コロナ禍が明けて生活様式が変わる一方で、電気料金の高騰と、洗濯を取り巻く環境、およびユーザーの意識が変化しています。そのようななかで、シャープがプラズマクラスタードラム式洗濯乾燥機3モデルを9月14日に発売すると発表。新モデルが新たなニーズにどのように応えていくのか、発表会の内容から探っていこうと思います。
業界トップクラスの省エネ性能を実現
国内の洗濯機市場は、2020年の新型コロナウイルス対策特別定額給付金需要の反動により、21年度、22年度はマイナス傾向にありましたが、その間もドラム式洗濯乾燥機は増加傾向にありました。コロナ禍が明けた今年、さらにドラム式洗濯乾燥機の需要は拡大するとシャープは予測しています。というのも、コロナ前の日常が戻りつつあることで、仕事や学校、レジャーなどで外出する機会が増え、洗濯物を外干しする時間がないため、乾燥性能に長けたドラム式のニーズが高まっていると見たためです。
しかしその一方で、電気代の値上げが家計を逼迫するようになり、家電製品の省エネ性能に対して強いニーズが生まれています。
今回シャープが発表した3モデルは、最上位機種「ES-X11B」(実売予想価格42万6000円前後・税込)の消費電力量が600Wh(洗濯~乾燥6kg)で前年モデル同様に業界最高水準を維持。ミドルクラスの「ES-V11B」(同39万6000円前後)と「ES-G11B」(同36万6000円前後)は前年モデルより20Wh少ない880Whで業界トップクラスを実現しています。シャープによると、V11BとG11BはX11Bに次ぐ業界2位の省エネ性能とのこと。
サポートヒーターとAI制御で効率的に乾かす
X11Bが業界最高水準の省エネ性を実現できたのは、乾燥運転時の初期加熱工程を工夫したから。従来はヒートポンプ加熱のみのため、ハイパワーで長い時間をかけて温度を上げていきましたが、新製品ではサポートヒーターを搭載。初期段階のみヒーターの熱を使って温度を上げる手助けをすることで素早く設定温度に到達し、結果としてトータルの消費電力量を抑制することに成功しています。
また、パーカーやジーンズなどの乾きにくい厚手の衣類のせいで乾燥運転がなかなか終わらないということがよく起こりますが、これもサポートヒーターとヒートポンプをAI制御することで解決します。
また、これまで最上機種のX11シリーズにのみ搭載していた乾燥フィルター自動お掃除機能を新たにV11BとG11Bにも搭載。フィルターがホコリで目詰まりすることにより乾燥時間が延びて電気代が余計にかかることを防ぎます。同機能の搭載が、V11BとG11Bの消費電力量の削減に大きく貢献しているとのことです。
X11BとV11Bは乾燥ダクトの自動お掃除機能の見直しも行っています。従来はダクト掃除用の水が出るノズルが下を向いていましたが、これを上方に移動し、ダクト内全体を洗浄できるように変更したのです。これにより、乾燥効率の低下や乾燥エラーを防ぎ、無駄に乾燥時間が延びることを抑えます。
「高圧シャワーすすぎ」で節水も実現
このほか、3機種に共通する新機能は2つあります。1つは、ドアパッキン自動洗浄機能。もともと、シャープのドラム式はドアパッキンの内側にホコリがたまりにくい構造だとしていますが、それでも長年放置しておくとドアパッキンの内側にある水抜き穴にホコリが詰まり、水漏れが発生する可能性もあるとのこと。そうならないよう、次の洗濯運転時に洗い流す仕組みを導入したものです。これにより、定期的に手でホコリを取り除くという面倒な手間が省けます。
2つめが「高圧シャワーすすぎ」の新開発です。従来のマイクロ高圧シャワーの噴射角度を狭めることで、水圧を分散させることなく高い圧力を保ったまま衣類に噴射。同時にドラムの回転数を上げて遠心力をアップすることにより、繊維の奥に入り込んだ洗剤を残すことなく洗い流せるようになりました。これにより、洗剤残りを抑制するだけでなく、すすぎ効率のアップにより節水も実現しています。
なお、V11BとG11Bの主な違いは、スマホ連携によるAIoT機能と液体洗剤・柔軟剤自動投入機能、ワイド投入口(メガマウス投入口)の有無などです(以下の表を参照)。プラズマクラスターは全機種搭載。
これからゲリラ豪雨や台風、秋の長雨と、外で干せない状況が増えそうなこともあって、洗濯乾燥機の出番はますます増えそう。当面は電気代が下がる気配もなさそうですし、省エネ性の高いドラム式のニーズは衰えそうもありません。