パナソニック エレクトリックワークス社(以下、EW社)は、漆黒がテーマの配線・照明器具シリーズ「BLACK DESIGN SERIESSERIES」を活用した、インスタレーション展示(空間展示)を表参道・STAMP BASEで開催しました。その展示に先駆けては、建築家・佐々木 慧さん、インテリアスタイリスト大谷優依さんらによるトークセッションも催行。パナソニックはなぜ「黒」をテーマに、しかもアートの展示を行ったのでしょう?そのセッションや展示の模様からその詳細をお届けします。
いま求められている、黒という選択肢
これまでの配線・照明器具は、白系の明るい色を基調にしたものが主でした。そんななかにあって、BLACK DESIGN SERIESは黒一色のデザインを採用しています。その黒もただの黒ではなく、自然界には全く存在しない漆黒の黒です。
トークセッションにも登壇した、EW社デザインセンターの近藤高宣さんによれば、BLACK DESIGN SERIESのコンセプトは「“図”と“地”になること」。図とはいわゆるアイキャッチのことで、その存在を大きく主張するもの。たとえば、ダイニングペンダントやシーリングファンがそれにあたります。
一方の地は、背景を意味します。床や壁、天井といった平面に調和し、それ自身が強い主張を放つことはありません。具体的な例では、ダウンライトや煙感知器、コンセントなどの配線器具です。現在の住宅では、壁面4面のうち1面だけを黒にしてアクセントをつける事例が増えていますが、 BLACK DESIGN SERIESの配線器具は、そういった壁面とも調和します。
BLACK DESIGN SERIESのキービジュアル制作を担当した、インテリアスタイリストの大谷優依さんも「黒を取り入れるニーズが増えている」と語ります。これまでの黒のイメージは「男性的で、かっこいい、強いといったものが主」でした。しかしいまでは、「やさしくしすぎない、野暮ったさが出るのを防ぐという目的で、明るい色が多いやさしさのある空間に、黒をアクセントとして用いるケースが増えている」そうです。黒は、建築業界でいま求められている色といえます。
今回のインスタレーション展示制作を担当した、建築家の佐々木 慧さんも、漆黒の配線・照明器具の存在に強い意味を感じています。これまでは漆黒の器具がなく、わざわざ既存の製品を黒く塗装して使っていたという佐々木さん。そんな彼にとって、BLACK DESIGN SERIESの登場は「非常にありがたい」ことだったといいます。
配線器具が集まって、新たな意味を生む“黒の風景”
佐々木さんが今回制作したインスタレーション展示のタイトルは「BLACK LANDSCAPE」。メインとなる展示では、BLACK DESIGN SERIESの配線器具や煙探知機といった“地”になる多数の製品が、細い棒に支えられて宙に浮いています。その配置は不規則で、棒の高さも一様ではありません。佐々木さんによれば「白黒で撮影した自然の風景写真に着想を得ている」といいます。
自然界にはないはずの漆黒の物体を幾何学的に並べたこの展示。見る角度や個人の発想の違いで、草原や森に見えたりあるいは街に見えたりと、複数の解釈ができる空間を作り上げています。引いて見るとなにかの塊に見えて、近寄ってみるとひとつひとつの器具が際立つ。なんとも形容し難い、異質な空間がそこにはありました。
アートを舞台にスイッチやコンセントを表現することで、本展示では実際の現場で製品を採用する人たちのアピールも狙ったといいます。今回のインスタレーション展示のみならず、空間デザインの世界に新風を巻き起こしそうなBLACK DESIGN SERIES。新築の物件はもちろん、リノベーション物件などで活躍してくれそうです。