暇つぶしにテレビを見たり、スマートフォン(以下スマホ)でゲームをしたり……。家で過ごす時間が増え、スマホやパソコン、テレビを眺める時間が以前よりも長くなっている人も多いはず。暮らしの中でなくてはならない存在となったデジタルデバイスですが、使い方によっては生活習慣に乱れが出て、体調にも影響を及ぼすことがあるのを知っていますか?
今回は、デジタルデバイスの長時間使用によって引き起こされる「デジタル時差ボケ」について、その影響や対策・予防法などを、眼科医の林田康隆先生に教えていただきました。
「デジタル時差ボケ」って何?
そもそも、デジタル時差ボケとはどのような症状を言うのでしょうか?
「デジタル時差ボケとは、スマホ画面を四六時中見つめることで、体内時計に狂いが出て、睡眠障害を引きおこしてしまう状態のこと。現代人の約6割が陥る症状なのです(※Zoff Eye Performance Studio調べ)。
人間の体は夜、暗くなると『睡眠ホルモン』と呼ばれる『メラトニン』の分泌が優位になり、眠気がおこります。昼間は、太陽光にも含まれるブルーライトによって、メラトニンの分泌抑制がかかっているのです。しかし現代人は、夜になっても明るい電気の元で暮らし、スマホやパソコンの発する光(光源)を1日中見つめているような生活になってしまっています。そうすると、本来人間がもつ『夜になると眠くなる』というリズム、いわゆる“体内時計”が狂ってしまいます。こういった体内時計の乱れが、寝つきの悪さや昼間の眠気、集中力や活力の低下を起こしてしまうのです。そういった状態のことを、『デジタル時差ボケ」と呼んでいます』(Y’sサイエンスクリニック広尾理事長・林田康隆先生、以下同)
夜に光を見ること自体は問題ないそう。でも、毎日繰り返すと、最初は軽微な睡眠障害であったとしても、いずれ体内時計を大きく狂わせることに繋がり、疲労蓄積による病気の原因になってしまうかもしれないのです。そうならないためにも、夜には睡眠ホルモン分泌を優位にするために、目から取り込む光の量をなるべく増やさないことが、最低限必要な対策と言えます。
ブルーライトは特別な光だと思われがちですが、実は、日光はもとより照明器具やデジタルデバイスからも発生しています。デジタルデバイスのブルーライトは非常に弱いもので、それ単体ではまったく問題はないと、林田先生は言います。ところが、現代人、特に若い世代の人は依存症と言っても過言ではないほど、デジタルデバイスは体の一部になっていますよね。
「いくら安全な光であっても、四六時中光源を見つめ続けている状態は、いずれ代償として何かしら不都合なことが起こってくるはずです。デジタル時差ボケの原因は、長時間に渡り、日常的に画面を見つめ続けていることであると言えます」
自身の生活を振り返り、デジタルデバイスとの付き合い方を見直して、デジタル時差ボケを予防しましょう。
あなたはデジタル時差ボケ状態?
チェックシートで生活を振り返ろう
無意識にスマホを手に取ってしまう現代人は、デジタル時差ボケに陥っている可能性大。簡単なチェック項目を確認して、自分の生活スタイルを見直してみましょう。
林田先生監修「デジタル時差ボケチェックシート」
□ 日中、眠いと感じることが多々ある。
□ 目の痛みや疲れ、乾きなどのトラブルを感じやすい。
□ 合計すると1日8時間以上、テレビやPC、スマホなど電子機器の画面を見ている。
□ PC、スマホなどの電子機器は90分以上連続で使用していることが多い。
□ 本や漫画、雑誌を読むときは、電子書籍を利用することが多い。
□ 寝る前にはたいていベッドでスマホを見る。
□ 朝起きるときに朝日を浴びる習慣がない。
□ 首や肩が痛いと感じたり、凝ったりすることが多い。
□ 通勤や通学の移動時間など、隙間時間はスマホを見たりゲームをしたりが大半だ。
□ 毎日適度な運動をする習慣がない。
上記の10個のうち、6個以上チェックがついた場合は、すでにデジタル時差ボケに陥っているかも。また、チェックが4個以上ある人も「デジタル時差ボケ予備軍」なので、注意が必要です。
「意識的に使い方をコントロールしないと、誰でもデジタル時差ボケに陥ってしまう可能性があります。チェック項目を参考に、日々の生活を見直してみてはいかがでしょうか」
では、実際にどのように対処すればいいでしょうか? 続いて、生活習慣のうえでできる対策と、アイケアのためのストレッチを教えていただきました。
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」
日常生活の改善が健康への近道! おすすめの対処法 4
デジタル時差ボケにならないためには、デジタルデバイスと上手に付き合っていく事が大切です。今回は、林田先生に、簡単にできる「デジタル時差ボケ対処法」を4つ教えてもらいました。まずは自分ができる事から取り組んで、健康的な生活習慣をかなえましょう。
1. 画面を見る時間は6時間以内に
厚生労働省では、液晶画面を見る時間として1日4時間をひとつの基準としています。しかし、仕事でPCを使う方なら、4時間はあっという間にオーバーしてしまいますよね。先生は「デジタルデバイス関連の障害を考える目安として6時間を基準に」と話します。
「デジタル社会となった今、日照時間が12時間だとしたら、厚生労働省の推奨する4時間との間をとって、まずは8時間を目安にしてみるのがいいのではないでしょうか。仕事柄、どうしても長時間画面を見なければならない人は、こまめに休憩をとるなど、目を休めることを意識するといいかもしれません。ただ、一番大事なのは夜間のホルモン分泌のバランスを崩さないこと。寝る前の2時間は画面を見ないということで、その2時間を引いて6時間と考えてもいいと思います」
2. 周囲の明るさに合わせて画面の明るさを調節
常に同じ明るさで画面を見ていると、暗い場所に移動した時画面がまぶしい、と感じることもあるかもしれません。「スマホ画面によって顔が照らされるほど明るくしていると、目への負担も大きくなります。周囲の明るさに合わせてこまめに画面の明るさを変更することが大切です」
寝る前にどうしてもスマホを確認しなければならない、という人は、最低限文字などが読めるくらいの、暗い画面光度に設定してみましょう。黒い画面に白文字という白黒反転機能を使用すると、より楽に感じられるはずです。
3. デジタルデトックスする
休日にスマホやPC、テレビなどを見ない“デジタルデトックス”をすることもおすすめです。
「休日の前夜、スマホの電源を切って過ごし、眠くなったら眠ります。朝は目覚ましを掛けずにゆったりと起床。朝日を浴びて朝ごはんを食べ、本を読んだり運動をしたりして過ごし、スマホは触らずに、友人や家族との会話の時間を楽しみましょう。何気ないことなのに、なんだかとても優雅に感じませんか? デジタルデバイスが隣にあるのが当たり前になった現代人にとって、デジタルデバイスと距離を置くことは意識しないとできないことなのです」
たくさんの情報が詰まったデバイスを手放すことで、心身のデトックスにもつながるかもしれません。お休みの日は、ぜひアナログな生活を意識してみてはいかがでしょうか?
4. ブルーライトカット眼鏡を使う
どうしても画面を長時間見なければならない時には、「ブルーライトカットメガネ」を活用しましょう。
Zoff「Zoff PC」
5000円(税別)
参考:https://www.zoff.co.jp/shop/contents/zoffpc_pack.aspx
人気メガネブランド「Zoff」では、追加料金なしでブルーライトカット仕様のレンズを付けることができます。
「ブルーライトカットメガネは、商品によってカット率の違いなどがあります。カット率が高いのはいいけれど、レンズに色がついていて日常使いするのに勇気がいる、という人もいるかもしれません。でも私は、使い方を意識すればカット率が低いメガネでもよいと思います。カット率が低いメガネを使うならば、常に装着しておくことが理想でしょう」
今すぐできる、アイケアのための簡単なストレッチ
画面を見る時間が長くなってしまう人たちにおすすめなのが、目のストレッチです。凝り固まった筋肉をほぐして目の疲れを取りつつ、酷使した目に休息を与えてあげましょう。
・ピント調節機能のストレッチ
画面を近い距離で長時間見つめることで、ピント調節のために使う筋肉が凝り固まってしまっています。ストレッチをして、コリをほぐしましょう。
1. 目の前、一番近くでピントが合う位置に人差し指を立て、見つめる
2. そのまま腕を伸ばし、人差し指をできるだけ遠くにして、指先を見つめピントを合わせる
3. 1、2を交互にゆっくりと繰り返す
「眼前と遠くを交互に見つめることで、ピント合わせに使う筋肉をほぐします。あくまでもストレッチだということを忘れずに、無理のない範囲で気楽に行ないましょう」
・しっかりまばたき
1. 瞼をぎゅっと強く瞑り、1秒数える
2. ゆっくりと開く
3. 1、2を数回繰り返す
集中して何かを見ることが増えた現代人は、無意識に瞬きの回数が減少しているのだそうです。まばたきが少なくなると、目の表面が乾燥して荒れる傾向となり、ドライアイを引き起こす原因に。意識的に強くまばたきを行なうことで、目の健康を保ちましょう。
・ぐるぐる運動
1. 目を開き、ゆっくりと、視線をぐるぐる回す
2. 1を数回繰り返す
同じ点を長時間見つめていると、視線を動かす筋肉が凝ってしまいます。目をぐるぐると動かすことにより、目の周囲の筋肉をほぐすことができますよ。
「目のストレッチは、気づいたときに行ないましょう。頻繁にやる必要はありませんが、起きたとき、布団に入ったときに何度かやってみるなど、頻度を決めておくといいかもしれませんね。また、寝る前に目を温めることも有効です。ホットタオルなどを使い、目の周りの血行を良くしてぐっすり眠ることができます」
デジタルデバイスとの上手な付き合い方を考えてみよう
デジタルデバイスの見過ぎによる睡眠障害、「デジタル時差ボケ」。原因や症状をしっかりと知ったうえで、正しい対策を行ないましょう。意識的に生活をすると、体調や仕事の生産性などにも嬉しい変化が現れるかもしれません。現代人のだれもが画面を見るという行為を行なうこの時代に、改めて生活から見直してみませんか?
【プロフィール】
医療法人社団康梓会Y’sサイエンスクリニック広尾 理事長 / 林田康隆
大阪大学大学院医学系研究科および米国フロリダ州マイアミ・オキュラーサーフェスセンターにて、眼表面および間葉系細胞の幹細胞研究に携わり、実際の細胞培養の経験まである再生医療のスペシャリスト。現在は、主に大阪で難治性白内障手術や網膜硝子体手術等に取り組む傍ら、東京では肌再生療法や脂肪幹細胞療法、免疫療法なども手掛ける。