あと数か月で平成も終わり。私たちの生活を支えてきたキッチン家電は、平成を通して著しい成長を見せてきました。ここでは、特に炊飯器とオーブンレンジに絞って、平成に登場した注目アイテムを再確認。さらに、家電専門家の戸井田さんにもお話をうかがいました。
【本誌ご意見番が平成家電を振り返る!】
家電コーディネーター
戸井田園子さん
テレビ、雑誌など幅広い媒体で活躍。大手メーカーのキッチン家電の主要モデルや話題の製品は、実際に自宅でじっくり試して評価します。
キッチン家電の快進撃は平成10年代から始まった
バブル絶頂期〜低成長期と大きく揺れた平成時代。生活家電もその流れと無縁ではありませんでした。
「この時期は不況もあり、価格競争が激化。さらに地球温暖化対策で多くの生活家電が省エネ性向上に注力していたため、実は印象に残る製品が少ない。潮目が変わったのが平成10年代。省エネ追求がひと段落し、メーカーが快適さやおいしさに目を向け始めました」(戸井田園子さん)
例えば炊飯器では三洋電機の可変圧力IH、パナソニックの高温スチームなど、各メーカーが独自技術をアピールし、炊飯器が高級化しました。オーブンレンジではシャープ・ヘルシオの登場が重要トピック。減塩・脱油効果が健康志向のシニア世帯や家族世帯に支持されました。近年では自動調理機能、時短機能の進化が目覚ましいです。
「飲酒運転罰則強化や震災の影響で〝ウチ食〟が再評価。ごはんの味にこだわる人や手作り調理を助ける高機能オーブンレンジを求める人が増えましたね」(戸井田さん)
<炊飯器編>
【昭和63年】初のIHジャー発売
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【平成4年】初の圧力IHジャー炊飯器発売
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【平成13年】銘柄米炊き分け機能の元祖はコレ!
ナショナル(現パナソニック)
パワー全面IHジャー炊飯器
SR-HGBシリーズ
発熱効率の高い銅釜を採用し、全面IHによる高火力炊飯を実現。現在の高級炊飯器の人気機能である「銘柄米炊き分け」機能をいち早く搭載した点も注目です。
【平成15年】高温スチームでふっくらごはんを実現
ナショナル(現パナソニック)
高温スチームIHジャー炊飯器
SR-SHAシリーズ
画期的な130℃高温スチーム炊飯で米本来の甘みと香りを引き出しました。同機能はスチーム再加熱とともにその後の同社の炊飯器にも引き継がれ、現在は「220℃ IHスチーム」に進化。
【平成18年】内釜の素材にこだわり高級化路線の先駆けに
三菱電機
本炭釜 NJ-WS10
純度99.9%の炭釜を採用。釜全体がIH発熱、遠赤効果により米の芯までふっくら炊き上がります。高コストな炭釜使用で定価11万5500円という超高級機種ながら大ヒットを記録。
【家電のプロが当時の印象を振り返る!】
炊飯器の動向を変えた一台
「一時は店頭に在庫がないほど売れに売れた、その後の炊飯器業界の動向を高級化へと大きく変えたモデルです」(戸井田さん)
【平成22年】羽釜形状の内釜採用で形状にもこだわった時代に
象印
極め羽釜シリーズNP-SA10
対流が起きやすい浅めの釜に、ヒーターの熱を密封する羽釜形状を採用、甘みと弾力の強いご飯に炊き上げます。翌年には南部鉄器の羽釜を採用した特別仕様モデルも登場しました。
【平成26年】小容量タイプ、高級化の走り
三菱電機
本炭釜 NJ-SW065
シニア世帯などの「おいしいご飯が炊ける小容量タイプを」という声を受けて登場。3.5合炊きに炭釜を採用し、ふっくら粒感のある炊き上がりに。小容量タイプ高級化の先鞭をつけました。
【平成30年】土鍋×シーズヒーター採用の新発想の炊飯器
長谷園×siroca
かまどさん電気 SR-E111
伊賀焼の老舗窯元と共同開発。土鍋の特性を損なうIH式でなくシーズヒーターを採用しました。料亭の味が自宅で味わえると大好評。非大手メーカー発の新世代炊飯器としても話題に。
<レンジ編>
【昭和63年】インバーター搭載のオーブンレンジが初登場
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【平成11年】インターネット対応レンジの先駆け!
シャープ
インターネット DE
これつくろ! RE-M210
ネットを利用してレシピを取り込む機種。専用インターフェース経由でPCと繋がり、レンジにレシピをダウンロードできました。現在のクラウド対応レンジの原型といえる存在。
【平成14年】スチームとレンジ、ヒーターの同時加熱が初めて可能に!
ナショナル(現パナソニック)
スチームオーブンレンジ NE-J720
スチームとレンジ、スチームとヒーターの同時加熱を初めて実現。パンをふっくら焼いたり、ラップなしでも料理をしっとりと温めることが可能になりました。後の「スチームブーム」はここから始まりました。
【平成豆知識】
インバーターってなに?
直流電流を交流に変換する装置で、任意の周波数の電流を作るのに使う。エアコンに使うとコンプレッサーの回転数を変えられ、細かな温度調整が可能に。電子レンジでは解凍ムラ軽減、火加減調整、時短調理が可能になりました。
【平成15年】3つの重量センサーで最適な加熱具合を実現!
日立
ワイドオーブンレンジ MRO-EX2
3つの重量センサーを搭載。重量と食品位置の測定で、よりムラを抑えた加熱が可能になりました。この技術は現在も他社製品にない日立独自の技術として知られます。
【平成16年】「水で焼く」のキャッチフレーズで大ヒット!
シャープ
ヘルシオAX-HC1
100℃以上の過熱水蒸気で調理する画期的オーブン。圧倒的な熱量で食材を外はカリッと、中はジューシーに焼き上げ、余分な脂や塩分も落とせます。以後ヘルシオは累計販売台数200万台以上の大ヒットオーブンに。
【平成24年】スマホ連携機能で調理設定が可能
パナソニック
3つ星ビストロ NE-R3500
2012年にパナソニックが提唱した「スマート家電」にいち早く対応した製品。スマホの専用アプリでレシピを検索、本機にタッチするとレンジの調理設定が完了する仕組みでした。
【当時の印象】機能だけでなく斬新なカラーも注目
「オーブンレンジのボディカラーに「赤」を採用したのもヘルシオが初。垢抜けたデザインも大好評でした」(戸井田さん)
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ほかにもエポックメイキングな調理家電が続々登場!
調理家電の歴史に名を残す名品はほかにも数多いです。三洋電機GOPANは米粒から直接パンが焼ける製品で、予約殺到し発売延期となる人気ぶり。近年では食パンを圧倒的においしく焼けるバルミューダ・ザ・トースターのヒットが記憶に新しいです。
【平成22年】
三洋電機
ライスブレッドクッカー GOPAN
SPM-RB1000
●画像はパナソニック製
米粉を使わず、生米からパンができるホームベーカリー。小麦アレルギーの人や、より安全な食材でパンを作りたい人に支持されました。
【平成25年】
フィリップス
ノンフライヤー HD9220/27
最高200℃の熱風を高速循環し、食材の旨みを閉じ込めて調理。通常の揚げ物より脂肪分が最大80%カットできるヘルシーさがウケました。
【平成27年】
BALMUDA
BALMUDA The Toaster
K01シリーズ
スチームと細かい温度制御で外はサクサク、中はしっとりの至高のトーストが完成。そのおいしさが口コミで広まり、大ヒットを記録しました。