家電メーカーのライソンは、従業員数が20名ほどの小規模な会社。にもかかわらず、「焼きペヤングメーカー」や「ギガたこ焼き器」「せんべろメーカー」などのユニークな製品を発売してヒットさせ、「なんなんだあの会社は?」と業界の注目を集めています。 差別化が図れなければ、あっという間に淘汰されてしまうこの時代にあって、次々と個性的な製品をリリースできる原動力とは何なのか? どんな哲学のもと、どのような方法で新たな商品を生み出しているのか? そこには、大いに見習うべきものがあるはずだ! というわけで、ライソンの代表取締役社長である山 俊介さんにインタビューを行い、ものづくりのヒントをいろいろとうかがってみました。
勝つ方法を模索した結果、自然とトガった家電が生まれた
ライソンは、ゲームセンター用景品の企画や販売などを行うピーナッツ・クラブという会社から2018年に分社化した企業。ピーナッツ・クラブでは、おもちゃなどを中国から輸入して卸していたものの、景品は法律で上限金額が定められているため、高額アイテムは扱えません。そこで立ち上げられたのが、ライソンの前身となる小売店向けの部署でした。この部署ではバラエティ色の強いアイテムを得意としていたため、当初はドン・キホーテやヴィレッジヴァンガードなどを販路にしていたとか。
「販路が広がったのはここ2年ぐらいですかね。だんだんと、家電量販店やホームセンターでも取り扱っていただけるようになりました。ただし後発ですし、正統派の家電を作っても他社に勝てないので、自然とトガったものづくりになっていったんです。またいまの時代、普通のものづくりをしていたら、価格の面で中国の製品に負けてしまいます。『どこかで違いを出さなければ』という思いはありましたね」(山社長)
ちなみに、同社はアウトドアやオーディオ製品も発売していますが、メガヒット作の多くは調理家電。その理由とは何でしょうか?
「家電の事業を立ち上げる際に、テーマが重要だと思ったんです。そこで考えたのが、パーティシーンを盛り上げる楽しい家電。ドン・キホーテさんが主要な取引先だったという点も大きいですね。パーティには料理が付きものですから、おいしいものを作れて面白いアイテムということで、自然と調理家電が多くなったのだと思います。また、パーティ向けですと使う機会は少ないのですが、家にある家電とかぶらないので、プレゼントやイベントの景品などのギフトにもウケがいいんです」(山社長)
確かに、ライソンの製品はユニークなだけでなくコンパクトで価格も手ごろ。持ち運びやすさもあって、二次会などの景品にはうってつけですね。
クラウドファンディングを活用し、宣伝と反響のリサーチを行う
転機となったアイテムについて聞いてみると、ライソンとして分社化して初めて発売した製品「ジャンボわたあめ屋さん」とのこと。こちらは、もともとピーナッツ・クラブでTOP3に入るほど人気だったわたあめ器を大きくしたもの。
「当時、アメリカ村や原宿で大きくカラフルなわたあめが、『コットンキャンディー』として流行っていました。あれを家でも作れたら面白いと思ったんです」(山社長)
この製品は、ユニークな企画性が受け入れられた一方で、クラウドファンディングをうまく活用できたことがその後の躍進につながったといいます。
「クラウドファンディングには宣伝の意味合いもありますから、そこでヒットすればメーカー名を知ってもらえます。また、お客様に直接販売できるだけでなく、売れ行きが可視化されるので反響がわかりやすいというメリットもあります。これが実績となって、次の商談へとつなげやすくなりました。クラウドファンディングを活用したライソンの商品の第2弾が『焼きペヤングメーカー』。こちらはメディアさんの反応がすごかったですね。おかげさまで、GetNavi webさんをはじめ、多くの媒体で取り上げていただきました」(山社長)
開発のきっかけは、山社長自身が「ペヤング ソース焼きそば」を焼いて作ってみたところ、お湯で戻す一般的な調理法よりおいしかったから。また、ピーナッツ・クラブが以前から景品用の「ペヤング ソース焼きそば」を取り扱っており、その監修でメーカーのまるか食品と付き合いがあったことも大きかったとか。ある日、まるか食品の代表が来社した際に「焼きペヤングメーカー」の商品化を相談したところ、ふたつ返事でOKをもらえたそうです。
最大のヒット商品を生んだ要因は「開発スピード」だった
「焼きペヤングメーカー」は、大きな話題となっただけに、売り上げも歴代でトップだったのでしょうか?
「おかげさまで大好評をいただきましたが、売り上げで一番だった製品は『ウェアラブルスピーカー SP-14』です。こちらは当時、某バラエティ番組の影響で肩掛けスピーカー(ネックスピーカー)が大ヒットしており、人気の商品は品切れを起こしていたほどでした。これをもっと安価で提供できれば、さらなるニーズにリーチできるのでは? と思って出したのがこの商品です。このジャンルに関しては競争が激化すると思ったので、とにかく開発スピードを重視しましたね。その年の春に話題になってから、半年後には商品化にこぎつけました」(山社長)
しかも、この商品は相場の半額以下で販売したのがミソ。低価格を実現できたのは、通信方式をそれまでの主流だった無線の2.4GHzから、Bluetoothに変更したからだとか。ステイホームやテレワークにおける需要で、いまでも売れていると山社長は言います。ちなみに、近年の売れ筋といえば?
「家飲み需要などの影響で2020年に最も販売台数が伸びたのは『焼き鳥グリル』です。発想は『焼肉を作る家電は多いけど焼鳥は少ないやん。あったらおもろいんちゃう?』というものでした。生の肉で作ろうとすると20分ぐらいかかるのですが、スーパーの焼鳥など『惣菜を温めるのに便利』というコンセプトで打ち出したところ、ホームセンターを中心に売れました。この成功事例をもとに進化させたのが、先日の記事でご紹介いただいた『せんべろメーカー』です」(山社長)