家電
調理家電
2016/10/5 11:00

パナソニック「けむらん亭」は日本の食卓を変えたのか? 「煙が出ない」スモーク&ロースターを改めて検証!

最近は自分で燻製調理を楽しむ人も増えているようで、我が家でも数年前にホームセンターでダンボール型燻製器(1000円)を購入しました。ところが、実際に使ってみたところ、かなりの範囲にニオイが拡散。しかも、庭で燻製したのにもかかわらず、1週間以上も家の中に燻製臭が漂っていました。一軒家でさえこれですから、マンションで燻製をしたら「煙ハラスメント」で訴えられかねません。燻製はやってみたい、でも煙がイヤ……そんなユーザーの思いを汲んだのか、昨年9月、パナソニックが燻製が可能なスモーク&ロースター「けむらん亭 NF-RT1000」(以下、けむらん亭)を発売しました。発売当初は3万円台後半とやや高価な製品でしたが、現在は実売価格で2万4620円とかなりお手ごろになっているようです。おりしもこれから年末に向けてパーティも増える季節。もしコレが本当に便利なら、料理のバリエーションが一気に広がって来客も喜ぶのでは?……そんな期待を胸に、改めてその実力を試してみることにしました!

 

↑見た目は一般的な魚焼きグリルのようですが、とにかく煙やニオイを庫内から漏らしません。通常用の焼き網のほか、「くんせい容器」と「くんせい網」が付属します
↑見た目は一般的な魚焼きグリルのようですが、とにかく煙やニオイを庫内から漏らしません。通常用の焼き網のほか、「くんせい容器」と「くんせい網」が付属します

 

魚は身がふっくら、皮が驚くほどパリパリに焼けた!

スモーク&ロースターといってもイメージしにくいかもしれませんが、けむらん亭は基本的には魚焼きグリルのような調理器具です。庫内上下にヒーターを搭載しており、焼き魚を調理する際も、食材をひっくり返すことなく両面がコンガリと焼けます。そして、なんといっても「けむらん亭」シリーズの特徴は、多層触媒フィルターによる煙とニオイのカット機能。この煙とニオイのカット機能のおかげで、室内で燻製調理をしても匂いが気にならないのです。

 

燻製を作る場合は「くんせい」ボタンを押してタイマーをセットするだけ。また、燻製以外の調理は220~280℃の温度を設定し、タイマーをセット。魚の場合は、「生・姿焼き」や「切り身」、「干物」、「つけ焼き」など、よく利用しそうな食材に対応したオートメニューも搭載しています。こちらは焼き加減を弱から強の3段階から選ぶだけで、最適な焼き具合で調理してくれます。「よく焼こうとして魚を焦がしがち」「見た目は焼けているのに中心は生っぽい」という失敗をしがちな人にはうれしい機能ですね。試しに鮭の切り身を焼いたら、身はふっくらしているのに、皮が驚くほどパリパリに焼き上がりました!

↑燻製だけでなく、魚や焼き鳥、焼きいもなどを焼くオートメニューも搭載。庫内上部に遠赤ブラックヒーター、下部はシーズヒーターを搭載。さらに本体にはセラミック備長炭コートも採用していて、七輪焼きのような遠赤効果で魚が焼けます。身はふっくらしているのに、皮が驚くほどパリパリに焼き上がりました
↑燻製だけでなく、魚や焼き鳥、焼きいもなどを焼くオートメニューも搭載。庫内上部に遠赤ブラックヒーター、下部はシーズヒーターを搭載。さらに本体にはセラミック備長炭コートも採用していて、七輪焼きのような遠赤効果もあります

 

燻製作りは驚くほどカンタンでニオイも少ない

次に、いよいよ気になる燻製を作っていきましょう。スモークには、まず「くんせい網」にホイルを巻き付けます。巻き付け方は食材によって異なり、肉などの形がしっかりしたものは網の下、水分の多い柔らかな食材の場合は網の上にホイルをかぶせます。

 

さらに、付属のくんせい容器中央にチップを入れたら、ホイルを巻き付けた網と、食材をのせて、さらにくんせい容器をホイルで密閉。あとは本体に入れて「くんせい」ボタンと時間を選択するだけです。ホイルを使う作業が少々面倒ですが、一般的な燻製作りと比較するとビックリするほどカンタン。また、網をホイルでカバーするので、くんせい容器や庫内が汚れにくいのがうれしいです。

↑最初に必ずくんせい網にホイルを巻き付ける手間が必要。肉などのしっかりした食材は写真上、水分が多い食材は写真下のようにホイルの巻き方が変わる
↑最初にくんせい網にホイルを巻き付けることが必要。肉などのしっかりした食材は写真上、水分が多い食材は下写真のようにホイルの巻き方を変えます

 

くんせい容器にチップを10~15gほど入れ、くんせい網と食材をのせて容器をホイルで覆う。ホイルを使うことで燻製を作った後も庫内などは驚くほど汚れない

↑くんせい容器にチップを10~15g(上写真)ほど入れ、くんせい網と食材をのせて容器をホイルで覆います。ホイルの利用により、燻製を作ったあとも庫内などは驚くほど汚れません
↑くんせい容器にチップを10~15g(上写真)ほど入れ、くんせい網と食材をのせて容器をホイルで覆います(下写真)。ホイルの利用により、燻製を作ったあとも庫内はキレイなまま

 

実際に燻製を始めて10分ほど経つとうっすらと煙のニオイがするものの、ほとんど気にならない程度。本体背面にある排気口をチェックしても、煙は見えません。とはいえ、もちろんホイルを開くときには容器内のスモークの香りが漏れ出てきます。そのため、何回か繰り返しスモーク調理をすると家の中にニオイが残るのは確か。一般的な燻製と比較すると格段にニオイは残りませんが、「奥さんに隠れて燻製」というのはちょっと難しそうです。

↑写真手前はタラコ、チーズ、イカを燻製にしたものワインにも日本酒にもピッタリ。写真奥は燻製時間や味付けを変えた4種のささ身の燻製。燻製時間やアレンジで、さまざまな味わいが楽しめるのも自家製の燻製ならでは
↑燻製時間やアレンジで、さまざまな味わいが楽しめるのも自家製の燻製ならでは。写真奥は燻製時間や味付けを変えた4種のささ身の燻製。手前は左からタラコ、チーズ、イカを燻製にしたもので、ワインにも日本酒にもピッタリ

 

安い赤身が高級イタリアン並みに? スモークステーキが大好評!

さて、「けむらん亭」でいつでも燻製ができるならば、チーズやささ身など、定番の燻製をするだけではもったいない。料理にも燻製を取り入れられないか? そう思って何品かの料理を作ってみたら、我が家で一番好評だったのが「スモークステーキ」。これは、その名の通り、スモークしたお肉をステーキにしたもの。安い赤身の肉で作ったところ、高級イタリアンの炭火焼きグリル並みの芳醇な味に変わりました! スモークステーキを作る最大のポイントは「燻製時に火を通しすぎない」こと。我が家では1.5cm厚程度の肉を、約9分燻製。その後フライパンで表面を焼きました。最初の燻製で、ステーキの中心はローストビーフのように加熱されているので、フライパンでの加熱は表面の香ばしさを出すための1分程度の強火の加熱で大丈夫です。なお、燻製時間を8分以内にすると、チップが十分加熱されず、スモークがほとんど発生しませんのでご注意を。このあたりの時間調整は、試行錯誤しながら覚えていく必要がありそうです。

↑NF-RT1000を購入したなら絶対試してほしい「スモークステーキ」。安い赤身の肉が、高級イタリアンの炭火焼きグリル並みの芳醇な味に変わる
↑けむらん亭を購入したなら絶対試してほしい「スモークステーキ」

 

↑肉だけでなく魚介類ももちろんおススメ。前日余った刺身用のサーモンとイカを短時間燻製にしたところ、焼くよりもふわりと柔らかい食感に変化した。軽く香るスモーキーさもあいまって、家庭料理とは思えない上品な味になった
↑肉だけでなく、魚介類ももちろんオススメ。余った刺身用のサーモンとイカを短時間燻製にしたところ、焼くよりもふわりと柔らかい食感に変化しました。軽く香るスモーキーさもあいまって、家庭料理とは思えない上品な味に

 

「ただの野菜」が「オシャレなおつまみ」に変身!

肉や魚はもちろんですが、野菜を燻製するのもオススメ! なかでも我が家で人気だったのはトマトと缶詰のトウモロコシ。どちらも燻製にするだけで、ただの野菜から高級感のあるヘルシーでオシャレな酒のツマミになります。ただ、水分の多い野菜は、燻製にすると酸味が出ることもありました。キッチンペーパーなどで水分をきっちりふき取ったり、オーブンなどで軽く乾燥させたりしてから燻製にすると良さそうです。

↑缶詰コーンやミニトマトを、そのまま「おつまみ」として出すと手抜きに見えてしまいますが、燻製にするだけで高級感がアップ。一気にオシャレな雰囲気になった
↑缶詰コーンやミニトマトを、そのまま出すと手抜きに見えてしまいますが、燻製にするだけで一気にオシャレな雰囲気になりました

 

燻製の作り置きは絶品調味料になる

10~20分程度の燻製で、毎日の食事がレベルアップするのが分かっていても、準備する手間が惜しいという人もいるでしょう。そんな人にオススメしたいのが作り置きです。実は、本機では塩やしょう油といった調味料も燻製して香りづけできるんです。例えば、塩を燻製して使えば、ただのゆで卵もオードブルのようなオシャレ食材に。また、タラコを20分以上燻製すると、そのまま食べてもおつまみとしておいしいのですが、ほぐしてパンやクラッカーに乗せたり、スパゲティなどに混ぜたりしても、とにかく絶品。高級食材のからすみのような深い味わいが楽しめますよ! こちらは、中まで完全に火を通すことで、一週間くらいは保存可能です。

↑皿の右にあるのが20分燻製した塩。もともとは真っ白だったが、焦げ茶色に変わり、スモーキーな香りがする。ただの半熟卵も、この燻製塩をかけるだけで、オードブルのような高級な味に変わった
↑皿の右にあるのが20分燻製した塩。もともとは真っ白でしたが、焦げ茶色に変わり、スモーキーな香りがします

 

↑燻製タラコを使ったタラコスパゲティは、からすみスパゲティのような高級感ある味に。燻製させると味が濃くなる傾向があるので、食材を調味料のように使用できるのも魅力的です
↑燻製タラコを使ったタラコスパゲティは、からすみスパゲティのような高級感ある味に。燻製すると味が濃くなる傾向があるので、食材を調味料のように使用できるのも魅力的です

 

日常的にヘビーに使えるからこそ価値がある

とにかく我が家では大絶賛の嵐だった「けむらん亭」。この製品があるだけで、いつもの食材がワンランクアップするんです。ただし、我が家での唯一の問題点は、置き場所。じつは本機、幅が45cmと正直コンパクトとは言いがたいサイズなのです。しかも、排気の問題で設置は周囲の壁から10cm以上、上部は30cm以上空間をあける必要が。このため、一般的な魚焼きグリルのようにコンロの下に設置するのもなかなか難しいんです。

 

その点を除けば「けむらん亭」はかなり優秀。焼き魚や焼きいも、トーストなど、燻製以外の普段の調理も得意なので、オーブントースターの代わりに設置するのもアリでしょう。また、そろそろサンマがおいしい季節ですが、マンションなどでは「サンマは煙が出るから」と、調理をためらう人も多いはず。そんな人にも食材のニオイや煙を出さないけむらん亭はオススメ。魚焼き用の網サイズが285×195mmあるので、大きめのサンマでも少し斜めにすれば丸ごと焼けます。日常の調理でもヘビーローテーションできる点を考えれば、設置スペースを割いても惜しくはありません。「けむらん亭」のポイントはまさにそこ。いつもの食材を一気に高級な味に変えてしまう「驚き」や「非日常性」だけでなく、焼き魚やトーストもおいしく焼ける「日常性」がベースにあること。ただの特化型の趣味家電ではなく、燻製「も」できる点が貴重です。日本の食卓を「変えた」とはいえませんが、「変えつつある」といえるインパクトに満ちた製品でした。