家電
2023/3/29 10:30

パナソニックが黒をテーマにした「アートインスタレーション」を開催した意図

パナソニック エレクトリックワークス社(以下、EW社)は、漆黒がテーマの配線・照明器具シリーズ「BLACK DESIGN SERIESSERIES」を活用した、インスタレーション展示(空間展示)を表参道・STAMP BASEで開催しました。その展示に先駆けては、建築家・佐々木 慧さん、インテリアスタイリスト大谷優依さんらによるトークセッションも催行。パナソニックはなぜ「黒」をテーマに、しかもアートの展示を行ったのでしょう?そのセッションや展示の模様からその詳細をお届けします。

 

↑ BLACK DESIGN SERIESの照明器具。背後にあるのは配線器具。黒を基調にした器具は他社にもありますが、照明・配線といった複数の商品群にまたがったラインナップがあるはパナソニックならでは

 

いま求められている、黒という選択肢

これまでの配線・照明器具は、白系の明るい色を基調にしたものが主でした。そんななかにあって、BLACK DESIGN SERIESは黒一色のデザインを採用しています。その黒もただの黒ではなく、自然界には全く存在しない漆黒の黒です。

 

トークセッションにも登壇した、EW社デザインセンターの近藤高宣さんによれば、BLACK DESIGN SERIESのコンセプトは「“図”と“地”になること」。図とはいわゆるアイキャッチのことで、その存在を大きく主張するもの。たとえば、ダイニングペンダントやシーリングファンがそれにあたります。

↑近藤高宣さん(左)と佐々木 慧さん(右)

 

一方の地は、背景を意味します。床や壁、天井といった平面に調和し、それ自身が強い主張を放つことはありません。具体的な例では、ダウンライトや煙感知器、コンセントなどの配線器具です。現在の住宅では、壁面4面のうち1面だけを黒にしてアクセントをつける事例が増えていますが、 BLACK DESIGN SERIESの配線器具は、そういった壁面とも調和します。

↑BLACK DESIGN SERIESの多彩な製品が並んだ展示。図になるもの、地になるものが入り混じっています

 

BLACK DESIGN SERIESのキービジュアル制作を担当した、インテリアスタイリストの大谷優依さんも「黒を取り入れるニーズが増えている」と語ります。これまでの黒のイメージは「男性的で、かっこいい、強いといったものが主」でした。しかしいまでは、「やさしくしすぎない、野暮ったさが出るのを防ぐという目的で、明るい色が多いやさしさのある空間に、黒をアクセントとして用いるケースが増えている」そうです。黒は、建築業界でいま求められている色といえます。

↑大谷優依さん(左)。右は、トークセッションの司会進行を務めた藤本美紗子さん

 

↑大谷さんが担当した、BLACK DESIGN SERIESのキービジュアル

 

今回のインスタレーション展示制作を担当した、建築家の佐々木 慧さんも、漆黒の配線・照明器具の存在に強い意味を感じています。これまでは漆黒の器具がなく、わざわざ既存の製品を黒く塗装して使っていたという佐々木さん。そんな彼にとって、BLACK DESIGN SERIESの登場は「非常にありがたい」ことだったといいます。

 

配線器具が集まって、新たな意味を生む“黒の風景”

佐々木さんが今回制作したインスタレーション展示のタイトルは「BLACK LANDSCAPE」。メインとなる展示では、BLACK DESIGN SERIESの配線器具や煙探知機といった“地”になる多数の製品が、細い棒に支えられて宙に浮いています。その配置は不規則で、棒の高さも一様ではありません。佐々木さんによれば「白黒で撮影した自然の風景写真に着想を得ている」といいます。

↑メインの展示

 

↑横から見たところ。空中に配された器具の高さは、それぞれ異なっています

 

↑寄りで見ると、ひとつひとつが、スイッチなどの配線器具でできていることがわかります

 

自然界にはないはずの漆黒の物体を幾何学的に並べたこの展示。見る角度や個人の発想の違いで、草原や森に見えたりあるいは街に見えたりと、複数の解釈ができる空間を作り上げています。引いて見るとなにかの塊に見えて、近寄ってみるとひとつひとつの器具が際立つ。なんとも形容し難い、異質な空間がそこにはありました。

 

アートを舞台にスイッチやコンセントを表現することで、本展示では実際の現場で製品を採用する人たちのアピールも狙ったといいます。今回のインスタレーション展示のみならず、空間デザインの世界に新風を巻き起こしそうなBLACK DESIGN SERIES。新築の物件はもちろん、リノベーション物件などで活躍してくれそうです。