最近は自分で燻製調理を楽しむ人も増えているようで、我が家でも数年前にホームセンターでダンボール型燻製器(1000円)を購入しました。ところが、実際に使ってみたところ、かなりの範囲にニオイが拡散。しかも、庭で燻製したのにもかかわらず、1週間以上も家の中に燻製臭が漂っていました。一軒家でさえこれですから、マンションで燻製をしたら「煙ハラスメント」で訴えられかねません。燻製はやってみたい、でも煙がイヤ……そんなユーザーの思いを汲んだのか、昨年9月、パナソニックが燻製が可能なスモーク&ロースター「けむらん亭 NF-RT1000」(以下、けむらん亭)を発売しました。発売当初は3万円台後半とやや高価な製品でしたが、現在は実売価格で2万4620円とかなりお手ごろになっているようです。おりしもこれから年末に向けてパーティも増える季節。もしコレが本当に便利なら、料理のバリエーションが一気に広がって来客も喜ぶのでは?……そんな期待を胸に、改めてその実力を試してみることにしました!
魚は身がふっくら、皮が驚くほどパリパリに焼けた!
スモーク&ロースターといってもイメージしにくいかもしれませんが、けむらん亭は基本的には魚焼きグリルのような調理器具です。庫内上下にヒーターを搭載しており、焼き魚を調理する際も、食材をひっくり返すことなく両面がコンガリと焼けます。そして、なんといっても「けむらん亭」シリーズの特徴は、多層触媒フィルターによる煙とニオイのカット機能。この煙とニオイのカット機能のおかげで、室内で燻製調理をしても匂いが気にならないのです。
燻製を作る場合は「くんせい」ボタンを押してタイマーをセットするだけ。また、燻製以外の調理は220~280℃の温度を設定し、タイマーをセット。魚の場合は、「生・姿焼き」や「切り身」、「干物」、「つけ焼き」など、よく利用しそうな食材に対応したオートメニューも搭載しています。こちらは焼き加減を弱から強の3段階から選ぶだけで、最適な焼き具合で調理してくれます。「よく焼こうとして魚を焦がしがち」「見た目は焼けているのに中心は生っぽい」という失敗をしがちな人にはうれしい機能ですね。試しに鮭の切り身を焼いたら、身はふっくらしているのに、皮が驚くほどパリパリに焼き上がりました!
燻製作りは驚くほどカンタンでニオイも少ない
次に、いよいよ気になる燻製を作っていきましょう。スモークには、まず「くんせい網」にホイルを巻き付けます。巻き付け方は食材によって異なり、肉などの形がしっかりしたものは網の下、水分の多い柔らかな食材の場合は網の上にホイルをかぶせます。
さらに、付属のくんせい容器中央にチップを入れたら、ホイルを巻き付けた網と、食材をのせて、さらにくんせい容器をホイルで密閉。あとは本体に入れて「くんせい」ボタンと時間を選択するだけです。ホイルを使う作業が少々面倒ですが、一般的な燻製作りと比較するとビックリするほどカンタン。また、網をホイルでカバーするので、くんせい容器や庫内が汚れにくいのがうれしいです。
実際に燻製を始めて10分ほど経つとうっすらと煙のニオイがするものの、ほとんど気にならない程度。本体背面にある排気口をチェックしても、煙は見えません。とはいえ、もちろんホイルを開くときには容器内のスモークの香りが漏れ出てきます。そのため、何回か繰り返しスモーク調理をすると家の中にニオイが残るのは確か。一般的な燻製と比較すると格段にニオイは残りませんが、「奥さんに隠れて燻製」というのはちょっと難しそうです。
安い赤身が高級イタリアン並みに? スモークステーキが大好評!
さて、「けむらん亭」でいつでも燻製ができるならば、チーズやささ身など、定番の燻製をするだけではもったいない。料理にも燻製を取り入れられないか? そう思って何品かの料理を作ってみたら、我が家で一番好評だったのが「スモークステーキ」。これは、その名の通り、スモークしたお肉をステーキにしたもの。安い赤身の肉で作ったところ、高級イタリアンの炭火焼きグリル並みの芳醇な味に変わりました! スモークステーキを作る最大のポイントは「燻製時に火を通しすぎない」こと。我が家では1.5cm厚程度の肉を、約9分燻製。その後フライパンで表面を焼きました。最初の燻製で、ステーキの中心はローストビーフのように加熱されているので、フライパンでの加熱は表面の香ばしさを出すための1分程度の強火の加熱で大丈夫です。なお、燻製時間を8分以内にすると、チップが十分加熱されず、スモークがほとんど発生しませんのでご注意を。このあたりの時間調整は、試行錯誤しながら覚えていく必要がありそうです。
「ただの野菜」が「オシャレなおつまみ」に変身!
肉や魚はもちろんですが、野菜を燻製するのもオススメ! なかでも我が家で人気だったのはトマトと缶詰のトウモロコシ。どちらも燻製にするだけで、ただの野菜から高級感のあるヘルシーでオシャレな酒のツマミになります。ただ、水分の多い野菜は、燻製にすると酸味が出ることもありました。キッチンペーパーなどで水分をきっちりふき取ったり、オーブンなどで軽く乾燥させたりしてから燻製にすると良さそうです。
燻製の作り置きは絶品調味料になる
10~20分程度の燻製で、毎日の食事がレベルアップするのが分かっていても、準備する手間が惜しいという人もいるでしょう。そんな人にオススメしたいのが作り置きです。実は、本機では塩やしょう油といった調味料も燻製して香りづけできるんです。例えば、塩を燻製して使えば、ただのゆで卵もオードブルのようなオシャレ食材に。また、タラコを20分以上燻製すると、そのまま食べてもおつまみとしておいしいのですが、ほぐしてパンやクラッカーに乗せたり、スパゲティなどに混ぜたりしても、とにかく絶品。高級食材のからすみのような深い味わいが楽しめますよ! こちらは、中まで完全に火を通すことで、一週間くらいは保存可能です。
日常的にヘビーに使えるからこそ価値がある
とにかく我が家では大絶賛の嵐だった「けむらん亭」。この製品があるだけで、いつもの食材がワンランクアップするんです。ただし、我が家での唯一の問題点は、置き場所。じつは本機、幅が45cmと正直コンパクトとは言いがたいサイズなのです。しかも、排気の問題で設置は周囲の壁から10cm以上、上部は30cm以上空間をあける必要が。このため、一般的な魚焼きグリルのようにコンロの下に設置するのもなかなか難しいんです。
その点を除けば「けむらん亭」はかなり優秀。焼き魚や焼きいも、トーストなど、燻製以外の普段の調理も得意なので、オーブントースターの代わりに設置するのもアリでしょう。また、そろそろサンマがおいしい季節ですが、マンションなどでは「サンマは煙が出るから」と、調理をためらう人も多いはず。そんな人にも食材のニオイや煙を出さないけむらん亭はオススメ。魚焼き用の網サイズが285×195mmあるので、大きめのサンマでも少し斜めにすれば丸ごと焼けます。日常の調理でもヘビーローテーションできる点を考えれば、設置スペースを割いても惜しくはありません。「けむらん亭」のポイントはまさにそこ。いつもの食材を一気に高級な味に変えてしまう「驚き」や「非日常性」だけでなく、焼き魚やトーストもおいしく焼ける「日常性」がベースにあること。ただの特化型の趣味家電ではなく、燻製「も」できる点が貴重です。日本の食卓を「変えた」とはいえませんが、「変えつつある」といえるインパクトに満ちた製品でした。