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2016/3/24 0:09

シャープ、「爆買い」仕様のホットクックを発表。緻密な戦略に脱帽もツメが甘い!?

おじいちゃんもチャラい人も虜にする味

アイキャッチ

ヘルシオ ホットクックは、食材から出る水分のみで調理し、栄養素を残す「無水調理」ができる電気鍋です。今回はこれをインバウンド向け、主に中国人観光客向けに手を加えて発売するとのこと。

 

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品番はKN-H16JAで、予想価格は8万円前後。発売は一部量販店にて、4月中を予定しているそうです。

 

以下、ホットクックと初めて会った日の回想です。

――ホットクックと初めて出会ったのは、2015年の9月17日のこと。本機が発表された日。発表会の会場では、本機で作ったカレーが供されました。

 

円卓の向かいに座ったご年配の男性が、「こんなの食えねえよ~」とボヤいています。たしかに、カレーは胃にもたれるかもしれませんね。でも、この場で声に出すことじゃないよね。でもまあ、無水調理といったって、カレーだから味はそんなに変わらないよね……

……いや、何だこの深い味わいは? 重層的でまろやか。それでいてしつこくなく……。ふと向かいを見ると、おじいさんが完食しているではないですか! お皿には、スプーンですごく丁寧にすくった跡がありました。往年の食欲を呼び起こすとは。恐るべし、ホットクック。

 

その後、本機を撮影する機会に恵まれました。鶏の手羽先を使ってカレーを作ったときは、撮影に居合わせた編集部員が、合コン前にもかかわらず本気食い。その味を絶賛していました。チャラい人をも足止めする味。恐るべし、ホットクック。

(回想終わり)

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ちなみに、その名称は、温かい料理が作れるからでなく、放っておいて調理ができることに由来しています。なんとも素直なネーミングで、好感が持てます。

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実際、ユーザーからはかなりの好評を得ているとのこと。購入者のうち、週に1回以上使っている人は9割以上で、そのうち週4~5日以上使っている方が約半数だそうです(上図)。購入者にとって、すでに本機が生活に欠かせない存在になっているのがわかりますね。

 

綿密な戦略が見える対中ストラテジー6選

では、中国向けとして、なぜホットクックなのでしょうか? それは、中国での健康志向と安全意識の高まりがあり、自宅での調理が重視される背景があったため。そして、栄養素を残し、おまかせで調理できる本機の特長が、ニーズにぴったり合致したからだそうです。では、次に本機を中国向けに変更した点を見ていきましょう。

 

①名前を中国人がイメージしやすいように変えた

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はじめは「電気無水鍋」の中国語表記で行こうとしたそうですが、現地支社スタッフのアドバイスで上図の通りになったそうです。「無水」よりも“食材そのものの水分”という意味では「原汁」のほうがいい、との判断だったそうです。品番に「16」が入っているのは容量が16ℓだから。

 

②パネル表示・取扱説明書・カタログを中国語表記に

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中国向けなので、当然ながらパネルやトリセツも中国語に。英語併記で、英語圏の方も使えるのが特徴です。パネル(上)では①と同様、「野菜ゆで」もそのまま訳さず、「さっと湯がく」という意味の「白灼」を採用しました。

 

③包装箱を中国人好みに変更

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パッケージのカラーリングを白、黒でスタイリッシュな印象に。あえて中国語を入れていないのは、本国に戻ったときに外国製ということがひと目でわかるようにし、購入者の「どや感」を満たすためだそうです。このほうがお土産にしても喜ばれるようですね。さらに、パッケージには中国料理ではなく、カレー、ポテサラ、ケーキなど、日本で人気のメニューを載せ、日本の風=オシャレを感じさせるのもポイントだそうです。

 

④中国料理のメニューを追加

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11種類のメニューを中国料理にイレカエ。選択の基準は、従来のシーケンスを利用でき、中国で日常的に食べられている料理をピックアップ。他方、中国ではいわしをあまり食べないそうなので、いわしの煮物料理は省略したそうです。

 

⑤日中両国での製品保証

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日本・中国の両国で、購入後の修理が行えます。これは安心、うれしいです! 自分が旅行者なら、かなりポイント高いです。

 

⑥コンセントを中国仕様に

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日本国内向けのコンセントは、100VでA型(平2ピン)とよばれるもの。これを中国でポピュラーなSE型(丸2ピン)としました。

 

中国への発信力が弱いのが残念すぎる

本機は発売に際し、シャープの現地支社とは密に連絡を取ったといいます。確かに、上記を見れば、現地ニーズを徹底的に汲み上げ、製品に反映させたことがわかりますね。

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スモールアプライアンス事業部 商品企画部の吉元有美さん(上)に今後の課題を聞くと、「現地へいかに情報を発信するかが課題。現在はこの方法を検討中です」とのこと。現状では店頭のプロモーションとクチコミに頼るしかない……という状況らしいのですが、そこはいち早くクリアすべき点ですね。

 

編集部で聞き及んだとことによると、中国人観光客は本国で下調べをしてから訪日し、「この製品」とピンポイントで買っていくことが多いそうです(あるいはバスガイドにすすめられて。バスガイドにいかに取り入るかという点も重要だそうです)。その意味では、中国への発信が弱いという点は致命的です。いい製品だけに、その点が惜しいですね。逆に言えば、これさえクリアできたら「爆買い」は確定でしょう。今後の施策に注目です。