病院では「夜でも患者の顔色の変化が分かるので安心」
最後に、西吾妻福祉病院を視察してきました。同院は長野原・草津町・中之条町・嬬恋村の4町村共同出資により運営されている公営の総合病院で、24時間365日体制で救急対応し、ドクターヘリのヘリポートも装備。病床数は74床。総合病院ゆえに自家発電設備(重油)を備えており、緊急時には手術室やICUといった重要棟や生命維持装置などの医療機器に優先して電力を供給する体制を敷いています。そのため一般病棟は保安灯のみで暗く、不便を感じていたといいます。
今回のリニューアルで368.5kWもの太陽光発電と416kWhの蓄電池を導入したことにより、夜でも一般病棟は明るく照らされるようになりました。病院関係者は、「患者さんの顔色の変化が分かるようになるので安心」と評価しているとのこと。
特に緊急時は急に体調不良に陥ることがあるため、患者の顔色に気を配ることは重要。2011年の東日本大震災後に病棟の1/3をLED化していましたが、今回、そのLEDの交換も含めて全棟LED化に踏み切りました。蛍光灯より明るくなってうえ、省エネなので蓄電池の電力維持にも役立っているといいます。
↑西吾妻福祉病院の防災リニューアル概要
↑病院裏手に大規模な太陽光発電を設置。同様の規模のものがもう1か所ある
↑蓄電池も大規模。同様の設備が複数箇所あった
晴天時には太陽光発電した電気を病棟の照明に使いながらも、午前中に蓄電池が満充電になり、夜の運用に利用できるそうです。病院は24時間運用のため、昼間に充電した電気を夜間にも使用できるとエネルギーコストの削減効果が大きく、初期投資費用の回収期間も他の施設に比べて短くなるとのこと。なお、同院の総事業費は約6億6000万円で、うち4億5000万円弱が補助金によって賄われています。
パナソニックが設計・施工だけでなく、その後の運用もサポート
吾妻郡におけるこれらの防災対策リニューアルは、パナソニック・ライフソリューションズが中心となって行われました。冒頭に説明した国の補助事業の紹介から手続きのサポート、システム・設備の設計・施工、供用開始後の運用面でのサポートも同社が一手に担っています。平常時は太陽光発電と蓄電の状況、電力の使用状況をエネルギー・マネジメント・システム「Emanage(エマネージ)」により遠隔監視し、定期的にレポート、および改善提案をしています。
例えば、高山村の保健福祉センターでは、冬の寒い時期に出勤してすぐに暖かい状態で働けるよう、夜間から床暖房の予熱を8時間も行っていたところ、予熱スタートから4時間後に保温動作に入っており、ムダな電力を使用していたことが「Emanage」によって判明。予熱時間を大幅に短縮して電気代の削減を実現しました。さらに、災害発生時には、地元の電気工事共同組合との協定により、パナソニック・ライフソリューションズが電気設備の点検と要員の確保・配置、損壊箇所の応急措置・復旧工事も担います。
↑パナソニックは設計・施工だけでなく、その後の運用もサポート。平常時には電気の使い方の改善提案、非常時には地元電気工事組合と提携して機器の保全に努めています
ここ数年、毎年のように全国各地で大規模災害が発生しており、いつ自分が被災者になってもおかしくない状況です。今年から避難勧告が廃止され、より強い避難指示が設定されたのも記憶に新しいところ。そんなときだからこそ、吾妻郡と同様の取り組みは全国に広がりつつあり、各自治体は住民が少しでも安心して避難できるよう、設備を整えています。我々も日ごろから防災意識を高めながら、こうした避難所の設備にも目を向けていきたいですね。
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↑全国公立小中学校の95%が避難所に指定されており、そのうち6割が非常用発電機を備えているが、ほとんどが消火栓ポンプ用の電源のため、火災時にしか使えない ↑環境省が中心となって実施した補助事業の概要。平常時には省エネ設備として、災害時には自立・分散型エネルギーとして活用できる再エネ設備とエアコンやヒートポンプなどの高効率機器の整備に補助金を拠出 ↑高山村の保健福祉センター。補助事業を活用して屋根一面に90.4kWの太陽光発電を設置。発電した電力はすべて施設内で消費する ↑保健センターの設備更新前と更新後の比較。CO2排出量の多い灯油ボイラーを廃し、排出量の少ないLPガスによる空調および発電に変更、太陽光・蓄電池も導入 ↑敷地内にLPガスの貯蔵タンクを設置。災害時には約2日間稼働できる ↑パナソニック製電源自立型空調GHP。停電時でも自らガス発電した電力で空調と照明機器等への電力を供給する ↑太陽光発電で給湯するエコキュートはダイキン製。全体的なシステム構築はパナソニック・ライフソリューションズ社の手によるものだが、施設の状況に応じて最適な機器構成を組むよう心がけており、他社製品も導入している。手前は3000Lの貯湯タンク ↑蓄電池がずらりと並ぶ様は壮観 ↑保健福祉センターでは年間約260万円のエネルギーコスト削減、CO2排出量は約100tの削減を目指す。なお、今回のリニューアルにより、災害時にはスマホ240台の充電が可能 ↑「新型コロナワクチンの超低温保管にも今回の自立発電が役に立ちました」と高山村の割田課長 ↑お城に見える東吾妻町役場。人口減少で町の財政が厳しくなることは目に見えているため、なるべく税金をかけずにすむ方法を模索した結果、町営の温泉施設をリノベーションして活用。これにより1000人およぶ避難者受け入れ施設が実現した ↑嬬恋中学校の防災リニューアル内容 ↑食堂の天井を含め、全校照明をLED化した。校内のLED照明はすべて調光型となっており、非常時には自動的に明るさを10%まで下げて蓄電池の寿命を延ばす ↑体育館の照明も水銀燈からLEDに変更。消費電力が6割減少しながら、明るさが2倍となり、点灯時間も早くなるなど運用面でもメリットが大きい ↑校舎裏に設置された太陽光発電設備。晴天の平常時は太陽光発電にて校内すべての照明がまかなえる。なお、嬬恋村は降雪量が多いため、パネルの傾斜は大きく、架台を高く設定している ↑非常時コンセントを体育館と校舎各フロアに1カ所ずつ設置。災害時にはここからスマホに電源を供給する ↑体育館内の防災倉庫に設置されたモニターでは発電状況と蓄電状況が把握できる ↑玄関ホールにもモニターを設置し、日々の発電状況や太陽光発電の仕組みを表示している。パナソニックのスタッフによる省エネ講座も定期的に開催されている ↑西吾妻福祉病院組合の防災リニューアル概要 ↑病院裏手に大規模な太陽光発電を設置。同様の規模のものがもう1カ所ある ↑蓄電池も大規模。同様の設備が複数箇所あった ↑パナソニックは設計・施工だけでなく、その後の運用もサポート。平常時には電気の使い方の改善提案、非常時には地元電気工事組合と提携して機器の保全に努めています