本サイトでは、主要メーカーのハイエンド炊飯器のなかでも人気の高い5機種を集め、徹底的に比較・検証した記事を連載してきました。今回は、炊飯器の老舗、タイガーの「THE炊きたて JPX-102X」を取り上げます。最新機種ではありませんが、そのぶん価格がこなれてきて買いやすくなったのは事実。炊き上がりの傾向をはじめ、操作性や独自機能など、以下で詳細をチェックしてみてください!
【今回テストするのはコチラ】
高温で炊き上げて高温で蒸らし、甘みと弾力の強いごはんに仕上げる
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タイガー
土鍋圧力IH炊飯ジャー
実売価格9万9802円
内釜に遠赤効果の高い釉薬を塗った土鍋を採用し、さらに本物の土のかまど「遠赤大土かまど」を本体内に装備。土鍋と土かまどの二重発熱構造と可変圧力によって高温で炊き上げ、200℃以上の「高温蒸らし」で、甘みと弾力の強いご飯に仕上げる。しゃっきりからモチモチまで、好みの粘り加減に調整できるほか、土鍋のおこげが味わえる3段階の火加減調節も可能。「押麦メニュー」と「もち麦メニュー」の2種類の麦めしメニューも搭載する。
SPEC●炊飯容量:1.0~5.5合●炊飯1回あたりの消費電力量:148wh●保温1時間あたりの消費電力量:18.3Wh●加熱方式:土鍋圧力IH + 可変W圧力IH●内釜:プレミアム本土鍋(四日市萬古焼)●サイズ/質量:約W265×H233×D309mm/約7.4kg
タイガー
土鍋圧力IH炊飯ジャー
【テストその1 食感・味の傾向は?】
最も上質な炊飯ができるコースで炊き上げ、その香りや味、食感を比較しました。お米は岩手県産ひとめぼれ(無洗米)を使用。コシヒカリの強い味わいと、ササニシキのさっぱりした味の中間にあたる、バランスの取れた味のお米です。米は3合で炊飯。今回は機種の味の傾向を知るために、中庸(ふつう)の食感設定を選択しました。
また、食感と食味は炊きたてに加え、冷やごはんと冷凍・再加熱したものについてもチェックしています。冷やごはんは、炊きたてをラップに包んでおにぎりにし、室温で5時間ほど冷ましたものを試食。冷凍ごはんは、炊きたてをラップに包んで冷凍庫で冷凍し、1日経ったものを電子レンジで温めました。
<炊き上がり>
おこげの香ばしさ、強い弾力と粘りがあって食べ応え満点
蓄熱性の高い土鍋とかまどを本体内に搭載した本機は、その蓄熱性を活かして香ばしい風味のごはんが炊けるのが特徴。おこげが手軽に楽しめるのも魅力です。今回は、「極うま白米」の仕上がり(食感)標準を選択。さらに、火加減は3段階のうちの「中」を選びました。
炊き上がってふたを開けると、ほのかなおこげの香りとともに、炊き立てごはんの香りが立ち込めます。やや柔らかめの炊き上がりながらごはんにハリがあり、強い弾力と粘りのある、食べ応え満点の食感。噛むほどに甘みが口のなかに広がります。実は別日に火加減「弱」でも炊いたのですが、これだとおこげがほとんどつきませんでした。なお、火加減「弱」より火加減「中」で炊いたほうが、ごはんのモチモチ感が増した印象です。
<冷やごはん(おにぎり)>
食べ応えは健在で、水分が飛び引き締まった食感に
冷やごはんもモチモチ感がしっかり感じられ、甘みも強くて食べ応えがありました。ごはんの水分が適度に飛んで、炊きたてよりごはんが引き締まった感もあり、これはまたこれでおいしいです。
<冷凍・再加熱>
わずかにベタつくが、独特の粘りとおこげの風味が復活
冷凍ごはんは、再加熱することで独特の粘りとおこげの風味が蘇りました。炊きたてに比べ、さすがにベタつき感が増えましたが、味は十分おいしく、炊きたての新鮮な香りも復活します。
タイガー
土鍋圧力IH炊飯ジャー
【テストその2 食感炊き分けの幅は?】
その炊飯器で「最もしゃっきり硬めの食感に炊き上げるモード」と、「もっとももちもちに炊き上げるモード」で炊飯。それぞれの食感の違いを見ることで、その機種が実現できる食感の幅を確認しました。
「しゃっきり」では米の粒感が際立ち、「もっちり」では粘りと甘みがアップ
食感炊き分けは「極うま白米」モードの「しゃっきり/標準/もっちり」の3種類のみ。これに加えて、おこげの具合を調節する「火かげん」キーが3段階で変えられます。今回は「しゃっきり/火かげん弱」と「もっちり/火かげん強」で炊き比べました。
「しゃっきり/火かげん弱」で炊いたごはんは、かなり米の粒感が立った炊き上がりでした。粘り気も少なく、甘みもすっきりした印象です。
一方、「もっちり/火かげん強」で炊いたごはんは、標準モードよりもちもち感がさらにアップ。さらに、おこげの色こそ付きませんでしたが、表面の食感がパリッとなりかけていました。柔らかく粘りと甘みの強いごはんで、特に甘み強いと感じました。
タイガー
土鍋圧力IH炊飯ジャー
【テストその3 少量炊飯の炊き上がりは?】
これまで同様、米は岩手県産ひとめぼれ(無洗米)を使用。米1合を標準(ふつう)の食感設定で炊飯し、3合炊きしたときのごはんの味・食感との違いをチェックしました。
弾力少なめのごはんにモチっと食感が混じる独特の炊き上がり
「極うま白米」の仕上がり(食感)標準を選択。火加減は3段階のうちの「中」を選びました。全体に3合炊きよりかなり柔らかめ、弾力少なめに炊けており、土鍋の鍋肌と接するおこげになりかけの部分のみ、かなり粘りの強いモチっとした食感になっています。この辺りは、「食感のばらつき」とも捉えられるため、好みが分かれそう。
ごはんの甘みは3合で炊いたときよりやや控えめで、香りもほのかにおこげが香る程度と、味・香りとも抑えられていた印象です。
タイガー
土鍋圧力IH炊飯ジャー
【テストその4 保温性能は?】
最もオーソドックスなモードで、3合炊きしたごはんを24時間保温。炊飯6時間後の味と食感とニオイ、24時間後の味と食感とニオイをチェックしました。
6時間保温でややベタつきが出始めるが味わいは悪くない
保温機能は連続して保温を行うモードと6時間で保温が切れるモードの2種類がありますが、保温温度は1種類です。
6時間保温したあとにごはんを試食すると、食感がかなり柔らかくなり、ベタつきも出てきていました。米粒同士がくっついて団子状態になりはじめていて、ほぐれる感じはありませんでした。ただ、香りに臭みはなく、甘みもあって、味は悪くないと感じました。
保温して24時間後になると、食感はさらに柔らかく、米同士が団子のようにくっつく状態も進行。ごはんの量が少なかったためか、場所によってごはんがべちゃっとしている部分と、乾燥している部分があったのも気になりました。味はよく言えば「おこげの香ばしさが強くなった」とも言えますし、悪く言えば「臭みが出てきた」とも言えます。
タイガー
土鍋圧力IH炊飯ジャー
【テストその5 操作性/メンテナンス性は?】
「操作性」に関しては、炊飯設定する際の液晶パネルの見やすさや、ボタン操作のしやすさをチェック。特に、目的の炊飯設定にするまでの工程に注目し、取扱説明書を見なくても炊飯設定がスムーズにできるかどうかを確かめました。「メンテナンス性」に関しては、炊飯後に洗うパーツの数や洗いやすさ、フレームに付いた汚れや露の拭き取りやすさをチェックしました。
<操作性>
タッチパネルと音声ガイド機能を搭載し、スタイリッシュかつ快適操作
本機はタッチパネルを採用。各ボタンに軽く触れるだけで操作ができます。液晶パネルは高級炊飯器のなかでも小さい部類で、文字のサイズも小さめですが、黒地に白い文字で、視認性は高いです。
本機は「モーションセンサー」を搭載しているのも特徴。本体に人が近づくとパネルが自動で点灯します。約20秒操作をしないと消灯しますが、取扱説明書を見ながら操作中に20秒経って表示が消えることが多く、やや不便を感じました(ただし、センサー上に手をかざすと再点灯します)。消灯までの時間を設定できれば、と感じましたが、操作に慣れれば操作に20秒かかることも少なくなるでしょう。
ちなみに本機は音声ガイド機能も装備。炊飯までに必要な操作を音声で教えてくれるのは便利。「音声ガイド」ボタンを押すと、必要な操作を声で教えてくれます。音量は3段階から選択可能。音声ガイドをもう一度聞きたいときは、再度音声ガイドキーを押します。
炊飯設定は、「もどる・すすむ」ボタンで希望する設定を選びます。炊飯設定は11モードと多くはないので、「もどる・すすむ」ボタンのみの操作でも、それほど不便は感じませんでした。
「極うま白米」モードでは「火かげん」「仕上がり」ボタンで好みの仕上がりの調整が可能です。また「炊き込み」モードでは、「火かげん」の調節のみ可能です。
無洗米を炊飯するときは、設定の最後に「炊飯/無洗米」ボタンを2回タッチすると、パネル上に「無洗米」と表示され、炊飯が開始されます。
<メンテナンス性>
調圧ボールと土鍋を採用しており、手入れはやや大変
お手入れするパーツは内釜(土鍋)と内ぶたとスチームキャップの3つ。内釜と内ぶたは炊飯するたびに台所用洗剤で洗います。特に内ぶたは裏に調圧ボールと安全弁が付いているので、丁寧に洗う必要があります。一方スチームキャップは、通常それほど汚れないので、水で洗えば大丈夫です。
内釜の重さは1138g。土鍋はセラミックコートで丈夫にはなっていますが、それでも割れる可能性があるので、丁寧に扱う必要があります。
フレームはフラットですが、表面がザラザラしていて、ステンレスよりやや拭き取りにくいです。
タイガー
土鍋圧力IH炊飯ジャー
【テストその6 独自機能/設置性は?】
「独自機能」は各炊飯器に搭載されている、ごはんのおいしさにつながる独自の機能や技術、炊飯のバリエーションを広げる機能などをチェックします。また、使い勝手向上やお手入れの手間を省く便利機能も見ていきます。
「設置性」に関しては、横幅と奥行き、重さを確認します。また、炊飯中の蒸気の出方もチェック。さらに、設置性を高める独自の工夫があれば、それもチェックしていきます。
<独自機能>
おこげのつき方をカンタン調整&モーションセンサーでスタイリッシュに操作!
内釜に土鍋を採用するだけでなく、炊飯器の本体にも土を使ったかまどを内蔵し、高い発熱性と蓄熱性で香り高いごはんに仕上げるのが本機の特徴。「火かげん」キーを使っておこげの程度を調整することができるほか、「仕上り」キーでごはんの粘り調整もできます。
「火かげん」キーを最弱にしてもおこげが付きすぎたり、最強にしてもつかなかったりする場合は、より弱めや強めに設定をシフトすることも可能です。
さらに「麦めし」モードは押麦ともち麦の2種類に対応。それぞれの麦に合わせたプログラムでニオイを抑えて炊飯します。
ちなみに、本機が採用する内釜(土鍋)は三重県四日市市の萬古焼を使用。土鍋ふたも付属し、土鍋をおひつとして使うこともできます。また、人が近づくとタッチパネルを点灯させるモーションセンサーを搭載するのはタイガーのみ。未来的でスタイリッシュなイメージに貢献しています。「音声ガイド」で操作の確認ができるのも便利。
<設置性>
コンパクトかつ落ち着いたデザインだが蒸気量は多く設置場所を選ぶ
本体の横幅は26.5cm、奥行きは30.9cmで、象印を除くとわずかの差ですが、最もコンパクトサイズになっています。一方重さは土鍋、土かまどを採用しているせいか、約7.4kgとやや重め。また、取っ手がないため、移動するときは両手で持つ必要があります。
炊き上がりのおいしさを最優先に考えているため、本機も水蒸気をかなり放出します。上に十分な空間がある場所か、レンジフード(換気扇)の近くでの炊飯がオススメです。
タイガー
土鍋圧力IH炊飯ジャー
【テストのまとめ】
最も食感の炊き分けの幅が大きく、おこげも楽しい炊飯器
土鍋と土かまどの大火力で炊き上げる本機。ふっくらもっちりの炊き上がりとおこげの香ばしさが楽しめるのが特徴です。「極うま白米」の仕上がり標準、火加減中で炊飯したごはんは、食感はやや柔らかめですが、弾力、粘り、甘みが強く、食べ応え満点でした。冷やごはんにするとやや柔らかめのごはんが引き締まり、また別のおいしさが出てきます。冷凍・再加熱したごはんは、ベタつき感が出始めたものの、炊き立ての弾力とおこげの香りが復活。一方、1合炊飯では、食感がより柔らかく、弾力も香りも少なめに。おこげになりかけの部分のみモチっとした粘りがありました。
食感炊き分けは3段階と少なめ。炊き分けには「仕上がり」キーを使い、さらに「火かげん」キーでおこげの濃度も調整します。実際に炊き分けすると、ごはんは柔らかめながら、「しゃっきり」「もっちり」という設定通りの食感が強く現れ、食感の幅は5機種のなかで最も大きく感じました。本機の魅力は「火かげん」キーを専用につけるなど、おこげにこだわっていること。火加減は3段階ですが、初期設定を変えてより強いおこげも作れます。
操作に煩雑な印象はなく、音声ガイドに安心感あり
保温に関しては、保温6時間後のごはんには米にベタつきが出始めていましたが、炊き立ての甘さと香りは維持できていました。
操作性に関しては、炊飯設定は「進む・戻る」ボタンで行いますが、食感(仕上がり)と火加減を専用キーで設定するため、煩雑さは感じませんでした。また、音声ガイド機能は使っていて安心感がありました。
↑「火かげん」と「仕上り」を各3段階で設定できます
タッチパネルとモーションセンサーでスマートな外観
お手入れ面では、内ぶたに調圧ボールと安全弁が付いていて、やや洗いにくいです。土鍋もやや重く、落として割れたりしないよう、丁寧に扱う必要があります。サイズは高級炊飯器のなかではコンパクトなほうですが、重さがやや重く取っ手もないので、持ち運びがやや面倒。落ち着いた黒のデザインはオシャレです。タッチパネルとモーションセンサー採用で、スマートな操作性を提示しているのも特徴です。
まとめると、以下の通りになります。
●おこげの香ばしさが好きな人
●好みの食感が決まっていない人。炊き分けは3種類ながら、炊き分けの幅が広い
●多機能炊飯器の操作に慣れていない人。音声ガイドで操作をアシスト
●スタイリッシュなデザインが好きな人。タッチパネルとモーションセンサーですっきりとした外観
本機を手に入れれば、香ばしいおこげが楽しめるうえ、炊き分けの食感の幅が広いので、日によってまったく違う食感を味わうことも可能。お手入れはやや大変ですが、その手間を補って余りあるご飯の楽しみが味わえます。
協力:楽天市場