすすめです。
ぬか床をそのままいただくおいしい食べ方
「におわないnukadoko」など食べられるぬか床は、腸に働きかける善玉菌や乳酸菌が豊富ですから、ぬか漬けの床としてだけでなく、そのまま食べるのもおすすめです。「ぬか床は、代々受け継ぐものという印象が強いのですが、『におわないnukadoko』のぬかは食べてなくなるたびに、どんどんぬかを追加していく、新しいタイプのぬか漬けです。ここでは簡単なぬか漬けアレンジを紹介します」
・野菜のディップに
ぬか床:オリーブオイル=4:1にしてよく混ぜると、野菜スティックなどにぴったりのディップになります。このままでも甘みがあり十分おいしいのですが、ニンニクやハーブを入れたアレンジディップもおすすめです。
・焼きおにぎりに
野菜ディップをおにぎりに塗って、焦げ目がつくまでフライパンで表面を焼きましょう。焼きタラコのような食感と香ばしさがおいしい一品です。
・フレークに
ぬか床をそのままフライパンに入れ、弱火で10〜15分ほど焦げないように炒って、フレークにしましょう。ふりかけのようにごはんにかける他、オリーブオイルと一緒にサラダにたっぷりかけるとおいしくいただけます。
注意! カビや雑菌を防ぐには?
ぬか床の水分をしっかり取ることが大事
何度か漬けていくとぬか床に水分が増えてくるので、水っぽさを感じたらすぐにキッチンペーパーで上からぎゅっと押さえるようにして、水分を取っておきましょう。
「お味噌くらいの固さがちょうどいい水分量です。冷蔵庫で発酵させるのでカビることはあまりないのですが、やはり水分が多くなっていたり、ぬか床に空気が含まれたままになっていたりすると、カビてしまうことがあります。カビが斑点になって少し出ているくらいであれば、その部分だけ取って、小さじ1程度の塩を入れてかき混ぜ、平らにならしておけばまた使えます。表面を覆うようにカビが生えてしまっていたら廃棄しましょう」
注意! 長期間留守にするときは冷凍庫で保存
ぬか床を状態よく維持するために、何も漬けていないときでも一週間に一度はかき混ぜて、天地返しをしましょう。「混ぜておくことで菌のバランスが安定します。また、カビが生えていないかなどのチェックも週に一度くらいの割合でしておけば、ひどくなる前に気づくことができます。また、一ヶ月など長期間留守にする場合は、ぬか床を冷凍保存袋に入れ替えて冷凍しておき、戻ってきたら自然解凍することで、ふたたびおいしく漬けることができます」
冷蔵保存できるぬか床カタログ
みかんから作る天然酵母がたっぷりのぬか床
DIDYCO「天然酵母入りぬか床セット~国産熟成ぬか床」
1980円(1袋使い切りタイプ・送料無料)
管理栄養士の木下あおいさんが監修したこのぬか漬けセットは、みかんで作った天然酵母と水を入れてかき混ぜるだけで漬け始められるすぐれものです。付属の袋にぬか床を作り、野菜を入れたら、その上から軽く揉んで漬けることができるので、掘ったりかき混ぜたりする必要がなく、手が汚れません。
かき混ぜる必要がない、買ったその日からすぐに漬けられるぬか床
無印良品「発酵ぬか床 1kg」
890円
あらかじめ発酵させたぬかが、ジッパー付きバッグに入った状態で売っています。袋を開けたらすぐに漬けられるとあって、人気のぬか床です。食材を入れたらそのままジッパーを閉めて冷蔵庫に入れておくだけで、かき混ぜる必要もありません。
体に良いとわかっていても、今まではなかなか取り入れづらかったかもしれません。でも日々の手入れに手間がかからないとあれば、日常的に食べたいものです。ごはんと一緒に食べるお漬物としてだけでなく、以上のようなアレンジも楽しみながら、おいしく栄養を摂っていきましょう。
【プロフィール】
COBO ウエダ家 自然発酵食の研究クリエイティブチーム
都市生活者でも、人と身近な野生の微生物が関わっていることを発見し、デザイナーの見地から人基準でなく「微生物基準」の環境づくりを目指すクリエイティブチームを家族で運営。2018年、果物や野菜など付着菌と環境由来の菌から安定的に発酵する「自然発酵システム」の特許を取得し、横浜市COBO Lab.「自然発酵食研究所」にて「自然発酵乳酸菌」を製造。「ウエダ家の自然発酵乳酸菌」「におわないぬか床」「乳酸発酵のおやつ」などを開発する他、『ウエダ家のえがくスープ』 『COBO-野生酵母と出会う』など著書も多い。
http://www.cobo-net.com/