冬本番を迎え、寒さとともに注意したいのが空気の乾燥です。風邪やインフルエンザのウイルスは、湿度の高い状況では水分が吸着してすぐに地面に落ちてしまう一方、湿度40%以下になると水分が蒸発して軽くなり、空気中を漂いやすくなります。また、低湿度になると、目やのどの粘膜も乾燥し、感染リスクもアップ。ですから、室内で快適に過ごすには40〜60%を目安に湿度コントロールするのが重要とされています。加えて、空気の乾燥は肌の乾燥につながり、しわ、しみ、たるみの原因になることも。その意味で、乾燥を防ぐ加湿器は冬の必需品になってくるわけです。
シェアNo.1メーカーの最新モデルの使用感はどうなのか?
そこで今回紹介するのが、定評のあるダイニチ工業の最新モデルです。 「ダイニチ」の名を耳にしたことがないという方も多いかもしれませんが、実は全国主要家電量販店での販売台数・金額シェアともに4年連続1位(※)の大手メーカー。気化式と温風気化式のハイブリッド方式を採用し、加湿スピードの向上と省エネ性を両立しています。また、「業界No.1」という運転音の静かさも特徴とのこと。ただし、それはメーカーが言っていることで、「実際に使ってみなければ、本当の性能はわからない」というのが多くのユーザーの本音ではないでしょうか。そこで今回は、同社の最上位モデル“RXシリーズ”の14畳タイプ(プレハブ洋室)「HD-RX517」を2週間にわたって使用し、実際に感じた点をレポートしていこうと思います。
※全国有力家電量販店の販売実績集計/GfK Japan調べ 2013~2016年度(年度=4月1日~3月31日)加湿器 メーカー別数量・金額シェア ダイニチ(全国有力家電量販店の販売実績集計/GfK Japan調べ)
ハイブリッド式の採用で、素早く加湿し消費電力も抑える
まずは加湿機能の基本から解説していきましょう。本機は同社の特徴である「ハイブリッド式」を採用し、室内が低温・低湿なときにはヒーターで作り出した温風がフィルターを通過することで、より素早く加湿することができます。また、湿度が設定値に到達するとヒーターがオフになり、より消費電力が少ない気化式加湿に切り替わるので、電気代を抑えることができます。さらに、最新モデルは設定湿度に達するまでの加湿量が約15%アップする「ターボ運転」モードを新搭載し、より素早い加湿が可能になっているとのこと。
湿度は50%/60%/70%の3段階で設定可能。運転モードは設定湿度に合わせて加湿量を自動調節する「標準」モードのほか、風量を抑える「静音」モード、気化式のみで運転する「eco」モード、室温が低温状態ではのどや肌のコンディションを考えて湿度70%以上まで加湿、部屋が暖まると60%程度まで湿度を自動で下げる「のど・肌」モードの4種類を搭載しています。
寝室、リビングでの加湿テストでは十分な加湿力を発揮
まずは本機の加湿力を、鉄筋コンクリートマンションの6.5畳の寝室で試してみました。今回は、室温約20℃、湿度約36%の状態から「標準」モード・湿度60%に設定して運転をスタートしました。
スタートして10分後にはすでに加湿器本体の湿度モニターは57%を表示し、15分後には61%に。その後60〜65%で推移しました。筆者はふだん、寝室では加湿力の強い他社製のスチームファン式加湿器を使っているのですが、加湿スピードではそれにまったく劣らない印象。その後も加湿を続けましたが、現在の湿度に応じて加湿量を調節し、加湿しすぎを抑えてくれました。過度の加湿は結露、およびカビの原因となるので、これはありがたいです。
次に本機を約19畳のLDKに移してテスト。湿度38%から運転を始めたところ、10分後には48%、20分後には55%、30分後には設定湿度の60%に到達。37分後にMAXの63%になり、最小の風量に自動的に切り替えてくれました。
もちろん、19畳のリビングは適用畳数(14畳)より大きな部屋ですので、部屋全体で見れば加湿ムラがある可能性はあります。とはいえ、モニター値で約30分で20%以上加湿してくれたわけですから、十分な加湿力といえます。
さらに、ここから「のど・肌」モードに切り替えて1時間運転したところ、湿度は70%に上昇。ここまでくると、確かに湿度を肌で感じるようになり、のどがラクになって、「ああ、潤っているな」というのが実感できます。より強く潤いを求める方は、この「のど・肌」モードを常用してもいいでしょう。
操作パネルはシンプルで、各アイコンが表示されたボタンを押すたびに、湿度設定や運転モードが切り替わります。これなら取扱説明書がなくても、誰でも問題なく使えるレベル。湿度表示モニターも黒地に緑色の表示で、視認性は高いです。強いて言えば、ですが文字はもう少し大きい方が、年配の方などには親切かなと思いました。
「おやすみ加湿」を搭載し、就寝中の使い勝手が抜群
本機は加湿性能とともに、その静かさも印象的でした。標準モードでの最大運転音は30dB(ターボ運転時は35dB)。30dBというのは人の声で言うと「小さなささやき声」程度だとか。運転開始時の音量がこれに当たりますが、静かな室内でつけたときに、意識すれば「運転しているな…」と感じる程度で、日常生活ではほぼ気にならない運転音だと思います。さらに湿度が設定温度に達したあとの最小運転音はなんと13dB。生活の中では運転していることに気がつかない音量で、寝つきが悪い人でもこれなら快適に眠れるはずです。実際、筆者の妻は音に敏感で、日によってクルマが外を通る音が気になって眠れないことがある、でも耳栓はイヤという人なのですが、就寝中に本機を運転しても、まったく気にならなかったようです。
就寝中といえば、筆者が特に便利だと思ったのは「おやすみ加湿」機能です。「おやすみ加湿」モードは、ボタンを押して最初の1時間を最小音量の13dBで運転し、その後「静音運転」モードで、室内湿度に応じて13dB〜23dBで運転します。つまり、眠りにつくまでは静かさを優先し、睡眠中は静かさに加え加湿もしっかり行う、という考え方です。
さらに同モードを選択すると操作部のランプも最初の1時間は「おやすみ加湿」のランプのみ点灯し、その後はランプと湿度表示のみ点灯。表示部の明るさも、通常より7割減光されます。寝るときにはできるだけ室内を真っ暗にしたい、という人にはオススメですね。
タンク・トレイが洗いやすく、「お手入れサイン」が便利
さて、意外に知られていないのですが、加湿器選びで重要なのがメンテナンス性。手入れせずに使い続けると、雑菌やカビが発生し、加湿の際にそれらを部屋中にまき散らすことになります。どの加湿器もメンテの作業は避けて通れないゆえ、手入れのしやすさは使い勝手を大きく左右します。気化式や本機のようなハイブリッド式で、お手入れが必要なのは給水タンク、タンクや加湿フィルターが乗るトレイ、気化フィルター(加湿フィルター)、外部から空気を取り入れる吸気口のフィルターの4か所になります。
その点、本機のタンクは給水口が大きく、水が入れやすくて洗いやすいのが特徴。トレイと気化フィルターには、それぞれ抗菌加工が施され、雑菌の繁殖を抑える仕様となっています。ただし、水道水のミネラル分によって次第に水アカが付着するため、2週間に一度の掃除が必要。これを面倒だと感じる人も多いでしょうが、清潔に部屋を加湿するには不可欠な作業です。とはいえ、トレイがフラットで洗いやすいため、洗うのが面倒と思うことはありませんし、気化フィルターはトレイから取り出し水洗いして汚れを拭くだけ。吸気口のフィルターは週に1回程度、フィルターについたホコリを掃除機で吸い取ればOKです。
なお、気化フィルターは月に1回程度、クエン酸洗浄をすると、フィルターが長持ちします。クエン酸洗浄は、水にクエン酸を溶かして約30分〜2時間の漬けておき、その後すすぎ洗いをすればOK。クエン酸洗浄には、100円ショップなどで買えるファイルケースを使うと、水とクエン酸の量が少なくて済むため、便利です。ちなみに、本機は運転時間にかかわらず、電源プラグをコンセントに挿してから2週間後に「お手入れサイン」が点灯。サインのおかげで、うっかりメンテし忘れることがないのもうれしいですね。
この冬のパートナーにふさわしい実用性に優れたモデル
最後に、2週間使ってみた印象をまとめてみましょう。気化式加湿器は、濡れたフィルターに風を送って気化させる方式のため、加湿スピードが遅いというデメリットがあります。ですが、今回試したHD-RX517は、ヒーターで熱した風を気化フィルターに送るという方式でその問題を解決。特に寝室で使ったときは、運転開始時にぐんぐん湿度が上がっていくのが“肌”で感じられました。
静音性に関しては文句なし。テレビがついていたり、家族が会話したりしているリビングでは、ターボ運転時の35dBでも運転音が気になることはまずないでしょう。また、寝室で「おやすみ加湿」を使えば、入眠時には13dBという、人が聴き分けられる最小レベルに近い音量で運転できます。特に、「就寝中は加湿器マスト」という方には、真っ先にオススメできる機種だといえるでしょう。取っ手付きで移動がラクなので、ふだんはリビングで使い、寝るときは寝室に移動、という使い方も可能です。
今回の試用で、本機は基本の加湿性能を重視しつつ、最も活躍してほしい「寝室」での使いやすさにこだわった、極めて実用性の高いモデルだと感じました。本体に3年のメーカー保証が付いているのも、品質への自信の表れ。この冬、パートナーとするにふさわしい、価値のあるモデルだと感じました。
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撮影/高原マサキ(TK.c)