「おいしいコーヒーとは何か?」ゼロから開発がスタート
こうした背景から、同社では、「世界一おいしいコーヒーを自宅で楽しんでもらおう。われわれが持つテクノロジーと燕三条の品質ならコーヒーメーカーにイノベーションを起こすことも可能なはずだ」(ツインバード工業プロダクトディレクション部の岡田 剛氏)と考え、開発を始めました。しかし、早々に壁にぶち当たったといいます。
「技術はあっても、コーヒーの味づくりに関してはド素人。何をもっておいしいコーヒーとするのか、何が正しいのか、さっぱりわからない。そんな状況が長く続きました」(岡田氏)
出口のない迷路をさまよい続けるなか、岡田氏は一縷の望みにかけて地元の本屋に飛び込みました。単に、コーヒーをイチから勉強すべく、関連書籍を探そうと考えてのことでしたが、そこで、本棚に並ぶ田口 護氏(先述)の著書の数々を目にします。以降、開発陣は「珈琲大全」をバイブルとして読み込んで豆の挽き方や淹れ方を学び、さらにそれでは飽き足らず、岡田氏たちは直接カフェ・バッハに乗り込んだそうです。
ダメ元で訪れた「コーヒー界のレジェンド」は意外にも快諾
「田口先生に監修をお願いに行った時はダメでもともとのつもりでした。コーヒーはカフェで飲むもの、気持ちを込めてハンドドリップで淹れるものと、真っ向から否定されるのでは、と戦々恐々でしたが、先生の返事は真逆でした。先生は、自分たちが丹精込めて作ったコーヒー豆を家庭で楽しんでもらえることが一番大事。豆を買ってくれるお客様を大切にしたい、と協力を快諾してくれたのです」(岡田氏)
当の田口氏はどう思ったのでしょうか。
「とうとう来たか、という心境でした。市販のコーヒーメーカーは一つの淹れ方しかできず、家庭ごとに味をカスタマイズできない。その大きな弱点に私達はあぐらをかいて商売してきた。逆に言えば、それが私達の仕事の誇りでした。私達にとって、家庭でおいしいコーヒーが作れるマシンはイヤな存在だけど、一方で、それが実現するとテイクアウトの豆が売れる。家でおいしいコーヒーが飲めれば、またお店に帰ってくるだろう」
それが協力に踏み切った理由だそうです。