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2019/5/9 17:30

「時々、自分は仕事をしているのか?…と不安になる」ダイソン技術者が語った「驚きの開発現場」

10年越しで開発したデジタルモーターの搭載やパーツの直線的配置など、劇的な進化を遂げたコードレスティッククリーナー「Dyson Cyclone V10」の発表からわずか1年。ダイソンはこのほど、吸引力を従来比で25%アップし、バッテリー残量が秒単位でわかるカラー液晶ディスプレイを搭載するなど、さらに進化した「Dyson V11 コードレスクリーナー」(以下V11)を市場に投入しました。

↑Dyson V11 コードレスクリーナー(実売価格7万5600円~)

 

同社はクリーナーだけでなく、羽根のない扇風機や大風量を誇るドライヤーなど、常に世界を驚かせ、市場をリードする製品を世に出し続けています。実際、今年2月に発表された日経企業イメージ調査でも、ダイソンは「研究開発力・商品開発力が旺盛である」部門で1位を取るなど、開発力に対する評価が高いのが特徴。その開発力の原動力となっているのは何なのか。そして、開発の現場はどうなっているのか……? 疑問に思った我々は、今回「V11」のプロモーションのために来日したフロアケア部門のデザインエンジニアであるサム・ツイスト氏に、根掘り葉掘り聞いてみました!

↑サム・ツイスト氏

 

↑今年2月に発表された日経企業イメージ調査でも、ダイソンは「研究開発力・商品開発力が旺盛である」「技術力がある」とのイメージが強いことがわかった

 

常に3~5年先を見て開発を進めている

――まず「V11」の開発で苦労したポイントを教えて下さい。

 

サム・ツイスト氏(以下敬称略) やはり液晶ディスプレイです。1秒単位で残量を表示するアルゴリズムの開発に時間がかかりました。床の質で変わるモーターの負荷、アタッチメントで変わるバッテリーの負荷が残量にどのように影響するか、その計算式の確率が難しかった。この開発だけで3年かかっています。われわれは常に3~5年先を見て開発を進めており、残量表示のシステムも2015年から開発を始めていました。

↑V11のバッテリー残量のシステム開発の苦労を語るツイスト氏

 

↑V11の液晶ディスプレイ

 

100人のチームで「エキサイティング」な日本向けの製品を開発中

――3年後に向けて、今は何を開発しているのでしょうか。

 

ツイスト 私は日本向けの製品を担当しています。詳しいことはもちろん言うことはできないけれど(笑)、現在100人ほどのチームでとてもエキサイティングな商品を開発しているところです。当社が日本に進出して20年以上になりますが、日本のユーザーは本当にダイソン製品を愛してくれています。ですから、われわれも日本の家庭を理解したいという気持ちが強い。ヘアスタイリングも空調製品も、常に日本のユーザーのことを考えて開発しています。

 

その答えの一つが、今回発売した「Dyson V7 Slim」(実売価格4万5360円・以降V7 Slim)といえます。日本でスティック掃除機を買わない人は、その重量がネックになっていることがわかったのです。そこで、V7 Slimは軽く、短く、ヘッドを小さくしました。

↑Dyson V7 Slim。V11のサイズ/質量が250×1257×246mm/2.72kgなのに対し、V7 Slimは211×1140×206mm/ 2.2kgとよりコンパクトで軽くなっています

 

↑V7 Slimは、ツイスト氏ら日本向け開発チームの本領を発揮したモデルです

 

ツイスト また、V11に初めて付属した充電スタンド(※)も日本市場にインスピレーションを受けたものです。欧米の家屋と異なり、壁に気軽に釘を打てない日本の住居にとって、専用の充電スタンドはニーズが高い。V11の充電スタンドは日本から世界に羽ばたいて行きます。

※充電スタンドはDyson V11 Fluffy+以上のモデルに付属。Dyson V11 Fluffyには充電スタンドは付属していません

↑充電スタンドに収納したDyson V11 Fluffy+

 

電気自動車をはじめ、課題を解決するための300ほどのプロジェクトが進行

――先ごろ、ロボット掃除機の新製品「Dyson 360 Heurist (ダイソン スリーシックスティー ヒューリスト)ロボット掃除機」(実売価格11万8800円)も発売しましたが、今後、ダイソンはロボット分野にも進出するのでしょうか。

 

ツイスト 残念ながら、それに関しては触れることはできません(笑)。しかし、創業者のジェームズ・ダイソンが常に心がけているのは、純粋に人々の暮らしの課題を解決すること。掃除機の紙パック、部屋の空気、重いヘアドライヤーなど、これまでさまざまな課題解決に取り組んできました。生活の課題解決に向けて現在300ほどの進行中のプロジェクトがあり、電気自動車もその一つ。今後も課題を解決する新しい商品は続々と登場するでしょう。ダイソンの将来はとてもエキサイティングです。

↑Dyson 360 Heuristロボット掃除機

 

計画性よりもスピード重視。たくさん失敗して失敗から学ぶ

――ダイソンの開発環境について教えてください。独自の制度や仕組みなどがあれば。

 

ツイスト たとえば、ダイソンのすべての設備を自由に使える「フリーデイ」という制度があります。自分で何かを発明してもいいし、新しいアイディアが認められればチームを作ってサポートもしてくれます。

 

時々、“自分は仕事をしているのか?”と不安になるほど、とても自由な雰囲気です(笑)。当社のラボの根底にあるのは失敗を恐れないこと。多くの会社は失敗をネガティブなものと捉えていますが、ダイソンは逆です。たくさん実験してたくさん失敗し、失敗から学ぶことがあればそれでいい。私もたくさん失敗してたくさん実験器具を壊しました(笑)。一度、かなり高額な測定機器を壊したことがありますが、全くとがめられませんでした(笑)。

 

また、当社のラボでは、「思い立ったらすぐに行動」ということを重視しています。アイデアが浮かんだら厚紙やプラ版、3Dプリンターを作ってすぐに試作機を作ります。計画性というものに重きを置いておらず、即行動、スピード重視です。その結果、半分くらいは失敗しますが(笑)。でも、それで良いと思っています。
 

――最後に、日本のユーザーにメッセージを。

 

ツイスト 私は過去に1年半ほど日本に住んでいたことがあります。日本はどこに行ってもキレイで静かで、どこに行っても暖かく歓迎してくれます。常に他人の存在を意識し、尊重してくれる。日本で学んだ日本の生活事情を今後も製品づくりに活かしていきたいと思っています。ダイソンが作る未来を楽しみにしていてください!

 

積極的な設備投資と自由な開発環境がダイソンの躍進を支える

現在、ダイソンは本国イギリスおよびアジア全域に5800人を超える研究開発チームを抱えています。一方で、イギリスの研究開発施設を4400万ポンド(1ポンド143円換算で62億9200万円)かけてリニューアル。中核技術であるデジタルモーターほか、人工知能やロボット工学、バッテリーなどの研究開発を行っており、その投資額はイギリス最大規模とのこと。イギリスだけでなく、シンガポールやマレーシアなどアジアにも積極的に投資して研究開発施設を拡張中です。

 

設備投資と自由な開発環境、この両輪があってこそ、ダイソンは市場をリードできる製品を開発し続けることができるのでしょう。インタビューでも100人規模で「エキサイティングな商品を開発中」とありましたが、今後も何が登場するのか…楽しみで仕方ありません。みなさんも、大いに注目してみてください!

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