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調理家電
2021/3/25 19:00

おもしろ調理家電でヒット連発! 話題のメーカー「ライソン」社長に聞く「違いを出すものづくり」

家電メーカーのライソンは、従業員数が20名ほどの小規模な会社。にもかかわらず、「焼きペヤングメーカー」や「ギガたこ焼き器」「せんべろメーカー」などのユニークな製品を発売してヒットさせ、「なんなんだあの会社は?」と業界の注目を集めています。 差別化が図れなければ、あっという間に淘汰されてしまうこの時代にあって、次々と個性的な製品をリリースできる原動力とは何なのか? どんな哲学のもと、どのような方法で新たな商品を生み出しているのか? そこには、大いに見習うべきものがあるはずだ! というわけで、ライソンの代表取締役社長である山 俊介さんにインタビューを行い、ものづくりのヒントをいろいろとうかがってみました。

↑ライソンの山 俊介社長。手元にあるのが1台でおでん・焼き鳥・炙り&熱燗が楽しめる「せんべろメーカー」です

 

勝つ方法を模索した結果、自然とトガった家電が生まれた

ライソンは、ゲームセンター用景品の企画や販売などを行うピーナッツ・クラブという会社から2018年に分社化した企業。ピーナッツ・クラブでは、おもちゃなどを中国から輸入して卸していたものの、景品は法律で上限金額が定められているため、高額アイテムは扱えません。そこで立ち上げられたのが、ライソンの前身となる小売店向けの部署でした。この部署ではバラエティ色の強いアイテムを得意としていたため、当初はドン・キホーテやヴィレッジヴァンガードなどを販路にしていたとか。

 

「販路が広がったのはここ2年ぐらいですかね。だんだんと、家電量販店やホームセンターでも取り扱っていただけるようになりました。ただし後発ですし、正統派の家電を作っても他社に勝てないので、自然とトガったものづくりになっていったんです。またいまの時代、普通のものづくりをしていたら、価格の面で中国の製品に負けてしまいます。『どこかで違いを出さなければ』という思いはありましたね」(山社長)

 

ちなみに、同社はアウトドアやオーディオ製品も発売していますが、メガヒット作の多くは調理家電。その理由とは何でしょうか?

 

「家電の事業を立ち上げる際に、テーマが重要だと思ったんです。そこで考えたのが、パーティシーンを盛り上げる楽しい家電。ドン・キホーテさんが主要な取引先だったという点も大きいですね。パーティには料理が付きものですから、おいしいものを作れて面白いアイテムということで、自然と調理家電が多くなったのだと思います。また、パーティ向けですと使う機会は少ないのですが、家にある家電とかぶらないので、プレゼントやイベントの景品などのギフトにもウケがいいんです」(山社長)

 

確かに、ライソンの製品はユニークなだけでなくコンパクトで価格も手ごろ。持ち運びやすさもあって、二次会などの景品にはうってつけですね。

 

クラウドファンディングを活用し、宣伝と反響のリサーチを行う

転機となったアイテムについて聞いてみると、ライソンとして分社化して初めて発売した製品「ジャンボわたあめ屋さん」とのこと。こちらは、もともとピーナッツ・クラブでTOP3に入るほど人気だったわたあめ器を大きくしたもの。

 

「当時、アメリカ村や原宿で大きくカラフルなわたあめが、『コットンキャンディー』として流行っていました。あれを家でも作れたら面白いと思ったんです」(山社長)

↑2018年5月に発売された、「ジャンボわたあめ屋さん」。店頭参考価格9900円(税込)

 

この製品は、ユニークな企画性が受け入れられた一方で、クラウドファンディングをうまく活用できたことがその後の躍進につながったといいます。

 

「クラウドファンディングには宣伝の意味合いもありますから、そこでヒットすればメーカー名を知ってもらえます。また、お客様に直接販売できるだけでなく、売れ行きが可視化されるので反響がわかりやすいというメリットもあります。これが実績となって、次の商談へとつなげやすくなりました。クラウドファンディングを活用したライソンの商品の第2弾が『焼きペヤングメーカー』。こちらはメディアさんの反応がすごかったですね。おかげさまで、GetNavi webさんをはじめ、多くの媒体で取り上げていただきました」(山社長)

↑クラウドファンディングで2018年11月にプロジェクトが公開された「焼きペヤングメーカー」。参考店頭価格は3278円(税込)

 

開発のきっかけは、山社長自身が「ペヤング ソース焼きそば」を焼いて作ってみたところ、お湯で戻す一般的な調理法よりおいしかったから。また、ピーナッツ・クラブが以前から景品用の「ペヤング ソース焼きそば」を取り扱っており、その監修でメーカーのまるか食品と付き合いがあったことも大きかったとか。ある日、まるか食品の代表が来社した際に「焼きペヤングメーカー」の商品化を相談したところ、ふたつ返事でOKをもらえたそうです。

 

最大のヒット商品を生んだ要因は「開発スピード」だった

「焼きペヤングメーカー」は、大きな話題となっただけに、売り上げも歴代でトップだったのでしょうか?

 

「おかげさまで大好評をいただきましたが、売り上げで一番だった製品は『ウェアラブルスピーカー SP-14』です。こちらは当時、某バラエティ番組の影響で肩掛けスピーカー(ネックスピーカー)が大ヒットしており、人気の商品は品切れを起こしていたほどでした。これをもっと安価で提供できれば、さらなるニーズにリーチできるのでは? と思って出したのがこの商品です。このジャンルに関しては競争が激化すると思ったので、とにかく開発スピードを重視しましたね。その年の春に話題になってから、半年後には商品化にこぎつけました」(山社長)

↑2019年8月に発売された「ウェアラブルスピーカー SP-14」。参考店頭価格9900円(税込)

 

しかも、この商品は相場の半額以下で販売したのがミソ。低価格を実現できたのは、通信方式をそれまでの主流だった無線の2.4GHzから、Bluetoothに変更したからだとか。ステイホームやテレワークにおける需要で、いまでも売れていると山社長は言います。ちなみに、近年の売れ筋といえば?

 

「家飲み需要などの影響で2020年に最も販売台数が伸びたのは『焼き鳥グリル』です。発想は『焼肉を作る家電は多いけど焼鳥は少ないやん。あったらおもろいんちゃう?』というものでした。生の肉で作ろうとすると20分ぐらいかかるのですが、スーパーの焼鳥など『惣菜を温めるのに便利』というコンセプトで打ち出したところ、ホームセンターを中心に売れました。この成功事例をもとに進化させたのが、先日の記事でご紹介いただいた『せんべろメーカー』です」(山社長)

↑2019年5月に発売された「焼き鳥グリル」。参考店頭価格2618円(税込)

 

フランクな雰囲気が良いアイデアを生む

では、続いて商品開発の流れについてうかがっていきましょう。驚くべきことに、実はライソンにはマーケティング担当がいないとのこと。アイデアは営業や開発など部署を問わずに随時受け付け、毎週10人程度で行われる商品会議で開発の進捗確認とともに新作の議論をするそうです。

 

「会議はフランクな雰囲気でやっていて、私が最終決定を行います。ネタはふだんの雑談から生まれてくることもありますし、トレンドなどはだれかが『こういうのが売れてるみたいですよ』と教えてくれることもありますね。以前は毎週企画を出そうというルールにしていたんですが、前日に考えたようなネタが増え、アイデアの質が悪くなって結果的にムダが多いと気づいてやめました。それに、ノルマがなくても良いネタが出ているので、ノルマを設ける必要もないかなと。実際に、いまでは毎週1ネタは採用になっていると思います」(山社長)

↑記念すべき「ジャンボわたあめ屋さん」をオンライン取材で解説する山社長

 

テーマによっては開発に長期間を費やす商品も

開発において重視していることを聞くと、「ファーストサンプルを作る前のトライアンドエラーにある」とのこと。たとえば、1月15日までクラウドファンディングでプロジェクトが公開されていた「超蜜やきいもトースター」は、近年でもっとも力を入れた製品で、開発には苦労したそう。

 

「このテーマならほかに開発を進めているところも少ないだろう、との判断で、開発には2年ほどの時間をかけて取り組みました。おいしさは人によってバラバラですよね。そのおいしさの最大公約数を得られるポイントはどこなのか、決めていくのが特に大変でした。味を安定させる温度や、水分などの条件を詰める作業などに時間がかかりましたね」(山社長)

 

ちなみに、こちらは山社長が東京の人気店に直談判して実現したコラボ商品だそう。

 

「毎年『品川やきいもテラス』というイベントが開催(2021年は中止)されていまして、うちも品川に支社があるものですから、東京に行ったときに訪れたんです。そこで一番行列を作っていたのが『超蜜やきいもpukupuku』さん。『あの絶品焼き芋を家でも作れたら幸せだろうな』という熱意をもって、後日お電話して共同開発をお願いしたのが始まりです」(山社長)

↑「超蜜やきいもトースター」は2020年11月にクラウドファンディングでプロジェクトがスタート。通常販売予定価格は1万8480円(税込)

 

ネーミングと製品サイズで違いを出す

もうひとつ、オススメの最新作が2月15日に発売された「揚げ直し名人」です。最後まで葛藤したのが、商品コンセプトとネーミングだったと山社長は振り返ります。

 

「機能はいわゆるノンフライヤーで、それがとにかく小さいというのがウリです。ただ、惣菜を温めなおすとサクサク、ヘルシーに仕上がりますし、冷凍食品もおいしく調理できるので、『揚げ直し名人』という商品名とコンセプトに舵を切りました。小さいことで場所を取らず、価格も抑えられるという点も差別化ポイントですね。もともとうちでは電気フライヤーを数種類販売しているのですが、実は小さいのが一番売れるんです。また、コアなボリュームゾーンは大手が作っていますから、製品を大きくしてみたり、小さくしてみたりと、ニッチなニーズに提案するのがうちのやり方です」(山社長)

↑「揚げ直し名人」は参考店頭価格7700円(税込)で、2月15日に発売

 

今後は世界進出も視野に入れている

最後に、今後の展望について聞いてみました。

 

「価格は最初に『この値段なら欲しい!』という勘で決めているのですが、これまでは安さを求めすぎて機能を削ってしまった製品もあったので、もう少しバランスをとっていきたいと思っています。ジャンルも、調理家電以外にチャレンジしていきたいですね。新作に関しては、IoTなどの分野でライソンならではの『世界初』を作るために燃えているところです。また、5年以内には中国や欧米のマーケットも視野に入れていて、うちのアイデアを現地にローカライズし、独自の製品を展開したいなと考えています」(山社長)

 

その旺盛なチャレンジ精神で、いつか「世界のライソン」「世界の山社長」となる日が来るかもしれませんね。

 

今回のインタビューをまとめると、同社は、

●コンセプトやネーミング、製品サイズをはじめ、他社製品との違いを意識して差別化を図っている

●クラウドファンディングを宣伝とリサーチのツールとして賢く活用している

●アイデア出しはノルマより雰囲気を重視

●機を見て開発スピードで勝負することもあれば、テーマによってはじっくり開発する

……などなど、「違い」を出しつつも、自由で柔軟なものづくりを行っていることがわかりました。さすがヒットメーカーだけあって、学ぶべきところは多いですね。今後はどんな「ライソンらしい」商品が出てくるのか、みなさんもぜひ、注目していきましょう!

 

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