日差しの暖かさを感じるこの時季は、卒業、そして入学シーズンでもあります。
親戚に入学祝いを差し上げたいのだけれど「いつまでに」「いくらくらい」渡せばいいのか。また、お祝いをいただいたときは、お礼はどうしたらいいのでしょうか。わからなくて困っている人も多いのではないでしょうか?
今回は、入学祝いを贈るとき、贈られたときのお話しです。
お子さんの門出を祝う行事ですから、御祝儀袋を大人の間だけのやり取りにせず、ぜひ、お子さんに周囲の方々との関わりの大切さを学ばせる機会にしてください。
入学祝いの基本の贈り方
子どもにとっての新たな一歩を祝福し、これからの豊かな成長を願って贈り物をするのが入学祝いです。
親族間の内祝いというのが原則なので、家族や近い親戚の間で行ないます。贈る時期は入学式の2~3週間前までには届くようにしたいもの。
金額の目安は、相手との関係で決まりますが、甥や姪だったら上限1万円くらいで良いと思います。夫の親戚と妻の親戚とで習慣がちがう場合も多いと思いますので、いくらにするか事前に話し合って決めておくと良いでしょう。
お金を贈る場合の御祝儀袋は、赤白の蝶結びの水引きのものにします。表書きは、「入学御祝」と書きます。
子どもたちに、もっと気持ちを込めた贈り方
もちろん現金を渡すことでも、相手の方は十分うれしいと感じることでしょう。でも、今回はさらに子どもに気持ちが伝わる入学祝いを贈りませんか。
たとえば現金ではなく品物を贈る場合は、同じものが重なってしまわないように、事前に親を通して子どもに聞いてみるとよいでしょう。と言っても、聞かれたほうも金額の目安もわからないし、案外リクエストしにくいものですよね。
そんな場合は「おけいこバッグ、文房具、地球儀、この中でどれがいい?」と3つくらい候補をあげてみましょう。お子さんも「じゃあ、ネコの絵がついたおけいこバッグがほしい」など、答えやすくなります。自分の好きなものを聞いてくれたというのも、子どもにとってはとてもうれしいものです。
また「ほんとうは洋服や本を買ってあげたいけれど、好みがわからない」または、「忙しくてゆっくりと選んでいる時間がない」ということもありますよね。
実際に贈り物を買うことができないというときには、御祝儀袋の表書きに「御洋服料」、「御本料」と書きます。「●●料」と書くことで「本来ならば洋服(本)を贈りたいのですが、お金で贈ります」という意味になるのです。そうすることで、現金を渡すにしても「本当は洋服(本)を買ってあげたかったんだ」という相手を思う気持ちがより伝わります。
また、子どもに直接渡すときは、必ず親のいる前で行ないましょう。
遠方の親戚にお祝いを贈るときは、現金書留を利用します。その際、お金だけでなく、ぜひ手紙を添えてあげてください。これから新しい経験をしていく子どもたちに、「これから進む道を応援しているよ」というメッセージを送ることで、「見守られている」という安心感を与え、子どもを勇気づけることでしょう。
前述したように、入学祝いは身内で行なわれるものなので、友だちのお子さんに贈らなくても失礼にはあたりません。でも、ぜひお祝いしたいという場合には、3000円以内を目安に品物を選べば良いでしょう。図書券や、鉛筆セットやタオルに名前を入れてさしあげるのも喜ばれますよ。
入学祝いをいただいたときのお礼
入学祝いをいただいたら、子どもからきちんとお礼を言うようにしましょう。
子どもの目の前でいただいたときには、直接子どもからお礼を言えますが、子どもがいないときに受け取ったら、あとで相手の方に電話をし、子どもからお礼を言うようにします。
なるべく早いタイミングで電話をかけて、お礼を言うようにしましょう。新生活が始まったら、いただいたものをどんなふうに使っているか、手紙に書いて送りましょう。小学生のお子さんなら、絵や短い文などを添えるとさらに良いでしょう。“お礼は2回言う”ことを心得て。
入学祝いは、財力のない子どもへの贈り物ですから、本来お返しの必要はありません。その代わり、相手側に子どものお祝い事があったときは必ず贈るという、昔からの「おたがいさま」というルールがあります。そのために、相手側からいくらいただいたか、いくら贈ったかを記入しておく“贈り物帳”が必要なんです。人間関係は、お返しをして終わりではなく、その後も続いていくものですよ。
先ほど、お返しは必要ないと言いましたが、親戚間でお返しをするルールになっているのであれば、それに合わせれば良いと思います。
ただ、お返しをする場合、ひとつ注意してほしいのはタイミングです。あまりに素早くお返しされると、相手側は、つき返されたような気持ちになってしまい、贈って悪かったのかなと感じてしまいます。お返しをするなら、入学祝いをいただいてから3週間後ぐらいがよいでしょう。新生活が始まってからなら、お祝いで購入したものや、いただいたものを使っているようすなども伝えることができます。
周囲の方々からのお祝いは、みんなから見守られていると、子どもが感じる機会でもあります。贈る側になっても、贈られる側になっても、相手を思う気持ちを伝えることの大切さを自分の子どもにだけでなく、親戚のお子さんにも教えてあげてくださいね。
(まとめ:永瀬紀子)
【著者プロフィール】
岩下宣子(いわしたのりこ)
現代礼法研究所代表 全日本作法会の内田宗輝氏、小笠原流小笠原清信氏のもとでマナーを学び、1985年、現代礼法研究所を設立。マナーデザイナーとして、企業、学校、商工会議所、公共団体などでマナーの指導、研修、講演と執筆活動を行う。
http://www.gendai-reihou.com/index.htm