ヘルスケア
睡眠
2021/3/16 18:45

新型コロナウイルスの流行で睡眠不調の人が増加! 睡眠の質を高める方法は?

心身を癒すためには、十分な休息が必要。しかし、コロナ禍の慣れない環境において、疲れを溜め込む人が増えている。ウーマンウェルネス研究会の調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大以降、約6割の人が睡眠の質の低下を実感している。事態の収束には時間がかかるため、早急に対策したい。そこで今回は、睡眠の名医・白濱龍太郎先生に快眠のためのポイントを聞いた。

※こちらは「GetNavi」 2021年3月号に掲載された記事を再編集したものです

 

■新型コロナウイルス拡大以降の睡眠の質の変化(n=882)

コロナ禍において睡眠の質が悪いと回答した人は63.2%。具体的には、「眠りが浅い」「夜中に何度も起きる」「寝ても疲れが取れない」といった悩みが多くを占めた。

 

■睡眠不調の原因(n=187)

睡眠の質が低下した人の不調の原因については、「不安やストレスで考えごとが続く」という回答が最多に。それ以下は、生活リズムの変化に起因する項目が多くなっている。

 

[出典]ウーマンウェルネス研究会 supported by Kaoが2020年7月22〜29日に実施した「コロナ禍の睡眠に関する意識調査」より。対象者は首都圏の20〜59歳の男女882名

 

生活様式の変化によって“社会的時差ボケ状態”の人が増えています!

睡眠の名医

白濱龍太郎先生

睡眠・呼吸メディカルケアクリニック「RESM新横浜」院長。医学博士。睡眠予防医学の観点から臨床研究や講演を行い、海外教育支援にも参加。「熟睡法ベスト101」(アスコム刊)など著書多数。

 

社会的時差ボケ状態は心身の不調を引き起こす

コロナ禍において、私たちの働き方は大きく変わりました。リモートワークがメインになり、自由に使える時間が増えた人も多いでしょう。しかし、私のクリニックには、メンタル疾患のない、これまで睡眠で悩んだことがない人からの相談が増えています。それはなぜかというと、リモートワークをはじめ、“生活様式の変化”が睡眠不調の誘因となっているからです。

 

そもそも現代人はスマホやPCによるブルーライトの照射量が多いのですが、リモートワークによって仕事とプライベートの境目が曖昧になり、「光」と向き合う時間がより遅い時間帯へとシフトしています。ブルーライトを長時間浴びると睡眠ホルモンともいわれるメラトニンの分泌が抑制され、夜更かしの癖が付きやすくなるのです。

 

さらに、運動不足も深刻。身体が疲れていない状態では交感神経が優位になり、スムーズに眠ることができません。人によってはそこに生活の不安や、他人とのコミュニケーションが取りにくくなったことによるストレスも重なり、より睡眠の質を悪化させています。

 

このような変化により平日の睡眠不足が続くと、身体は社会的時差ボケ(ソーシャルジェットラグ)状態に陥ります。この状態は、注意力や集中力の低下を引き起こすうえ、生活習慣病やうつ病のリスクになる可能性も。免疫機能を十分に発揮できず、ウイルスへの抵抗力が落ちることもわかっています。

 

↑リモートワークによる生活リズムの変化や、ブルーライトを長時間浴びることは、仕事のミスや心身の不調に繋がりやすくなる

 

睡眠と入浴の時間は毎日スケジューリングする

それでは、この社会的時差ボケ状態はどうすれば解消できるのか。まず心掛けたいのは、睡眠時間も一日のスケジュールに組み込むこと。連続覚醒時間が長くなるとパフォーマンスが落ちるので、24時には就寝するようにしたいですね。どうしても睡眠時間が短くなってしまう日は、翌日の15時ごろまでに昼寝をし、睡眠負債を溜め込まないようにしましょう。年齢によって必要な睡眠時間は異なりますが、30〜40代の場合は6時間半程度の質の良い睡眠が確保できればOK。ゴールデンタイムを意識する必要はありません。ちなみに「質の良い睡眠」とは、ノンレム睡眠のステージ3以上(徐波睡眠)が一定時間見られる睡眠を指しています。

 

また、しっかり入浴して身体を温めることも大切。就寝の90分前に入浴することで、入浴後の深部体温の変化(下のグラフ参照)により自然と眠気が訪れ、寝つきが良くなります。入浴後は仕事や勉強など、交感神経を刺激することは避けましょう。頭の冴えている朝方のほうが効率もアップしますよ。

 

最後に、就寝前に意識してほしいのが呼吸のコントロールです。睡眠時無呼吸症候群という疾病がありますが、呼吸と睡眠の質は密接に関わっていて、呼吸がうまくできないと様々な健康問題も生じます。緊張したときに深呼吸をすると落ち着くように、就寝前は腹式呼吸をしながらゆったり身体をほぐすと、副交感神経が優位になり、入眠がスムーズになります。

 

私たちはスプリンターではなく、“マラソンランナー”です。自分らしく健康な状態を維持できるよう、仕事時間、プライベート時間、そして睡眠時間の配分を考え、丁寧な毎日を過ごしましょう。

 

■入浴による深部体温の変化

↑入浴により上がった深部体温は徐々に下降し、90分ほどで眠くなる。24時ごろに入眠するためには、22時30分ごろに入浴するのが理想だ

 

【白濱先生に聞いた! 快眠のための3つのポイント】

1.身体をほぐすストレッチと腹式呼吸で血行促進

「就寝前は激しい運動を避け、スマホ操作やPC作業の姿勢で酷使しがちな首の僧帽筋や、体温調節系の神経細胞が集まる肩甲骨周りを中心に、軽くストレッチするのがオススメです。腹式呼吸を意識すると副交感神経が優位になるうえ、四肢の血行も良くなります」(白濱先生)

 

2.就寝90分前までに入浴し、湯船に10分ほど浸かる

「眠りに就く90分前までに入浴し、冬場であれば湯船に10分ほど肩まで浸かりましょう。発泡系の入浴剤を入れると、短時間でも深部体温が上がりやすくなりますよ。浴室の灯りを暗めにしたり、首や肩甲骨のストレッチをしたりするのもリラックスするのに有効です」(白濱先生)

 

3.朝は太陽の光を浴びやすく夜は遮光できる環境をつくる

「朝は太陽の光を浴びるほど脳が覚醒し、体内時計のリセットに繋がります。一方、就寝前は交感神経を刺激しないよう、スマホ操作は避け、寝室に街灯や隣家の灯りが入らないようにしましょう。寝室のライトは淡い暖色系で、調光できるタイプがベストです」(白濱先生)