近年、花粉によるアレルギー患者が増加し、患者も低年齢化していることが問題となっています。日本ではいま、なにが起きていて、どのような対策を取るべきなのでしょうか? ここでは、不安に思う方たちのために、専門医として著名な大谷義夫先生に最新の情報を教えてもらいます。花粉症のメカニズムや症状をはじめ、話題の「コップ理論」の真偽、花粉症にいい食べ物から空気清浄機の選び方まで。いまからぜひ知っておきたい情報をたっぷりと紹介していきます!
【教えてくれるのはこの方】
医学博士・池袋大谷クリニック院長 大谷義夫さん
1963年、東京豊島区生まれ。群馬大学医学部卒業後、九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、同大学呼吸器内科兼任睡眠制御講座准教授、米国ミシガン大学留学を経て2009年に池袋大谷クリニックを開院。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医。自身のクリニックでは、人体が本来持っている免疫のバランスを重視し、「余計な薬は出さない」がモットー。大谷院長の診察を求めて日本全国から患者が集まり、日本一の呼吸器患者数を誇る。テレビ・ラジオ・雑誌・新聞など多くのマスコミで活躍し、著書も多数。
花粉症患者の増加の理由は「衛生的な環境」と「住宅の高気密化」
――春になると、花粉対策のマスクを着けて歩く人が目につくようになってきました。いま、日本に花粉症の患者さんはどのくらいいるんでしょうか。
大谷 いま、日本人の3人に1人が花粉症にかかっていて、都会では2人に1人が花粉症患者だといわれています。低年齢化も進んでおり、花粉症患者は増加傾向にありますね。花粉症が増えた原因のひとつと考えられるのは、衛生仮説。ウイルスに向かう免疫と、アレルギーに向かう免疫のバランスが取れているのが理想なのですが、ウイルスの少ない衛生的な環境だと、免疫がアレルギーに偏ってしまうんです。さらにもうひとつ、近年の住環境の変化も大きいと見られています。いままでの風通しの良い木造住宅が減少し、気密性の高いマンションや一戸建てが増えてきた。住宅の気密性が高いと、一度入ってしまった花粉が外に出られず、部屋の中に蓄積します。さらに、温度・湿度がコントロールされた「人間にとって住みやすい環境」というのは、「カビやダニにとっても過ごしやすい環境」。真冬でも、温床となるホコリさえあればカビやダニは繁殖できてしまうんです。その意味で、花粉やホコリを取る空気清浄機が必要になってきますね。
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攻撃する必要のない花粉に、免疫システムが攻撃してしまうのが花粉症
――次に、人間が花粉症にかかるメカニズムについて、簡単に教えていただけますでしょうか?
大谷 花粉症は、本来なら攻撃する相手ではない花粉を、免疫システムが攻撃しようとすることで起こるもの。花粉などのアレルゲンが主に鼻から入ってくると、アレルギーの細胞・マスト細胞が反応して免疫を作ります。その後、再び花粉が侵入してくると、これを排除しようとしてヒスタミンという物質を出し、アレルギー反応が起こるんです。ヒスタミンは目や鼻、のどを刺激して炎症を起こすので、患者さんの主要な症状は鼻水、鼻詰まり、目のかゆみ、のどの違和感などになります。さらには、のどの下のほう、下気道や気管支に入っていけば、せきや「せきぜんそく」というぜんそくの原因となります。気道だけではなく、皮膚についた花粉によって皮膚炎を起こす症例もある。重症の花粉症の方は炎症が強く出るので、発熱といった全身症状まで起こりうるわけです。
花粉症を引き起こす花粉はほぼ一年中飛んでいる
――なるほど、ひとことで花粉症と言ってもバカになりませんね。
大谷 さらに、花粉症の原因となるのは、スギ花粉だけじゃありません。春だとヒノキ・ハンノキで、実はスギ花粉症だと思っていたら、ハンノキだったというケースも多い。北海道だとシラカバから始まりますね。以降、初夏はカモガヤなどのイネ科、秋はブタクサ・ヨモギなど。つまり、ほぼ一年中花粉が飛んでいるわけですね。これに関連して問題となるのが、食物アレルギー。口腔アレルギー症候群、または花粉食物アレルギー症候群というのですが、いくつかの果物や野菜は花粉症と関係があって、食べると口がしびれたり、のどがかゆくなったりするんです。たとえば、スギ・ヒノキ花粉症だったらトマト、ハンノキやシラカバの花粉症でしたら、りんごやさくらんぼなどのバラ科の果物、イネ科の植物の花粉症ならすいかやメロンに反応する。これらは、花粉とタンパク質の構造が似ているからですね。例えば、スギ花粉症の方が生のトマトを食べると「スギ花粉が来た!」と身体が誤認識して免疫が口やのどを攻撃してしまうんです。
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もっとも身近でもっとも危険なPM2.5はタバコの煙
――さきほど、「ほぼ一年中花粉が飛んでいる」とおっしゃいましたが、となると、空気清浄機は一年中動かしていたほうがいいということでしょうか。
大谷 そうですね。あと、よくPM2.5が話題になるじゃないですか。春になるとPM2.5が中国からやってきますし、ディーゼル規制で減ってきてはいるものの、日本国内で出るものもある。その対策としても空気清浄機は有効です。ちなみに、一番身近で、一番問題となるPM2.5ってご存じですか? それはタバコの煙なんです。PM2.5とは2.5μm(マイクロメートル)以下の微粒子の総称ですが、タバコの煙は0.1μmの微粒子なのでPM2.5に含まれる。喫茶店の喫煙室で測ったデータを見ると、北京の最高濃度と同じくらいですよ。それこそ外出禁止令くらいのレベルです。
――じゃあ、タバコを吸っている人は、毎日PM2.5にまみれているということですね。恐ろしい…‥。
大谷 危険性という点でも注意すべきです。日本人の寿命ともっとも因果関係があるものは、高血圧や肥満でもなく、タバコなんです。その意味では、ちょっと変ですけど、「空気清浄機は、喫煙する家には必ずあったほうがいい」と言いたい。たとえベランダで吸っても、0.1マイクロの微粒子が窓のサッシの間から入ってきてしまうので。家族の受動喫煙を防ぐためには当然ですよね。その点、高性能な空気清浄機なら、かなりのレベルでタバコの煙が除去できますから。
許容量を超えると発症するとする説「コップ理論」に根拠はない
――花粉の話に戻ります。花粉症について、意外な事実などがあれば教えていただきたいのですが。
大谷 よく話題になる「コップ理論」や「バケツ理論」と呼ばれている説はご存じですか? アレルギーのない人でも花粉などのアレルゲンを浴び続けていると、コップやバケツの水があふれるように身体の許容量を超えてアレルギー症状が出てくる、という説です。あれ、実は根拠がないんですよ。私もテレビ局に言われて根拠を探したんですが、まったく出てこなかった。それに、花粉症の根本治療が「舌下(ぜっか)免疫療法」であるという事実にも矛盾しています。舌下免疫療法は、スギ花粉の成分を精製したエキスを毎日なめていく治療法。これで身体をアレルゲンに慣らしていくんですが、これですごくラクになります。ただ、この治療法が有効だとすると、「コップ理論」や「バケツ理論」は成り立ちませんよね。
――たしかに。バケツもコップも漏れる一方で、症状が悪化するはずですよね。
大谷 また、花粉の量と花粉症の症状が一致しないということもポイントです。たとえば、予報ではすごく花粉が飛んでいるはずなのに、体調がラクだということもある。年によってラクな年、ラクじゃない年もある。これは花粉の量と免疫、つまり抵抗力とのバランスじゃないと説明がつかないんです。実際は、コップよりもシーソーをイメージしたほうが正しい。花粉の飛散量やストレスが増して、身体の抵抗力を上回るとシーソーが大きく傾き、シーソーの下の風船が爆発して花粉症を発症する、というイメージです。反対に、免疫バランスさえ保たれていれば、適切にシーソーが保たれていて症状が軽くなるんですね。
――なるほど。では、個人の免疫の状況しだいで、症状は大きく変わるわけですね。
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「花粉症にいい食べ物」は、和歌山県の幻の果実「じゃばら」
――ちなみに、薬以外で症状を軽くする方法はありますか? たとえば、花粉症にいい食べ物などご存じないでしょうか。
大谷 ひとつ言われているのは、トマトジュース。食品メーカーと病院が組んで、共同研究をアレルギー学会で発表していました。あとはベタですけど、乳酸菌ですね。ヨーグルトは「免疫バランスを調整する」との日本の論文がありました。花粉症は免疫バランスが大きく影響するので、それが調整できるなら有効です。もうひとつ、「じゃばら」ってご存じですか? これはゆずに似た柑橘類で、和歌山県の北山村という村の特産品。生産量が少なくて「幻の果実」のようなものなんです。
このじゃばらのパウダーを、テレビ番組で4人の方が2週間摂取するという実験をしたら、みなさん症状が改善しました。その後、10人程度で基礎データを取ったのですが、そこでもいい結果が出ていました。妊婦や車の運転などで薬を飲めない方のためにも、臨床試験でさらに有効性を検証する予定です。食べ物以外でいえば、花粉や他のアレルゲンを取り込まないよう工夫すること。服はレザーやポリエステルなどの花粉が付着しにくいものを着て、家に入る前に全身を叩いたり、粘着テープで取り除いたり、いい空気清浄機を使うことですよ。
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空気清浄機を選ぶポイントは「高性能フィルター」と「大風量」
――やはり花粉症対策に空気清浄機は欠かせないと。ちなみに、大谷先生自身は空気清浄機を何台使っておられるんですか?
大谷 病院に3台、自宅に5台。自宅はリビング・寝室・書斎の全部屋に置いています。私の家は玄関を入ったらすぐにリビングなのでリビングに1台で済んでいますが、一般的な住宅ならば玄関にも1台あったほうが良いと思います。最も人の出入りが多く、かつ外の空気の侵入が多い場所なので、高性能なモデルが欲しいところですね。
――大谷先生が考える、空気清浄機を選ぶ基準は何でしょうか。
大谷 花粉はもちろん、カビの粒子やハウスダストも捕れる高性能なフィルターは必須。具体的には、1μm以下の粒子を捕らえられる性能がほしいところです。帰ってきてすぐ家でリラックスしたいなら、捕集するスピードも重要。部屋に侵入した花粉を素早く吸引してくれる、大風量のモデルが良いでしょうね。
――花粉症の基本から具体的な対策まで教えていただき、今回は勉強になりました。ありがとうございました!
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【編集部オススメ! 花粉に有効な空気清浄機といえばコレ】
大量の空気を循環させ、2種類のフィルターが花粉・ハウスダストを確実にキャッチ
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バルミューダ
BALMUDA The Pure
オンラインストア価格5万2000円(税別)
2013年発売の空気清浄機「AirEngine」の後継モデル。独自の整流翼とファンが力強く大量の空気を吸引し、2種類のフィルターでキレイな空気を作り出します。また、「空気をきれいにする光の柱」がコンセプトで、吸気口と流路が点灯し、この「光の柱」を通して空気を清浄するのも特徴。空気清浄の強さによって明るさも変化するため、清浄効果を視覚で感じられます。設置面積はA4の紙一枚とほぼ同じサイズ。シンプルで随所に微妙な曲面を施した上質なデザインは、インテリアに溶け込むのもポイントです。
●サイズ/質量:W260×D260×H700mm/約7.4kg●消費電力:2~72W●適用床面積(目安):~36畳/~60㎡●カラー:ホワイト
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【花粉に効くテクノロジー・その1】
花粉からハウスダストまで確実に捕らえる「TrueHEPAフィルター」
BALMUDA The Pureが、前モデルから大きく変わったのがフィルターです。前モデルでは準HEPAフィルターを採用し、0.3μmの微粒子を90~95%以上捕集するまでにとどまっていました。その点、本機ではTrueHEPAフィルターを採用したことにより0.3μmの微粒子の捕集率を99.97%にまで上げることに成功(※)。花粉の大きさは20~40μm、ダニの死がいや糞は10~40μm、カビの胞子は2~10μm、PM2.5は2.5μm以下なので、これらをキャッチするのに充分な性能を持っていることがわかります。このほか、サッカーフィールド6面分の表面積を持つ活性炭脱臭フィルターも搭載し、ペット臭やタバコ臭などのニオイ成分から、ホルムアルデヒドなどの有害物質を取り除きます。
※0.3μm未満の微粒子については、除去の確認ができていません
【花粉に効くテクノロジー・その2】
航空機のエンジンでも使われる「整流翼」で大量の空気を循環させる
BALMUDA The Pureは、TrueHEPAフィルターに厚みをもたせることで表面積を増やし、微粒子の捕集率を高めていますが、それだけだと空気の通りが悪くなり、集じん能力が落ちてしまいます。これを解決したのが、今回新たに導入された「整流翼」です。こちらは、航空機のジェットエンジンに使われている技術を空気清浄機に最適化したもの。それ自体は回転せず、ファンが作り出す風を整え、まっすぐ上方に強く吹き出すための手助けをします。これにより整流翼がない状態と比べて風量が15%アップし、高い粒子捕集率を保ちながら、強力に部屋の空気を循環させることが可能。部屋の向こう側の花粉も引き寄せることができます。
【花粉に効くテクノロジー・その3】
室内に侵入した花粉を素早く除去する「ジェットクリーニングモード」
BALMUDA The Pureの運転モードは、オート/1/2/3/ジェットクリーニングの5段階。ジェットクリーニングは、15分間最大風量で部屋の空気を循環させるモードで、毎分7000Lもの空気を清浄できます。花粉の時期は、帰宅後や掃除で窓を開けたときなどに本モードを使うと、素早く花粉が吸引できるのが便利。花粉の時期は、玄関に置いて本モードを使うのも有効です。
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撮影/高原マサキ(TK.c)