家電
炊飯器
2018/6/22 20:00

「社運かけました」炊飯器の象印、過去の栄光を捨て「絶対の自信」で送り出す新モデル「炎舞炊き」

象印マホービンは、国内の炊飯ジャーで長年大きなシェアを維持しているメーカー。1970年の電子ジャー発売以来、「美味しいごはん」を追い求めて、「IH」「圧力」「南部鉄器製の内釜」といった機能を進化させてきました。そんな同社が今年の7月21日から発売する「圧力IH炊飯ジャーNW-KA型“炎舞炊き(えんぶだき)”」は、これまで以上の美味しさを追求し、新しい加熱方式を採用した意欲的な製品です。

↑圧力IH炊飯ジャーNW-KA型“炎舞炊き”。左は5.5合炊きのNW-KA10、右は1升炊きのNW-KA18。カラーは「黒漆」(くろうるし)で、四角いフォルムは玉手箱をイメージしています

 

「おいしいご飯=かまど炊きの再現」を一貫して追求

「ごはんを美味しく炊くポイントは、お米に高温の熱を均一に伝えること。これによってお米の甘みや旨みが引き出されます」と話すのは、同社の第一事業部長の山根博志さん。同社は、以前から美味しいご飯のヒントは「かまど炊き」にあると考え、昔ながらの薪を使ったかまど炊きを一から検証してきました。こうして2011年に誕生したのが、伝統工芸品の「南部鉄器」および、羽釜(中ほどにつばがついた釜)の形状を採用した「南部鉄器 極め羽釜」シリーズです。同シリーズの実力は、最新モデルNW-A型のユーザーアンケートで88%が「美味しく炊ける」と評価したほど。

 

しかし、同社はその評価に甘んじることなく、もっと美味しく炊ける方法を研究し続けた結果、「かまどの炎は実は均一に熱を伝えていない」ということに気が付きました。かまどの炎は、焚き木の状態や風などの影響を受けて、揺らいでいます。それに伴って、強い火力が与えられる場所が移動し、釜は部分的に集中加熱されます。その際、釜の内部で温度差が生まれて、激しく複雑な対流が起こることがわかったのです。

↑かまどの炎で加熱された釜内を観察すると、炎のゆらぎで、部分的に高温になっているのがわかります

 

3つのIHコイルを独立制御し、炎のゆらぎと大火力を実現

また、同社では、かまどの炎の火力を電力で再現するには、どのくらいのエネルギーが必要になるのか検証したところ、かまどの炎を電力に換算すると約2750W。これを現代の炊飯器と比較するために単位面積あたりの火力に換算すると、約6W/㎡になることがわかりました。この約6W/㎡という火力は、日本の電力事情では実現が難しい数字でした。つまり、かまど炊きの美味しさを再現するには、「かまどの炎のゆらぎの再現」と「かまどの大火力を電気で実現する」という課題があるというわけです。これを解決するために同社が開発したのが「ローテーションIH構造」です。

 

従来のIHコイルは、本体底部に2重にコイルを配したIHコイルを1つのみ搭載していました。しかし、「ローテーションIH構造」は、それぞれを独立制御できるIHコイルを3つ搭載しています。これにより、炎のように部分的な集中加熱が可能となり、かまどで炊いた時と同様に複雑な対流を引き起こします。

 

「ローテーションIH構造の採用で火力もアップ。象印の現行モデルの単位面積あたりの火力は約3W/㎡ですが、新モデルの『炎舞炊き』は、約12.5W/㎡。かまどの炎を超えた大火力を実現することに成功しました」(山根さん)

↑新モデル「炎舞炊き」はIHコイルを3つ搭載(左)

 

【動画】
炎舞炊きの加熱中の釜内の様子。火力が強い部分が移動し、激しい対流が起こっていることがわかります

 

「南部鉄器」に替え、蓄熱性・発熱効率・熱伝導率に優れた内釜を開発

加熱方法が変わったなら、それに最適な内釜の開発も必要になります。これまで同社の最上位機種の内釜は、伝統工芸品の「南部鉄器」を採用していましたが、「炎舞炊き」では素材を一新。IHと相性がよく、発熱性・蓄熱性が高い「鉄」、優れた熱伝導性を持つ「アルミ」、蓄熱性と耐久性に優れた「ステンレス」を組み合わせた「鉄~くろがね仕込み~豪炎かまど釜」を開発しました。こちらは羽釜の要素を取り入れ、釜のふちに厚みを持たせたのも特徴。「厚いふち」は、釜側面の熱を蓄え、内釜の外へ放熱せずに効率よく加熱します。また、新素材を使った新しい内釜は、従来の約2kgから約1.2kgへと軽量化し、扱いやすくなりました。

↑「炎舞炊き」の内釜「鉄~くろがね仕込み~豪炎かまど釜」

 

↑内釜の形状も一新。左が従来モデルの「南部鉄器 極め羽釜」で、右が最新モデルの「鉄~くろがね仕込み~豪炎かまど釜」

 

ご飯はふっくらもちもち、粒感があって甘みが広がる!

説明会の中で、「炎舞炊き」で炊いたご飯を試食する機会がありました。試食で使われたのは、佐賀県のお米「さがびより」です。もっちりとした食感と、適度なツヤ、豊かな甘味と香りが特徴とされるお米です。今回の試食は標準の「白米」コースで、炊きあがりから30分ほど経過した状態のものを試食。口に入れると、ふっくらともちもちした食感でした。粒感もしっかり感じられて噛むと甘みが広がり、おにぎりや塩気のある焼き魚などが欲しくなる味わいです。標準のコースでこれだけ美味しいごはんが食べられるとは、さすがは象印です。

↑試食で提供されたご飯。ツヤがあり、粒の形がはっきりとわかります

 

高評価だった「南部鉄器」を捨て、社運をかけたのが「炎舞炊き」

また、説明会で同社の広報部長、西野尚至さんは、今回の新製品にかける思いを次のように語りました。

 

「2011年から7年間発売してきた『南部鉄器 極め羽釜』シリーズは、お客様から高い評価を得ることができました。『高級炊飯器の中で一番美味しいのは南部鉄器の極め羽釜』というありがたい声も頂戴しています。しかし、今回の新製品は、その高い評価をいただいていた機能をすっぱり捨て去ったもの。『炎舞炊き』のリリースの際、当社の社長が『社運をかけた製品』と話すほどの位置づけです。我々は、『南部鉄器 極め羽釜』はとても美味しいと思っていましたが、『炎舞炊き』はそれを凌駕する製品だと自信を持っています」

 

炊飯ジャーのトップメーカー象印が、従来モデルで高評価を得た技術を捨て、社運をかけて開発した「炎舞炊き」。絶対の自信を持って世に送り出したのは明白で、今年の大きな話題となるのは間違いありません。

↑2つあるカラバリのうちのひとつ「雪白」(ゆきじろ)