筆者は2019年の年明けにアメリカのラスベガスで開催されたエレクトロニクスショー「CES」を取材して、今年はスマホアプリによる操作やボイスコントロールに対応するスマート家電が一段と増えそうな期待を感じています。CESにブースを出展したGoogleやAmazonも、それぞれのAIアシスタントと連携する製品やサービスのパートナーシップが拡大していることをアピールしていました。まもなくその波が日本にもやってくるのでしょうか。
パナソニックもスマート家電のラインナップを数多く揃える日本のエレクトロニクスメーカーです。2019年の春には光と音を一括操作できるユニークなスピーカー内蔵LEDシーリングライト「AIR PANEL LED The Sound」シリーズや、赤外線リモコン機能を統合したスマートスピーカー「コエリモ」の新製品を用意しています。パナソニック製品の連携が実現する“スマート照明のある暮らし”を体験できるメディア向けイベント「あかりセミナー2019」に参加してきました。
まずは今回のイベントの主役でもある、ふたつの製品の概略を振り返っておきましょう。ひとつ目の「SC-GA1」はW100×H54×D100mmのコンパクトなスマートスピーカーです。パナソニックが発売するGoogleアシスタント搭載のスマートスピーカーとしては「SC-GA10」に続く第2弾です。
他のGoogleアシスタントを内蔵するスマートスピーカーと同じように、Wi-Fi経由でホームネットワークにつなぐと音楽再生やAIアシスタントを活用した情報検索などが声で操作できます。
赤外線リモコン機能は、2019年1月現在でパナソニック、ソニー、シャープ、東芝から2005年以降に発売されたテレビの電源ON/OFF、チャンネル変更操作に対応しています。エアコンはパナソニック、コロナ、ダイキン、日立、三菱電機の一部製品が電源・温度・モード切り替えなど簡単な操作をサポートします。さらにLEDシーリングライトはパナソニック製品の電源ON/OFFと連動します。
SC-GA1の活用方法として、おうちクラウドディーガで録画したテレビ番組を音声操作で検索・再生したり、エアコンを赤外線リモコンで操作したりもできます。SC-GA1はGoogleの「Home」アプリやパナソニックの「Panasonic Music Control」アプリによるセットアップが必要なデバイスですが、初期設定を済ませてしまえば宅内の様々な家電機器が、それぞれの接続方式を意識せず音声を使ってシームレスに操作できるように。場所を取らないサイズ感も魅力的だと思います。
Bluetooth機能については、今回紹介するもう一つの新製品である「AIR PANEL LED The Sound」(以下:The Sound)シリーズとの連携に注目です。従来のThe Soundはシリーズ専用の「あかリモ」アプリで照明光を操作、内蔵スピーカーによる音楽再生はBluetoothで接続したスマホの音楽プレーヤーアプリで再生という具合に別系統になっていました。今後はあかリモアプリのアップデートにより、「光と音」をアプリから一括操作ができるようになります。
シーリングライトの光は「だんらん」「くつろぎ」や「パーティ」など、プリセットされている11種類の「シーン」を選んで簡単に調光ができます。
プリセットされた9つのシーンを切り替えた時に、雰囲気の合う楽曲を再生できる機能も追加されました。楽曲はスマホの「あかリモ」アプリから選んで、スマホに保存した音楽をBluetooth経由でThe Soundに飛ばすか、またはホームネットワーク上にあるディーガなどのDLNAサーバー機器に保存した音楽ファイルを、コエリモを使って指定。同じくBluetooth経由でスマートスピーカーからThe Soundに送って鳴らすこともできます。
照明器具が音声操作に対応すると、例えば荷物を両手に抱えて夜に帰宅した時や、ディナータイムで手が塞がっている時にリモコンが手元にいらなくなるので実用的と言えます。筆者の場合はLEDライトの明るさや色合いをリモコンで設定したり、切り替えること自体が面倒に感じることもあるので、音声を使って一発で切り替えられたらさぞ便利だろうと思います。
なお従来のThe Soundシリーズも、専用アプリをアップデートすれば光と音の一括操作が可能になります。The Soundシリーズは、天井から音楽が降ってくるようなリスニング感を特長としています。Bluetooth対応のワイヤレス送信機をテレビにつなげば、テレビの音声も天井からまんべんなく聴こえてくるので、従来のBluetooth接続に対応するネックバンドスピーカー、または手元サイズのスピーカーを使うよりもスタイリッシュな環境が作れるのでは。スマート照明としてかなりインパクトのある製品なので注目されそう。私も欲しくなりました。
適用畳数が12畳前後の「HH-XCD1288A」と、8畳前後の「HH-XCD0888A」の2機種が2月下旬に発売を予定しています。想定価格は12畳モデルが7万5000円前後、8畳モデルが6万5000円前後で販売される見込みです。
今回の「あかりセミナー」では、ほかにもパナソニックの新製品として2月下旬に発売される寝室用LEDシーリングライトが紹介されました。新製品には間接光搭載モデルとリネン柄モデルの2種類があり、それぞれに適用畳数が10畳前後と8畳前後のサイズに分かれます。価格はオープンですが、参考までにリネン柄10畳前後のモデル「HH-CD1071A」が3万円前後の売価を見込んでいます。
新製品には全灯・消灯・常夜灯など一般的な点灯モードのほかに、3種類の特徴的なモードが搭載されています。「くつろぎモード」は眠りに就く時間帯に最適な照度と色温度に調整したプリセット。例えば親が子どもを寝付かせるためにベッドサイドで絵本を“読み聞かせ”する時にベストな明るさであると、本機の商品企画を担当するパナソニックの下田真由美氏が説明しています。
照明の明るさを上げてしまうと子どもが寝付けなくなってしまいます。かといって部屋を暗くすると、絵本の字が読みづらいということに。タブレットで読み聞かせをするという手段もありますが、ブルーライトの影響が気になります。今回のイベントにゲストとして参加した、JAPAN絵本よみきかせ協会の代表理事でありナレーターの景山聖子氏が、くつろぎモードの明るさ環境で絵本の読み聞かせを実践するデモンストレーションを体験しました。
全灯の明るい部屋に比べると確かに手もとは暗くはなるのですが、絵本の文字や絵が見づらくなりません。むしろそれぞれの輪郭が明瞭になって、目が疲れにくくなるように感じました。パナソニックの下田氏によると、プリセットの名称を読み聞かせモードではなく、くつろぎモードとした理由は子育て世代に限らず、入眠時に最適な明るさが得られる機能として幅広いユーザーに活用してほしいからなのだと言います。このほかにも夜中に目が覚めた時に足元が見えるぐらいの明るさに照明を点灯する「夜間モード」や、照明が次第に明るくなって、光とアラーム音で心地よく目覚められる「お目覚めモード」が搭載されています。
↑白が強い蛍光等色で全灯にした照明(P10)とくつろぎモード(P11)を比較。くつろぎモードは色合いがやわらかく、文字や絵を眺めていても疲れにくい感じがしました
寝室用LEDシーリングライトもパナソニックらしい「ユーザーへの思いやり」があふれる新製品でした。本機については、まだコエリモなどスマートスピーカーとのWi-Fi、Bluetooth連携には対応していませんが、将来はパナソニックらしい照明製品の機能が最先端のスマートテクノロジーとシームレスに連携するとさらに面白くなりそうです。今後の展開も楽しみです。